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 トラック  01


「ニアの奪還、それが我々四人の総意だ」
 部屋に招じ入れるなり、レスターは前置きもなく告げた。
「そしてそのためには君の力が必要だ。ニアは君と合流し体勢の建て直しを指示したが、以前より、万一の場合は、この件に関わるかどうか、各自の判断に委ねるとも言っていた。この総意はそうした考えの結果だと思ってほしい。協力してくれるか?」
 SPK側にも話し合うつもりは無かったようだ。メロはイエスかノーかの答えのみを期待するレスターを見上げた。
「…ノーと言ったらこの場で俺を逮捕、ということか」
 そして、次にFBIの捜査官であるジェパンニを見据えた。
「条件としては悪くないだろう? それにここに来たということは君も手を組む気だったんじゃないのか」
 ため息をつき、やむを得ないという感情を隠しもしないところに、本音がどこにあるのか分かった。メロとしてはかえってその方がやりやすい。
「こっちも緊急事態なんだ」
 不敵な笑みを閃かせ、言い放った。ニアのこともワイミーズハウスのことも、悠長に時間をかけられない。
「それは良かった。君を逮捕しても、キラは野放し、ニアは捕らえられたまま…それもいつまでかは分からない。我々が手を組むことが考えられる最善の方法だと思う…そして唯一の」
 この捜査官は、前回、乗り込んだときには銃をつきつけ、ニアの指示があってもなかなか降ろそうとしなかったのだが、今はそんな素振りもない。
 マットは、ドアの側で傍観に徹していた。ワイミーズハウスを飛び出したメロが、どのような行動をとっていたのかは本人から聞いていたから、大激論になることを予想していた。
 そして、下手をすると殴り合いになるかもしれず、そうなればプロぞろいの相手に勝てる見込みはなかったのだが、メロの根拠があるのかないのか、とにかくも自信満々な態度は相変わらずで苦笑してしまう。
『ニアに対してだけなんだよなあ、ナーバスになるのって。あ、ナーバスってよりは…』
 子どものころを思いだし、少ししみじみとした感慨にふけるも、メロが突然、こちらに振り向いた。
「で、こっちがマット。俺やニアと同じくワイミーズで一緒だった」
「あ、ども。よろしく」
 勢い、ぺこりと頭をさげた。
「言っとくが。こいつは前科持ちじゃないからな」
「なに、その念押し」
「アメリカと日本の捜査機関の人間ばかりなんだよ。ここは」
「…ああ、そういう…でも、これから前科持ちになりそうだよなあ」
「安心しろ、そのときは全員一緒だ」
「おお」
 妙に自信にあふれた言葉と暢気な受け答えに、腕をくみ黙り込んでいた模木が吹き出した。
「前科といえば、私も容疑がかけられているからなあ」
「まだ参考人扱いでしょう。でも匿っていることになるのなら、私たちSPKも日本警察に問いただされても文句はいえないかしら」
 リドナーも苦笑し、レスターは疲れたような安堵したような顔で椅子に座り込んだ。
「さっそくだが、これからの行動拠点については、ワイミーズハウスの代表と名乗る人物が用意する、と連絡があった。メロ、君はどう考えている」
「……あのおっさん、もう話してんじゃねえか」
「あの人こそ人の話を聞かなさそうだな〜。何でもごり押ししそうだ」
 レスターの言葉に呆れながら、メロとマットも手近のソファに座った。
「その代表ってのは俺らのスポンサー。場所やらなんやらを用意してくれるってよ」
「なぜここに至ってワイミーズハウスが? ニアが行方不明になったから?」
「それもある。それからもっと悪いことは、ワイミーズハウスの運営資金が底をついたんだ」
 メロは、ワイミーズハウスの運営が、Lが手がけた事件の解決報酬で成り立っていたこと、Lがキラに取って代わられたためにその資金がこの四年間でゼロになったことを説明した。
「それでその代表、創設者のキルシュ・ワイミーの後継でもあるんだが、ミスターワイミーの親族ともめていて未だに遺産に手がつけられない状態で、この緊急事態対策に俺らに探偵屋、Lの代わりをさせようとしてる」
 この話にSPKの三人と模木は押し黙っていたが、模木が青ざめたまま口を開いた。
「…すまない。月くんに竜崎、Lの代わりを頼んだのは我々だ。まさかハウスの運営がそのようなことになっていたとは」
「まあ、普通は分からないだろなー。オレらだって代表にさっき聞いたばっかだし」
「夜神は最初から狙っていただろうよ。Lの立場はキラとしても絶好の条件だ」
 二人のあっけらかんとした応えに模木は少し拍子抜けした。そんな様子すらも気にもせず、メロは少し身を乗り出した。
「模木には聞きたかったことがある。あんたLと行動してたんだよな。どんな人だったんだ?」
 突如、話が脱線したために、模木は目を丸くしている。そして気を取り直したように椅子に座り直した。
「君は、Lに会ったことがないのか?」
「ない。ネット越しに声だけなら、何度か聞いたことがあるがな」
「…ワイミーズハウスはLの後継者を育てている施設だと」
 レスターが、ニアから聞いていたことを思いだしながら口をはさみ、リドナー、ジェパンニも興味深そうに見つめている。
「……全員が全員、探偵になるわけじゃない。マット、お前は?」
「え?…んー、確信はないけどさ。なんかへんな人ならいたな」
「なにっ」
「Lとの通信があった日、廊下でそれまで見たことない大人をみた。なんかひょろ長くて折れ曲がったような……話ぶりもそうとうおかしな人だったじゃん、だからそのとき、Lだーって思ったんだよなー」
「……なんだよそれ」
「……たぶん、そうだ。私が知るL、私たちは竜崎と呼んでいたが、彼は酷い猫背で、身長のわりには大きくは見えなかったな」

08.11.18

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