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28 Aug 2010 (1)
日付が変わったことに気付いた。8月28日、そういえば誕生日が過ぎている。ぼんやりと思いながら、寝返りをうって天井を見上げた。
枕元の小さなスピーカーから、ニアが“L”として数時間前に解決したとある事件の報告が流れている。時折、意見を求められると一言二言、言葉を返していた。
ニアは、湿気と熱が澱む京都独特の暑さに体調を崩していた。ろくに起き上がることもできないために、ローテーブルにノートパソコン、枕元に通信機器類を置いて、臥せったままでも扱いに支障がないようにしていたが、相手が国外の場合がほとんどで、昼夜逆転の生活が続き、体調はなかなかもとに戻らなかった。今も、こちらは深夜だというのに、向うは午後を少し過ぎた時間帯だという。
ようやく報告が終わり、挨拶もそこそこに通信を切る。
最近、世界各地の捜査機関で“L”に関する噂がまた一つ加わった。しばらく人当たりがよかったのに無愛想に戻った、というものだ。人当たりが良いバージョンは夜神月だ。あれは社交性の塊で、周囲が望む姿そのままに振る舞うことができる特殊技能の持ち主だと、ニアは思うようになっていた。
先代のL、月が言うところの“竜崎”氏は相当の無愛想だったらしい。Lの代理の自分も、無愛想で通してきたから知らない者からすれば『無愛想に戻った』ことになるのか。
エアコンの温度を下げようとコントローラーに手を伸ばして、止まる。これをするから身体が外気の温度についていけなくなって、臥せっていることを思いだしたのだ。
魅上は窓を開け放し、風通しを良くしてなるべくエアコンは入れるな、と言うが、ニアにしてみればそれは自殺行為のようにも思えてまだ実行していない。大体、魅上はこの暑さをものともせず、スーツを着込んで仕事にいくような男なのだ。一体どういう神経構造をしているのか、ニアは不思議でならなかった。
08.08.28
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