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28 Aug 2010 (2)
『………』
『…すまない、店員が勝手にプレゼントだと解釈してラッピングを』
レスターに値段付きの買物リストを渡していた。すべておもちゃだ。
数時間後、ニアの目の前に積み上げられた色とりどりのパッケージに、SPK全員が目を丸くしていた。
『…レスター指揮官のような人が店内をうろうろしていたら、そりゃあ子どもへのプレゼントだと思うでしょうよ……』
『他の者ならラッピングどころか、下手すると通報されかねない…』
まどろみかけたニアは、夢が記憶の層を辿るのを感じていた。去年のことなのにひどく懐かしく感じて、そのまま思考の流れにまかせていた。あの時はまだ、SPKには多くの人間が働いていた。
冷やかし半分、好き勝手な意見が飛び交う。張りつめていた空気が和んでいく。
『ニア?』
困惑したようなレスターがニアを見下ろす。床にぺったりと座り込んだまま、じっと箱の山を見上げていたニアはふり返った。
『いえ、気にしないでください。なんだか本当のプレゼントみたいです』
去年のその日も、ニアの誕生日から数日が過ぎていた日だった。
そもそも、ニアはバースデイプレゼントなるものを貰ったことがない。ハウスでは大勢いる子どもたちのために、個別の誕生日祝いなどせず、かわりにクリスマスを盛大に行われていたからだ。
個人情報を明かさない決まりも手伝って、ニアの誕生日を知るものはいない。仲の良い者同士なら教えあっていたようだが、友人を作らなかったニアにはそういう機会もなかった。したがって祝われたこともない。
自分のための、大きなリボンがかかる箱。
実体は自分がお金をだして頼んだものでも悪い気がしないことに、何やら大きな発見めいた気分を味わったことを覚えている。
今年の8月は大量殺人犯キラに軟禁されて、しかも体調不良で寝込みながら“L”として働いている。去年はそのキラを追っていて、次の年にはこんなことになっていようとは、それこそ夢にも思わなかった。
重い何かが思考の流れを邪魔するようで、眠気が消えてしまった。仕方がないので、翌朝に予定していた報告をすることにした。
08.08.29
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