Bush clover 1
午前の間に、搬入された薬草、薬品類の分類を大広間で行われる。魔法薬学の授業も兼ねてグリフィンドールとスリザリンの五年生が手伝うことになっていた。
太陽光線を嫌う薬品類の為に、窓という窓には厚いカーテンが下りている。いつもはその日の天候をそのまま映す天井も闇に沈んだようになっていた。
夜のような大広間に入ると、教員席に一人、もそもそと朝食を取っているルーピンがいる。この時間、ルーピンには授業がないのだろう。
スネイプは、その姿を見つけるなり鋭く言い放った。
「ルーピン、邪魔だ。さっさと食って出ていけ」
「いやその…はい、今すぐ」
わたわたと立ち上がろうとするのを、苛立たしげにくり返した。
「『食って』出ていけと言っている」
きょとんとした顔になったあと、得心したように苦笑した。
「じゃあせめて隅の方へ移動しよう」
「……お前、資材には絶対に触れるな」
「分ってます」
飄々とした態で資材の山から離れるルーピンを見届け、スネイプは生徒に振り返った。が、案の定、グリフィンドールの双子がルーピンに構い始めた。
「先生〜、遅すぎ。嫌いなもんばっかなの?」
「いや、好き嫌いはとくにないんだけどね…量が…」
「先生、痩せ過ぎなんだからさ、食わなきゃマジやばいよ」
一応は「先生」と呼んでいるものの、同級の友人のような気易さである。ルーピンも気にしていない。
ルーピンに構う二人組。
遠い昔にも見た光景の再現である。違うのはもう学生ではないルーピンと二人組の髪の色、眼前の生徒は鮮やな赤だがあの二人組は黒だった。
「あ、でもこれちょうだい」
「ああ、いいよ」
彼らがルーピンの半分ほども残っている食事をつつき始めた。潮時だ。
「ウィーズリー!」
「「うわっ」」
「ほらほら、フレッド、ジョージ、スネイプ先生の減点が出ないうちに行きなさい」
ルーピンが笑って二人の背をスネイプの方へ押しやった。
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それから、離れた所で生徒達がスネイプの指示のもと薬品や薬草を仕分けしていくのを眺めていた。
昔からこの二つの寮は仲が悪いが、ルーピンの見たところ、深刻な睨み合いをしているのは三年生だけのように思えた。この五年生のクラスは別段いがみ合うこともなく、各々の作業を分担して進めていた。
次の授業の準備のため、自分の事務室に戻ろうと席を立った。
「…? 何だろう?」
耳に気圧が変わったときのような感覚が起きた。室内は夜のように暗いが、外は晴天だ。窓のそばに歩みよりカーテンを少し開けて確認する。遮光の呪文でガラスの向こうの外界は灰色の世界だったが、天候は変化していないのは分かった。
体調がおかしいのかと思ったが、生徒たちの何人かが周囲をきょろきょろと不思議そうに見回していた。自分だけが感じのではない。
スネイプが二人の生徒、二つの寮の監督生に何ごとかの指示をし、こちらに向かってきた。
「ルーピン、緊急事態だ」
「何かがいるようだね」
「今日の搬入のために大広間にかけてある遮光の呪文は、侵入するものに反応はみせる」
「高価な資材もあるしね」
「ブラックなら始末するぞルーピン」
「…生徒がいるのにかい」
「だからこそだ。貴様ここに何のためにいる?」
「…わかっているよ…私がやろう。専門だからね」
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「あ〜まだ耳に水が入ってるみたいだ」
フレッドが頭をふっている横で、ジョージも不快そうに片耳を押さえていた。
「作業中断、しばらくこの場で待機だってよ」
リーが二人のそばにやってきた。
「何かがいるから今からいぶりだすみたいだ」
「誰が?」
「先生たちだろ。スネイプがルーピンと話してる」
「スネイプはともかく、ルーピンがシリアスな顔をすると緊急事態って感じだ」
「シリウス・ブラックかな」
「ブラックが狙っているのはハリーだろ。五年の授業になんで」
「さあ?三年が集まってると思ったんじゃねえかな」
「ウイーズリー、お前らの妹が」
「へ? 何言って…」
スリザリン生が指差す方を見ると赤い髪をした後ろ姿があった。
「違う違う。ジニーはあれより短い」
「じゃあ誰だよ」
「お前んとこの奴じゃないの?」
「ウチには赤い髪はいない」
「……ええと」
「…先生たちに言ってくる」
「…そうしてくれ。見張ってる」
緊張が走った。赤い髪の少女が振り返ったのとルーピンが来たのと同時だった。
「! リ…」
「リーマス!」
緑色のきらきらした瞳の少女が、ルーピンに駆け寄って抱き付いた。
>Next
シリウスさんの出現率がなんでこうも低いんでしょうね;
ここに使っている背景画像があんまりにもうまく出来たので
早く使いたくなってこの話をさきに(^^;)
ここで使っている背景画像は一応ぜんぶ作ってます。
素材のサイトさんを覗くんですが、目移りして決められないのです…
この話はしばらく続きます。
2005.8.24
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