プロローグ
――病んだ星――



 西と東に、二つの大陸があった。
 二つの大陸にはたくさんの小国が乱立していた。
 まさに時代は群雄割拠。
 ……だが数年、数十年と時が経つとその様相も変わってくる。
 一つ、また一つと国は滅び、やがて大国が現れるようになる。
 そして同時代に三人の男が現れたことにより、群雄割拠の時代も終わりを告げることになる。



 ……一人。
 西の大陸に興った国、【海の国】。その王、ティーユ。


 ティーユの父は元々遠く離れた大陸から海を越えてやってきた。
 長いたびの果てにこの地に辿り着いた彼ら。
 その間に、多くの仲間が命を落とした。
 ……だが、彼らの苦難はそこで終わらなかった。
 元々この地に住んでいた者たちとの争いが起る。
 最初は攻撃に耐えていた彼らであったが、彼らはやがて自分のために立ち上がった。
 彼らは自分達と同じように現地の人々に迫害されていた一族と手を結び、どんどんと周りを取り込んでいくようになった。
 父の死後父の遺志を継いだティーユは遂に西の大陸を統一した。
 すると彼はもう一つの、東側の大陸に目を向けた。
 ――そこにあったのは二つの国。
 彼の次なる目標が決まった。
 さあ、争いをなくすために全てを終わらせよう。



 ……一人。
 東の大陸の南端、砂漠地域に興った国、【砂の国】。その王、武康。


 砂漠の中にぽつんと佇むオアシス。
 その周辺に暮らすものの、その生活は常に厳しいものであった。
 オアシスに住む人々は望んだ。
 緑の平原。黄金色の実り。豊な水。それらを。
 武康は立ち上がる。彼には力があった。砂漠という過酷な環境で育った故でもあり、彼自身の努力の結果でもある。
 彼は自ら先頭に立ち仲間を率いた。彼のその姿に、彼に従うものが殺到する。
 そして彼が改めて世界を見回したとき、周りには二つの国しかなくなっていた。
 皆を豊にしたい……その思いが武康を動かしていた。



 ……一人。
 東の大陸の北東部、山がちな地域に興った国、【月の国】。その王、月夜。


 本当は月夜は畑を耕し、収穫の喜びを味わっていたいと思っていた。
 しかし時は乱世の世。
 畑は荒れ、川には血が流れ、森は切り開かれていった。
 仲間が、家畜が傷ついた。
 僕は争いのない世界を生きたい――それがないのであれば、自分の手でそれを掴み取ろう。
 欲がなく周りの人のことを何よりも考える彼の姿に人々が集った。
 そして人間だけでなく【魔王】と名乗る魔物も彼の許に現れた。
 その魔物に、彼は微笑みながら答える。
「僕はこの国々を統一したいのではなくて、ささやかな喜びを感じていたいだけなのです」
 だが彼は、その思いに反して争いの中心へ身を投じることになる。



 この三人が覇権を巡り、争う。

 しかし、この三人が一同に顔を合わせることは最後までなかった。








 ――ああ、世界が、薄れる……

 男は崩れ落ちるように地に伏した。

 血が、止まらない……

 そして彼はゆっくりと目を閉じた……

第一話

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20090506

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