vol .1 出会い







僕の名前は魚田海<うおた かい>。最近同じ毎日の繰り返しに飽きてしまった僕は少し冒険がしてみたいという好奇心で家を出た。
街の明かりがまるで宝石のように輝いている。商店街をあるいていると後ろから金髪で髪の長い男性に声を掛けられた。
「すみません、今何時か分かりますか?」
時計を持っていなかった僕は突然話しかけられた話題にどうする事も出来ず、ただ慌てているだけだった。
「・・1時25分。駄目だよ・・・・お嬢チャン、こんな夜中に街を歩いてたら。僕みたいな怪しい男に連れていかれちゃうよ」
明らかに怪しいその男の口調は見た目と違い、とても優しく暖かみが感じられた。 だが、きっとこの男は僕が男だという事を知らないで声を掛けたのだろう。現に「お嬢チャン」と言っているわけだし。 僕が男だと知ったら驚くに違いない。そして僕を突き放す。ずっとそうだった。どんな男性に声を掛けられても
男だと知ったらいつも突き放す。だから僕はそんな風に声を掛けられ楽しげに笑う女が嫌いだ。
「・・・初めまして、僕は虎島猛<とらじま たける>。まぁ虎島とでも呼んでよ。君、名前は?」
「魚田・・・海・・」
「海か・・良い名前だね」
初めてだった。僕の名前をこんな風に誉めてくれる人は。だっていつもダサイとか言って場馬鹿にされていたから。
そう思いながら趣味とか簡単な話をしながら僕は決めた。今日はこの人の家に泊まる。好奇心だけだったが、これも良い経験になるだろう。
遊び半分で僕は虎島に「泊まらせて」というと、意外にも快く受け入れてくれた。
何だかちょっぴり嬉しくて、僕は頬を赤らめながら笑っていた。


朝、目が覚めると既に虎島は起きていて、朝食の支度をしていた。
僕は昨日の夜、あのまま虎島にお世話になった事を今更のように思い出した。
僕が起きたことに気付いた虎島は朝食のサラダとパンを持ち僕が座っていたベットの横に座った。
「おはよう。昨日はよく寝れた?」
「うん」
そう短く答える僕にすこし戸惑いを見せながらもさっさと朝食を済まし虎島は仕事に、僕はこのまま家で身体を休めることにした。 何もする事なく、ベットに横になる。・・・虎島の匂い。香水の香りがしてすごく良い匂いだ。まるで睡魔を誘うような。
僕はそのまま目を閉じ、眠った。

目が覚めると辺りは真っ赤な夕日と共に赤く染まっていた。僕が眠ってる間、どうやら虎島が一度家に帰ったらしく、机には置手紙があった。 『夜までには帰る』 現在の時刻は午後四時。夜までにはまだ時間が残っていた。このまま虎島に全てを任せるわけにもいかないと思った僕は 近くのコンビニを探し、ふと求人情報誌に目をやった。 当然、15歳で雇ってくれるところなんて無い。だが一応、、と思い無料という求人情報誌を手にとり、僕は虎島の家へ向かった。
何時の間にか辺りは暗くなっていて、気がつけば怪しげな男達に囲まれていた。
「君、可愛いねぇ・・・仕事探してるのかなぁ〜?」
「僕達良い仕事知ってるんだけどなぁ、一日20万・・・どう?」
この世界にそんな仕事があるなんて。僕は浮かれた。こんな良い仕事がこんなに早く見つかるなんて、と。
だが、その時気付くべきだったのだ。浮かれていた僕に男の一人に頬を撫で、その手の冷たさに僕は顔を顰める。
「良いねぇ、その顔。最高だよ・・・」
ふぅっと耳に息を吹きかけられ、頬が赤く染まる。寒さのせいだろうか、自分でも分かるくらいだった。 また、もう一人の男が近寄り、今度は僕の胸を掴む。優しいなんて甘ったれたものじゃない。押しつぶすくらいに強く捕まれる。 僕は男だから胸なんて無い。だからこのまま事は終わるだろう、そう思っていたが男達はそんな事も気にせずに、僕の服を脱がせる。
―・・犯される!!?
そう思った瞬間背筋が凍り逃げようにも逃げられなくなってしまった。下半身を丸出しを状態になり頬を赤くする。 もがきながらがらもその体の大きさからいって、とても離れられなかった。 後ろから腕を捕まれた状態でもう一人の男が僕のペニスを扱き上げる。唇を噛締め、その快感から逃れようとする。
「・・・あんっ・・!」
だがそれも無駄な抵抗だった。既に僕のペニスは勃ちあがりその、尿道を太い親指で強く擦り上げたのだ。
「やっぱり・・・予想通り、可愛い声を出すんだね、君って」
僕はそのまま全裸にされ散々男達に楽しまれた後、精液を僕に掛け・・・男達は何も置かずに去っていった。


どれくらい時間が過ぎたのだろうか。
全裸にされ、精液まみれの僕の前に一人の男が現れた。男の息は荒く、近づいてくる。
どろどろの液を顔中、体中に掛けられ中々目を開けることが出来ない中、手で拭いながらそっと目を開ける。
その男は虎島だった。心配そうな顔で僕を見ている。息が荒いのは走っていたからだろうか。
―・・もしかして、僕を探して・・・?
そう心の何処かで期待していた。
「海・・・大丈夫?怖かったでしょ・・。もう安心して良いから」
ハンカチで液を拭き取られ、虎島は自分が着ていたジャケットを僕にかぶせる。
それから僕は虎島に背負われながら家に帰った。
家に着き、虎島はエプロンを着けながら夕食の準備をする。僕は部屋の隅で膝を抱えたまま泣いていた。 酷く屈辱を受けていた。男に・・犯されるなんて。
沈黙が続きコトコトと、シチューを温める音と包丁でキャベツを切っている音だけが部屋に響いた。
そんな沈黙を破ったのは意外にも僕だった。
「ごめんね・・・僕・・・・男・・なの・・」
「いや、その事は良いの。問題はどうして海があの場に居たのかって事」
すぐに返ってきた返事に正直すぐに答えられなかった。 あの屈辱的な光景がもう一度僕の頭の中で繰り返される、そう思っただけで背筋が凍りそうだった。 それに、僕はもう一つ虎島に言わなければいけない事があった。だが、今の僕にはとても言える状態ではなかった。 怖い。虎島が怖い。そう思うと、手が震えだし、涙がポロポロと零れた。
「あっ・・・うああぁ・・ごめん・・・っ、ごめんなさぁいィ・・・ぃあ・・!!」
台所から出てきた虎島はエプロンを外し、僕を優しく抱きしめてくれた。 「ぼ、僕・・ずっと虎島さんの側にッ・・いて良い?この家にずっと、居ても良いッ・・?」
泣きながらうわ言のように言っていた。虎島もまた、うわ言のように「いいよ」と言っていた。
しばらくたって、僕達は冷めたシチューを温めなおした。まだ熱いそれは息を吹きかけ冷ましながら食べる。
・・・虎島が僕を見ている。虎島の頬は何故か赤く染まっており、僕と目が合うと恥ずかしそうに俯く。
「・・・な・・に・・・・?」
こっちまで心臓がどきどきしてくる。そんな言葉に虎島は驚いたように、またさらに頬を赤く染めながら小さく呟いた。
「い、いや・・・海ってよく見ると・・可愛いんだなって思って・・」
正直嬉しかった。男の僕をこんな風に「可愛い」と言ってくれたのは初めてだったから。 嬉しさを隠しきれず、虎島に近づくとその赤く染まった頬に唇を落とした。すると虎島は驚いたと同時にそのまま倒れてしまった。
きっと僕からキスをした事が余程衝撃的な事だったのだろう。顔を真っ赤にしたまま倒れている様子からその事が伝わってくる。
僕は重い虎島を引きずりながらベッドの上へ寝かせた。虎島を踏まないように僕もベッドに座り虎島の顔を見た。
とても美しい顔だ・・・きっと色々な婦女子からもモてている事だろう。そう思うと何故か僕の胸はムズムズと腹立たしくなっていた。


目が覚め、時計を見る。時刻は朝の五時。
「・・・虎島・・さん・・・・」
一つのベッドに二人で並んで寝ている僕と虎島。僕は不意に虎島の腰に手を回し、大きな体を抱きしめる。
胸に頬を寄せ虎島の温もりを肌で感じる。暖かくて・・また眠りを誘う。
「ん・・・海・・?」
目を覚ました虎島が僕の名前を呼ぶ。気付かれないようにこっそりと抱き付き、頬を寄せていた自分が急に恥かしくなり、
自分でも分かるくらいに頬が熱を増す。
「あっ・・いや、その・・・ごめ・・っ!?」
僕の言葉は最後まで続かなかった。何故なら虎島が僕の唇にキスをしたから。
僕からする事はあっても虎島からする事は一度も無かった。最も唇同士でやるのは初めてだったが。
そして、僕の口の中に虎島の舌が入り僕の口内を荒らす。僕は虎島とキスを交わしている―・・。
そう思っただけで胸が張り裂けそうだった。恥かしさと、何処かにある嬉しさ・・それが交わりあっていたから。
「んふ・・・ぅ・・・」
息が上手く出来ずに苦しそうにしていると、虎島は口を離した。僕の唇と虎島の唇の間に唾液の糸が引く。
それを見た僕は何故かすごく恥かしくなり、顔を赤く染めたまま虎島から目を反らした。
気を紛わせるためか天井を眺めながら木目を数える。
「あ・・ごめん」
虎島がそう一言謝ると、虎島も恥ずかしそうに台所へ戻っていった。
僕は別に嫌ではなかった。無理矢理やってしまった、と虎島は後悔をしていた。だから僕は言った。
「ありがとう・・・虎島さんからキスをしてくれて僕、嬉しいよ」
「あ、あ・・・そう・・・だね。でも良かった・・、そう言ってくれて僕も嬉しい」
すぐにそう返事が返ってきて安心した。僕の言葉に引いてしまわないか心配だったから。
二人で笑いながら朝食をした。朝食の時はいつも以上に話が弾み、とても楽しかった。
僕が通っていた学校の事や、同じクラスの男の子の話・・それに先生の話も。だが僕はその時気付かなかったが虎島に 話していた先生は皆男の話ばかりだった。そして気付くべきだったのだ。虎島の瞳の奥が少しだけ・・・ほんの少しだけ 潤んでいたことを。・・・虎島は悲しんでいたのだ。僕が男の話ばかりをして虎島は「所詮自分は出会ったばかりの男だ」と。
「えへへっ、それでねその子が言うの!『お前ってば女風呂にいつも入ってるんじゃねぇの』って。笑っちゃうよね、
 そんなはずないのにねっ。でも言われた時はすごく腹が立っちゃって、冗談なのにね。」
笑いながら話す僕と、どこか寂しそうに笑う虎島。気付かない僕は馬鹿だ。
その時、僕のこの態度が今後虎島との仲に関わる事だなんて思いもしなかった。


その日は何故か雲はどんよりと暗く、雨も降っていた。東京に来てからずっと晴れていたからあまり気が付かなかった。
愛知にいる時は雨が降るかは前日に雲の具合を見ればいつも分かっていたのに。
最近どうも調子が悪い。東京は田舎よりも空気がくすんでいるのだろうか。ふと、隣のベットに腰を掛けていた 虎島の姿を思い浮かべる。虎島はいつも笑っていて太陽みたいだった。だが今日に限って虎島は機嫌悪く朝食さえも 作ってくれなかった。僕が朝食の事を聞くと『御飯くらい自分で作れるでしょう』って。悲しかった。
虎島にこんな風に冷たくされるのは初めてだったから。
太陽のように笑う虎島の顔が今日は曇っているから・・天気も曇り。・・そんな訳ないか、と思いながら虎島の帰りを待っていた。 昼になっても帰って来ない虎島をずっと家で待っている訳にも行かず、家を出るときに持ったわずかな金でレストランに向かい食事を取ることにした。
家の近くにあるレストラン。一人で食事をとるというのはどこか寂しいもので、いつも隣に居た虎島の笑みを思い浮かべる。
レストランに入ると一番奥の席に座り、窓の外を眺める。
「ご注文は?」
気が遠くなりそうだ。店員の言葉が耳に入らなかった。窓の外にはどんよりとした暗い雲が広がり、
僕の気分もあの雲と同様にどんよりと曇っている。虎島が何故あんな態度をとるようになったか僕には分からない。
僕は何か悪いことを言ったのだろうか。そればかりが頭の中で繰り返されたいた。
「お客様・・ご注文は?」
「あっ・・じゃあ、オムライスで・・・・」
やっと耳に入った店員の声にふとメニューの中で目に入ったオムライスを注文する。
店員が去っていく後姿を見ながら目線をずらす。目に入ったのは金髪の髪が長い男の姿。後姿だったが、その男は確かに虎島だった。 心臓の音が急に煩く鳴り出す。何故こんな所に虎島が・・?そして何故、隣に僕が見たことも無い女を連れている・・?
確かに僕達は同居をしていたが別に「恋人同士」だと名乗った覚えも無い。だが、お互いキスを交わした僕達は 明らかに普通に同居をしている友人等ではなく、「恋人同士」だと名乗っても過言ではない。
浮気。僕の頭に過ったのはその言葉だった。注文したオムライスが届く前に僕はレストランを後にした。


まだ灯りの点いていない家の中に入り、レストランで見たあの光景を頭の中で蘇らせる。
―・・・あんなの嘘だ
心の何処かで虎島を信じ、心の何処かで虎島を疑っていた。何も考えたくなかった・・。
夜になり虎島が帰ってくる。店であった出来事を聞こう、そう決心した。
「虎島さん、何処に行ってたの?」
僕が何故そんな事を聞いているか分からないらしく、虎島の顔はきょとんとしている。
「だから・・・あの女の人は誰って聞いてるの!」
しまった・・という顔をして虎島は謝った・・・・と思っていたが実際は全く逆で虎島の顔はその表情から言って 「何だ、その事か」というような顔だった。僕はそんな虎島が許せなかった。
「僕にキスをしてくれたのは嘘だったんだね・・・もういい、もう・・・終わりだよ」
僕はそう言い残し、残りの金を持ち家を出ていった。僕の言葉に虎島は焦ったらしく、 僕の名前を大声で呼びつづけていた。
外は雨が降っていた。急いで家を出た僕は傘を持たずに走っていた。
十番商店街・・・。それは僕と虎島が初めて会った場所だった。ふと、あの時の光景を思い出す。
今とは全く違う良く晴れた夜で、星が輝いていた。雨で濡れる・・だが今の僕にはそんな事は関係がなかった。
雨に濡れることよりも虎島との仲に亀裂が入った事の方が重要だった。・・・突然雨が止む。
いや、雨が止んだのではなく僕の後ろから若い男が傘を差し伸べてくれたのだ。
「大丈夫ですか?こんな雨の日に傘も持たずに出かけるなんて・・・風を引きますよ」
その男はそう言いながら鞄からタオルを取り出し僕の頭に被せた。
「あ・・・ありがとうございます」
渡されたタオルで軽く頭を拭きながらそう言う。
「あの・・っ・・僕、魚田海っていいます・・・!」
普通よりも少しトーンを上げ、大きな声で勢い良く頭を下げる。するとその男は少し困ったように笑いながら男自身の名前を名乗った。 男の名前は鷹野丈<たかのじょう>。年齢は僕よりも8歳も年上で23歳。背はとても高く、鷹野の胸の辺りに僕の頭がきてしまうほどだ。 そして相合傘という状態で傘に入る。何だかとても照れくさくてタオルで赤くなった顔を隠していた。
「ほら、もっと寄らないとまた濡れてしまいますよ」
鷹野がそういうとその大きな手で僕の肩を抱き寄せた。僕は更に赤くなった顔をもうタオルでは隠すことが出来なかった。
何故なら鷹野は肩に乗せていた手をさらに回し、僕の顎を取りながら唇を奪ったから。 心臓が煩く鳴る。出会ったばかりの僕達が唇を交わしている。
ふと虎島の事を思い出す。あの人は今の僕と同じようにこうして誰かとキスを交わしたのだろう。雨に濡れた僕の身体は熱かった。 熱が出ているくらいの熱さで僕はそのままその場に倒れた。


今は何時だろうか。見知らぬ部屋の外でピヨピヨと鳥が囀る声が聞こえる。
美味しそうな紅茶の香りがする。部屋は洋風で整っており、インテリアがとても綺麗に輝いていた。
体を起こし、辺りを見渡す。思い出すのは、僕があの場で倒れた事。
という事は、鷹野は僕をここまで・・鷹野の家まで運んでくれたのだろうか。
台所を見ると鷹野が紅茶とクッキーを用意していた。
「あ、駄目ですよ。ちゃんと寝ててください、貴方は熱があるんですからね」
目が覚めた僕に気付いた鷹野がそう言う。やっぱり僕には熱があったのか、と改めて思う。
皿に乗せたクッキーと紅茶を二つ持ち、僕の居るリビングへやって来る。紅茶を一口、口に含む。
その味は今まで味わったことの無いほどほろ苦く、でも後からくるその甘さといいとても美味しいものだった。
「・・美味しい・・・・美味しいよ、これ・・!」
「ありがとう、この紅茶は僕の特性の紅茶ですからね」
微笑みながら言う鷹野の笑顔に攣られ、僕も笑っていた。そういえば、リビングの扉の向こうには喫茶店のような風景が広がっている。 鷹野はここで働いているマスターなのか。そう思いながらクッキーも手にする。実はこのクッキーも鷹野が自ら焼いたものらしく、 これもまた紅茶と同様とても美味しかった。
「ねぇ、鷹野さんはお店のマスターなの?」
「えぇ、そうですよ。」
「いいな・・・僕もやってみたいな」
「良かったら一緒に・・・」
「・・・え・・?」
「一緒に・・・お店、やっていかない?」
正直嬉しかった。でも、嬉しいという事は鷹野の事が好きだという証拠。この気持ちは友達としてだろうか、それとも・・
でも僕は虎島と同様に、鷹野にも迷惑をかけてしまった。その詫びだと思い、僕は快くOKした。 それを聞いた鷹野はほっと胸を撫で下ろすように笑っていた。「断られたらどうしようかと思った」と、何度も口走っていた。
昼になり、僕達はレストランで食事をする事にした。本当は鷹野が作った御飯が食べたかったが、鷹野の店はレストランではなく、 落ち着いてコーヒーなどを飲む、喫茶だったので、僕はそのまま鷹野に付いて行った。
僕達が来たレストランは虎島の家の近くの・・あのレストランだった。悲しみに浸っている場合ではない、今は鷹野さんの事だけを 考えよう、そう思いながら僕はメニューを手にする。
「すみません、オムライスを一つ」
メニューを取るなり店員に鷹野がそう言った。その流れで僕も同じオムライスにした。
しばらくして、意外にも早くオムライスが二つ、僕達の元へ届いた。あの時食べれなかったオムライス。
あの後虎島はどうしただろうか。僕が同じレストランに居たことに気付いていただろうか。もう、僕の頭の中はその事が ずっと回転していた。今は鷹野の事だけを・・・そう思っていてもどうしても虎島が出てくる。
「どうしたんですか?」
「・・・・え?あ、ごめん。何でも無いよ」
まさか別の男の事を考えてました、なんて言えるはずもなく僕は届いたオムライスをスプーンで掬った。
食べながらも頭にあるのは虎島のあの時の姿。思い出したくない、そう思えば思うほど思い出してしまう。
そんな自分が酷く嫌いだった。


「今日の夕食、僕が作るね」
今日昼食をご馳走してもらったお礼に、そう言いながら僕は途中で鷹野と別れ近くのスーパーへ向かった。
夕食は・・エビとゆで卵のピラフ。必要な材料を手に、レジへ向かった。
きっと鷹野はもう家に着き、お腹を空かして待っていることだろう、そう考えると一刻も早く家に帰らなくては、そう思った。
買い物を済ませ、焦る気持を緒さえながら信号が青になるのを待つ。ふと横断歩道の向こうを見ると帽子を被った少年がサッカーボールを蹴りながら 走っているのを見た。少年はボールに夢中になり、信号が赤だという事にまるで気付いていないようだった。
僕は少年が横断歩道を渡ってはいけないと、声を掛けようと口を開いた。 それと同時にボールが少年の足の隙間を抜け道路の真中まで行き、ボールは止まった。少年はそのボールを拾おうと道路へ出る。
僕は車が来てないのを確認しようと道路の方を見た。すると大型トラックが今にも少年を引きそうな勢いで走ってきていたのだ。
僕は夢中で少年を助けようと走り、少年を突き飛ばした。その瞬間僕はその場に倒れ、頭から大量の血を流していた。―・・・一瞬の出来事だった。













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