星降る夜に (1)
 扉の開く音とともに、漏れ出た明りが暗い石畳を照らし、賑やかな歓声が辺りに広がる。
『Georg&Regina』は今夜も盛況で、店の中は明るい笑い声で一杯だった。
「ふー。食べた食べた。さあ、いくぞ、伍長」
軍服の胃の辺りを押さえながら、アリス少尉は店の外に出た。後ろで店の女将、レジーナの元気な声が響く。
「またいつでもおいでよ、お二人さん!」
「俺、また晩飯食いにきます」
店内で会釈をした後そのまま頭を低く下げながら、戸口を狭そうにくぐり抜けてきたのはオーランド伍長である。すでに歩き出したアリス少尉の背中を守るように、後に続く。
「あのう少尉、ごちそうさまでした」
「気にするな、お前の退院祝いだ」
カルッセルで負傷した伍長は、本日ようやく復帰を果たした。戻ってきたらお祝いをしよう、とかねがね三課で宣言していたアリス少尉だったが……。
「それにしてもどういうことだ、他の者はみな都合が悪いとは。せっかく私のおごりでタダ酒が飲めるというのにオレルド准尉までこないなどと!ハンクス大尉だってこういう機会は絶対逃さない方なのに」
「マーチス准尉もここを気に入っていて、また是非行こうと言っていたんですが……ステッキン曹長も今夜は母方のおじさんの……いとこのお嫁さんの……お婿さんのおじさんが……アレ?アレレ? とにかく、身内の方の用事だそうで」
 せっかくの周囲の気遣いもこの二人には全く通じていないらしい。訝しげに首をかしげるばかりである。
 アリス少尉は腕組みをした。「うーん、やはりこういう幹事はオレルド……いや、奴に任せるとぼったくられそうだし、だいたいどんな店に連れて行かれるかわかったもんではない。うむ、マーチス准尉にやらせるべきであった」
「そうですね。次回は是非頼みましょう!」
少尉が不意に、立ち止まる。
「バカ者!」振り返った顔は険しい。「次回などあるか!もう怪我など……絶対許さんぞ」
「あぅ……す、すみません」
また怒られる、と思った伍長だったが、少尉はその後唇を噛んだだけで、再び前を向いて歩き出した。「腹ごなしに少し歩こう。付き合ってくれるか、伍長」
「は、はい少尉!」 


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