雪原に萌えて  (1)
「オレルド、マーチスは任せたぞ。万が一容態が急変するようなことがあったら、夜中でも遠慮せず私を起こすように」アリス少尉はオレルド准尉が毛布を引きあげるのを見届けると振り向いた。「では伍長。我々も眠るとするか」
「は、はいっ少尉!」
敬礼しているオーランド伍長はまるで軍事教練でも受けているかのような勢いである。
「お前、何を固くなってる?」
アリス少尉は横たわると毛布を広げ……傍らでどぎまぎと正座している大男を見上げる。
済んだ瞳で見つめられ、伍長はますます緊張した。助けを求めるように准尉たちの方を眺めると、二人は毛布の中でぴったりと寄り添っている。暖をとるためなのだから当然なのだが。
 そうだ。今は緊急事態、やましい事なんか何もないぞ。伍長は意を決意しそろそろと脚を入れる。俺も少尉みたいに天上眺めて仰向けになればいいのかな。でもそれだと腕ぐらいしか触れ合わないからちっとも暖まらないような気がするし。オレルド准尉みたいに体を寄り添わせる……べきだよな。ああ少尉、そんなまっすぐなまなざしで俺を見ないでください、すごく恥かしいです……。
 体と体が触れ合おうとした、その瞬間。
「待て」
少尉がふいに飛び起き、咳払いをした。顔が赤いのは、きっと暖炉の火のせいだろう。
「うむ、伍長。お前が先に毛布に入れ」
「は、はあ」
伍長は毛布にもぐるとまな板のコイよろしく天井を見上げる。
「よし。そのまま横を向け」
「は、……はいっ」
 体の向きを変えると少尉の姿が目に入る。小さな、しなやかな体がするりと胸に飛び込んでくる様子を想像して、伍長の心臓は最大限に高鳴った。
「伍長……」
「はい少尉、い、いつでもどうぞ!」
や、やましくなんかないぞ!やましくなんかない!伍長は必死で自分に言い聞かせたが、顔は赤らみ、心臓は飛び出しそうな勢いだ。
「逆だ」
「は?」
「向きが逆だ。あっちを向け」
「……」
「早くせんか。後ろを向くんだ」
「……はい」
すごすごと後ろを向く。いいんです、ほんの一瞬だったけどとてもいい夢みられました。
 少尉が毛布に入ってくるのを背中で感じる。一瞬、柔らかな体が自分の大きな背中に寄り添ってくる姿が頭に浮かび口元が緩んだが、小さな背中がとん、と当たった瞬間はかなく消えた。分厚い防寒コート越しに感じる少尉の気配。小さな背中の下にはウェストの窪みが続き、やがて丸みを帯びた弾力のある……。
「おやすみ、伍長」
「は、はい……おやすみなさい」

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