「笑わない女」(VS 沢口靖子)



宗教(等)の戒律を守るがあまり、犯行の形が非常にいびつになってしまった……というのはミステリの世界では既に定石化しているわけですが、今作はそうした流れを踏まえて丁寧に作られた作品。
ちなみにこの系統で一番驚いたのがエドワード・D・ホックの「長方形の部屋」という短編で、これは未読の方はにぜひ読んでもらいたい……と今思いついたので書いとく。


「男性と一緒に部屋にいるときは、ドアを開けていなくてはいけない」から、血痕が部屋の外まで飛んでしまった。
「死体に触れてはいけない」から、被害者が奪い取ったボタンを取り返すことができなかった。
この辺までは誰でもわかりますが、終盤で判明する「なぜ犯人は殺人の際にウォークマンを聞いていたのか?」の謎解きは全く判らなかった。古畑シリーズで最も衝撃を受けた瞬間でした。
伏線が非常に露骨な形で張られているにもかかわらず、それが伏線ということに気づかない……というのが最高レベルの伏線だと思うのですが、このウォークマンに関してはその領域に入ってます。
もっとも、惜しいのはこの謎がメインの謎とほとんど関係ないところなんだけどね。このレベルの謎を中心に持ってきていたら凄い作品になったと思いますよ。


さて、そのメインの謎なんですけど、今回は論理が飛躍しすぎ。恐らく犯人の動機を完璧に指摘できた人はほとんどいないでしょう。
伏線の張り方が弱すぎるので、あの程度の材料から真相にたどり着けたというのが非常に不自然です。ロジカルではない。
また、尺が余ったのか知りませんが、ラストが気が遠くなるくらい冗長。
どう考えても沢口の「全然嬉しくないわ」で終わりでしょう。その後二人でお湯を飲みだしたり、とにかく最悪でした。毎度毎度45分くらいに収めるのは辛いとは思うけど、 あまった分はスポンサーにくれてやってもよかったじゃない。結末のせいで余韻が台無し。これはチョンボです。


あと圧巻の沢口靖子について書いておかなければいけないでしょう。
古手川祐子はどうみてもその辺の美容院にいるオバチャンみたいで鉄の女を演じ切れなかった……と前に書きましたが、沢口靖子はこの難役を完璧に演じきっています。女優としてのポテンシャルが天と地ほども違いますね。
何より凄いと思ったのは、鉄の女を演じながらも、女の色気を隠し切れない沢口靖子の艶かしさ。
その隠された女の部分……というのが動機に繋がるわけなので、まさにベストキャスティングと言えるでしょう。

古畑シリーズの俳優は素晴らしい人ばかりですが、この演技はベストを争えると思います。
笑わない女が最後に微笑んだ……というどこぞの糞アニメみたいな結末にせず、「全然嬉しくないわ」(名台詞!)で締めた三谷幸喜は大人だ。やっぱりこの人の脚本はいい。


2003年7月29日



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