「ピアノ・レッスン」(VS 木の実ナナ)



私が音楽をやっているからというのもあるかもしれませんが、この回に対しては非常に不満な点がひとつあります。

その点として最後の証拠をばらしてしまいますが、ピアノが入れ替わっていることが重要な証拠になるわけですけど、ピアニストならピアノが入れ替わってることくらい気づくでしょう。私はピアノを習っていたことはないのですが、それでも一台一台のタッチやら音の出方など、ピアノは同じメーカーでも非常に強い個性を持っています。ピアノが入れ替わっていることに気づかなかった……というのが古畑の立証の最大の拠り所なわけで、その部分がおかしいということで私的にはこの作品はチョンボだと思います。


しかし、それ以外の点はいい。特に伏線の張り方のさりげなさがいいですね。
「汚れた王将」では伏線を露骨に張ることで結末の衝撃度が削られていましたが、今作の複線の張り方は本当に上手。楽譜を探しているシーンや古畑が鞄を持つシーンなど、さりげなくて言われるまで気づかなかった。単純に描写が少ないだけで、露骨ながら伏線だと気づかないという「伏線の美学」にまでは至っていないのだけれども、「汚れた王将」よりはこちらのほうが断然いい。

ただ、結末自体がさほど衝撃的というほどではない(そもそもこの作品には謎らしい謎が提出されない)ので、せっかく伏線を張っても衝撃に結びつかなかったのが惜しい。ここまで見て思うに、三谷という脚本家はあまり伏線を張るのが上手じゃないような気がする。まあその辺は総括で。最後の木の実ナナの台詞はよかった。


2003年7月17日



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