水野晴郎 「シベリア超特急」
0点



かの水野晴郎氏が満を辞して発表した力作。
そのあまりの怪作ぶりに、馬鹿映画ファンから絶大な支持を得ている作品です。


この映画に普通の映画の面白さを期待しては駄目です。
鉄道が走る中で殺人事件が起こり……という、西村京太郎風のお話ですが、密室状態のサスペンスだとか、乗客同士の思惑のすれ違いだとかを期待しては駄目。この0点は、そういった方面から見ての0点という意味です。


とにかく全編突っ込みながら見てください。
突っ込みどころとしては、まず水野晴郎の台詞回し全部。『シベ超』はヒッチコックへの壮大なオマージュである、らしく、水野先生も映画の中に登場するわけですが、ヒッチとの一番の違いは水野先生自身が主役を張ってしまったこと。彼が喋るたびに映画のテンションが下がり、クライマックスですらグダグダの印象。しかしそれは斜めから見ればこれ以上面白いものはないわけで、ポテチでもつまみながら突っ込みまくるのがいいと思います。

そして、なんといってもクライマックスの大どんでん返し。
はっきり言って、伏線の妙もクソもないのでこれを予想できる人は皆無でしょう。私は一瞬何が起こったのかわかりませんでした。そして、その先に続くどうしようもない展開に悶絶しましたよ。『かまいたちの夜』の裏シナリオみたい。これを映画でやってしまうという発想は誰にもできると思いますが、本当に作ってしまうのはマイク水野先生にしかできないでしょう。否、やらないでしょう。


日記にも書いたのですが、『模倣犯』のうざったいナルシシズムとは違うベクトルの0点です。本当に観客のことを考え、自分の面白いと思うものを100%体現したのだけれど、あさっての方向に突っ走っていただけというか。砲丸投げで世界記録を作ったのに、扇の中ではなく真後ろに投擲してしまったというか。日本映画が生んだ最大の怪作。誇りある、栄誉ある0点です。

2003年11月26日


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