共に果てた後の気だるい時間。
それぞれがあらぬ方向をぼんやり眺めながら、ベッドに横たわっていた。
吾郎とキーン。
頭に浮かんでいたのは、ついさっきまでの情事の事ではなく
その最中の口論。
「一人だけだ。」
と約束したものの、やはりキーンの心は晴れなかった。


「茂野。」
キーンに呼ばれて吾郎はゆっくりとキーンの方へ瞳を向ける。
「さっき俺は言葉が足りなかったかもしれんな。」
さっき、とは何の・・などと聞くまでもない。
「少なからず故障や持病を抱えながらグラウンドに立つ選手は多い。
プロ生活が長くなるほど一度もケガなく過ごせる選手のほうが少ないだろう。」
「・・・・・・。」
「だが俺達はまだ若い。」
キーンはゆっくりと体勢を変える。
「お前が今年優勝したかったのはわかるが
これから何十年もプロでやっていくつもりの奴が
ケガをおして目先の勝利にこだわるのは愚かなことだ。」
キーンは吾郎の左肩をゆっくりと摩った。
大きな温かな手が心地よい。
その手のぬくもりからもキーンの気持ちがひしひしと伝わってくる。
「お前には才能がある。」
そして再び、キーンは吾郎を組み敷く体勢へ。
「ホーネッツは若いチームだが着実に力をつけてきている。
今年が無理でも俺達がケガなく闘っていけば
これから先、優勝のチャンスも・・・
ワールドシリーズに出るチャンスも必ず訪れると俺は思っている。」
そしてキーンの唇がゆっくりと降りてきて吾郎のそれを塞いだ。
舌と舌が絡まり、摩りあう水音が響いて
唇を離しても尚、舌を絡ませて。
名残惜しげにキーンは舌を収めたが、吾郎の舌がそれを追った。
いつも、どんな時も、互いを求めてやまない。
そして、まだ息の荒い吾郎を至近距離で見下ろしながらキーンは続けた。
「そのためにも、これからホーネッツの投手の中心に・・・」
中心。その言葉と共にキーンは自らの膝で吾郎の中心部をグイ・・と弄る。
「・・っ!!」
「中心になっていくであろうお前にリタイアされたら困るんだ。」
今度は手で握りこんでそれを弄った。
「っ、あ・・・・!!」
「お前の為だけに言ってんじゃない。
俺が、強いホーネッツの一員でいたいからそう思うだけだ。」
そしてゆっくりと摩る。
「キーン・・・っ!お前とも・・あろうモンが・・あっ!随分・・つまんねえ事・・言うのな。」
「何だと?」
「・・・っ、それとも・・ん、・・お前、俺に・・・こういう事、・・っ!・・シたいから・・言ってんじゃねーの?」
「どうだかな。」
「キーン。」
「何だ。」
「お前・・・俺の事、好きか?」
「・・・・。何を今更。」
「じゃ、好きでもなんでもねーのに俺とセックス、スんの?」
キーンはそれを摩る手を止めた。
「・・・・・・。」
思い返してみれば、キーンは吾郎に一度も「好き」だの「愛してる」などの言葉を言った事がなかった。
だがしかし。
そんな事は言わなくても、とうにわかっているだろう。
何を女のような事を今、こんな時に言い出すんだ、と
キーンには吾郎の言いたい事が理解できない。
「こんなにセックスばっかしてきたのに、俺の事まだ分かんねーの?俺は病気なんだ。」
「・・・・・・。」
病気なのはキーンにもよく分かっている。
血行障害だという事は先程確認した所ではないか。
「後先考えて行動できない病気。」
「な・・・。」
「・・つーか、今日できることを今日やらないやつは
明日になったってできやしねえって思うタチなんだよ。」
吾郎はキーンの首に腕を回した。
「だからお前とこうしてデキる時はシたいし、お前との時間も大切にしたい。」
そしてキーンの顔を引き寄せて吾郎は唇付けた。
先程舌を追ったのに無情にも舌を収められてしまった、その続きのつもりだろうか。
そしてキスしながら、今度は吾郎が膝でキーンのそれを刺激した。
しかしキーンは。
「問題のすり替えはやめろ。」
不機嫌そうなこの表情。
「なんだよ、先にすり替えたのはそっちだろ?」
さっきまで俺のソコ、触ってたのは誰だよ・・!と全く乗って来ないキーンに吾郎はふて腐れた。
「ま、なんにしても・・だ。
今日できることを今日しないやつは明日になったって、何にもできやしねーよ。」
投げやり気味に言った吾郎だが、次の瞬間、真顔になって。
「だから。俺は俺にできることをするだけだ。」
先程までとは打って変わった、その瞳の真剣さにキーンは思わず息を呑んだ。
「今は来年の事なんかどうでもいいから、打ってくれよ。キーン。」
吾郎のこの黒い瞳に引き込まれそうだ。
無限の可能性を感じさせる、どこまでも深い吾郎の瞳。

  この瞳だ。この瞳に俺はきっと惹かれたんだ。

しかし─────。
このままでは吾郎の将来が・・・・。

  今日できることを今日しないやつは
  明日になっても何もできはしない。
  それは俺も同意見だ。
  しかし、これはそういう話ではない。

腕の中の吾郎の瞳はどこまでも深く澄んでいた。
違う、こいつの口車に乗せられている、
気付けば全てが茂野のペースで回っている、とキーンにはわかっていたが
わかっていても吾郎をとめることは出来ないと・・確信に近いものをキーンは感じていた。

  今、できることをしっかりやって、更なる未来へと・・・・。
  キーン、お前と行きたいんだ。

吾郎の瞳に宿るもの、それは「希望」。ただ、それだけだった。
未来には夢と希望しかないような、そう信じている、それしか見えていないようなその瞳が
キーンに底知れぬ不安を感じさせた。
しかし。
キーンは心の中で首を振る。

  心配するような事ではない。  
  俺が・・・サポートしてやればすむ事だ。
  これからもずっと・・・。


そして改めてキーンは溜息をつく。
「参ったな・・・。」
未来を見据えていた瞳が今度はキーンに向けられた。
「俺をここまで追い詰めたヤツはお前がはじめてだ。」
「・・それ、喜んでいいのか?」
「どうだろうな。」
  
  俺はお前を手放したくない。
  お前を廃人にしたくない。
  輝いたままのお前を、俺のものにしていたい。
  その為に俺が出来る事は・・・・・。

キーンはプランを練り始めた。

大丈夫。
あとはプランどおりに事を運ぶだけ。


───俺とお前。共に歩む為に。












end


「本誌そのまんま+α」第三弾です。あまりにもキンゴロ同人誌な本誌につい・・v。
吾郎のどこまでの前向きすぎるその姿勢には、どこか不吉なものさえ感じてしまいます。
でも大丈夫だと信じて。

訳の分からない話を、ここまで読んで下さりありがとうございました。
(2009.4.23)

 



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