この話を読まれる前にご注意!
この話は少し前サンデーを読んで、一発ギャグのつもりで書いた、冒頭部分のみの予定でした。
ですがその続き妄想をついついしてしまって・・・それに沿って一気に書いてしまったものです。
そんな訳で、その後の本誌の展開とは全く違ったものになってしまいました。
トシゴロ至上主義の私の希望が大いに含まれます。
冒頭はゴロカオっぽいのですが、この話はトシゴロです。
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ようやくのオフ。
久しぶりの日本。
思う存分、羽を伸ばしたい所だが
しかし吾郎は血行障害を患い、手術した体だ。
球団側は血行障害にかかっていながらそれを報告もせず、吾郎が黙っていた事を重く受け止めていた。
そして過去のデータから、怪我等をしても無理に無理を重ねる性格である事も把握していた。
結局、球団側が取った措置は日本に監視役を送る事。
「でさ、ソフィア。」
吾郎は自室でソフィアに問いかけた。
「どーシたら体に負担が掛かんねえの?」
「・・・。どうシたって負担はかかるわよ。だから我慢なさい。」
何を我慢するか?
それは勿論・・・。
「我慢??俺、このシーズン中ずっと一人でオナって我慢してたんスけど!?」
「ちょ、本田・・・。」
吾郎とその監視役ソフィアの会話に薫が割って入った。
「なんだよ。」
「あたしはいいからさ。別にシなくたって。今までと変わらないじゃないか。それでいいよ。
っていうか・・・人前でそんな事できる訳ないだろ?」
「俺が良くねーっつの!!
ロイなんて愛しの彼女とデートする度に自慢たらたら!
でもってキーンは「ふん、チェリーボーイが・・・。」って、得意の嫌味笑い。
ジュニアなんか半同棲だしよ!!
ワッツなんてあっちでこっちでヤりたい放題!!
一緒に入院してた病院じゃ、ナースを口説きまくってたし。
如何にソレが気持ちイイか、一から十までしーっかり説明してくれたし!!
そんな中、俺は浮気もせずに一人寂しくオナるしかなかったんだぞ!?
彼氏がそんな屈辱受けてんのに何?お前はヘーキな訳!?」
「・・・・・ず、随分寂しい思いしてたんだな・・・・。ア、ハハハ・・・・。」
薫は苦笑するしかなかった。
「だから!!このオフに「脱!童貞!!」宣言してきたんだよ。
なのにこれで寿也にでも会って「え?吾郎くん、経験なかったんだ。意外だな〜!」
って、爽やかに言われてみろよ・・・・俺・・・俺・・・・・!!」
まさに涙なくしては語れない。
「わ、分かったわよ。っつーか、メジャーリーガーがそんな事で泣くな!!
えっと・・体に負担のない体位を教えればいいのね?」
ソフィアは、たじたじになりつつ考える。
「えっと・・・・。じゃあ!茂野くん。あんたはそこで寝てなさい。」
「は!?」
「いいから!横になる!!早く!!」
と言って吾郎が腰掛けていたベッドを指差した。
「で、アナタ!」
今度は薫をビシッ!指差すソフィア。
「は、はい!!」
「アナタが主導で愛撫する!!」
「あ、愛撫!?」
「そう!いいわね!?」
「で、肝心の挿入はどうしたらいいんですか〜?センセイ!」
と、既にベッドで寝そべりながら聞く吾郎。
「決まってるでしょ?騎乗位しかないじゃないの。」
「き・・・・騎乗・・・位・・・・・・?」
薫は顔面蒼白だ。
「へえ・・初めてのHが至れり尽くせりってか?いいな、それ!!」
吾郎は乗り気十分!
「ちょ、ちょっと待て!!はじめてなのにそんな事できる訳ないだろ?
・・ってか・・何をどうシたらいいのかもサッパリなのに!!」
薫はパニックだ。
「スルの!!でなければ許可できません!!いい?ずーっと監視してるわよ?
はじめてのHを監視されたくなかったら言われたとおりにスる!!いいわね!?」
「そ、そんな・・・・。初めてのHは海の見える白いホテルで・・・・!!
潮の香りがする風を頬に受けつつ、綺麗な海を眺めていたら
本田はあたしを優しく見つめてて
でもってあたしは本田から目が離せなくなっちゃって!!
見詰め合う事、1分!!
で、吸い寄せられるように唇付けを交わし
それから!
本田は優しくあたしをお姫様抱っこでベッドに運んでくれるの!
窓辺ではレースのカーテンが風に揺れていて
そして!!めくるめくような時間が訪れるの〜〜〜〜っ!!」
「お、おい・・お前、頭でもぶったのか?変だぞ?」
「ぶってない!!乙女の夢を何だと思ってんだ!
監視?寝てろ?騎乗位??ふざけんな〜〜〜〜!!!」
薫は枕だの本だの手当たり次第、吾郎とソフィアに投げつけると
バタン!!と怒りに任せ、盛大に音を立ててドアを閉めると
そのまま帰ってしまった。
「ど、どーしてくれるんだよ!俺の初H!!」
「さ、さあ??治ったら嫌ってくらいにデキるわよ?好きなだけシたら?ハ、ハハハ・・・。」
虚ろに笑うソフィアだが
「あ、一つだけあるわよ?体に負担のない初Hの方法!!」
「・・・・。なんだよ。」
「男に抱かれるの!!」
「は?」
「その・・・寿也って子に頼んでみたら?」
ソフィアはキラキラの瞳で吾郎に迫る。
「頼めるか〜〜〜〜!!この変態、何考えてんだよ〜〜〜〜っ!!」
夢の初Hが絶望的になってしまった吾郎。
「その・・・寿也って子に頼んでみたら?」
あまりに初Hを夢見すぎていたからだろうか
そのソフィアのセリフが頭にこびりついて離れない。
今日もボーっと虚ろにその事を考えていた。
しかし・・・。
考えるまでもなく、そんな事頼むって言ったら寿也くらいしかいねえよな。
小森なんてそんな事、言おうもんなら
「え・・ええ〜〜〜〜〜!?ほ、本田君、なに言ってるのさ〜〜!!」
と真っ赤な顔でパニック起こしそうだ。
藤井や田代なんて間違いなく
「ええ??お前、経験なかったのか!!っぷ・・・!!」
と笑うだろう。
特に藤井なんて
「中村はいいぞ〜〜!?胸が特にな!!女は・・・胸だ〜〜〜〜〜!!」
とデレデレしながら絶叫するに決まっている。
・・・・・・。
ソレはともかくだ。
せっかく帰って来たんだから寿也に会っても不思議じゃねーよな。
吾郎は軽い気持ちで携帯を手にした。
「よう!」
「吾郎くん!帰って来たんだね!!」
「ああ。」
「大丈夫?手術したって聞いたけど。」
「大丈夫だって。でさ、色々積もる話もあるし・・・俺とデートしてくんねー?」
「・・・なんだよ、その言い回しは・・・。
いいよ。僕も吾郎くんに色んな事聞きたいし話したい事もいっぱいあるから。」
「俺はずっと暇だからよ、お前の都合に合わせるわ。いつがいい?」
「うーん・・・じゃ、あさっては?」
「OK!あ、そうそう、車で迎えに来てくんね?寿くんとドライブ!な?いいだろ?」
「・・いいけど・・・どうしたの?何かあった?」
「あったっつーかなんつーか。ま、会った時に話すわ。」
「じゃ、明後日10時に着くように迎えに行くよ。」
「サンキュー!楽しみにしてるぜ?」
そしてその「明後日」はすぐにやって来た。
「まあ!これが噂の寿也くんね?きゃ〜〜!!タイプ〜〜〜!!」
ソフィアはキャーキャー大騒ぎだ。
「あ、あの・・・・。」
寿也はたじたじ。
「あ、コイツは・・・俺が無理しないか、球団がよこした監視役。」
「監視?まあ・・・吾郎くんには前科が沢山あるからしょうがないか・・。」
苦笑の寿也。
「そーなの!こいつときたら散歩程度しか運動はするな!って言ってるのにジョギングはするは、一昨日なんて初・・・・・。」
「うわ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
初H計画がダメになった事を言われそうになり、吾郎は大声を出して誤魔化した。
「・・・という訳で。大人しくドライブしてきてね。間違ってもトレーニングなんてしない事!でないと・・・。」
「ついて来る、って言うんだろ?分かってるから!!じゃ、行って来るぞ!?」
「い、行って来ます。」
寿也はペコリと頭を下げた。
ソフィアは手を振って見送った。
ようやく監視は離れた。
さあ、ドライブへ出発だ!!
「ドライブと言われても・・・せいぜい球場への往復くらいしかしたことないんだけど・・・どこへ行きたい?」
「どこでもいいよ。あ、海!行ってみようぜ!」
「海?えっと・・・。」
寿也は地図をぺらぺらめくり始めた。
「・・・じゃ、海岸沿いをずっと走る道がありそうだから・・・行ってみようか。ご期待に添えなかったらごめん。」
「いいって。メインはお前に会うことなんだから。」
そう言われて寿也は嬉しそうに笑った。
そして。
「うお〜〜〜〜!!海だ!海!!」
吾郎は車を降りるなり大騒ぎだ。
「綺麗だね。」
「やっぱり日本の海はいいな〜!!」
「アメリカの海は違うの?」
「そうだな、海の色がちがう。あっちは鮮やかな青なんだ!」
「へえ・・・。」
「でも俺はやっぱり日本の海が好きだな!」
「・・・で。何があったの?」
「え?」
「だって・・おかしいだろ?
今までだって僕と会うのにわざわざドライブしようだの、海に行こうだの、言った事なかったし。
まあ、大抵はトレーニングも兼ねて会ってたから、それを封じられて仕方なく、ってのもあるかもしれないけど。
でも・・・なにかあったんだろ?」
「・・・・・。」
「話してみてよ。僕で力になれるなら何だってするからさ。」
そう寿也に言われて。
吾郎は言いにくそうに口ごもるが。
「・・・・・あのさ・・・・。」
「うん。」
「・・・だ、抱いてくんねー?」
「・・・・・。え?」
思いもしなかった言葉を聞いたような気がして、寿也は聞き返した。
「だから!抱いてくれ!って言ってんだよ!!」
「・・・・・・。」
しかし聞き間違いではなかったようだ。
抱く?抱いてくれ?抱くって・・・・・??
寿也は頭が真っ白になりながらも、必死にその言葉の意味を考え咀嚼して
結局、吾郎に近づき両手を広げ、そして抱きしめた。
少々周りの視線が気になったものの、幸いあまり人はいなかった。
「・・・・これでいいの?」
「ち、ちがう!!っつーか、人前で恥ずかしい事すんな!!」
「だって吾郎くんが言ったんだよ?抱いてくれって。」
「だから!!抱くってーのはそういう事じゃなくって!!」
「??」
「・・・・その・・・・俺と・・・シてくれって言ってんだよ・・・・。」
吾郎は真っ赤な顔を見られたくなくて、顔を背けて小声でようやく・・言った。
「え?よく聞こえな・・・・。」
「だから!!セックスしようっつってんだよ!!」
なかなか真意が通じなくて痺れを切らした吾郎、半ばヤケクソで今度は大声で。
またしても暫くキョトン・・・としてしまった寿也。
「・・・・・・。吾郎くん・・・優勝決定戦の時、倒れたって聞いたけど・・・・その時、頭でもぶった?」
「ぶってねー!!あーもー!!いいよ!!お前になら頼めると思ったんだけど気が変わった!!帰ろうぜ!!」
「じゃ、本気なんだ。」
「もう、いいっつってんだろ!?」
「いいよ。」
今度は吾郎が耳を疑った。
「・・・・え?」
「だから・・・シよう?」
「・・・俺、男だぞ?」
「わかってるよ。」
「お前、男とそういう事スんの、平気なの?まさか慣れてるとか・・・・。」
「慣れてないって。酷いな〜。」
「じゃ・・・・。」
「初めてだよ、僕は。吾郎くんは違うの?」
「俺も・・・はじめて・・だ・・・・。お前・・・女の子とは?」
「そんな暇、なかったよ。自分を高める事に必死だったし。」
「じゃ、正真正銘のはじめて?」
「・・・・遅いって言われるけどね。別に興味もなかったし、いいんだ。」
「なのにはじめてが俺なんかでいいのか?」
寿也は溜息をついた。
「変に誤解されるのは嫌だし、これ以上無意味な会話を続けてもしょうがないからハッキリ言うよ。
僕は君がいいんだ。僕のはじめては君がいい。君以外は考えられない。」
「なに・・・言って・・・・・。」
「好きだったんだ。ずっと。
男が男を好きだなんて気持ち悪いって言われるだろうから、一生隠し通すつもりでいたけど。
だから僕にとって君の申し出はこれ以上ないくらいに嬉しい。」
「え・・・・。」
「吾郎くんはなんで僕とシたいって思ったの?清水さんと付き合ってるんでしょ?」
言えない、と思った。
その清水と出来なかったから
体に負担がかからないようにシたかったら男に抱かれろと言われたから寿也を思いついただなんて。
「ま、いいか。真意はともかくお互いの利害が一致したようだから、後は実行あるのみだね。」
寿也はニッコリ笑うと辺りを見回した。
「あそこにしようか。」
寿也が指差した先には。
白い高層ビル。
どうやらホテルらしい。
「ちょっと待ってて。」
ホテルのロビー。
寿也はフロントへ向かった。
寿也は既に有名人だ。だからサングラスと帽子で顔を隠して。
「はい、そうです。あ、ダブルをお願いします。」
ダブルベッド・・・・。
いよいよだ、と吾郎は思った。
逃げられない、いや、話を持ちかけたのは吾郎だ。
その吾郎が逃げる訳には行かない。
しかし・・・。
実際寿也が「いいよ」と言うとは思っていなかったように思う。
「抱いてくれ」とは言うつもりでいたが、爆笑されて
実は・・・と先日の一件を笑い話として自虐ネタとして話して
共に笑うつもりだった・・・・と吾郎は思う。
まさか、まさかこんな事になるなんて。
「部屋、取れたよ。」
寿也はカードキーを吾郎に見せてにこやかに言った。
エレベーターに乗り込み、上昇する。
かなり上昇した、と思ったらエレベーターのドアが開き
ひと気のない廊下を歩いて、そしてあるドアの前。
寿也がカードキーを差し込むとロック解除。
キイ・・・・パタン・・・・。
そこは密室。
胸が高鳴る。喉も渇いてきた・・・。
心臓の音が・・・張り裂けそうに高鳴って・・・寿也に聞こえてしまいそうで。
「うわ・・おいでよ、吾郎くん。海が綺麗だ・・・!」
何階だったろう、吾郎はエレベーターではずっと俯いていたから良く分からない。
しかしかなりの高層階のようだ。
水平線が僅かに丸く見える。
「すっげー・・・・。」
この眺めには吾郎も現在の状況を忘れて感嘆の声を漏らす。
「窓、開くかな・・・。」
寿也は窓を開けようと試みるが、数cmスライドしただけだった。
まあ、この高さでは無理もない。
その僅かの隙間から潮の香りのする風が入ってきて気持ち良かった。
やはり海はいい。
見ていて心が和む。
そんな事を思いながら、この絶景を眺めていたら視線を感じた。
見ると・・寿也が優しい、穏やかな・・愛情溢れる瞳で吾郎を見つめていた。
吾郎は思わず息を呑む。
寿也の瞳から目が逸らせない。
「あ・・・・。」
顔が・・・紅く高揚していくのがわかる。
どうしよう・・・どうしたらいい・・・・寿也にこんな顔・・・・。
そう思っていたら寿也の顔が近づいてきた。
その綺麗な瞳を薄く閉じながら。
吾郎も無意識のうちに瞳を閉じて─────。
柔らかな唇付け。
ただ、唇が触れ合っているだけなのに・・熱い・・・・・・。
何もかも忘れ去り、そこには吾郎と寿也しかいない。
触れ合う唇が感覚の全てで・・・。
意識を・・・保っていられない・・・・・・。
すると寿也は舌を差し込んできた。
柔らかく温かな舌が吾郎の舌を追い絡め、摩る。
「・・・・っ、・・・・!」
ジン・・と熱が集まる。
痺れる様な、むず痒いような・・・この甘美な・・・・・・。
ダ、ダメ・・・・だ・・・・・立っていられな・・・・・。
吾郎は思わず寿也にしがみついた。
崩れ落ちそうな吾郎をガッシリと支える寿也。
「吾郎くん・・・可愛い・・・・。」
可愛い?何言って・・・
そう思いながらも全ての感覚が麻痺してしまって言葉にできない。
寿也に支えられながら何とか立っている状態
・・・・だったのだが、寿也がその吾郎を抱き上げた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「え・・・・・・。」
宙に浮いたまま手足が揺れる。
向かう先には大きなダブルベッドが。
窓にはレースのカーテンが風に揺れていた。
このシチュエーション、どこかで・・・・・。
あ・・・・・・これって・・・・・・!!
「初めてのHは海の見える白いホテルで・・・・!!
潮の香りがする風を頬に受けつつ、綺麗な海を眺めていたら
本田はあたしを優しく見つめてて
でもってあたしは本田から目が離せなくなっちゃって!!
見詰め合う事、1分!!
で、吸い寄せられるように唇付けを交わし
それから!
本田は優しくあたしをお姫様抱っこでベッドに運んでくれるの!
窓辺ではレースのカーテンが風に揺れていて」
ベッドに到着すると、寿也はゆっくり丁寧に吾郎をベッドに下ろし横たえた。
そして寿也もベッドに乗り上げる。
「そして!!めくるめくような時間が訪れるの〜〜〜〜っ!!」
め、めくるめくような時間・・・・・・!?
寿也と・・・俺が・・・・・・?
吾郎の顔の両側に手をついて満ち足りた表情で見下ろす寿也。
再び唇が降りてくる。
吾郎も瞳を閉じる。
賽は、投げられた───────。
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