体中を触れられて舐めまわされて、痕も付けられて
何がなんだか・・・・わからなくて・・・・・・・。
どこを触れられても感じてしまう。
そんな状態まで昂められてしまって・・・もう、吾郎はギリギリの状態だった。
しかし。
たった一箇所だけ触れられていない場所があった。

「と、寿・・・・っ!」
「ごめん、辛そうだね。いっぺん抜いとく?」
「い、いい・・・っ!!俺、お前で・・・イき、たい・・っ!!」
「・・・・・・。」
パンパンに張り詰めてしまったそれ。
寿也は気遣うようにそれをそっと指でなぞると
「う、うわ・・・ああ・・・っ!!」
その、あまりの感じように寿也のほうが驚いてしまって。
「さ、触るな!イ、イっちまう!は、はじめて・・だから、ちゃんと・・・お、お前で・・・イきたい!!」
「・・・吾郎くん・・・。」
寿也は感動してしまった。
吾郎は寿也が好きでこの状態になっている訳ではない筈なのに。
勿論友人としては好きだろうが
寿也が吾郎を好きな気持ちと
吾郎が寿也を好きな気持ちは根本的に異なっていた筈。
恐らく・・・セックスへの好奇心故だろう・・・と寿也も察しはついていた。
しかし少なくとも。今は・・・寿也だけを見ていてくれている。
基本的に愛し合う者同士が行う行為。
その初めての相手として寿也を選んでくれて
そして、その行為中の初めての射精は寿也で、と言ってくれて。
吾郎の真意がどこにあろうが・・・寿也はもう、十分だ、と思った。

  次は・・・もう二度と・・ない、だろう。
  でも。
  この、ただ一度の行為を心に刻みつけよう。
  吾郎の体を隅々まで。
  どこもかしこも・・・傍にいなくても、他の誰かといても・・・
  吾郎の感じるところを、その仕草も、あえぎ声も
  何もかも──────。

「じゃあ、いくよ?」
吾郎からの返事はなかった。
触れただけでイってしまう、と言っていたのだから、返事をする余裕もないのだろう。
返答がないのを「Yes」と受け取り、寿也は自らのそれを吾郎のそこに宛がった。

  幾度・・・・。
  この瞬間を夢に見た事だろう。
  そんな日は永遠に来ないと思っていた。
  でも、「その日」は来た。
  信じていれば、願い続ければ望みは叶う。

寿也は自らのそれを、本能の赴くままに吾郎のそこに埋め込んでいった。
「あ・・・・あ、あ・・・・あ・・・っ!!」
「吾郎くん・・・吾郎、くん・・・・ああ、吾郎・・・・くん・・・・・・・!!」
腰を進めながら、あまりの狭さに息を詰ながら
そして、そのあまりの良さに感極まりながら・・・・・・。
寿也は知らぬうちに涙を流していた。
「あ、あ、も・・・寿・・・・っ!!」
一方吾郎は、初めての中からの刺激
寿也が通り過ぎていく、それだけなのに
その衝撃があまりに凄すぎて、経験した事のない、あまりの刺激に放ってしまった。
しかし放ってもなお、甘美過ぎる痺れは続いていた。
自慰ならば、出せば終わるのに、と吾郎は虚ろながらに思った。
なのに実際のセックスは出しても終わらない。
寿也がそこにいる限り、吾郎のそこにいる限り・・・。
この気持ちよさは止まらない!

「入っ・・・た・・・・・・・・。」
締め付けが凄すぎて、寿也のほうもたまらなかった。
ようやく根元まで納めて
両の瞳から零れ落ちる涙。
その涙が寿也の頬を伝い、顎を伝い・・・ポタ・・・ポタ・・・と吾郎の腹を濡らした。
その吾郎は痛みだろうか、それとも放っても尚イイのだろうか。
息も絶え絶えの状態で身悶えている。
「吾郎くん、大丈夫!?」
寿也は慌てて問うが
吾郎もそんな状態の中、寿也の様子に気付いた。
「だ、だいじょう・・・ぶ!それ、より・・・お前、なんで・・泣いてんだ?」
「え?」
言われて寿也ははじめて涙に気付いた。
「あ・・・・。」
そして慌てて手の甲で涙を拭うと
「ごめん、みっともないとこ見せちゃったね。」
「・・・・・・。」
吾郎の中で罪悪感が首をもたげた。
寿也は素直に喜び涙まで。

  俺は、俺ときたら・・・。

そうは言っても。
現在のこの状態が良くてたまらないのだ。
先程までの愛撫といい、この突き入れられた状態といい。
自分でするのとは雲泥の差。
この快楽は全て寿也が与えてくれたもの。
今は吾郎にとって、寿也が全てのように思えて。
「動くよ?」
「・・・ああ。」
寿也が引き抜く。
「あ、ん・・・・っ!!」
そして突き入れる。
「ああ・・・・っ!!」
ただ、それだけの事なのにこんなにも気持ちいいなんて。
肝心のそれには碌に触れてもいない。
互いの腹で時々摩られてしまうだけ。
なのに・・・今まで一人でシたどんな時よりも、たまらなくヨくて。
寿也も最初はゆっくり出し入れしていたのだが
だんだん勢いがついてきて。
抽挿するだけでたまらなくて、それが何度も何度も・・・・。
吾郎はその間、また放ってしまった。
なのにまだそれは続く。
二度も放って敏感すぎるそこを摩られて、何もかもがたまらなくて。
「とし・・・・とし・・・・とし・・・・っ!!」
「吾郎・・・くん・・・・!」
切羽詰った寿也の表情。
こんな顔、はじめて見た。
この顔は俺だけのものだ。
そんな事を思ってしまって・・・
それが薫への裏切りに当たるなどとはその時は考える事も出来ずに
「と、し・・・・!!も、すっげー・・・・イイ!!たまん・・・ねー!!」
吾郎は寿也にしがみついた。
寿也も吾郎を抱きしめると自然、吾郎の耳元で寿也も喘ぐ事になる。
「っ、・・・・・っ!!」
その息づかい。
それが直接吾郎の耳に吹き込まれて。
耳からも刺激されて。
「とし・・・・!!」
そしてまたきつく抱きついてしまう。
「吾郎くん・・・まだ、こうして・・・いたい、けど・・・っ!!も、僕も・・・限界みたい・・・!」
そう言われて
吾郎は悲しみに襲われた。

  もう、終わり。終わる。
  セックスが。
  寿也との時間が。
  こんな、いままで想像も出来なかった素晴らしい甘美な時が・・・・

  ──────終わる。


「吾郎くん・・・・・。」
また、耳に直接吹き込まれる。
吾郎を呼ぶ声、切羽詰った・・・意味を成さない喘ぎ声。そして・・・。
「あり・・・がとう・・・・・・。」
「・・・!」

  ありがとう?なんで?どうして!!
  そんな事、言うな・・・・・。
  だって俺は・・・・俺も・・・・・・。

寿也はその後、数回激しく打ち込むと果てた。
吾郎もその打ち込みに耐え切れず放った。
吾郎の腹には何度も出した白い液体が流れていたが
そんな事、気にする余裕も気力もなく
二人、いつまでもきつく抱き合っていた。



ああ、人肌が心地いい──────。





















それからは。
それぞれシャワーを浴びて衣服を整えて。
何事もなかったようにホテルを後にした。


その後も何度か吾郎と寿也で会うことがあったが
一切その件については触れることなく、いつも通り幼馴染として接した。



しかし。
どうしても思い出さずにはいられなかった。
何故忘れられよう?
はじめて肌を重ねた。
あの心地よさ、あたたかさ。
はじめて触れられて、はじめて自分でない他の人・・寿也によって達した。

普段の寿也の顔。
そしてあの時の寿也の顔。
思い出すだけで胸が苦しく渇望にも似た気持ちになる。
そしてそこに熱が集まってしまう。

どうしたら・・・いい・・・・・・・・。




日は流れ、年も明け
そろそろアメリカへ戻らなければならない、という頃
ようやくソフィアからトレーニングの許可が下りた。
そしてこっそりと
「アレもシていいから。経つ前に・・彼女を安心させてあげなさい。」
そう耳打ちしてウインクしたソフィア。
帰国早々のあの時なら大喜びで、すぐさま薫の家に突進しそうだったのだが・・・。

吾郎は悩んだ。
迷った。

あれから随分日は流れたが、未だにあの時の事を思い出してしまう。
こんな気持ちのまま、薫を抱いても良いのか?

去年、薫がアメリカへ押しかけてきた時
あの時は正真正銘、大事な大事な時期だった事もあり
絶好の初Hのチャンスだったにもかかわらず、吾郎は薫を拒絶した。
本当に吾郎にとっては「それどころではなかった」からだ。
なのに、だ。
今年は結果を出した。
十分誇れる結果を。
その上でのオフ。骨休め。
そこへ「抱いてくれオーラ、ムンムン」の彼女。
・・・・・・。
結局は好奇心に勝てなかった。

一体どうすればよかったと?
寿也とのセックスがヨかったから、薫とは別れればよかったのか?
それとも、寿也に抱かれた事がそもそもの間違いだったのか?
・・・・いや、誰がどう聞いたって、寿也に抱かれたのが大間違いだったと言うだろう。
あの時、あんな事さえ言わなければ・・・・・。
後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。
だが、「抱いてくれ」と言っても、寿也が応じるなどと誰が思う?
しかしそう言ったのは吾郎。
では何故言った?
ソフィアにそそのかされたから?
確かにそうなのだが・・・・。

  違う・・・・・。
  悪いのは誰でもない。
  俺だ。俺が一番悪い。
  俺こそがこの状態の元凶。

薫と初Hが無理なら、寿也に言ってみよう、と・・それは冗談のつもりだった。
冗談と好奇心が入り混じった悪ふざけ。
しかし既に冗談では済まされない。
ちゃんと体が治るまで待っていれば。
あっちがダメならこっち!と・・たとえ冗談ででも思わなければ。


生まれて初めて女の裸を見て、触れて
感動しなかった訳ではない。
いや、感動した。それは事実だ。
女の体が、そして胸があんなに温かく柔らかいものだったとは。
そしてナカの心地よさも・・・感動的だった。

が、違うのだ。
いつもオカズにしてたAVの俳優のように、吾郎は狼に変身できなかった。
薫はそれなりにスタイルはいい。胸も標準より大きい。
顔だって可愛い方だと思う。
なのに。むしゃぶりつこうとは思えなかった。

吾郎は悶える薫に自分の姿を見てしまった。
吾郎は寿也の下で、こんなふうに悶え、こんな顔でよがっていたのかと。
そう思うと自然脳裏に浮かぶのはあの時の寿也。
薫を抱きながら何度も・・・・拳をベッドに叩きつけたい衝動に駆られた。

どこか・・・義務のようなものを感じながらの・・・・行為だった。

あの、無心になれる、何がなんだか分からなくなるような感覚はなかった。
いつまでもむさぼり続けていたいような
そして終わって欲しくない、終わりたくない、という気持ちにもなれなかった。




どこか釈然としない気持ちのまま、逃げるようにアメリカへ──────。
















アメリカ。
そこは吾郎にとって野球だけに命を懸ける場所。
思い切り野球をして、自分を磨き
仲間と共に語り騒ぎ遊び、とても充実した日々。


私生活では・・・・。
男である以上、定期的に抜かねばならないものもある。
AVは・・見る気になれない。
昂ぶるそこ。
そっと触れるとビクビクッ・・と体中を電流が駆け巡るような感覚がして。
ゆっくり、あまり刺激にならないようにゆっくり・・・そっとそれを握りこむ。
ようやく完全に握る事ができてホッ・・と溜息をついて・・。
そしてゆっくりと・・・摩る。
摩りながら、頭の中でそういうシーンを思い描いて・・・自らを興奮させる。
自然、思い描いてしまうのは寿也とのあの時間だった。
体中に指を這わせ、唇を這わせ
それだけでそこに触れられてもいないのに、はちきれそうになってしまって。
そんな時に寿也にそこを触れられた時のあの感覚。
突き入れられた時のあの感じ。
思い出すだけで・・・・・・もう・・・・・・・・・・!!

吾郎は手の平の白い液体を虚ろに眺めた。
「また寿也で抜いちまった・・・。」
あれだけ昂ぶっていたのに、一度出してしまうと途端に虚しさに襲われる。
寿也とシた時は違った。
放っても尚、快楽は続く。
ああ、あんなセックスをもう一度、したい・・・・・!!

ついそんな事を考えてしまう日々。
そして吾郎も気付いていた。
考えないようにしていたが・・・さすがに悩み始めた。
吾郎は一度も薫を思い出して自らを慰めた事がなかった。
思い出す気になれなかった。
正直に言うと・・・思い出そうと自らに課して、萎えてしまった事すらあった。

できる事なら、このままずっとアメリカにいたい、とさえ思ってしまう。
このまま逃げ続けていられたら・・・・。
帰国して会ってしまえば・・・抱かない訳にはいかなくなるだろう。
だが・・・自ら進んで抱きたいと思えない。
薫を抱きながら、寿也を思い出し、その時の自分を薫に重ね
そんなセックスなど・・・・何の意味がある?

これは寿也の呪縛か?
一人でシても薫を抱いても寿也を思い出す。
寿也の手の動き、唇を落として辿った感覚
あの甘い囁き、切羽詰った顔
そして何よりも・・・・。
激しく突き上げる寿也。
寿也の一突き一突きが
何もかも・・野球の事も、薫の事も、雑念も
世間一般的に見たら非難されるだろう行為だという事も
どんな事も吹っ飛んでしまいそうなほどに、耐えられないほど気持ちよくて。
あの寿也の突きは、例えようもない程に、何にも変えがたい程に・・・・!!
・・・・もう一度、あれが欲しい・・・。

薫が好きだ、という気持ちに嘘はないと思う。
本当に好きなんだ、と思う。

じゃあ何故抱きたくない?
あんなに初Hがしたかったのに。



何故、あの時の寿也ばかりを思い出す──────!!









「なあ。ちょっと・・・夕食、一緒に食いに行かね?」
吾郎は辺りに人がいないのを見計らい、ワッツに声をかけた。
「・・・・。どうしたんだ?改まって。」
そうなのだ。ワッツやキーンや他のメンバーと夕食に行くのはいつもの事。
それをわざわざ言われたので、ワッツは逆に不思議に思った。
「その・・・ちょっと相談が・・・・・。ワッツは大人だし色々経験してるだろうから・・・。」
吾郎は照れくさそうに頬を指でポリポリ掻きつつ言った。
「・・・・。悩み事か?初Hに持っていくにはどう口説いたらいいとか?
いや、お前の場合は初ちゅーか?
いいね、いいね〜!!初々しいな〜〜!!青少年の悩み事相談室〜!!
最近の若い子は進んでるから、オジサン、照れちゃうかもな〜〜!!困ったな〜〜!!」
ワッツは大はしゃぎだ。
「・・・・・。」
それを冷めた目で見ていた吾郎。
「やっぱ、キーンにするわ。」
クルリと背を向けて去ろうとした吾郎の腕をワッツは慌てて掴んだ。
「わ、悪かった!!もうふざけないから!!」
ジーーーっとワッツの顔を胡散臭そうに見つめる吾郎。
あ、あはは・・・・と精一杯爽やかに笑ったつもりのワッツ。



「で、どうしたんだよ。」
厚切りのステーキにナイフを入れつつワッツは切り出した。
「わ、笑うなよ?」
少し頬を染め、怖い顔・・のつもりだろう、吾郎としては・・・で念をおす吾郎。
「笑わない!!」
せいぜい初Hの事だろうが、当人としちゃ真剣だからな〜、若いってのはいいね〜、ああ羨ましー
と内心は思いつつ、顔は真面目を装うワッツだった。
少々の沈黙の後、吾郎が決意したように口を開いた。
「・・・・・。あのさ、彼女とスル気になれないって事、あんのかな。」
「・・・・・・・。お前、シたくないの?」
ワッツはキョトン・・とした瞳で吾郎を見つめた。
Hの事には違いないが、内容が予想とは反していて少なからず驚いた。
「・・・・その・・・・シたんだよ、一回だけだけど。」
「Congratulation!!ついにチェリーボーイ卒業か!!
長かったな・・・皆に「チェリー、チェリー」ってイジメられて・・・さぞかし辛かった事だろう!!でも、茂野もついに!!オジサン、嬉しいよ!!」
ワッツは泣き真似を始めてしまった。
「だから!!あーもー、茶化すなら俺、帰る!!」
「わ、悪かった!もう茶化さないから!!で、そのめでたく童貞を捨てた吾郎くんの悩みはなんなの?」
「・・・・で、でもよ、そん時、俺、全然興奮できなくて・・・またシたいって思えなくて・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・。正直、すぐにアメリカに来れて、次を迫られなくて良かった・・・と思ってる・・・。」
「ふーん。普通は初めてHしたら、もう、シたくてシてくてたまんなくなると思うけど。
俺なんて初Hの翌日、また彼女を押し倒したもんな〜。
もっとシたくて気持ちヨくなりたくて、彼女をもっと征服したくてさ。普通の男はそう思うだろ?」
吾郎の面持ちは重くなっていく。
「でも、ま、中にはいるぜ?彼女や奥さんとはシたくないってヤツもな。
セックス自体、面倒でオナってたほうが楽でいい、ってヤツ。
それから・・・彼女や奥さんとはシたくない、でもそういう欲望はある。
だから他の女とスルってヤツもな。お前はどうなの?」
「俺は・・他の女なんかとシたいとは思わない。」
「じゃ、オナってたほうが楽ってタイプか?」
「それも違う・・・と思う・・・・。」
ワッツは珍しく真剣な瞳で吾郎を見つめた。
「お前、ホントにその彼女が好きなのか?」
吾郎は俯きながら目を見開いた。
そんな吾郎を横目で見つめつつ
「それから・・・・これは少数派だけど・・・・・抱かれた方がいいってって男もいるな。つまり、ホモ。」
「・・・!!」
「イイらしいぜ〜?突っ込まれるのは。あれを経験しちゃうと女となんかデキないって。
突っ込む方も・・・男のそこのほうが狭くてイイって聞くしな。
ま、でも俺、おっぱい好きだから、おっぱい揉み揉みできないのなんて耐えられないぜ!!
男じゃ平らだろ?虚しすぎる・・・・楽しみ半減・・・・。さすがに勃つもんも勃たねーな。」
そして吾郎の表情を伺うワッツ。
「・・・もしかして図星か?」
「お、俺・・・・!!」
真っ赤な顔でうろたえる吾郎。
「俺は女一筋だけど・・・お前、もしかしたらヤバイタイプかもな。」
「は?」
「お前になら突っ込んでみたいって・・・俺も今、ちょっと思っちゃったし。」
「な・・・・!!」
「じょ、冗談だって!!」
で、盛大に咳払いをしたワッツだが
「・・・男にされたのか?」
今度は真面目に聞いた。
「・・・・・・・・・・。」
吾郎は返事をする事が出来なかった。
沈痛な面持ち、その無言が、何よりも真実を物語っていてワッツは深い溜息をついた。
「誰だよ、その男は。ホーネッツのヤツ・・・じゃねえよな。」
吾郎はその重い表情を紅く染めて横を向いてしまった。
「ああ・・・。」
そして小声でやっと返事をする。
「じゃ、日本のヤツ?」
「・・・・・・・・。」
またしても無言。
「は〜〜〜〜。なんてこった・・・・・。」
暫くワッツは考え込んでいたが、ようやく重い口を開いた。
「つまり、お前は彼女とのセックスよりも男に抱かれたいんだ。」
「そんな・・・!!」
「そーなの!!お前、オナニーする時、その男の事考えてないか?」
「・・・・・。」
「はあ・・・・。お前、重症。いいか?お前が取るべき道は二つに一つだ!」
ワッツはビシッ・・と吾郎を真っ直ぐ指差して言う。
「第一としては。
キッパリ片方を切り捨ててその相手を見て生きる。つまり彼女かその男か。
しかし抱かれる快感を知っちまったら、男を捨てるのは難しいかもな。
世間体を重視なら言うまでもなく取るのは彼女だ。
で、第二は。
彼女とは怪しまれない程度に付き合って、場合によっては結婚もアリだ。
彼女と適度にセックスしつつ、その男とも付き合い続ける。
男には彼女の事を理解してもらうしかないし、彼女には絶対に悟られちゃいけねえ。
まあ、ありていに言えば・・・彼女は同性愛の隠れ蓑だな。
さあ、どっちにする?」
「う・・・・。」
吾郎はまたしても言葉が出ない。

「まあ・・・、まだまだ帰国には間があるんだからゆっくり考えればいいさ。
だが会ってみないと分からない事もあるからな。
また彼女とシてみたら違うふうに感じるかもしれないし。
それでも男の事を考えちまうようなら彼女を捨てるか、男と彼女の二股かしかねえだろ。」
「・・・・・・。」
「でもお前、見るからにそういう事に不器用そうだからな〜、二股は苦しいと思うぜ?
彼女とシて、彼女と仲良くできたらそれが一番だ。
アメリカも同性愛者には風当たりが厳しいからな。
ありきたりなセリフだけど、男の事は忘れた方がお前の為だ。」
と真面目に言ったワッツだが
「・・・・ま、それが出来てりゃ、俺に相談なんかしてねえか。大変だ、こりゃ!」
おどけて両手を挙げて「降参」のポーズのワッツ。
「・・・・・・。」
吾郎は暫く考え込んでいた。
そして。
「ありがとう、ワッツ。二つに一つか。・・・道が見えただけでも相談した甲斐があったよ。」
「幸運を祈ってるぜ?」
吾郎は口元だけで笑って答えた。
















しあわせについて 3→

MAJOR裏 top


ドロドロですね・・・すいません!!







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