「かーさん!俺、今から出かけてくるから!泊まって来るからメシはいらねえよ!」
「へえ・・・。吾郎〜、もしかして清水さんと?」
桃子はニヤニヤと嬉しそうに聞くが。
「ち、違げーよ!!ダチだよダチんとこ!!」
「あら・・・そう。つまんないの。清水さんにはちゃんと連絡入れた?」
心底拍子抜けした顔の桃子。
「うるせーな、あとで電話するったら!!」

そうしてバタバタとシャワーを浴びて着替えて家を出た。
つい、「ダチんとこ」と言ってしまったのは・・ちゃんと「寿也と」と言えなかったのは
やはり後ろめたいものがあるからか・・・。





「やあ。久しぶりだね、吾郎くん!」
寿也に指定されていた、とある料理屋の個室。
寿也はいつもどおりの爽やかな笑顔でやって来た。
「おお!久しぶり!」
吾郎も胸の内のドキドキを隠して、久しぶりに会う親友の顔で答える。
「何食べる?・・・吾郎くん、決めた?」
「いや、まだメニューも見てねえよ。」
「へえ・・珍しい事もあるもんだね。」
・・・のんきにメニューなんか見て何食べようかなんて考えてる余裕、あるかよ・・・
と内心思うものの、やはりメニューを見れば見たで食欲がわいて来るのが吾郎である。
「うわ・・・夢にまで見た日本料理のオンパレード!!」
「・・・鳥の唐揚げや枝豆・・・って日本料理だっけ・・・・。」
寿也が呆れるが
「日本料理だっ!!」
と吾郎は断言する。
「うわ・・揚げ出し豆腐に肉じゃが、イカの丸焼きにほっけ焼き・・・・涙出そうだ、俺・・・!!」
「・・・好きなだけ頼みなよ。」
苦笑の寿也。
「刺身とか寿司とかはあっちでも結構食わせてくれる店があるんだけど
こういうのはなかなか無くてさ。アメリカはいい国だけど食い物がな。
やっぱ、日本最高〜!」
「・・・元気そうで良かったよ。」
「・・・お前もな。」
と、感慨深げに見詰め合っていたら
「ねえ、さっきの、佐藤寿也じゃない?巨仁の!」
「相手は茂野吾郎だよ!さっき見た。・・・サイン貰いに行ったらダメかな!?」
と個室の外からワイワイ聞こえてくる。
「・・・大騒ぎにならないように個室取ったけど・・・あんまり変わらないみたいだね。」
「お前はともかく・・・俺までこんなに有名になってるとは思わなかったぜ。」
「吾郎くんは投げる度にこっちでは大騒ぎだったよ。もうちょっと自覚した方がいいんじゃない?」
と、お喋りしていたら、料理が次々運ばれてきた。
扉が開く隙に、ちょっとでも生の二人を見ようと野次馬が・・。
寿也はファンサービスで、笑顔で片手を上げるが吾郎は。
「うっひょ〜〜!!待ってました〜〜!!」
とファンなど目に入らず、料理に大喜び。
「では、ごゆっくりどうぞ。」
と店員は去り、再び一応、二人きりの空間。
ガツガツ食べる吾郎を寿也はにこやかに見守りながら箸を進めた。

「食った食った〜〜!!」
最後は焼きおにぎりとシャーベットで締めた吾郎は大満足だ。
「・・・そろそろ出る?」
顔は笑顔だったが瞳が違った。
全てを語っていた寿也のその瞳に
完全に無防備だった吾郎は射すくめられてしまったが、なんとか平静を装い
「そうだな。」
とだけ返事をした。


そして去年ドライブをした見覚えのある車に乗り込んで。
「今みたいになるといけないから・・・郊外に部屋を取っておいたよ。」
「へ、へえ・・・・。」
胸が高鳴る。
寿也に聞こえてしまうのではないか、と思うくらいに。
アソコも・・・さっき、店で寿也が「出る?」と聞いてきた、あの瞳を見た瞬間に熱が集まってしまって。
寿也に悟られないように吾郎は足を組んだ。

窓の外に視線を向けるものの、景色など目に入らない・・・筈だったが。
「あれ?ここって・・・。」
「覚えてた?」
寿也がニッコリ笑った。
そうだ、まさに去年のこの時期、寿也と共に訪れた地。
紺碧の海がとても綺麗だった。
今は夜なので、そこにはただ闇が広がるばかり。
「ホテルも同じ所にしたんだ。
あれほどのホテルなら、万が一、僕や吾郎くんだと従業員にバレても秘密は厳守してくれるだろうからね。」
「そう・・なのか?」
「僕も良く知らないんだけど・・・先輩がそう言ってた。
お酒の席になると、楽しそうにそういう事をよく教えてくれるんだ。」
寿也は苦笑交じりに言う。
「基本的にホテルは客の事に関しては秘密厳守だって。
それは一流ホテルであればあるほど徹底してるから、そういう機会がもしあったら出来るだけいいホテルに入れって。
ラブホテルの方が従業員と顔を合わせずに済むんじゃないか、と思いがちだけど
そっちのほうが隠しカメラが仕込まれていたりして色々大変なんだそうだよ。」
「・・・お前、ラブホテルに行った事あるのか?」
吾郎は驚きと嫉妬の入り混じった複雑な気持ちで聞いたのだが。
「ないって・・。酷いな〜。僕は吾郎くんとのアレが最初で最後だ。」
そう、寿也に断言されて・・・あの時の寿也が脳裏をかすめ更に胸が高鳴り、消え入ってしまいたくなった。


そしてそのホテルの地下駐車場に車を停めると。
「じゃ、僕はチェックインしてくるから・・吾郎くんは念のため、車で待っててくれる?
後で部屋No,をメールするから、それからこっそり来て。」

一人残されてしまった吾郎。

  ・・・・・・。
  落ち着け・・・落ち着くんだ・・・・!
  あーもー、ドキドキドキドキ!!煩いぞ、心臓!!

そうは思うものの、これから寿也に抱かれるのだと思うと・・・・
もう、自分で自分が制御できない。
手に汗を握り・・そして喉から飛び出てくるんじゃないか、と思う程のこの心臓の音。
試合中だって・・・・例えば一点差でリードしている時
ランナーを3塁に置いてバッター、ギブソンJr.。
散々ファウルの末、追い込まれてカウント、ツースリー、次で勝負!
そんなとんでもない時だって、今の、ここまでの状態にはならないだろうと自信を持って言える。
幾つも潜り抜けてきた、そんな修羅場。
そのどんなものより・・・・今、この時の緊張のほうが遥かに上を行く。
寿也を待つ、一分一秒がこんなに長いものだとは。

それから。
寿也が「待ってて」と言って車を去ってからは、僅か10分程度でメールは届いた。
その10分がこんなに長いものだとは。
やっと届いたメール。
携帯を扱う指が震えているのが分かる。
「くっそ〜!!」
吾郎はやっとの思いでメールを開いた。
そこに記されていた部屋番号を頭に入れて。
念のため、サングラスと・・帽子を目深に被り、そしてマスクまでして
それからジャケットの襟を大きく立てて、そこに顔を埋めて車を降りた。

新型インフルエンザの流行が危惧されている状態とはいえ
その変装では、かえって人目を引くだろう。
そしてそんな姿で銀行へ行こうものなら真っ先に警備員に不審がられ、声をかけられる所だろうが。
しかし今の吾郎には自分の姿の異常さに気付く余裕は全くなかった。

地下駐車場からエレベーターに乗って。
最上階より少し下の階。
そんな異常な姿の吾郎だったが、幸運な事に途中どの階でも止まることなく
駐車場から誰とも顔を合わせることもなく一直線に、目的の階に到着した。

去年来た時は変装はしていなかったが、顔を上げる事も出来ずにこのエレベータに乗った。
これから抱かれるのだと思うと周りを見る余裕もなかった。
・・・それは去年も今年も同じ。
だが、胸に秘めたもの、この逢瀬に込められた思い、決意。
そういったものが全く違った。

エレベーターを降りて、そして高級感溢れる廊下を進んで行くと、メールされた部屋に到着。
もう一度携帯を開いて部屋番号を確認する。
間違いない。

  この扉の向こうには寿也がいる。
  この扉の向こうで俺と寿也の・・・時間が始まる。

吾郎は軽く深呼吸して自らを落ち着かせた。
それからノックをすると中から寿也の声が。
「吾郎くん?」
「ああ。」

カチャッ・・・。
ドアが開いた。
寿也は「そんな姿」の吾郎を目の当たりにして。
パッチリと目を見開いた寿也、暫し硬直。
そして。
・・・・吹き出してしまった。
「・・・っく・・・!ハハハハハ・・・・!!吾郎くん、それじゃ、かえって怪しまれるって・・・!!」
「え?そ、そうか?」
「おいでよ。・・・鏡、見てご覧よ。」
寿也はお腹を抱えて笑いながら吾郎を鏡の前へ連れて行った。
そこに映っていたのは。
不審者としか言い様のない吾郎の姿。
これには吾郎自身も爆笑してしまった。
「怪しい・・・怪しすぎる・・・・。漫画に出てくる銀行強盗みてーだ・・・!」
「・・・だろ?」
しかしこの一件で共に大笑いした事により、互いの緊張が和らいだ。
「・・まさかその姿、誰かに見られた?エレベーターに誰か乗ってなかった??」
「誰にも会わなかった・・・よかった・・・・。これじゃ隠れるどころか、通報されてもおかしくねえ。」
吾郎は心の底からそう思いながら、変装グッズを外していった。
「ったく吾郎くんは・・・。いつもとんでもない事をしでかしては僕を驚かせる。
昔からちっとも変わってないね。くっく・・・!!」
笑いながら涙を拭う寿也。
「・・・なんだよ、人がせっかくバレねーようにって変装したのに!
いくら秘密厳守が基本とはいえ、俺と寿がダブルの部屋に泊まったって知ったら従業員だってビビるだろ?
ツインだったらあり得るかもしれねえけど。
だから必死に頑張って・・って・・・コラ!お前、笑いすぎ!!」
「ゴ、ゴメン・・・・だって・・・あんまり・・・吾郎くん・・・・!」
「笑うなっつってんだろ!?」
吾郎は照れ隠しに、寿也の首に乱暴に腕を回した。
すると寿也は急に黙ってしまって、吾郎を見つめて。
「・・・・あの、その・・・。急に黙られると・・・・。」
「黙られると?」
寿也のこの瞳。吸い込まれてしまいそうなこの瞳。今の、この体勢。
吾郎が寿也の首に腕をかけて、その体勢で見つめられると
当然、至近距離で見つめ合う事になる。
そしてこの体勢では、吾郎が寿也を襲っているようにも見えてしまって。
そこで黙るな、そこで!!と吾郎は内心焦りまくってしまって心臓が再びバクバク高鳴るが
遅かれ早かれ・・・
今日はそのためにここに来たのだ。
吾郎は心を決めた。
ゆっくりと瞳を閉じると寿也がその僅かの距離を詰めた。
一年ぶりに触れ合えた唇。

  柔らかい・・・あたたかい・・・・・。
  ああ、これだ・・・この感じ・・・・。
  寿也の唇、寿也の匂い・・・。

目頭が熱くなり、涙がこぼれてしまうかと思った。
これだ、と思った。
これが欲しかったのだ。

無意識のうちに吾郎は寿也に回した腕に力を込めて
寿也も吾郎の背に後頭部に腕を回して・・・。
そして舌を絡め合う。
むさぼるように、待ち切れなかったように。
吾郎は夢中になって寿也の舌を追った。

求めても求めても足りない。
寿也の厚い胸、そして力強く抱いてくれる腕。
触れ合っていると、そのあたたかさに心が穏やかになっていって
鼓動までもが一つに重なったように思えて。
幸せが満ち潮のように広がり、そして溢れていく。
でも、それでも、もっともっと欲しくて。たまらなくて。

どんなに悩んでも、どんなに考えても
わかってしまう時は一瞬である。
些細な事が切っ掛けとなり、全てを悟ってしまう事もある。
今の吾郎がそうだった。
もう一度会い、もう一度唇付けて抱きしめられて
その感触、ぬくもり、匂い。
それで・・・全てのピースが繋がって、一枚の絵になって
それが吾郎の中にありありと浮かんできた。


  俺・・・わかった・・・・。
  今、ハッキリとわかった。
  俺は・・こんなにもこんなにも寿也が欲しい。
  こんなにも、俺・・・・!

  俺が・・・俺が欲しかったのは・・・・
  この一年・・いや、違う。
  ずっとずっと欲しかったんだ。
  そう、それこそ・・・幼い時からずっと。
  去年、あの時、それに気づけた筈なのに
  本当に気付くのに、こんなにかかっちまった。
  俺が本当に欲しかったものは、ここにある。


長い、長い唇付け。
唇を、舌を交わし、強く抱きしめ
それしか知らないように、それしか能がないように
ただ、ひたすらに・・・寿也を追った。

普通では考えられないくらいの長いキスの後
荒い息の中、熱い瞳で見つめ合い・・。
「ご、吾郎・・・くん・・・・・。」
寿也も驚きを隠せない。
こんなに求めてくれるとは思ってもいなかった。
そしてその驚きは、次第に喜びへ変わる。
「吾郎・・・くん・・・・。」
もう一度、唇を交わし
「と、し・・・。」

  ああ、もう・・・ダメだ・・・・・・。
  堕ちる・・・・俺と寿の二人で・・・・・。
  窓の外でざわめく、漆黒の深い海の底へ落ちていくように
  二人で・・・・抱き合いながら・・・堕ちていく・・・・・・。
  何も聞こえない。
  ただ、静かに・・音もなく・・・・堕ちる・・・・・・・・。


互いに互いの衣服を剥ぎ取って
二人を隔てる邪魔な布など早く取り去り、早くほんとうに触れ合いたくて。
ようやく生まれたままの姿になった二人は、そのままベッドへもつれ込んだ。

どこもかしこも愛しくて、
そして触れられた先がどこもかしこも熱くて。
「愛撫」とは愛して愛しくて撫でる、と書くが
こんなにも何もかもが愛おしいくて、隅から隅まで触れたくて、触れられたくて。
そんな存在に出会えて・・・そしてその存在に気付く事ができて・・・よかった・・・・
と、吾郎は心から、涙が出るほどに・・そう思った。

寿也に会いたかった。
寿也の事を思い出しながら自らを慰め続けた。
そして悩みに悩んだ。
その想い苦しんだあの時間が嘘のように
水を得た魚のように、吾郎は寿也を求めた。

これが答えだと・・・・触れ合ってようやく・・・本当の答えに出会った。
よかった・・・・遅すぎずに・・・気付かずに過ぎることがなくて・・・本当によかった。
今、この状態こそが一番自然でいられる、素直でいられる。

ほんとうに・・・・よかった・・・・・・・。


「吾郎くん・・・泣いているの?」
「・・・よかったなって・・・思ったんだ。」
「・・・・・・。」
「俺かお前が女だったら、絶対に迷う事なんてなかった。
男同士だから、こんな遠回りをしちゃったんだ。」
寿也は息を呑みながら吾郎の告白を聞く。
「俺・・・お前が好きだ。
好きで好きで・・・おかしくなりそうなくらいに好きだ・・・・。」
「吾郎くん・・・それは僕も同じだ。
僕も君が好きで好きで・・おかしくなりそうなほど・・君が好きだ。」

やっとわかった。
ほんとうの答え。ほんとうの幸せ。


再びきつく、壊れそうなくらいにきつく抱きしめあって唇付けた。

「吾郎くん・・・吾郎くん・・・・・。」
唇の合間に寿也が吾郎の名を呼んだ。
しつこいくらいに。
「幸せすぎて・・・怖いよ・・・・。」
寿也が恍惚の表情で言うと
「俺も・・・。」
吾郎も同じだと言う。

寿也の腕の中には吾郎がいた。
しっかりとした質感、ぬくもり。
これは夢なんかじゃない、と寿也はこの幸せを噛み締める。

  そう、夢なんかじゃない。
  夢なら・・どうかこのまま覚めないでくれ・・。


寿也の唇がずらさていく。
吾郎の耳朶を甘噛みして耳の窪みに舌を這わせ、そして奥に舌を差し込んで。
直接響く水音と、そして頬から首のラインを撫でる寿也の指先がたまらなくて。
「・・っ!」
寿也の唇が降りていく。
首筋、そして喉に食らいついてきて。
「あ、・・や・・・っ!!」
どこもかしこも触れたい、舐めたい、食べてしまいたい。
寿也は吾郎をまるで甘い砂糖菓子のように丹念に舐め回す。
とうとう胸まで降りてきた。
吾郎のそこは既に硬く尖っていて。
寿也は動きを止めて胸のその部分を愛おしげに見つめると、ちゅ・・と吸い上げた。
すると吾郎がビクッ・・・と体が飛び跳ねるように反応して、少し大きな声を上げた。
「あ、ああ・・・っ!!」
「ふふ・・可愛い・・。」
寿也は微笑みながらそう言って、そしてもう片方の胸のそれには指先で触れた。
両方の乳首を同時に舌で指で弄られて、時に摘ままれて。
まだ胸なのに、たまらなくて。
特に舐められている方。
「な、なんで・・・そんなに丁寧に・・・舐め・・ああ・・っ!」
「だって・・・可愛いから・・。」
そして乳輪を舌で指で辿り、突起を転がし・・
「あ、・・も・・・もう・・・ん・・・・っ!」
吾郎が感じてくれている。
寿也のこの手で、この舌で。
それが本当に嬉しくて・・・・・。
しかし吾郎はそれどころではなく。
「と、とし・・・も、胸・・・ダメ・・・!も、俺・・・・っ!!」
そうなのだ、このままでは胸だけで達してしまいそうで。
吾郎は寿也を引き剥がしにかかってきた。
「た、頼む・・・も、俺・・・・!」
と懇願する吾郎。
しかし。
「いいよ、吾郎くん。もっと乱れても。
いや・・むしろ・・・もっと乱れて。そんな君を・・僕は見たい。」
そして寿也は、両の乳首を指で弄りながら舌は腹を辿り始めた。
「見せて。僕に・・・もっと見せて・・・。」
囁く寿也の声が吾郎に呪文をかけるように、吾郎はどんどん・・・。
両胸からの刺激はそのままに、さらに脇腹を吸い上げられて。

  も、なにがなんだか・・・気持ちよすぎて・・・おかしくなっちまう・・・!! 

おかしくなってしまいそうなのにイけない。
何度イッていてもおかしくないくらい、気持ちいいのにイけない。
それが更に吾郎を狂わせ乱れさせていく。

「とし・・・っ!!イ・・・・イかせて・・・・く、れ・・・・・!!」
必死の願い。
それを聞いて寿也はニコ・・と微笑むと、吾郎から一旦離れ足を持ち上げた。
挿れてもらえる、と吾郎は思った。
が、寿也は持ち上げた足の膝の裏の部分を舐め始めた。
「い、いや・・・いや、だ・・・・や・・・・っ!」
舐め上げながら吾郎の中心に視線を送る寿也。
もう吾郎のそこはパンパンに張り詰めて痛々しいくらいだ。
先走りの蜜が幾筋か漏れていて、今ならそっと撫でるだけで爆発してしまいそうだった。
吾郎は身をくねらせて、寿也にひたすら願う。
「とし・・・とし・・・・っ!!」
ギュッと閉じた瞳からは涙まで流れ出ていた。
「とし・・・お願いだから・・・触って・・・イかせて・・・・。」
虚ろに繰り返す吾郎。
「とし・・・!!」

「ゴメン、ちょっといじめ過ぎちゃったね。」
「・・・・・・。」
寿也の唇が離された。
吾郎の昂ぶった熱い体は既に限界を超えている。
今ならどこに触れても感じてくれそうな程に。
そんな吾郎を見下ろす寿也。
吾郎の瞳は熱く寿也に向けられて、いや、瞳だけでなく全身で
吾郎は寿也を求めていた。
「吾郎・・・くん・・・・・。」
寿也も熱く囁く。
はやく、と吾郎が瞳で言っていた。
その瞳の命ずるままに寿也は吾郎のそれを咥え込んだ。

すると・・・。
咥えただけなのに、寿也の口内で吾郎がビクビクッ・・!と震えたかと思ったら、そのまま弾けてしまった。
やっと出す事が出来て、少しだけ安堵の表情を浮かべる吾郎だが
それでも全く足りない所まで寿也によって高められてしまっていて。
未だ熱に浮かされた表情のまま、寿也がそれを飲み込んだのを虚ろに見守った。
「おいしい・・。吾郎くんの味・・・。」
うっとりと言う寿也。
吾郎はその光景に羞恥を感じるものの言葉も出ない。
もう少し・・・寿也の愛撫がもう少し控え目であったなら「馬鹿野郎!」と叫ぶ事も出来たろうが。
放ったというのに吾郎には未だそんな余裕はなく。
それもまだ萎えることなく硬く大きいままで。
それにしても。
どこの世界にそんなもの、美味しそうに飲み下してくれるヤツがいるというのだろう。

  寿也だけだ・・・寿也だけ・・・・。

そう思うと、胸に込み上げるものを感じてしまって。
ついさっき、触れて欲しいあまりに流れた涙とは・・また違う涙が溢れてきた。

「吾郎くん?」
その涙に慌てて問う寿也だったが
「な、なんでもねえ・・・・。」
吾郎は、そう言い返すのが精一杯で。
でも寿也には吾郎の気持ちはそれで十分伝わって。
寿也も胸に込み上げるものを感じて・・・その感情のままに吾郎の唇を塞いだ。

最初の激しく求めあうような唇付けとは異なり
想いが同じである事が嬉しくて幸せで・・・喜びを分かちあうような唇付けだった。

そして。
「今度はちゃんと味あわせてね?」
と唇を離しただけの至近距離で言い、ちゅ・・と軽く唇に触れると
寿也はもう一度吾郎のそれを咥え込んだ。
「あ、あ・・・っ!」

再び寿也のあたたかな口の中。
あたたかくて・・・それは不思議な感覚。
唇と舌と・・・そのあたたかさだけで・・・・
それだけでもう、身悶えてしまう吾郎。

寿也は本当に丁寧に、大切なものを清め上げるように舐め上げ、しゃぶるのだった。

  吾郎くん・・・・吾郎くん・・・・吾郎くん・・・・・。

寿也の甘い声が聞こえるようだった。

  愛してる・・・愛してる・・・愛してる・・・・・。

時折響く水音と、溢れる寿也の想いを
ただ、そこに・・ひたすらに受け続け・・・・。
そして吾郎も思う。

  とし・・とし・・・寿也・・・・・・・・!!
  あ・・い・・・・して・・・・る・・・・・・・・・っ!!
  きっと・・・出会ったあの時から・・・・
  ずっとずっと好きだった・・・・・寿・・・・!!

二人の想いが共鳴するように水音と吾郎の鳴き声が高まっていって。

  ああ、もう・・・・足りない・・・・そんなんじゃ・・・足りない・・・・っ!!
  またイきそうだ・・・でも・・・そんな事よりも
  寿、お前が・・・・欲しい・・・・・。
  ここに・・・お前のデカイのが・・・・欲し・・・い・・・・・・!!

そんな想いも、互いに完全に共鳴して。

「僕も・・・これ以上我慢できそうにない。」
ようやく、そう宣言してくれた寿也。

  ああ、やっぱり・・・・俺はお前が欲しい・・・。
  早く・・・来て・・・・・。
  今、狂おしいくらいに・・・ここに「お前」が欲しい。
  激しく・・・ぐちゃぐちゃに・・・お前でここを・・いっぱいに・・・・はやく・・・・!!

吾郎は何も言わなかったが、吾郎の瞳が全てを語っていて
寿也は口元に小さな笑みを浮かべると自らを吾郎のそこに宛がった。

ゆっくりと押し進める寿也。
限界だったのは吾郎だけではない。
寿也だって・・・・いろんな意味で、何もかもが限界だった。

寿也もこの一年
何度、あのたった一度の情事を思い出して自らを慰めた事だろうか。
決して叶う筈もなかった想い。
それがひょんな事で、肌を交わすことが出来て。
それで十分だと・・・。
本来なら一度たりとも実現できなかっただろう事。
なのにその手に吾郎を抱く事が許された、あの日。

その後、吾郎に会う度に、その無邪気な顔を見る度に
何度、体の奥底から突き上げるものに必死に耐えた事だろうか。

  一度だけでも抱けたんだ。
  本来なら一度だって起こり得たことじゃない。
  僕は十分・・・報われた・・・・幸せなんだ。

そう思い込むしかなかった。
しかし・・・。
かえって一度も抱けない方が良かったのかもしれない。
一度知ってしまえば、また欲しくなる。
それが求めて求めて止まないものであったなら、尚の事。自然な事だ。

その想いは寿也を更に苦しめるものとなり・・・。
求めても求めても・・・得られない哀しさ、虚しさ、辛さ、惨めさ・・・・。

思い出して自らを慰めても慰めても・・・・!!

  なんで君は僕を誘った?
  吾郎くんにとってあれはただの好奇心。そんな事は最初から分かってた。
  でも一度手にしてしまったら・・・もう、知らなかった頃には戻れない!!

苦しかった。
苦しくて苦しくて・・・・苦しくて。

あの苦しみを思えば・・・今、この状態は夢のようで・・・。



吾郎の中に自らを押し進めながら寿也は
今までと、そして特にこの一年を思い出していた。

根元まで納めた時には寿也の瞳から大粒の涙がポタポタと零れ落ちて。
これではまるで・・・・初めての・・・・。







「寿・・・。」
吾郎は感じた。
寿也の想いを。痛いくらいに。
「・・・あ、ゴ・・・ゴメン・・・。」
寿也は慌てて涙をゴシゴシと拭いながら。
「また君を抱けるとは思ってなかったから。
でも抱けただけじゃなくって・・君は僕を好きだと言ってくれた。
それが本当に嬉しくて・・・・・・。」
「・・・・。」
「君の中・・・あたたかくて、そして僕をぎゅうぎゅう締め付けて・・君の中にいるだけで・・・僕は・・・・・ほんとうに・・・・・。」
寿也はまた言葉を詰まらせた。
「・・・ったく・・・。大の男が二人して泣いてばっかだな。情けねえ・・。」
「吾郎くん・・・。」
「でも・・それは俺もお前も本気だから・・本気で心が通じ合えたから・・なんだよな。
そういう時って・・・嬉しすぎて・・涙が溢れちゃうんだな・・・。俺、初めて知った・・・。」
寿也は心からの綺麗な笑みを浮かべる。
「俺も・・・俺の中にお前がいるだけで・・・たまらなく・・・嬉しい・・・。もう、イっちまいそうだ・・・。」
吾郎も恍惚気味に語った。
そしてしっかりと寿也を見上げると。
「何してんだよ。早く来いよ。・・・俺の中で・・・思う存分、無茶苦茶に暴れまわってくれ。」
ニッ・・と笑う寿也。
「・・・・うん。じゃ、いくよ?」
「ああ。」


寿也は自身をギリギリまで引き抜いた。
そして思い切り・・・突く。
「・・・あ、ああ・・っ!!」
そしてまた引き抜いては打ち込む。
何もなかった所に、寿也の大きな大きなそれが通り過ぎていく
その感覚が耐えられないくらいに気持ちよくて
奥の奥を力強く突き上げられると
また涙が溢れそうなほどに、たまらなくて。
「とし・・・ッ!!」
吾郎は寿也にしがみついた。
すると寿也も相当、たまらないようで。
「ご、吾郎・・・くん・・・・!!」
寿也の綺麗な顔が歪められていて
この顔、この顔だ、と吾郎は思った。
長い長い付き合いでも、あの時初めて見た寿也のこの顔、この表情。
また見る事が出来た事が嬉しくて
自分の中で感じてくれた事が嬉しくて
吾郎は寿也の首に腕を回して自分から唇付けた。
舌とそことを絡ませて
きつく抱き合って、どこもかしこも一つになりたくて。
「・・・・っく・・・・!」
「あ、あああ・・・っ!!」

寿也が動きを開始してから、数えるくらいしか出し入れしてないのに
二人して達してしまったのだ。

「ご、ごめん・・・あんまり感動しちゃって・・・・。」
「お、俺も・・・あんまりお前がよかったから・・・・。」
吾郎と寿也は顔を見合わせた。
そしてどちらからともなく、クスクスと笑いあって。
「でも、一回出しておいたほうが滑りが良くなっていいかな。吾郎くん、締めすぎるんだもの。」
「なんだよ、お前がデカすぎるんだろ?まあでも・・・俺も一回出しておいたほうが少しは落ち着いてできるから・・・いいかもな。」
「じゃ・・・動くよ?」
「ああ。今度はこんなに早くイくなよ?」
からかうように吾郎が言うと寿也はちょっとムッとして答えた。
「君の方こそね。もう二回目なのにまだこんなに元気だなんて。」
寿也は吾郎のそれを指先チョンチョン・・と触れた。
「あ・・っ、・・な、なんだよ・・・お前だって俺ン中で・・・まだこんなにデカくて・・・
寿くんがこんなにスケベだなんて思わなかったぜ。」
「スケベなのは吾郎くんだろ?僕はまだ一回、吾郎くんは二回もイってるんだよ?一回と二回は大違いだよ。」
「なんだと?」
一触即発?
だが、寿也は呆れ顔で溜息をついた。
未だ繋がった状態で交わす会話じゃない。
「やめよう。・・・まるで子供の喧嘩だ。
そんな事より・・・出してもまだ・・・僕は君が欲しい・・・・もっと・・・・。」
「俺もまだまだ足りねえ・・・もっとお前が欲しい・・・。」

そしてキスをして。
寿也は繋がったまま、体を起こした。
吾郎のそれを軽く撫でると、それだけで吾郎は
「・・っ、・・・・!!」
今度はしっかりとそれを握りこみ、摩りながら寿也はその体勢で思い切り突き上げる。
「ああ、も・・・・っ!!」
悶える吾郎を見下ろしながら
「可愛い・・そんなにイイ?」
「ば、馬鹿野郎・・・!中か、外か、どっちかにしろ・・・!!」
「なんで?両方の方が気持ちいいでしょ?ほら・・・。」
「や・・・っ!!も、あ、ああ・・・っ!!」

もう、たまらない。
そんな・・一番感じる所を中と外、両方同時に攻められて
身も世もない程に悶え、鳴いてしまって。
そして頭に来る事に、寿也は高みの見物、とばかりに吾郎を見下ろして。
でも・・・寿也に見られている。
寿也で感じている俺を。
そう思うと更に昂ぶってしまう吾郎がいて。
自分はマゾなのではないか、と疑いたくなった。


でももう・・・本当にたまらないんだ。
さっき出したばかりなのに。
もう2回も出してるのに。
寿也だと、何度出しても感じてしまって。
それが悔しいような、嬉しいような・・・・。

  なあ、寿・・・・。
  俺がこんなに感じてるのに、お前、なんともねえの?
  さっき出したから、まだ余裕?
  俺だけ・・・なのか?

しかし。

「吾郎・・くん・・・・ッ!」
切なげに寿也は吾郎の名を呼ぶと体勢を変えて吾郎を抱きしめた。
そして抱きしめたまま更に激しく突き上げて。

熱く濡れた吾郎の中。
それがこれでもか、と言わんばかりに寿也を締め付ける。
まるで熟しきった果実が寿也自身を飲み込むように。
こんな気持ちよさを寿也は知らない。
一年前、吾郎を抱いた時も、吾郎の中はここまでの状態にはならなかった。

  甘い果実が僕を包み込んで・・何もかも・・・体の芯から・・・蕩けてしまいそうだ・・・・!!
  僕が・・・溶ける・・・・吾郎くんの中で・・・・・・。

感極まったように、恍惚状態で寿也は思わず叫ぶ。
「吾郎くん・・・すごい・・・・・飲み込まれそうだ・・・・・!!」
吾郎は喜びを感じた。
感じているのは自分だけじゃない。
同じ・・・寿也も同じ・・・・。
「俺も・・・体中痺れて・・・おかしくなりそう・・・。」
寿也は耳元で熱い吐息を漏らしながら囁いた。
「一緒に・・おかしくなろう・・・君となら・・・どんなにだって・・・おかしくなってしまう・・・・。
吾郎くん・・・・一緒に・・・・・!!」
「ああ、寿・・・・イカレちまおう・・・俺は・・・もう、完全にイカレちまってる・・・・。」

  これからも何度でも、何度でも・・・おかしくしてくれ・・・・・・!!
  お前と一緒なら、何度でも、何処へでも、どんなふうにされても、俺は・・・・・。

  
  ずっと・・・これからも・・・何度でも・・・・・・・!!




限界を超えた灼熱の快感、歓び。

互いに愛しい人を抱きしめながら、崩れ落ちた。















ようやく意識が浮上した時に感じたものは
気だるい疲れと吾郎を包み込むあたたかなもの。
このあたたかさには覚えがある。
人肌のこのあたたかさ、心地よさ。

吾郎はゆっくりと重い瞼を開けた。
すると思っていた通り、寿也が吾郎を抱きながら眠っていた。
綺麗な寝顔。
でもあどけない寝顔。
そして規則正しい寝息。
その寝顔。海堂高校の寮で同室だった頃の事が思い出された。
しかし、その当時でもこんなに間近で寿也の寝顔を見た事はなかった。
どうせ抱かれているのだから・・・と吾郎は更に近づいて胸と胸を合わせると
寿也の心臓の音が直接吾郎の胸に響いて、それが本当に心地よくて・・・・・。
心からの愛情、ぬくもり、それに包まれた幸せ、何も疑う事のない安心感。

こんなに安らかな想いになれた事が今まであったろうか・・・。

吾郎はまた柄にもなく、胸に込み上げるものを感じて慌てた。
そしてちょっとだけ体を離して、もう一度寿也の顔を見つめて。

「可愛い顔して・・・・。」
こんな可愛い顔をして、昨夜は吾郎をあんなにも攻め立てて。
あの、一緒におかしくなってしまうあの感覚。
一緒に堕ちていく・・・あの感覚。

幸せだった。
もう、これ以上何もいらない。
そう思えるほどの幸せ。
寿也となら・・・どこまでも堕ちたって構わない。

そう思える存在に出会えた事に、気づけた事に感謝しながら
吾郎は眠る寿也へ唇付けた。


「・・・ん・・・吾郎くん・・?」
「あ、悪い、起こしちまった・・・。」
「いいよ、そんな事。」
寿也は胸の中の吾郎を見つめる。
「怖いよ、幸せすぎて・・・・。」
「大丈夫だって。俺とお前なら、無敵のバッテリーだぜ?
どんなヤツでもねじ伏せてやる。そうだろ?」
そう無邪気に言う吾郎に寿也は微笑んだ。
「そうだね。」
「そうさ。」
「吾郎くん・・・。」
「なんだ?」
「・・・・おはよう。」
改めてそう言う寿也に吾郎は顔が真っ赤に火照って行くのを感じた。
「ば、馬鹿、なんだよ、改まって・・・!」
「君を抱きながらおはよう、って言える・・・こんなに嬉しい事はない。」
感無量。そんな顔で言う寿也に吾郎は更に茹蛸状態へ。
「言って?おはよう、って・・・。」
「・・んな事・・・!」
「お願い。」
そう、真顔で見つめられて
「お、おはよう・・・・。」
消え入るような声で吾郎は言った。
寿也は吾郎をきつく抱きしめる。
「吾郎くん・・・!もう、放さない・・・・・!!」
「・・・・寿・・・・・・。」


















ルームサービスで朝食を済ませ、そして身なりを整えてホテルを後にして。

「海が・・・綺麗だな・・・・・。」
「本当に。」
「また・・来ような?」
「そうだね。」
寿也は穏やかに微笑んだ。

















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なんだか無理やりな展開で申し訳ありません・・・!







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