「・・・!待てよ!・・・カイ!!」
何も見なかったように、何もなかったように俺の横をフイ・・とすり抜けるカイの肩を後ろから掴んだ。
なぜ・・・なんて、そんな事考えてもいなかった。
体が勝手に動いたんだ。

「・・・・。俺に何か用か?」
振り向きもせず答えるあいつに苛立ちを覚える。

「冷てーヤツだな・・。久しぶりだってだけじゃダメなのかよ?」
「・・・・。貴様と話すことなど何もない。失せろ。」
「!!」
見下したような一刀両断のカイの言葉に、俺の中の何かがプツリ・・・と切れた。
力任せに脇の壁にカイを押し付け胸倉を掴む。
「高飛車なところはちっとも変わってねーな?
人を蔑む時はなあ!それなりの覚悟ってーのが必要なんだよっ!」
「・・・・。」
伏せ目がちに瞳をそらす仕草。
変わらない・・・・・。
そう思った次の瞬間。
俺はカイに・・・唇を押し付けていた・・・。
胸倉を掴んだ手はいつの間にかカイの後頭部と腰に回し、しっかりと抱きしめて。
カイの唇はあの頃と変わらず、甘く柔らかく・・・・・懐かしい味がした。









少し話を戻そう。

数年前。そう、学生の頃までは、俺とカイは付き合っていた。
あの頃は────まだ良かったんだ。
でもお互い社会に出てからは、嫌でも現実的に未来を考えるようになった。

日本はマイノリティなんて認めない。
このままでは俺たちは社会不適合者だ。
結局。お互いのため、と話し合って・・・・・
そして俺たちは終わった。

もう、二度と会わないほうがいい────。
そう約束して。




カイはそれから仕事の鬼と化したようだ。
俺はBBAに勤めていたから、カイの噂は時々入ってきた。
火渡はベイブレードにも大きく関わっていたし。
だが恋人が出来たという話は聞こえてこなかった。

俺はというと・・・・・。
仕事にベイに、そして剣道に。
カイを忘れようと色々打ち込んでみた。
次々女とも付き合ってみた。幸い結構モテたしな、俺。
けどどうにも上手くいかない。
はっきり言うと・・・勃たないんだ。
一応可愛いと思って付き合い始めた子なのに。
今まではカイの硬く締まった体しか抱いた事がなかったから
プニプニの体を触っても全然燃えられなかった。
腕の中で喘ぐ女を、つい冷めた目で見下ろしちゃって。
さすがにそれじゃ失礼だから密かに薬を飲んで無理やり興奮したさ。
そして頭の中でカイを抱いているつもりになると・・・・なんとかなった。
自慰みたいなもんだ。
でもそんなんで長続きするはずもない。
結局どの女ともダメだった。

カイならどこもかしこも・・・隅から隅まで触りたいし舐め回したくなったんだけど。

俺は真のホモ・・・・・って訳じゃないと思う。
他の男に突っ込みたいなんて、考えた事もないし。

やっぱ、男だろうが女だろうが
愛がないと付き合うなんて、セックスなんて出来ないんだと・・・悟った。
ましてや結婚なんて・・・・。


それからの俺は完全に腑抜け。

俺にはカイしか愛せない事が分かったから。
でも二度とカイとは会えないから。
会っても、もう・・・。


こうして俺は、誰も愛せないまま
カイを想いながら一生を終えるんだろうか?

この若さで・・俺は枯れるしかないのか〜〜〜!?

ちくしょう。


なんてこった────────。











別れから2年。

今日の俺は本当なら仕事は休みの筈だった。
でも家にいてもボーっと・・・ついカイの事を考えちまうから
最近は休みでもBBAに顔を出す事が増えた。

そんな矢先だ。



BBAのトレーニング用ビルの一角で。

俺は廊下を歩いていたんだ。
練習生の相手でもしてやろうと、トレーニングルームへ向かう途中だった。
その角を曲がれば階段。
その角から人が・・・・・。



カイだった。


もう・・・驚いたのなんのって。

「ちっ・・・・。」
驚愕の表情や舌打ちする姿がやけに印象的で。

俺は驚いたけど・・・・・嬉しかったんだ。
でも。カイは違うみたいだった。

そう、感じてしまったら。



時間は止まった────────。






そして話は冒頭に戻る。










「ん・・・・っ・・!やめ・・っ!」
カイは振りほどこうともがいたが、俺はカイを離さなかった。
舌を絡ませ口内を辿ると・・・まるで昔に戻ったような気がして
夢中になってカイを感じた。

涙が出そうなほどの懐かしさ。
失ったものの大きさ。

目をギュッと閉じて必死に俺のキスを受けると涙がにじみ出て。
朱に染まる目元、漏れる吐息。
艶やかな・・・唇。


ヤベ・・・・。
俺・・・・。

下半身がみるみる熱く張り詰めてくる。既にGパンがキツイ。


ダメだ・・・・止まんねー・・・・・・。

俺はたまたま手当たり次第に手を伸ばした先のドアノブを掴んだ。
確かこの辺りは幸か不幸か仮眠部屋が並んでいたはず。

ドアを開けてカイを引きずり込んで・・・・・鍵を掛けた。




「貴様・・・・・どういう・・・・・・。」

それには答えず、というより答える余裕がなかった。
何か言って拒否されたら───それが怖かったのかもしれない。



──────俺は無言のまま、カイを乱暴にベッドに押し倒した。











こんなところで、終わったはずのヤツと・・・?

カンケーねえよ。



理性?

そんなモンは、カイに再会した時点でとっくにブチ切れてる。



残ったのは本能のみ。

2年ぶり。
目の前には、本当に久方ぶりの────愛しい人。



本能さえ残っていれば・・・・それで充分!!









カイのネクタイに手をかける。

「・・・やめろ・・・・。」

聞こえないフリ。

「やめろと言っている!!」

緩んだネクタイの隙間からシャツのボタンを上から外す。
カイの白い肌が・・・少しづつ・・・・・。

不思議だ・・・。
アレだけダメだったのにカイだと・・・。

脱がせるのがまどろこしい。
ボタンを外した部分のシャツを広げ
首筋に唇を落とす。
手を胸元に滑り込ませ、舌で肌を辿り・・・・・。

カイの匂いがした。

ダメだ・・・俺・・・泣きそう・・・・・。

 
「やめ・・・・木ノ・・・・宮・・・!」

カイが必死に理性と戦ってるのがわかる。
カイの体も・・・俺と一緒で、悦んでいるのが触れた先から伝わってくる。

その証拠に。
「やめろ」と言いつつ、抵抗がゆるい。

考える隙なんて与えてやるもんか!
俺はカイのイイ所なんて知りつくしてんだ。
抵抗なんて・・・・させるかよ・・・!


と思っていたら。


頬にもの凄い衝撃。
「・・・・って〜〜〜〜!」

カイの拳骨が見事俺の左頬に決まっていた。




俺は、情けない姿でベッドに尻餅をついた。

カイはというと、オーダーメイドの高級スーツが見事に着崩れ
ネクタイはゆるゆるの状態で
ワイシャツのボタンは半分まで外れ、胸元から乳首が覗き・・・。
カイがあの綺麗な顔で怒り心頭!のご様子で・・・目元を朱に染め荒く息をしていた。
カイって怒った顔はまた格別キレイで。
あのキツイ眼差しがたまんなく色っぽくて・・・しかもスーツ半脱ぎ・・・・・。
必死に息を整えるその吐息も、何もかもが俺の中の全てを直撃して。

もう頬の痛みなんて、一瞬で消し飛んだ。

すぐ押し倒して続きを・・・・!!


と思ったことなんて、きっとお見通しなんだろうな。

「貴様は・・・・何を考えている!!もう二度と会わないんじゃなかったのか!!」
カイが振り絞るように叫んだ。

「偶然だろ?偶然会っちまったもんはしょーがねーじゃん。イテテ・・・・。」
俺がふて腐れて答えると

「貴様は偶然会ったアカの他人を押し倒すのか!」
「他人って・・・・。」
「違うとでも?」

カイは既に身なりを整えつつある。

「・・・・・・・・。会いたかったんだ。」
「俺は会いたくなどなかった。」
瞼を伏せつつ、冷たく言い放つ愛しい人。

「カイは・・・もう忘れたのか?」
「覚えていても仕方が無い。」
「カイ・・・。」
「寄るな!!」

射抜くような紅い瞳。

ああ・・・。
カイだ。
こんなにも拒んで睨みつける、その瞳まで
これほどまでに愛しい。

涙が溢れそうな程の・・・。

だが、感動している場合でもなさそうだ。
ここは何とか話をつけなきゃな。
このままおずおず帰れるかって!


「さっき。さっきさー・・。
お前、流されそうになるのを必死で抵抗してただろ。なんで?」
「・・・・・・。」
「なあ・・・。なんで?」


「お前も本当は・・・。」
「言うな!!」
カイが目を閉じて叫ぶ。

「もう終わった事だ。」
目を閉じて静かに、諦めたように。過ぎ去った出来事のように。

「俺・・・・俺、カイが好きだ。
離れてみて、俺にはカイしかダメなことが、よくわかった。
さっき偶然カイに会って、止まらなかった。
俺は・・・・カイしか抱けない!」

「フン、散々女を泣かせておいて・・・よくそんな事が言えるな。」

「なんでお前、そんな事・・・・。」

フイと横を向いてしまった。

調べてたのかな。
俺のこと・・・気にしてくれていたのかな。

「・・・・・。ダメなんだよ。どうしてもダメだった。
しょーがねーから薬飲んでお前抱いてる気になって、何とかその場をしのいだ。
どうしてもダメだって気付いたから・・・・もう、女はヤメたんだ。」

「お前はどうなんだよ。誰かと付き合ったりしたのか?」
「俺は・・・・・。俺は・・・恋愛など興味はない。」
「はは!嘘ばっか!」

キッ!と睨みつけられて、ついつい引き攣り笑い。



「なあ・・・・、試してみねぇ?
ここで会ったのも、何かのお導きかもしんねーだろ?
一度だけ。
一度だけヤってみて・・・・もう一度だけ考えてみねぇか?」

「・・・・・・・・・・。考えてどうする。所詮行き着くところは同じだ。
この国にいる以上・・・・
俺たちが・・・男である以上────────────。」

その先の言葉を、俺は無意識のまま唇で絡め取っていた。
















「はぁっ・・・!ん・・・ぁ!!」

何処も彼処も。
可愛くて、愛しくて。

触れたくて舐め回したくて。

やめておこうと思っていたのに
気付けばカイの胸には無数の紅い華を咲かせてしまった。

ようやくそれに辿り着いた時には
甘い蜜を零し、ピクピク震えていて。

俺は吸い寄せられるように舌を這わせた。

まずは蜜を舐め取るように。
つー・・・っと根元から先端へ。
窪みに唇をあてちゅっ・・と吸ってみると

「あっ・・・!」
懐かしい喘ぎ声。

我慢できなくなって、むしゃぶりついた。

口いっぱいに頬張り舌を絡ませて。
口の中でビクビク震えるカイが可愛くて。
もっともっと感じて欲しくて。

「や・・・・やめ・・・!タカ・・・・オ・・・!!」
「こんなになってんのに、やめろってか?」
「・・・っつ・・!んっ・・・・ぁあっ・・!」

強がるのは口先だけ。
そんな事も、よ〜く解っている。

カイ自身はこんなにも悦んでる。
俺の・・・・カイ──────。


・・・・



ビュクッ・・・!

口の中でカイが弾けた。

俺は迷わずそれを味わいつつ飲み込む。
懐かしい・・・カイの味。



はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・。

目元からは一筋の涙が流れ落ちていた。
綺麗な涙。

カイの味が残る舌先で、流れる涙も舐め取って
そしてその柔らかな唇へ。


ん────。


「カイ・・。」


ちゅく・・・。
漏れる水音。


「カイ・・・。」

唾液が、カイの残渣が・・混ざり合う。

「ん・・・・。」

歯列をゆっくりとなぞり

「・・・・カイ・・・・・・・・。」

舌を絡めあって

「・・カイ・・・・・・。」

苦しげに酸素を取り込むキスの合間に、熱く愛しい人の名前を呼んで
また吐息ごと奪い去る。

狂ったように、それしか能がないように
ひたすらに唇を交し合い

ようやく名残惜しげに唇だけを離した至近距離で
恍惚の表情で互いを見つめ

「俺・・・・カイが好きだ・・・・。
もう・・・むちゃくちゃ・・・・好きだ・・・・・。
愛してる・・・なんて言葉じゃ・・全然・・足りねぇ・・・・。」

「・・・・タカ────。」
紅い瞳が揺れる。

「続き、シても・・いいか?」
「・・・・!」
「・・・いい・・・か?」
一瞬、ちょっと戸惑ったような困ったような表情をしたが
怒ったようにフイ・・と横を向いて

「・・・・そんなこと・・・・聞くな・・・・・・・・。」






カイが・・・・堕ちた────────────。









俺は心の奥底で──ホッと安堵の溜息をつくと同時にニヤリと笑った。






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