Don't tease me, please!
バディとはいえ、TIGER&BARNABYの二人が必ずしも一緒に行動するわけではない。もちろん事件が起きたときは二人揃って出動するが、メディアの取材などの出動以外の仕事が多くなるにつれて別れての行動も多くなり、オフィスででさえ顔を会わせることもできなくなっていた。
いつからか付き合い始めた二人にとって一緒にいられる時間が減ってしまうことは、顔を会わせれば言い合いをしていた頃が懐かしくなるくらい、淋しいものだった。
テレビ番組のインタビューを終えてバーナビーが会社に戻ったときには既に11時を回ってしまっていた。上司のロイズも経理の女性も、虎徹も帰った後のようでオフィスは電気も頼りない一つがついているだけで物悲しい雰囲気を醸し出していた。
こんな時間になるときは直帰すればいいということくらいバーナビーにはわかっていたが、もしかしたら虎徹が待っていてくれるかもしれないといい期待があって、ここへ戻ってきたのだ。
結局虎徹はいなかったが、バーナビーは自分のデスクに置いてあるものに気が付いた。
バーナビーがよく飲む缶コーヒーと、くしゃくしゃの紙。その紙には『おつかれさん!さみしかったら電話していいぞー』となかなかの汚い字で書かれていた。名前はなかったが、誰が書いたかなんて明白だった。
ふうと息をついて椅子に座る。缶コーヒーを手にとってみればまだずいぶんと温かくて、きっと長いこと待ってくれていたのだろうと想像がつく。退屈そうに椅子に座る虎徹が目に浮かび、疲れがふっと軽くなった。
バーナビーは椅子から立ち上がり、虎徹のデスクへ移動する。席に座ってみれば僅かだけどぬくもりが感じられ、胸が切なくなった。
よく思い出してみれば、もう何日も虎徹と触れ合っていない。最後に肌をあわせたのはいつだったか、おそらく2、3週間は前だろう。忙しいのは仕方ない。しかしそれを自覚すれば、彼に触れたくてたまらなくなった。
コーヒーを頬に当ててぬくもりを感じてみたけれども、淋しさは埋まらない。せめて声だけでも聞きたくて、携帯電話をとりだした。
慣れた手つきで虎徹の番号を呼び出し、通話ボタンを押す。
『――もしもし?』
短い機械音の後に、聞きなれた低い声。
『なんだ、バニー今終わったのか?』
「はい、今会社に戻ったところです。あ、コーヒーありがとうございます」
気持ちが浮ついてしょうがない。機械を通した虎徹の声と椅子から漂う残り香に、バーナビーの性欲にスイッチが入った。
『おー、もうちょっと待ってればよかったぜ。そしたらバニーと一緒に帰れたのにな』
ははっと楽しそうに笑う虎徹に欲情している。むくりと、中心が大きくなったのがわかった。
「はは、そうですね。でも…僕もいつ帰れるかわからなかったので、そういうときは待っていてくれなくても大丈夫ですよ……、1人で、帰りますから」
いつもの調子で声を発しながら、ベルトを外す。ガチャリと鳴った小さな音が聞こえていないか不安だったが、おそらく大丈夫だろう。
『俺が待っていたいんだから待たせろよ。それにしても今日は遅かったなー、何、話してたの?』
虎徹の話し声の向こうには、車の音や、繁華街のような人の騒めきが聞こえる。歩きながら話しているのだろう。
多少の後ろめたさを感じながらも、ふるふると起ち上がりはじめたそれを手に取った。
「…今日は、ニュース番組にゲストで呼ばれていました。あと、生放送の番組にも出ましたよ」
『あ、それ見てた。お前、かわいい女の子に、好きです!!とか言われてたやつだろ』
虎徹が話している間に、彼に聞こえない程度に息を吐く。耳に虎徹の声を感じながら数回しごけば、すぐに角度を増した。
「…そんなとこ覚えてなくてもいいのに……っ」
拗ねたふうにぽそりとつぶやき、手は鈴口を刺激する。危うく声を出しそうになったが、寸でのところで押し留める。この背徳的な行為に興奮しているのか、バーナビーは虎徹のデスクに突っ伏し自身を慰める。
『冗談だって!なんか今日のバニーちゃんかわいくていじめたくなっちゃってさ』
ビクリとした。虎徹は、何か感じ取ったのだろうか。
詰めた息とは裏腹に、手の動きは一層激しくなる。溢れる先走りを手に絡め、カリの辺りを重点的に責め立てる。
「なんですか、それ。全く虎徹さんは……優しいんだか、意地悪なんだか……」
毒づきながらも吐く息は濃厚で、気を抜けば喘ぎ声がでてしまうだろう。はぁーと深く息をする。ため息と聞き間違えられるように、しかしそろそろ限界だ。
触れてほしい、虎徹さんの体温を感じたい、呼吸を感じたい、虎徹さん、キス、して。
「……こて、つ、さん」
『ん?何、バニー』
「あ、いえ、なんでも……っ」
無意識に虎徹を呼んでしまったようで、優しい声で名前を呼ばれ一気に高ぶった。もう、イきたい……。
堪えきれない吐息が声に混ざる。
「……あの、虎徹さん。……僕の名前、呼んでくれませんか」
こんな恥ずかしいことをしていると虎徹が知ったら、どう思われるだろう。
『…んー、わかった。……バニー、好きだよ』
「……っ」
ベッドの中での睦言のような声で呼ばれ、擦り続けていたペニスをぎゅっと握り、鈴口に爪を立てた。
『バニーは寂しがりだな……でも、これはちょっと恥ずかしいぜ?』
どくり、白濁した体液が手を汚す。
「……すいません、もう、大丈夫です。少し、疲れていて…」
乱れた息を整えつつも、デスクにあったティッシュで手とペニスを拭う。
途端に後悔とか罪悪感とか、そういうものが襲ってきて、虚しくなる。
『そう?じゃ、そろそろ切るな、気を付けて帰れよ?』
「はい、ありがとうございます」
プツリ。
そうだ、帰ろう。明日も普通に仕事だし、シャワーを浴びてベッドにダイブしたい。とぼとぼと、帰路についた。
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