九蓮宝燈ノイローゼ
ひろゆきが天の家に遊びに行く事自体は、珍しい事ではなかった。
なんせ昔は半同居のような生活で、暇な時はたいてい一緒、家族と言ってもおかしくないくらいだった。今でも天や天の嫁さんたちから早く家出から戻っておいでと冗談交じりに言われるが、さすがにそれはご免だ。
非常識さについてゆけなくて出ていっても、稼いだ百五十万を勝手に使われても、ひろゆきと天との腐れ縁はなぜか続いている。
考えてみればそもそもの出会いからして最悪だったのだが、ひろゆきはどうしても天を嫌いになれない。
ヤクザとの勝負に勝って貰ったはいいが、天に派手に使われた百五十万円も、地道に稼いだ金なら天はあんな事はしなかったんだろうと思う。
あぶく銭はパアーっと使わなきゃかえって毒になるんだよと天はあの後ひろゆきに言った。
これに懲りたらもうやめとけ。ヤクザとつるんでも碌な事ねえぞ。
その言葉だけ妙に真剣で、天がヤクザとの勝負をかなり快く思っていないと気が付き、だからあんな事をしたのかととも思ったが、ひろゆきは勝負後誘われたヤクザの代打ちの依頼を受けるつもりでいた。
僕が負けるとは思わなかったんですか? と聞くと、ひろが奴ら相手に負けるわけねえだろ! と天は笑い飛ばした。
殴られた挙句金を奪われる。という最悪の事態にはならなかっただけましか。と自分を慰める。天は、それからは本当にひろゆきを救ってくれたのかもしれない。
天の豪快さ(アホさ)や、天に全く悪びれる風もなく、いつもの調子で、怒ったんなら殴っていいよ。と言われると、この人は怒るだけ無駄だと逆に呆れてしまう。
さんざん酷い目に会わされたなと思うのだが、天という人物に惹かれるのだ。
麻雀という共通点はあるものの、価値観も合わなければ、常識もまるで正反対。
最初は付き合うとストレスばかり溜まるんじゃないかと思っていたのだが、意外とそうじゃない。
隣に住んでいたときは気が付けばいつも一緒にいたが、相手を束縛するというような関係ではなかった。
探しに行けばすぐ見つかったし、相手も探しに来るのを待っている。
会う約束はしていなくても、磁石のようになぜだか引き合う。
お互いが一緒にいたいからいるという気持ちと、相手の自由を尊重する大雑把さが、二人の間を心地よいものにさせている。
天は、ただの常識破りで破天荒な男ではない。それはあくまでも天の一部分に過ぎない。
大胆の中に細心の注意を払い、粘り強くけして諦めぬ。それに加え、自分を犠牲にしてでも他人を守る優しさと誠実さ、汚い手口で自分が汚れる事も厭わぬ清濁併せ呑む器の大きさ。
天の派手さにのみ目が行きがちだが、天の本質は、懐の深さと優しさにこそあるとひろゆきは思う。
ひろゆきは、天が、雪の中他人のために何時間も自分を犠牲にできる男だと知っている。
天のそんな所をよく知っているから、あんなことをされても天の事を嫌いになれないのだ。
そんな天にドキッとする時もあるし、やっぱり二度と関わらないと心に誓う事も有るのだが……。
なんだかんだで、天に来いよと言われるとけっきょく会いに行ってしまう。
不思議な事に、天さんに会いたい。とひろゆきが思ったときに、それを見透かしたように天からの誘いがあるのだ。
まるでエスパーみたいだ。と思う。
最初は単純に天と仲良くなるのが嬉しかった。いつも一緒にいても飽きなかった。
だが、最近どうも妙だ。
天のささいな言葉が引っかかり、気が付けばその事ばかりを何度も考えている。
きっかけは、些細な冗談。
「最近いつも二人一緒にいるね、天ちゃん」
天は顔が広いらしく、商店街を歩いているとよく声をかけられる。特に最近ひろゆきといつも一緒にいるので、商店街の人も興味があるらしい。
魚屋の前で興味深々でそう声をかけられると、天が軽く答える。
「うん、俺の三人目の嫁さん」
「へー、若いぴちぴちの嫁さんで羨ましいね」
冗談にノリのいい返事を返され、天が笑った。
「俺の嫁さんに見える?」
「あれ? 違うの? 仲が良いからてっきりそう思った」
大げさに驚いたふりをしながら相手がからかうように言う。その後、ごめんねー、冗談だから、とひろゆきは言われたのだが、天はちらっとひろゆきを見て言った。
「俺は嫁さんでもいいんだけどね」
そのやりとりを天の後ろで聞いた時から、どうも自分がおかしいのだ。
最初はなに馬鹿言ってるんだかと思い、他愛ない冗談だとその時は口も挟まなかったのだが、その後も、あの時の事が変に頭に引っかかっている。
妙に嬉しいのだ。
天が自分のことを嫁さんにしても良いと思っているというのが。
それだけだったら、かなり強引だがいきすぎた友情といえるかもしれない。
だが、最近それだけではない。
天はときおりじっとひろゆきのことを見つめる。こちらが恥ずかしくなるくらいに、じいっと。
なんですか? と聞くと、別にー。と答え、またじっとひろゆきを見る。訳がわからなくて顔をしかめると、なぜかポケットの中から取りだした飴をくれる。
これやるから大人しく見られてなさい。
天がそう言った時は、何なんだよと軽く睨みつけたのだが、天は、ひろゆきを宥めるようにぽんぽんと軽く頭をなで、それでもひろゆきをじっと見るのをやめない。
いいかげんにしろ! とその時は怒ったのだが、天は全く懲りずに同じことを繰り返す。
可愛いなーと思って。
そう言って、天はひろゆきをじっと見たり、頭を撫でたりする。
最初はいちいち怒っていたのだが、そのうち怒っても無駄だと抵抗を止め、不満ながら天のなすがままになっていた。そうしているうちに、ひろゆきの方も妙に天を意識するようになってしまったのだ。
天から好意を向けられているというのは悪い気はしなかった。
思えばそこで自分にブレーキをかけなかったのが悪かったのだ。
天の些細な仕草や、表情にドキッとさせられる。もっと天の事を見たいと思う。
気が付けば時おり無性に天に会いたくなって、居ても立ってもいられなくなる。
懐かしいというには、前会ったばかりだし、天の事を思うと、胸が痛いような、甘いような変な気分になるのだ。
天さんに会いたいな……。
今もそう天の事を想った時に、タイミングよく急に電話が鳴った。変な気持ちになっているのを見透かされたのかと思ってうろたえる。
電話の相手は、やっぱり天だった。
今日は嫁さんがいないから、一緒に夕飯を食いに行こうという誘いにOKの返事をしながら、声が上ずらないように気をつける。
狂った調子は容易に元に戻らない。
夕食を一緒に取った時も、その後軽く雀荘を回った時も、一緒にいる間、どこか自分が浮き足立っているのを感じる。
顔赤いよ? お前。と天に言われ、熱があると思われたのか大きな手を額に当てられる。ますます挙動不審になるひろゆきを、天が不思議そうな顔で見ている。
「もう、帰ります……」
夜もふけたし、これ以上醜態を晒す前にとひろゆきはそう言った
「え? うち泊まってくだろ?」
「え、いや、今日は……」
「何でだよ? 寂しいだろ俺が」
「でかい図体で拗ねないで下さい」
「じゃ、決まりね」
天は強引にそう言い、ひろゆきの返事を聞かずにさっさと歩き出す。
なんとなくいつもと違う事がおきそうな予感はしていたのだが、よくある事なのに今回だけ断るのもおかしいかと思い、ひろゆきは天の言うがままに家までついてきてしまう。
よく知っているはずなのに、天の嫁たちがいない家は、ひろゆきにはやけに静かでよそよそしく思え、側にいる天の事をよけい意識してしまう。
コタツに入ってテレビ見て馬鹿な話をして、そこまではいつもと同じ。
久しぶりに天さんとこんなに喋ったなぁとひろゆきがぼんやり考えていると、唐突に天が口を開いた。
「俺、お前の事好きだな」
TVを見ながら、ぽつりと呟くように天がそう言った。
「そのわりにはたくさん酷いことされましたけどね、俺も結構好きですよ、天さんのこと」
ちゃぶ台の上の天津甘栗を剥くのに悪戦苦闘しながら、ひろゆきが軽くそう答える。
口調の軽さとは違って、内心では口から心臓が飛び出そうだった。
天さんが僕の事を好きなのはわかっている。
問題は、それがいつ天さんの口から出るのかってことだ。
その事ばかり考えていたひろゆきに、ついにその時が来たのだ。
「俺が言ってるのは、キスとか、セックスとかしたいってことだぞ」
「はぁ? ……俺、女じゃないですけど」
天の言葉に、思わず甘栗を剥くのを止め、ひろゆきが眉を顰めて天に怪訝な顔をしてそう言った。普通に考えて、いきなりそんな事言われて、はいそうですかと言えるわけが無い。もし内心でそれを望んでいたとしても。
かけひきというやつだ。
天がどれだけ本気なのか、どれだけ自分を捧げても良いのか、ひろゆきは探っている。
「そんなの見りゃわかるよ。別に男同士でもセックスはできるだろ。俺昔すっげえ美人のニューハーフとやった事あるけど、男でもかわいけりゃやれるなと思ったな」
「ケダモノですね……」
ひろゆきの呟きをあえて無視して、天がひろゆきの顔を覗き込んだ。
「お前見てるとさ、構いたくなるんだよ。こっち向いて欲しくなる。ひろの事可愛くて仕方がねえ。ホモなのか、俺は?」
「僕に聞かないで下さいよ。男が好きって事は、ホモっていうか、女も好きなんだからバイなんじゃないですか?」
ひろゆきは天を軽くかわし、また甘栗を剥く事に没頭し始める。
自分への天の目線で、仕草で、天さんは僕の事好きなんじゃないかとずっと思っていた。
ひろゆきと違って、天はひろゆきが好きだという気持ちを隠そうとしない。
天さんは僕の事が好きなのかも? いや、そんな事は無い。
そう振り回されるうちに、いつしか自分まで天を意識するようになってしまった。
はめられた、の、かもしれない。
悔しいのであまりそう思いたくはないのだが、事実そうなのだから仕方が無い。
「ふーん、あんま驚かないんだな、ひろ。つまんねーな」
「天さんが突拍子も無い事言うのもう慣れました」
甘栗を剥く手が震えないように、細心の注意を払いながらひろゆきがそう言った。
天さん、もしかして俺が天さんのことたまにかっこいいなって思ってる事、ばれてる?
そう思うと、恥ずかしくて頭が真っ白になりそうになる。
「ひろ、自分の事なのに全く他人事だと思ってねえか?」
そう言いながら、ひろゆきが綺麗に取り出した甘栗を横から攫い、天が口の中に放り込む。
内心はともかく、表面上は落ち着いて見えるひろゆきが不満らしい。
「天さんにいきなり好きだと言われて本気にする方が馬鹿だと思いますけど?」
甘栗をかっ攫われ、天を睨みながらひろゆきがそう言い返した。
天の言葉にみっともなくうろたえるのはご免だ。と警戒している。
「ひでえ……。俺は本気だぞ」
天がそう言うと、ひろゆきが横目でじーっと何も言わず天を見る。その目は、明らかに胡散臭いと思っている目だ。
予想はしていたが、ひろゆきは天の想いに素直に答えそうにはない。
だけど、もう一押しなのはわかっている。
「ひろに初めて会ったときな」
「はい」
「『あなたとサシ馬ですか?』って言ったのよ、お前」
その天の言葉に、ひろゆきがぱちくりと大きく瞬きした。
「そんな事よく覚えてますね」
「そりゃ、フォーリンラブの瞬間だから」
「…………」
呆れて言葉が出ない。
「その『あなた』って言い方にドキッとしたな。あんな場末の小汚い雀荘でさ、あなたっていう響きが場違いに綺麗だった」
少し目を細めて、懐かしむように天が言った。
「お前、結局負けた分払ったし、俺も殴らなかった。ああいう時って人間の本性が出るんだよ。金に汚い奴は本当に見苦しい。だけどお前は、金の事よりも俺のアホさにプンプン怒ってて、綺麗だな、こいつって思ったんだよ。俺、汚い人間だからさ、凄く惹かれるんだよ、綺麗なものに」
「綺麗……かなあ? 自分ではいまいちピンと来ませんけど?」
「俺を何のわだかまりも無く許してるって結構すごい事だぞ」
天が突っ込むと、ひろゆきが困った顔をした。そこは正直自分でもよく判らない突っ込まれたくない部分なのだ。
天さんのことが好きだから。というのが一番近いのだが、素直にそれを言うのは照れくさい。
「そりゃ天さんが……」
「俺が?」
「面白い人だったから……」
しどろもどろの変な言い訳をする。天を好きだというのは、友達としても変わらなく思う感情なのだが、今この場で言うのはやたらと恥ずかしい。
「自分では判らねえかもしれねえけどさ、お前、凄く綺麗だよ」
天がそう言って手を伸ばし、ひろゆきの頬に触れた。天の声が愛情に満ちていて、引き込まれそうになる。
「天さんこそ、あの時の代打ちのお礼貰ったんですか?」
天に引き摺られるのが怖くて、かといって天の手を振り払う事も出来ず、ひろゆきは話をそらすようにそう言った。
「そういえばまだ貰ってねえ」
「早く貰えよ!」
ボケーとした顔で言った天に、ひろゆきがすかさず突っ込んだ。
天の不甲斐なさに怒る姿が嫁にそっくりで、思わず天が笑う。
「頼られるのは嫌いじゃねえんだ。だけど、商店街の皆も、俺に頼り癖がついているっていうか、ちょっと気が進まない麻雀だったから、よけいお前の綺麗な態度が嬉しかった」
気の進まない麻雀で、他人のために半殺し覚悟のいかさまをするんだからな……。
半分呆れて、ひろゆきが内心で呟く。
「お前、俺好みなんだよ。綺麗で、気が強くて、でも素直で、その上顔も可愛かったからさー、好きになったみたい」
「奥さん二人もいるくせに何言ってるんですか」
「うーん、それとはまた別なんだよな。欲しいんだからしょうがねえ。他の誰が居ても、俺に足りねえのはひろなんだから。お前じゃないと意味ねえの」
素面の癖にさらっと甘い言葉を囁き、ひろゆきの髪に触れる。
「天さん、ひょっとして俺の事口説いてる?」
コタツに肘をついて両手の指を組み、その上に顎を乗せ、上目使いで天の目を覗き込みながらひろゆきがそう言った。
「うん」
ひろゆきの問いに、天があっさりと素直にそう言って頷く。
「ふーん」
天の返事を聞き、口元を拳で隠し、横目で値踏みするようにひろゆきは天を見る。天は、何を考えているのか判らない笑顔で、ひろゆきの目を誤魔化そうとする。
「あの時は、結局天さんの方が一枚上手だったなって心の底で認めてたんです。確かに悔しかったけど、それは負けた自分の不甲斐なさに悔しかった訳だし、文句言いながら、天さんのそういうところ俺には無いなって思ってそれも悔しかった。自分に無いものを天さんが持ってるから惹かれたのかな?」
天はひろゆきの持つ綺麗なものに惹かれ、ひろゆきは天の清濁併せ呑む懐の深さに惹かれる。
きっかけはそうだったのだろう。それがどうして恋愛感情を抱くようになったのかは自分たちでもよく判らない。だが、最初から意識していたのだろうと思う。
「他人のために、僕に殴られるつもりだったんでしょ? あの強引なすり替えといい、この人、どういう人なんだろうって思ったのが運のつきですね。結局天さんのことが好きだから今も一緒にいるんだろうな」
「じゃー相思相愛かあ」
嬉しそうに天が言うと、釘をさすようにひろゆきが言う。
「相思相愛って言葉が当てはまるかは判りませんけどね。僕は男だから、もともとそういう対象で天さん見てないし。だから友達として天さんのことが好きだけど、僕が女の子だったら、好きになってたかもしれないです」
これが、ひろゆきの精一杯の告白だ。
友人としてなら、最高級の賛辞だろう。
ひろゆきはまだ天に心を明かさない。
ひろゆきの言葉を額面どおりに受け取れば、天とは恋人としては付き合えないと言っているようでもある。
だが、ここで引き下がる天ではない。麻雀のように、相手のブラフを見破り、自分に振り込ませなければいけないのだ。
「抜けた事言ってるなー、ひろ。恋は突然なんだぞ。友達だと思ってた幼馴染と恋に落ちるのも、男同士で恋に落ちるのもほんの些細なきっかけなんだぞ。あっという間に恋に変わるから」
「些細なきっかけって何ですか?」
力説する天に、何気なくひろゆきが聞く。
「キス……とか」
それは俺が今したいだけなんだけど。
内心でそう思いながら、天がそう口にすると、ひろゆきが天の内心を見透かしたようにくすっと笑った。
その笑顔に、急に我慢が出来なくなる。理性の箍が外れる。
ああ、もういい。大丈夫だ、行け。
天が、殴られる覚悟を決める。
「男と男の間には、深くて超えられぬ川が流れてるんですよ。……普通はね」
ひろゆきがそう言っている間に、ゆっくりと天の顔が近づいてきた。最後の言葉を言い終わるや否や、ひろゆきが瞼を閉じて顔を傾け、天が唇を重ねる。
嫌なら、拒絶できたはずだ。
だが、ひろゆきは目を閉じて天を受け入れた。
「俺、普通じゃないかも」
天の唇が離れると、小さくため息をついて、目を伏せてひろゆきがそう言った。
「天さん、そんな嬉しそうな顔しないで下さいよ……」
天がキスの後あまりにも嬉しそうな顔をしているので、ついほだされそうになる。
「気持ち悪いとか無いわけ?」
「思ったよりは平気。でもこれ以上は無理ですよ。できませんよ」
「したいんだけどなー」
上目使いで天がねだるように言うと、ひろゆきがコタツから無言で這い出た。
「逃げるな」
「逃げますよ」
あたりまえだろ。とひろゆきが天を睨むと、天がへらへらっと笑った。
「俺、テクニックと持久力には自信あるよー。すっごく気持ちいいよー」
うさんくさい顔をしてそうアピールしたあとひろゆきの顔を覗き込む。
「興味ない?」
「ない!」
きっぱりひろゆきがそう言いきると、ちぇっと天がつまらなさそうに舌打ちした。
「じゃあセックスは諦めるから、とりあえず抱っこさせてくれ」
「ええ〜〜」
また不満そうな顔をしたひろゆきの体を、強引に持ちあげて膝の上に座らせる。
天に後ろから抱きしめられるような格好になり、ひろゆきがますます納得がいかないという顔をする。
ひろお前俺のことが好きなんだから、ちょっとは素直に甘えろ!
そう言いたいのをぐっと堪える。
「それくらい良いだろ! ほれ、ひろの好きな甘栗剥いてやるから口開けろ」
強引にそう言って、天はまだぶつぶつ言うひろゆきの口の中に剥いた甘栗を突っ込んだ。
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