決戦は金曜日 〜改訂版〜 久しぶりでは有るが相変わらず某日・某所を旅行中の皆様ご存知、召喚士ご一行である。 某日?!某日なんて勝手に追加すんなよ! しかも旅行じゃねぇし! つか『水戸○門』のオープニングNEみたくなってきたじゃねぇかよ!! …とまぁ相変わらずツッコミ所満載だが、定番になりつつ有る様に某日・某所で納得して頂くしか方法は無い。 やっぱり某日は追加なのかよ! …実際日付なんてどうでも良かったりするが。 良くねぇし!大体せっt…(強制終了) 長くなりそうなのでこれ以上のツッコミは控えさせて貰う事にした。 さて、冒頭で皆様ご存知の召喚士ご一行であると紹介させて頂いたが…今回のものはユウナ率いるいつものご一行ではない。 ならば誰なのか。 「なぁ、本当にこっちで間違いねえんだよな?」 「疑っているのかい?ジェクト」 「貴様、まだブラスカ様を愚弄するのか?!ブラスカ様の仰る事に間違いは無いんだ!」 もうお解りだろう。 そう超有名人・ブラスカ様ご一行である。 どうやらで初めからエライ事になっているらしく、何故か街道を外れた獣道を爽やかな笑顔で邁進中のブラスカの後ろをジェクト、その後ろをアーロンが草を掻き分けつつ進んでいる。 一体どこに向かっていると言うのか。 …その辺りは全然解らないが知ったる勝手の様にガサガサと下草を掻き分けて進んでいくブラスカ。 何気に保護色である。 「あー…疑ってるつーか俺は心配してんだよ」 「心配してくれているのかい?!」 どうも言い訳じみた言い方で頭を掻いたジェクトが何気無く呟いた途端。 ブラスカが跳ねる様に振り返る。 しかし前進する足は止まらない。 「おい?!ちょっ、前見て歩かねえとコケるぞ?それじゃねえでもその邪魔くせぇくらい長い法衣着てんだからよ…」 言えている。 「ははは、大丈夫だよ。慣れてるから」 笑顔でさらりと返したブラスカ。 どうやら前を向く気は全然無いらしい。 さらに言うなら“この長い法衣を着慣れている”のか“後ろ向きで歩くのに慣れている”のかそれとも“コケ慣れている”のか…判断が微妙な言い回しである。 もしかすると全て含まれているのかもしれない。 オイオイ…本当に大丈夫なんだろうな?!───と不安が頭を掠めるジェクトの後ろでアーロンはひたすらに納得していた。 盲目的な信頼もここまで行けば見事な天然素材100%。 何故か意味も無く愉しげな笑顔を浮かべているブラスカは未だに後ろ向きで前進中である。 ブラスカは後ろ向きで道無き道を歩いてるのにも拘らず何故かジェクトとアーロンが早足になるほどに早い。 「テメェ、なんでそんなに早く歩けるんだ?!後ろ頭に目ん玉有るんじゃねぇだろうな?!」 「ブラスカ様がそんな化け物の様な方の筈が無いだろうが!」 ジェクトが冗談で言った言葉にシニカルな微笑みを向けるブラスカ。 何か本当に有るかのような微笑み。 ジェクト、思わず拳を握り締めて生唾を飲む。 アーロン、ブラスカの怪しい笑いに気づかず。 「どうでしょうねぇ…今夜調べてみますか?(ノって来たらそのまま私がジェクトを調べてあげましょうね…もうそれこそ隅から隅までじっくりと…)」 ※()内は口には出さない心の声である。 ニッコリと微笑むブラスカ。 それは見事なまでに慈愛に満ちたパーフェクトな笑顔であったが。 それを見たジェクトは物凄い勢いで首を横に振った。 そんなに嫌なのか。 「ブ、ブラスカ様が許して頂けるのなら失礼して私が…」 「つーか本当にどこに行くんだよ…」 「あれ?言ってませんでしたか?」 アーロン、無視される。 さすがの天然アーロンもこう二人の世界に入り込まれてしまっては堪らないらしく、俯いて握り拳をわなわなと震わせている。 「言ってねぇ!つか俺は聞いてねぇ!」 自信たっぷりでどうだとばかりに胸を張るジェクト。 間違っている。 「ジェクトの胸筋は良く発達していて…いつ見てもイイですねぇ…」 さらに間違っている。 「ジェクト!ブラスカ様にいちいち意見するな!黙って付いて行けば解るんだ!!」 こっちはかなり話題が遅い。 話が全然噛み合わないままどんどんと深くなる草むらをどうにか通り抜けると突然の様に今までの鬱蒼とした森から一転、いきなり村である。 「やっぱりあの道でも来れたんだねぇ…ココに来るのは20年ぶりか。久しぶりだなぁ」 村の中へずんずん進んでいくブラスカの呟きにジェクト、固まる。 何故かその背中に行き当たるアーロン。 「いきなり止まるな!」 驚いてよろけた態勢を整えて文句を付けたが二人の姿ははるか前方。 またもや無視されるアーロン(25歳)。 しかしその事実に気づかない辺りが天然と言うか既にいじらしい。 「テメェ!んじゃあ何か?他に道はいくらでもあんのか?!」 「有るよ?多分さっきの道よりは早く着く上に安全だろうね…帰りは面倒だからそっちを通って戻ろうか」 ジェクトはもう二の次が告げない位にショックを受けていた。 「一度通ってみたかったんだよ。昔は魔物が多いとかで通る事を禁じられていたからね」 とんでもない事をあっさり微笑みながらのたまったブラスカは辺りを見回してふと眉を顰める。 「可笑しいな…人気が無い」 「あ?…ああ、ソレは俺も思ってた」 「何か有ったんでしょうか…」 三人は村の中央辺りだろう広場で立ち止まり、それぞれが考える様に眉根を寄せていた。 「コレじゃあ今夜はまた野宿だね…」 約一名考える方向が違う様だが。 不意に近くの物影で何かが動く気配。 ジェクトとアーロンが咄嗟に剣を構えるよりも早く何故かその動く物が発火! 驚き、飛び上がって物陰から転がり出てきたのはブラスカ達(アーロン除く)と年頃は同じくらいの男。 「あ」 少し驚いた様に目を瞠ったブラスカはジェクトとアーロンが慌てて消火しに行く様を見ながら呟いた。 「驚かせるから思わずファイア唱えてしまったじゃ無いか…」 怪奇自然発火現象の犯人、ブラスカ。 更に説明するなら、確かにブラスカが放ったのはファイアだった。 …が如何せん彼の現在の魔力はもうじき255に到達しようと言う所。 既にファイガ以上の威力。 ブラスカがダメージ限界突破の武器を所持してなかった事だけが幸いだった…。 「大丈夫ですか?」 自分が放ったファイア(ファイガ以上の威力)のせいでこうなったというのにいけしゃあしゃあと村人を気遣うブラスカ。 まるで何事も無かった様な振る舞いはパーフェクトに上手い。 ジェクトとアーロンの懸命の消火作業のお陰でどうにか命は取り留めたらしい村人A。 その脇で大量のポーションを消費しているアーロン&ジェクトの姿を見つめてブラスカは眉を顰めた。 “いっそ一思いに殺った方がフェニックスの尾一つで済んで良かったかな…?”───などという凶悪な思考がブラスカの頭を横切ったのはアーロンとジェクトには知らせられない事実である。 「あの、も、もしかして召喚士様ですか?!」 村人Aいきなりの復活。 さっきまで瀕死状態であった村人Aがもう元気なのはRPGの暗黙の掟なので触らないようにして頂きたい。 「もしかしなくても召喚士だけど、どうかしたのかい?村の様子も少し変なようだけれど…」 更に動じないブラスカ。 さすがである。 「聞いて下さい!村は今、近くの森から度々群れを成してやってくるオーガのせいで壊滅状態なのです!初めの頃は腕自慢の者を始め村は村の者で守ろうと戦っていたのですが何分オーガの数が多く、もうこの村には戦力になる者は残っておりません…。異界送りをする召喚士もこんな辺境の村には訪れる事も無く…魔物は数を増やす一方なんです!どうか、召喚士様!!立ち寄っていただいたのも何かのご縁、どうか助けて下さい!!」 平伏し泣き崩れる村人A。 説明的かつ橋田○子作品に出演出来そうなくらいの長台詞を一気に言えたのは状況が本当に切羽詰っていたからだろう。 「ブラスカ…助けてやろうぜ?」 「そうですねぇ…私も究極召喚を求める身…寄り道してる暇は無いのですがどうにも金銭的に苦しくてね。今夜の宿も食事もどうしようかと困って居たんですよねぇ…」 十分暇そうだが。 さらに見え見えに何かを求める言い回し。 本当にこの人が偉大なる召喚士なのかが疑問に思えてくる所である。 しかしそこは切羽詰ってる村人A、二つ返事で“狭い所で申し訳有りませんが是非うちに!”と三人を招いたのだった。 「んでそのオーガの群れっつーのはいつどこの森から来るんだ?」 案内された家にずかずかと入っていくと勝手に人のうちで既にくつろぎの体勢のジェクト。 さすがスーパースター。 スケールが違う。 「この村の南に有る立ち入り禁止の森からです。昔からあそこには魔物が多くて…」 正にさっきブラスカたちが通った獣道が村の南の立ち入り禁止の森の事である。 その言葉を聞いてジェクトは“おいおいマジかよ…”と天を仰いでしまう。 その時アーロンは何故かブラスカの肩を揉んでいた。 肩を揉んで貰いながら茶を啜るブラスカは呑気に“あ、もうちょっと右…ああ、そこそこ”と指示を出してご満悦である。 本当にこの人達はやる気が有るのか大いに謎である。 「場所は解った。時間とかは解るか?大体でいいからよ…」 村人Aの顔には当然の如く 不 安 の二文字がデカデカと 現れていたが、どうにかまともに話を聞いてくれるジェクトのお陰で少し…ほんの少し安堵していた。 まぁ人のうちに入っていきなり何か(主に食料が)無いか手当たり次第引っ掻き回した人物ゆえ信頼度が低くてもしょうがないのだろう。 「多分…もうじき現れると思います」 窓の外で輝きを和らげて山間に向かって落ちて行こうとしている夕陽を見つめて村人Aは嘆く様に答える。 「んじゃ俺はちっと寝るわ!戦いに備えねぇとな」 言いながらゴロリと体を横たえたジェクトはものの3秒もしない内にいびきを掻き始めた。 その速さはのび太並である。 「相変わらず緊張感の無いヤツだ…」 フン、と鼻息も荒く文句を口にしたアーロンはまだブラスカの肩を揉んでいる。 「それがジェクトの良い所だよ」 そう言って微笑むブラスカは目だけはジェクトの体を今にも飛び掛りそうな程に爛々とした眼差しで見つめている。 この人達も緊張感という物は無いらしい。 村の運命は薄雲が垂れ込め始めた今の天の様に先行き不安、前途多難の様だった。 どうなるのか?村の運命! 気になる人は下の“NEXT”を勢い良くクリック!! |