私は今、非常に困ってます。
まずは、お昼前のやり取りからお話しましょう。
今日はノエルお姉さまが忍さんにメンテナンスを行ってもらっているので、
私は普段お姉さまがしている仕事を一部手伝うことになったのですが…
「ノエル、ここのアクチュエーターの具合はどう?」
「そうですね。少し47°角付近で抵抗値が高くなってます」
「んー、ちょっと稼働部分が潤滑切れ起こしてるかな。このリテーナを交換してみよっか」
「はい」
「あ、やっぱり。割れた部分にたまってる」
私には何のことやらさっぱりですが、お姉さまのひじの部分をつけたり外したりしているみたいです。
そのやり取りを聞きながらお掃除をしていたわけですが…
ひじを引いたときにあたってしまったようで、
派手な音を立ててお姉さまから取り外した部品が床に散らばってしまいました。
「あうう、ごめんなさいぃ」何度も何度も頭を下げる私。とっても恥ずかしいです。
その様子を見て忍さんとお姉さまはくすくすと苦笑いされて、
「ファリン、その部品は廃棄するやつだから気にしなくてもいいよ」と言ってくれました。
忍さん、とってもやさしいです。お姉さまはかなりあきれているように見えます。
ふと、忍さんが何かに気づいたようです。
「あ、いけない。ファリン、ちょっとお使い頼んでもいいかな?」私は何ですか?と返事をしました。
「うん、ちょっとこれをなのちゃんに届けてほしいんだ」とゲームソフトと何かバッグを渡されました。
バッグ、ちょっと重たいです。
「忍お嬢様。それでしたら私が…」お姉さまが心配そうに忍さんに言うと、忍さんは
「だーめ。今回は取り替えた部品が多いから、慣らし運転しないとね」とお姉さんを抑えました。
「しかし…」何かを言いかけたお姉さんを遮って、忍さんが
「そうそう、今日はすずか、なのちゃんちでお泊りするって言ってたし、混じってくる?連絡はこっちからしといてあげるし」
私はすぐさま首を縦に振り、
「では、すぐ支度をしてまいります」と言うと同時に自分の部屋に戻りました。
リュックに着替えとお菓子とかいろいろ詰め込んで。もう一度忍さんのところに戻ります。
「あ、戻ってきた。これ、忘れちゃだめだよ?」とゲームソフトをかばんに詰めてくれます。
「ファリン。くれぐれも高町様に迷惑をかけないようにするんですよ」いつに無く心配そうな顔のお姉さま。
「では、行ってまいりまーす」と駆け出したとき、忍さんに呼び止められました。
「ファリン、バッグ忘れてる」私は慌てて戻り、気を取り直して出発しました。
お屋敷を飛び出したまではよかったのですが、バス停までの道のり、手に持っているバッグがだんだんと重たくなってきました。
やっとの思いでバスに乗り込みほっとしていると、少し眠くなって…気が付いたら駅前に着いていたのです。
私は慌ててバスを降りてほっとしたとき、腕が軽いこと…バッグを置き忘れてしまったことに気が付いたんです。
一応追いかけてみたんですが、もうすでに遠くまで行ってしまってて…途方にくれてしまいました。