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魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく二人の絆− 第十九話 skyblue gradation

「・・・本当に、大丈夫?」
「うん。・・・ごめんね、泣いちゃって」
「そんなこと」

見送る彼は、本当に申し訳なさそうにしていて。
せっかく応援してあげたのに、何て顔をしてるんだろう、と思った。

「ダメだよ、そんな顔してちゃ。なのはがきっと、心配する」
「・・・うん」
「・・・約束、したでしょ?なのはをずっと大切にする、って」

心配させちゃだめなんだからね。
その言葉に頷くユーノの顔には、どこか困ったような、苦笑にも似た微笑が浮んでいた。
それを見てフェイトは、ほんのり笑った。


魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく二人の絆−

第十九話 skyblue gradation



「テスタロッサ」

落ち着くまで、しばしの時をユーノと共に過ごして司書長室を辞したフェイトを迎えたのは、緋色の髪を持つ女性。
勝手知った好敵手が壁に背中を預け、フェイトが出てくるのを待っていた。

「シグナム」
「済んだのか?」
「・・・知ってたんですか」
「まあ、な。この間の模擬戦の太刀筋で、大体わかった」

それはまた、便利なことで。
フェイトは口には出さなかったけれど、ついそう思ってしまった。

「・・・まだ、目が赤いぞ」
「これは元からですよ。知ってるでしょう」
「いや、そういうことではなく・・・なんというか、違う」
「で?何か用ですか?わざわざこんなところで待ってるなんて。今日は休みじゃ?」
「・・・妙につっかかるな、今日のお前は・・・」

確か今日、彼女達ヴォルケンリッターは非番だったはず。用でもなければ一々私服姿で本局まで来て、
待っているなんてことはないだろう。

「いや・・・まぁ、な」
「?」

シグナムにしては、妙に歯切れが悪い。
彼女が困ったように人差し指で右頬を掻く仕草なんて、長い付き合いではじめて見た気がする。

「・・・まさか」

まさか、ね。

「心配して様子を見に来てくれた、とか?」
「う・・・いや、別に心配などしているわけではないのだが、その、なんだ」

そのまさか、だったらしい。

「憂さ晴らしの相手でも、と思ったんだが」

もう、本当にこの人はこういったことが不器用なんだから。また模擬戦とは。
シグナムが言うところの「いつもと違う」赤い目を綻ばせ、思わずフェイトは苦笑する。
彼女なりに心配して、気を遣ってくれているのに、失礼ではあるが。

「・・・む、なんだ」
「いえ、別に。・・・そうですね。悪くないと思います、おもいっきりやるのも」

精魂尽き果てるまで、おもいきり汗を流すというのも、なかなかいい提案だと思う。

「だろう?」
「ただ」
「?」

嬉しそうにレヴァンティンの鎖を鳴らしているところ、悪いのだけれど。

「普通、憂さ晴らしに模擬戦に誘いますか、女同士で」
「な」

もっとほら、買い物とか、カラオケとか。色々あるだろうに。
相変わらず浮世離れしているというか、色とは無縁の思考回路というか。
その割りにはしっかり、人のことは見ていて心配してきてくれるのだが。

「はやてが前、ぼやいてましたよ?『シグナムも浮いた話のひとつくらい、あればいいのに』って」
「な・・・!!別に主はやては関係ないだろう!!」
「・・・そりゃ、そうですけど」

同じ寡黙でも、ザフィーラはうちのアルフとなんだかいい感じだし。

「・・・あ、恭也さんなんてどうです?妻子持ちですけど」
「なっ!!何を言って!!恭也には忍という・・・!!」

お、なかなかの反応だ。
普段冷静なぶんこういった免疫のない部分をつくと、実にいい反応をしてくれるなぁ。

「・・・さ、それじゃおもいっきり汗、流しましょうか」
「あ!!こら!!話を・・・」
「戦いながら聞きますよっ」
「おい!!」

おもいっきり泣いて、おもいっきり汗をかいて。
おもいっきり、笑おう。

平気ではないかもしれないけど、大丈夫。
そう思うと自分でも不思議なくらい、すっと心が軽くなっていく気がした。

───うん、もう大丈夫。

ユーノに約束したとおり、頑張ろう。
まだ、完全ではないけれど。
きっともうすぐ、またおもいっきり笑えるようになるから。

きっと、大丈夫。今は晴れ間しか出ていない状態でも。
絶対に、大丈夫。もうすぐきっと、晴れ渡る。


 *     *     *


フェイトの出て行った司書長室で、ユーノは一人、物思いに耽っていた。

「なのはを大切にしろ、か・・・」

もちろん、そのつもりだ。
なのはのことを蔑ろにするつもりなんて、毛頭ない。
誓ったっていい。そんなことはけっしてあろうはずもない。
自分を選んでくれた人を。
自分が選んだ人を。
大切にしないなんてこと、絶対にあるわけない。

けれど。

ならば、具体的には?
具体的に、どうすればいい?
言葉を交わし、想いを伝え合い。晴れて二人は結ばれたのだけれど。
これといって以前と劇的に変わった部分というのはない。
二人で会うのだって、昔から頻繁にやっていることだし。
メールの回数が前に比べて増えたといえば増えたが、その程度のこと。
特筆するような変化は二人の間には見られなかった。

漠然とそんなことを考えていて、書類の山を減らすという目の前の仕事が、一向に手につかなかった。

「・・・恋患いってやつなのかな」

微妙に、違う気もするが。
恋が原因ならまあ似たようなものだろう。

「・・・会いたいな、なのはに」

大切にしろと言われた想い人の顔が、ひどく恋しい。
今の時間だと多分仕事中だろうから、すぐには会えないだろうけど。
昼食くらい、一緒に摂れるだろうか。

「・・・っていけない。こっちも仕事仕事」

そういう自分こそ、仕事を片付けないと。
気を取り直して、ユーノは書類へと手を伸ばす。

「スクライア司書長、よろしいですか?」
「・・・あっ、はい。えっと、何か?」
「また、お客様ですが」

・・・また?
今日はよく人の来る日だな、とドア越しで補佐官に見えないのをいいことに、
あからさまな戸惑いの表情をユーノは浮かべる。

「・・・誰です?」

もっとも。

「武装隊の、高町なのは教導官です」

補佐官の言った人物の名前でそんなもの、一瞬にして吹き飛んでしまったあたり、
彼もなかなかに現金なものである。
書類で散らかった部屋を片付けようにも、そのヒマもなくドアがひらいたので彼は諦めた。

「ユーノくん、お弁当作ってきたよー。もうすぐお昼だし一緒に食べよー?」

黄色の小さな巾着を掲げて見せながら、なのはは入ってきた。
溢れんばかりの笑顔を、顔に輝かせて。

その顔を見て、ユーノは思う。

───そうだ、今度、出かけよう。どこか、気持ちのいい風が吹く場所に。

なのはを連れて、二人で出かけよう。
空が真っ青に晴れた、天気のいい日。ふたりっきりで。
自分が行ったことのある、知る限りのきれいな場所に。
生まれ故郷、ミッドチルダのあちこちに。
仕事一切抜きで、ふたりだけで回ろう。

やったことのないことをしよう。

まず、それからはじめよう。
そのときもきっとなのはは、お弁当を作ってくれるだろうから。
お返しにそのぶんいっぱい、なのはのことを抱き締めて、愛そう。

青空の下でいっぱいいっぱい、恋人としての時間を、過ごそう。
大切にする具体的な方法は、きっとそれ自体だから。

 *     *     *


「そっか、それじゃユーノとなのは、うまくいったのね」
「ようやっとな。大変やったわ、ほんまー」

同時刻、月村邸。

ユーノが巻き込まれた事件と、なのは達二人の間に起こった出来事の結果報告を兼ねて
はやてはヴィータとリインフォースを連れて、アリサ達の待つ先日のお茶会の続きへと顔を出していた。

天気もいいし、外にテーブルを出して子猫たちに囲まれながら。
きっともう少ししたらノエルお手製の昼食が運ばれてくるはずだ。
それなりに自身の料理の腕に憶えのあるはやてをして、彼女の味付けは見事だと思える。

「・・・フェイトちゃんは?」
「うん・・・喜んでた。表面上は・・・な。だけど・・・」
「だーいじょうぶよ。あの子確かに抱え込んじゃうけど、強い子だもん。ひきずったりしないわよ」
「アリサちゃん」
「大体、あたしらの中で一番モテるの、あの子でしょーが。きっといい人見つけるわよ」

そういう問題なのかな、とは思うが。
アリサなりにフェイトのことを思った前向きな発言だから、反発は感じない。

「はやてはどーなのよ。男子部の生徒とか、管理局の人とかで誰かいないわけ?」
「へ?わたし?おらんよそんなん。すずかちゃんは?」
「中学から男子と女子で校舎、分かれちゃったしね。流石に」
「だよね。・・・結局あたし達で春一番乗りはなのはってわけかー・・・」

溜め息をつくアリサちゃんだって、十分かわいいし、モテてると思うんだけど。
はやてがそんな風に思っていると、屋敷のほうから三人のちびっこが走ってくるのがみえる。

「はやてー」
「なんや、三人とも。どないしたん?」

ヴィータに、リインフォース。そして。

「はやておねーちゃん、こんにちわー」
「あ、せやな。こんにちは、雫ちゃん」

二人に手を引かれてやってくるのはすずかの姪にして、忍と恭也の娘・月村雫、4歳。

『ノエルさんと忍さんが、もうすぐお昼だからこっちで待っておくように、と』
「今日の昼はパスタだってよ」
「さよか、そりゃ楽しみやな」

お姉さんぶりたい年頃のヴィータとリインフォースは、月村家にやってくる度に
雫のことを構い、遊んでやっている。
はやてに今撫でられている雫のほうも二人の事を実の姉のように慕って、甘えていて、
母の忍も目を細めていた。

『もうすぐ恭也さんも帰ってくるそうですから、みんなで外で食べましょう、って』
「はやておねーちゃん、だっこー」
「はいはい、おいでー」

食事時は、決まって誰かの膝の上が彼女の指定席。
今日ははやてに決めたようだが、それに対して怒らないあたり、ヴィータもやはり彼女のことを気に入っている。

「せやな、こんないい天気なんやし、みんなで外でわいわい、が一番やな」
「だろー?」

ヴィータは、すずかの隣に。リインフォースはアリサの引いてくれた椅子に、足をぶらぶらさせて座る。
多少行儀が悪いが、今日は気分もいいし見逃してやろう。

「お、雫ちゃん。また魔力強くなっとらんかー?」
「そーなのー?」

父母や叔母・すずかの持つ運動神経に、
もう一人の叔母であるなのはを彷彿とさせる魔力をこの子は受け継いでいる。
恭也から剣術の基礎を習い始めているらしいし、
彼女が望むなら、なのはやフェイトと三人がかりで魔法の使い方を教えてもいいかもしれない。
実に将来が楽しみな子だ。それもまた、はやての頬をほころばせる要因のひとつ。

「・・・ほんま、いい天気やなぁ」

結局、全ては丸く収まっていた。
なんだかんだあったけれど、最終的にはうまくいったのだ。

きっと世界とは、そういう風に上手に出来ているのだろう。
雨降って地、固まるではないけれど、世の中そんなものだ。
紆余曲折のあとには、こんな気持ちのいい日が、誰のところにもやってくる。

小奇麗にまとめすぎかな、と苦笑したはやての鼻腔に、
ノエルの運んでくるパスタのいい匂いが漂ってきた。

オリーブオイルとアンチョビの香りが、食欲をそそった。


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