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[657]640 05/03/14 09:46:08 ID:3ET5itV7
[658]640 05/03/14 09:49:30 ID:3ET5itV7

forget-me-not 第一回

鉛色の、ひどく冷たい光を放つ、幾重もの、大蛇のような
太く、長い鎖。それらは、上下左右、あらゆる方向から、空間を割って
伸びている。

その中心に、少女は居た。

身に纏った純白の衣はあちこちが裂け、汚れ、その下の幼い肌と
そこに穿たれたいくつもの赤い傷を露わにしている。
両手、両足。そして身体。巻きついた鎖によって拘束された少女の身体は
微動だにせず、開かれれば少女らしい快活さの光を映すであろう大きな
両の瞳も閉じられたままだった。

(・・・・私は、この娘を知っている)
忘れようもない。
だって、この娘は、自分にとってかけがえのない。
たった一人の────



気が付けば、暗い夜の天井を見つめていた。
「・・・・!?・・」
先ほどまで見ていた光景とのギャップ。
フェイト・テスタロッサは起き上がり、戸惑いながらも辺りを見回した。
時空管理局所属船・アースラの一室。何一つ、いつもと変わるところのない、
自分と使い魔のアルフのためにあてがわれている部屋だった。
「夢・・・?」
ベッドの下では、狼の姿のアルフが、静かに寝息をたてている。
少なくとも、この数ヶ月間、見慣れた光景であった。

地球を離れたあと、フェイトは時空管理局による裁判によって、
ほとんど無罪に近い処分を下された。
アースラでの、数ヶ月間の保護観察処分と、その期間中アースラが担当
した事件解決への、協力。
完全無罪とまではいかないまでも、同程度の罪を犯した者への処分としては
フェイトの事情などが加味されたとしても、異例の軽い処分であった。
これには無論、慢性的な人手不足に悩む管理局が、フェイトのその能力に
目をつけたということもある。
そして、それ以来、フェイトはクロノ達アースラの面々と共に暮らし、
行動を共にしている。

「今の、は・・・」
ただの夢だったのか。それとも、現実に起ころうとしていることなのか。
しかしそれを判断する術はない。
「なのは・・・」
友達になったきり、会うことのできない、フェイトの、たった一人の友達。
会いたいけれど、まだだめだ。裁判の結果を伝えた時、まるで自分のことの
ように嬉しそうな返信を送ってきてくれた。
「夢、だよね・・・」
自分にいいきかせるようにつぶやいてみる。フェイトは、消えない不安を
包み隠すかのように、再びベッドの中へと潜りこんだ。
きっと、ただの夢、幻にすぎないのだから、と。


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