食事も終わり僕は居間でみんなといろいろな話をした。
家族のこと学校のこと、好きな食べ物や嫌いなもの、そしてなのはと出会った時のこと。
なのはが念話でフォローしてくれたからなんとかなったけど、結局嘘で塗り固めなければ話すことが出来なかったのは正直辛い。
でもそうまでしても団欒の中に身を置きたがる僕がいるのも事実で。
「じゃあそろそろ帰りますね」
「もうそんな時間か」
「少し話しすぎちゃったかな。大丈夫? 送ってあげようか」
「気にしないでください、大丈夫です」
僕はそれだけ言ってみんなに軽く頭を下げる。
「今日はそのいろいろとお世話になってありがとうございます」
「そんないいのよ、かしこまらなくて。なんならご両親が帰ってくるまでは夕食うちで一緒に食べていかない?」
「そんな……いいですよ」
「別にうちは構わないぞ。食事は賑やかなほどいいからな。それに桃子の手料理が食えるんだからいいことづくめだろ」
優しげな笑みを浮かべる桃子さん、士郎さん。そんな風に言われると本当に甘えてしまいそうで僕は思わず顔をそらした。
「いいんです、ほんとに。それじゃごちそうさまでした」
「あっ、ユーノくん」
もう一度頭を下げ僕は居間を出る。後ろでなのはに呼ばれたけど振り返ることなく玄関を抜け家を飛び出した。もうこれ以上この人たちに嘘はつきたくないから。
近くの茂みに身を潜めフェレットの姿へ変身し、そのまま雨樋伝いになのはの部屋へ駆け上がる。 部屋の明かりはついてない。もちろんベランダの窓も開いていない。
「……なのはが来るまで待つか」
ガラスにもたれてほっと一息。夜風が体を撫で心地よさが体を包む。
何をするでもなく、自然とさっきの食卓の風景を思い返した。
みんな気さくでいい人ばかり。あんな家族に囲まれて毎日を過ごせるなのははすごく幸せなんだろう。僕も部族の人たちと日々遺跡を求めて各地を放浪していて楽しかったから。
それでもやっぱり考えてしまう。無邪気に笑い合う桃子さんと士郎さん。あの二人のように僕の両親は笑い合える仲だったのだろうか、と。
長老からは両親のことは聞かなかった。僕には部族のみんながいるし部族のみんなが僕の親であり兄弟であり、家族だったから親のことなんて知らなくてもいいと思ったからだ。
けど、本当の所は両親に愛されていなかったのではないか、捨てられたのかもしれないとか、そんな不安から逃げることでもあった。
幸せの形は人それぞれだけど、やっぱり僕は血の繋がった家族とあんな風に笑い合える毎日を送れるなのはが羨ましい。
頭の中でいろんな考えが浮かんでは消え、また浮かんでは消えを繰り返して。ほんとに、一人になるといろんなことを考えてしまう。
早くなのは来ないかな。