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[311]176 2005/10/28(金) 20:14:54 ID:Y5l1Lg7j
[312]176 2005/10/28(金) 20:15:27 ID:Y5l1Lg7j

彼女の守り手 6 自分にない風景

「そういうわけでなのはの友達のユーノくんが今晩は一緒に夕食を食べることになりました」
「えと、ユーノ・スクライアです。今日は突然押しかけることになってしまい申し訳ございません」
 食卓に着くなり桃子さんが僕が今日夕食を一緒に食べることになったいきさつを話し始めた。
 僕はみんなのことをよく知ってるけどこの姿で会うのは初めてだからどんな顔をするだろうか。正直不安だ。
「ほぅ、ご両親のために一人残るなんて孝行者だな。見た所なのはと同い年ぐらいか」
「よろしくなユーノ」
「しっかりものだね〜。あれ? でもちょっと待って、ユーノって……」
 そしてさっそくそこに話題は集中してしまうのだろう。この場合偽名を名乗ればいいんだろうけど如何せんなのはがあそこで喋ってしまったからどうしようもない。別になのはを責めるつもりはないんだけど。
「そういえば確かなのはが飼っているフェレットの名前が」
「ユーノだな」
 流石家族だけのことはある。美由希さんの一言はバトンリレーのように恭也さん、士郎さんと続いてあんまり触れてほしくない所に辿りついてしまった。
「う、うん偶然もあるもんだよね。わたしも名前を聞いてときびっくりしちゃった」
「僕もまさかフェレットと同じ名前なんてびっくりしました」
 取りあえず偶然といえば大抵はどうにかなる。
 そう思いたい。
「偶然、ねぇ。恭ちゃんはどう思う?」
「俺に聞かれてもな。美由希は何を期待してるんだ?」
「そりゃあねぇ」
 なんだか美由希さんの目が怪しく光ったように見えたのは気のせいだと思いたい。
 隣のなのはは誤魔化すようににシチューの中のジャガイモを転がしている。心なしか表情が固い。
 僕もとにかく何かしようと取りあえずコップに口をつけた。
「もしかしたらこの子なのはのボーイフレンドなのかな〜ってね思ったんだけど」
「ぶふぉ!!」
 いきなりの爆弾発言に僕はらしくもなく水を噴出した。途端に苦しくなって何度も噎せる。
「だ、大丈夫ユーノくん!?」
「ゲホッ! ゴホッゴホッ! だ、だいじょゲホッ!!」
 胸を叩いてどうにか落ち着けようとしても、こんな時に限って堰はなかなか収まらない。結構な量の水を吸い込んでしまったみたいだ。
何度も何度も噎せ返す僕の様子になのはが背中を摩ってくれる。
「あらあら。もう、美由希が変なこと言うからよ」
「ご、ごめんユーノ。取りあえず、はいタオル」
「あ、ありがゴホッ! ……とうございます」
 美由希さんからタオルを受け取り口周りを吹いてそれから酷いことになっているテーブルを拭いた。
 何とか呼吸を整えようと二、三度息を吸い、それから大きなため息を吐き出してようやく落ち着くことができた。
 ああ、死ぬかと思った。
「す、すみません、食事中に失礼なことを」
「気にしなくていいぞ。元はといえば美由希が言い出したことが原因だからな」
 言いながら恭也さんが美由希さんの頭を軽く小突いた。
「初対面の相手に対して失礼にも程があるぞ」
「ごめんごめん、ついね。ほらよくあるじゃない、好きな子の名前をぬいぐるみにつけて可愛がったりするの。あれかななんて思っちゃって」
「ほんとに偶然なの! ユーノくんとはつい最近知り合ったばかりなんだから」
「私はお父さんと知り合ってからあっという間に恋に落ちたけどな」
「そ、それでもユーノくんとはそんな関係じゃなくって」
 否定するなのはをからかうように桃子さんが士郎さんのほうを見つめながら夢心地に呟いた。
「いやまぁ、あれは運命の恋というか俺も桃子に一目惚れしたというか……まぁ、俺にとって桃子はなんというか、言葉では言い表せないくらい大切なかみさんだってことだな、なははは」
「いやだもう、あなたったら」
 照れ笑いを顔に浮かべて二人はそれぞれに微笑みあう。それは見るからに幸せそうで二人はとても強い絆で繋がっているんだろうと思わせる。
「しかしそれでもなのはは嫁にはやらんからなユーノ」
「ほんとにそ、そんな関係じゃないんです。僕となのはは普通に友達で」
「あら、どんな関係もまずはお友達からじゃない」
「もうお母さんまで〜」
 必死に言い訳するなのはの顔はほのかに赤く、困り顔でも可愛らしかった。
 僕はというと話題の中心にされて困るというより、ほんとのところ嬉しい気持ちの方が大きかった。こんな賑やかな食事、僕はミッドチルダを出てきて以来ずっとなかったから。
 災い転じて福と成す、そういう意味ではなのはには感謝したい。
「まぁ決め付けるのはよくないな。俺としてはユーノがどんな男か知ってからでもいいと思う」
「でもさっきの見ればお似合いだよ」
「なんだか結婚したばかりのこと思い出しちゃったわ」
「しかし嫁にはやらんぞ」
「お兄ちゃんもお姉ちゃんもお母さんもお父さんもほんとのほんとにユーノくんとは違うのっ!」
 でもそんなに強く否定されると僕としては微妙だったりする。
 そんなこんなで夕食の時間は瞬く間に過ぎていった。


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