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[220]4949 2006/03/29(水) 20:41:26 ID:B9cIWLeI
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[225]4949 2006/03/29(水) 20:47:44 ID:B9cIWLeI

あたしの絵本 第三話、お姫様の告白

契約者を探す。
ここ数日間、放課後魔力反応を調べているが一向に見つからない。
念のため夜にも学校に来ては何らかの証拠が無いか探しているが………

「ハァ……」

ヴィータはため息をつく、その顔は眠そうだ。
深夜の捜索、昼は学校、夕方は宿題、と昔に比べ暇がない。

「ハァ………」

退屈な授業、視線は自然と窓の方に向く。
ヴィータの席は教室の真中の列、後ろから二つ目だ。
窓は左側、一つ列をはさんで向こうにはユーノが座っている。
ユーノはノートを取っている。
根が真面目なだけにちゃんと授業を聞いているようだ。
その顔は真剣そのものだ。
なんとなくヴィータはその顔に見入っていた。

放課後、ユーノの席には多くの女の子が集まっていた。
頭がよく人あたりが良い、なおかつ顔も悪くない、女子にもてるには十分な条件だろう。

「………」

ヴィータが見ていると、こちらに気づいたユーノが苦笑いする。
今日は一緒に夕飯の買い物をしていく予定なのだが………

「でさ〜ここ教えて欲しいんだけど〜」
「え?…ここわね…」

一人の女子がしつこくユーノに聞いている。
ユーノも断ればいいのだが、優しいだけにそれが出来ないのだろう。
結局ヴィータはユーノが教え終わるまで待っていた、が…

「ねえユーノくん、今日私の家に遊びにこない?」

終わった後にもしつこくユーノを遊びに誘う女子。
ヴィータにとってその光景はものすごく不愉快だった。

「………おい………」

ヴィータの声、ユーノにとって救いの声だろう。

「何よ…妹さん…」

しかし女子にとっては邪魔でしかないのだろう、嫌そうな態度を隠そうともしない。

「今日は夕飯の買い物があんだよ」

こちらも嫌そうな態度を隠そうともしない。
両者の間には嫌な雰囲気が漂う。

「ハ、ハハ、そういうことだから今日は帰るから!それじゃ!」

ヴィータの手を取り急いで教室から連れ出す。

買い物中、ヴィータは不機嫌だった。
家でも不機嫌なままだった。

深夜、いつも通りの探索。
もしもの時を考え二人〜三人での捜索が基本となっている。
ユーノはヴィータ、はやてと一緒だ。
今は、学校の関係者、特に企業家、著名人などが多く住んでいる地区の探索をしている。
探索をそろそろ終わりにしようか、と言う時間になる頃。

「ちょっとええか?ユーノくん」

ヴィータに聞こえないようにはやてが小声で話しかけてくる。

「なんでヴィータあんな不機嫌なん?ユーノくん何かしたん?」

いつもなら、三人で他愛もない会話をしているのだが今日はほとんど会話がなかった。
ヴィータに何を話しかけてもすべて無視されているからだ。

「それが僕にもわからなくて」

結局、家に捜索中ヴィータはほとんど喋らなかった。
家に帰っても直ぐにベットに入ってしまい話せなかった。
ユーノは少し、さびしく感じた。



はやての部屋、はやてとヴィータはいつも通り同じベットで寝ている。
寝ている、と言うのは適切ではない、ヴィータは横になっているだけだ。
ヴィータは昼間の事を考えていたのだ。
どうしてあんなに嫌だったのか、どうして自分がユーノに腹を立てているか。
ユーノは悪い事をしていない。

(なんか、ユーノがあいつと話してんの嫌だった………)

ヴィータはのろいうさぎをきつく抱きしめる。

「ヴィータ…起きてる?」

てっきり寝ていると思っていたはやてが話かけてきた。
ヴィータは上半身を起こす。

「なに?…はやて…」

ヴィータははやての方を見る。
はやては横になったまま続ける。

「今日はどうしてあんな不機嫌だったん?」
「………わかんない………」

ヴィータはうつむく。

「ユーノが学校の女と話してるのを見てたら、なんか嫌だった…」
「ユーノくん?どうして?」

上半身を起こしたはやてはヴィータを見る。

「わかんない、なんか…嫌だった」

ヴィータもはやてを見る。
ヴィータの肩は震えていて、その顔はどうしていいかわからず寂しがっている子供のようだった。

「ヴィータ………」

はやてはヴィータを抱きしめる。

「はやてぇ…あたし……どうしたの…かな…」

その声は弱々しく徐々に掠れていく。
ヴィータは泣いていた、なんだかわからなくて、ユーノに辛く当たった自分が嫌で。

「…ヴィータ…」

はやてはヴィータの頭をなでる、その手は暖かく、その声は優しいものだった。

「ヴィータはユーノくんの事どう思う?」

はやての質問、ヴィータにとって、その質問は予想外だった。

「どう…して?…」
「いいから、どう思ってるん?」

どうしてはやてがそんな質問をするのか、ヴィータにはわからなかった。
それでも、はやての真剣な目、それが大事な事なのだとヴィータは思った。

「…わかんない…ただ…ユーノの事を考えると…なんか胸のあたりが変な感じがする…」
「…やっぱり…」

はやての呟き、それははやてが答えをわかっている事を示していた。

「…ヴィータ…それは別に変な事やあらへんよ、むしろ普通や」
「…どういう事?…」

はやては子供に言い聞かせる母親のような声で言う。

「ヴィータはユーノくんの事………………………………」



異変は学校で、昼食の時間に起きた。
いつも通りなら、問題は無かっただろう。
だが、今日はいつも通りではなかった。
普通、この年齢の子供達にとって昼食の時間はおしゃべりが多くうるさいものなのだが。

「………」

ただ、ひたすらと弁当を口に運んでいる。
いや、そうするしか出来なかったと言うのが正しい。
なぜなら………

「ほらユーノ、これも…」
「ヴィ…ヴィータ…恥ずかしいよ…」

昨日のはやての言葉で吹っ切れたのだろう、ヴィータはユーノに箸を差し出す。
箸にはタコさんウィンナーが掴まれている。
俗に言うあーん、をしている。
その様子をなのは達は苦笑いしながらはやては見守るように見ている。
これだけなら特には静かにするほどのものではない、これだけなら………
ヴャギィィィ!!っと人の骨を折ったような音がする。

「………」


沈黙の理由はこれなのだ。
一部の女子、ユーノを狙っていた女子達が放つ雰囲気が教室を沈黙させていたのだ。
特に一人の女子、この前ユーノにしつこく絡んでいた女子の出すオーラが半端ではなかった。

「ほら…これ、あたしが作ったんだ…」

しかしヴィータは気にしない。
とうとう一人の女子がしびれを切らしたのだろう、椅子を倒す勢いで立ち上がる。

「ちょっとあなた!!いい加減にしたらどうです!!」
「あんだよ…」

この前からしつこい女子が怒鳴る。

「あなた、ユーノくんの妹さんでしょ、そんなにお兄さんにべったりで恥ずかしくないの?」
「あ?」

そのなのだ、この学校では兄弟と言うことになってる、他の人たちから見ればブラコンに見えるだろう。

「それともぉ?そんなにユーノくんの事が好きなのかしら?」
「………だったら何だよ?………」

この女子にとってその言葉は予想外だったのだろう、顔が引きつっている。

「だ、だったらぁ?あなた自分が言ってる事わかってますの!?」

他の人達も驚いている。
おそらく驚いていないのは…はやてぐらいだろう。

「貴方達は兄弟、それ以上でもそれ以下でもありませんのよ、なのに好き?あなたおか「おかしなことあらへんよ?」え?」

その時はやてが会話に割り込む、その顔は面白そうに笑っている。

「別におかしな事あらへんよ?」

はやてはユーノの肩に手を置く。

「だって…ユーノくんホンマの兄弟ちゃうから…」
「ちょっと!はやてそれは!!」

はやてはユーノを手で制す。

「ユーノくんは義理の兄弟やから…」

その女子にとってこの事は予想外だったのだろう、驚愕の表情を浮かべている。

「ほ…本当ですの…?」
「うん…まぁ…」

ユーノは苦笑い、本当は違うのだがここまで言ってしまったら話しをあわせるしかない。
女子も、自分から聞いたわけではないがバツが悪いのだろう、黙ってしまった。

「それやから…もしかしたら…って事もあるかもしれへんよ?」

はやてはこれ見よがしにユーノの首に抱きつく。
女子はさっきの事への後ろめたさがあるのだろう、はやてにたいして何も言えず悔しそうな顔だ。

「とりあえず、席にもどったらどうや?」

はやての言葉にしぶしぶ戻って行く女子。

「…はやて、いつまでだきついてるんだ?」
「ヴィータも抱きつけばええやん?それより…」

はやてはユーノの耳元で囁く。

「ヴィータの言ったことの意味、しっかり考えたってな?」

終わり


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