「お兄ちゃん、帰ってきてたんだ」となのはがいうと、恭也さんは
「別に泊まってくるなんて一言も言ってないぞ」ぶっきらぼうに返事をした。
「今日は泊まりで温泉に行くんじゃなかったの?」
美由希さんに言われ忍さんと顔を見合わせる恭也さん。忍さんはほほを赤くしてはにかんだ。
恭也さんは少しだけ居心地悪そうに話した。
「本当は、まあ、その、なんだ。前もって言ってあったしな。泊まりのつもりだったけど、
晩御飯を食べ終わった後、急に二人とも意識がもうろうとして、
しばらく気を失ってたみたいなんだ。だから大事を取って帰ってきた。」
恭也さんの言葉が少し引っかかった。
私はなのはたちと顔を見合わせる。三人とも何か感じるものがあるようだ。
「その意識が朦朧としたのって、何時くらいだかわかる?」となのはが聞いた。
「そうだな・・・時間は覚えてないが、夕飯が出たのが大体6時半ごろだから・・・
8時くらいじゃないか?それがどうかした?」
「ううん、なんでもないよ。ちょっと聞いてみただけ」
恭也さんは何か釈然としないような顔をしていたけど、そうかとだけ言って口を閉じた。
「ノエル、は意識を失った時間って覚えてる?」今度はすずかが聞いた。
「いえ、覚えておりません」ノエルさんが申し訳なさそうに言う。
「じゃあ、最後に時計を見たのって何時ごろ?」
「すずかお嬢様をお迎えに上がる時間を確かめるために時計を見たのが最後で、
そのときは7:20でした」
時間にずれがあるけど、今回のことと何か関連がありそうな気がした。
思い過ごしならいいけど・・・
あとでリンディさんに確認しようとなのはにいった。
<<うん、そうだね。何か手がかりがあるかもしれないし>>と頷いた。