「はぁ〜♪ 生き返る〜! やっぱ一日の最後はコレだよねえ〜♪」
恍惚の表情を浮かべる、時空管理局執務官補佐。
湯気に包まれた声は、広い浴室でやわらかく反響した。
「お疲れさま、エイミィ」
ちゃぷ、という音と共に、髪を下ろしたフェイトがエイミィの隣に座る。
「ほーんと、お疲れですよ。まったくあの上司、次から次へと仕事持ってきやがって〜」
拳を握り、ファイティングポーズのエイミィに、フェイトは苦笑いで応える。
上司とは勿論、自分の兄であるクロノのことを指しているからだ。
「フェイトちゃんからも言ってちょうだいよ。ほんっとに馬鹿みたいに真面目なんだから」
「私が言っても、多分変わらないと思うけど…」
「いーや、いける! フェイトちゃんが涙目で『おにいちゃん、おやすみほし〜い』って
訴えれば、ヤツは溜まりに溜まった有休全〜部使うに違いない」
「そ、そっかな…?」
苦笑いを続けるフェイトに対し、エイミィは何とも怪しい笑みで謀を企てる。
ところが、不意にその表情を崩すと、エイミィはあごの辺りまで深く湯船につかった。
「…ま、もう慣れたけどね。クロノ君とは付き合い長いし、年上として
これくらいのコトは我慢してやんないと」
やれやれ、という様子で、わざとらしく溜め息をつく。
「クロノ、口ではあんまり言わないけど、エイミィにはすっごく感謝してるよ。
二人の様子いつも見てるから、分かる」
「いいこと言ってくれるじゃ〜ん、フェイトちゃん! その通り、
あの真面目バカには、私っていうパートナーが必要不可欠なのですよ。
クロノ君にも、そこんトコちゃんと伝えておくように」
ビシ、と上機嫌で人差し指を立てるエイミィを見て、フェイトは微笑んだ。
「…ところでさ、エイミィはやっぱり、将来クロノと結婚するの?」
「へ?」 唐突な問いかけに、珍しく目を丸くするエイミィ。
「あ、そーしたら、エイミィが私の二人目のお姉ちゃんになるね♪」
さらりと言ってのけるフェイト。勿論、確信犯で。
一瞬うろたえた(様に見えた)エイミィだったが…数秒と経たず、いつもの
不敵な笑みをうかべる。
「…年上をからかうとは…ナマイキ!」 「!!」
目の色が変わったエイミィを目にし、とっさに胸元を隠すフェイト。
「…あれぇ? どうしたのかなぁ、フェイトちゃ〜ん?」
「いや、その…何となく、身のキケンを…」
完全に表情をオヤジ化させたエイミィに、じりじりと追い詰められる。
「ひどいなー。私は『お姉ちゃん』として、妹の発育じょーきょーを
確かめようとしてるだけなのにぃ」
3秒後。何ともやかましい声と共に、浴室に水音が響いた。