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[402]さばかん 恋の終わり1 2006/05/05(金) 21:12:00 ID:KU8mJTMt
[403]さばかん 恋の終わり2 2006/05/05(金) 21:14:12 ID:KU8mJTMt
[404]さばかん 恋の終わり3 2006/05/05(金) 21:15:03 ID:KU8mJTMt

恋のおわり 第7回

狂って咲いた花は朱かった。
玄関の扉を開けた少し先の景色は天国より極彩色で地獄より、鋭い。
なのはの視線の先、そこには、

軽く唇を合わせる、アリサとすずかがいた。

「あ・・・あ・・・」
それは声だった。蚊の鳴く如くの、慟哭。
その慟哭に気付くはずが無いにもかかわらず、すずかは振り向く。
おはようと、多分、そう言ったんだと思う。上手く、耳は機能しない。
その行為に何故と訊いた。
ロンドン流の挨拶よ、と、そう言ったんだと思う。耳は心中の声しか届かない。
二人は笑ってる。それは、太陽を直視した感じに似ている。
一緒に行こう。その言葉。
忘れ物をした、そう拒否した。
先に行く二人が完全に居なくなるのを過剰に確認した。
「はは、」

 刹那。アラユルばらんすガほうかいシタ。

「はは、
あははっははははははっはははははははははははああああ!!!!!!
ははははははははっあはははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!」

崩壊のゲキテツが、ココロを真朱にした。

ドカン バン ビシャン ドン ドン ドン バン ビシッ

台所。
机が崩壊した。冷蔵庫が崩壊した。食器が崩壊した。やかんが崩壊した。額縁が崩壊した。キッチンタイマーが崩壊した。誰かの愛が崩壊。その理想が崩壊。安息が崩壊。価値観が崩壊。天秤が崩壊。

貴女によってあるかも知れないと信じた犠牲愛(アガペー)が崩壊。

なのはは感情に任せて叫びながらハクチの如く、物を壊しまくった。そして、大切な信条さえも、壊した。
そして新しくコーティングされた、

自己愛(エゴ)だけが、残った。

暫くの静寂を眺め、そこに点をつける。
その静寂から、物が擦れる音が聞こえた。

こんな物騒なもの、持ち歩いちゃだめよ

「大丈夫。何処の家庭にもよくある物だから」
そう言ってもっていた包丁を、黙って左手に持った。

ロンドン流の挨拶よ

「誰かを傷付ける挨拶ならさ、すずかちゃん。
誰かを殺す挨拶があっても、いいんじゃ、ないかなぁ?」
アノキンパツウザイヨ
寮を後にする。なのはは、壊れていた。

「ねぇ、アリサ。今度、なのはちゃんを誘って、北海道にでも行かない?ちょうど、4連休だからね」
廊下を歩きながら、二人は今度の連休の予定を話し合っていた。
「いいですね。釧路に美味しい蟹でも食べに行きましょう」
平穏な会話、アリサはほのぼのしていた。
「でも、札幌もいいですね。すずかさまはどう思いま、わっ!!!」
アリサの体が倒れる。体が崩れる時、慌てたすずかの顔が一瞬見えた。
嫌な予感に、起き上がる瞬間、その光景を見るのを、彼女は自然と恐れた。

「おはっ、おはよう!!!あははははははは!!!!!!!!!!
どうしたの?ありさちゃ〜ん!!!こんなに血を流して。それとも新しい飾りかな?
腕にも、腹にも、細い赤線ばっかりだよぉ!
ああ!!やっぱ、新しい包丁買っとけばよかった。切りにくくてしょうがない!!!!」
言いながら、アリサの体を包丁で次々と切り付ける。返り血が、なのはの視界を朱く染め、心を極彩色にしていく。
「ねぇ?痛い?痛い?痛い?痛いー?私もね、痛いのよ!
私の何もかもが壊れた時の痛み!!そんなちんまいアカイのと一緒にしないで!!!
返せよ!私の日常、平穏、世界、愛、理想、余裕、自慢、奇跡、信条、すずかを!!!返せ、
カエセー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
後ろに大きく腕を持っていき、その一撃をアリサの心臓に一閃した。

はずだった。
その、朱い視界に移ったのは。

「なのはちゃん。大丈夫だから」

誰かがボロボロにしてしまった、すずかがいた。

「嘘、だ」
嘘ではない。事もあろうに、アリサと間違えて傷付けたのは、見知らぬ誰かではなく、大切な理想。
伸ばした腕を、すずかに掴まれた瞬間、なのはの手から包丁が離れ、なのはのみぞおちに、すずかの肘が
抉り込んだ。
なのはの視界がアカからクロに幕変えした。

「すずかさま!すずかさまっーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
叫んだのはアリサだけでは無い。廊下にいた生徒達が、日常に潜む異常に遭遇した。
繰り返される阿鼻叫喚の中心に、心臓に包丁が刺しっ放しのすずかが居た。その横には倒れたなのは。
血の海、異常の中心いた彼女は、一言だけ。

「五月蝿い!!!!!!この程度で騒ぐな!!!!!!!!」
叫びの波が引いた。人だかりに白い道が一本できた。
その道を赤く染めながら、すずかはなのはを抱えながら、どこかへ歩いていった。
その横に、アリサは必死に辿り着いた。
「すずかさま!!!!直に救急車を呼びましょう」
狼狽するアリサにすずかはただ笑った。
「大丈夫。ただの生理だから」
冗談っぽく、そう笑った。
笑えない冗談に、アリサは付き合う事にした。
「ええ。本当に毎月鬱になりそうですね、その量じゃあ」
「アリサ。車をよういして。病院は、いつもの闇医に。あと、この事は公にしないように
学校に言っといて。口止めの金なら用意する、と」
はい、とアリサは答える。
なのはの記憶は、そこで、流れを止めた。

つづく


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