ANNEX2
“THREE”
美香はいつものように、黒澤の部屋に誘われ、抱かれていた。
週末になると、こうしてどちらかの住まいに行っては、泊まりがけで
愛し合う。そのことが、いつしか二人の間の暗黙の了解になっていた。
激しい濃密な情事が終わると、けだるい身体をおして、美香は
シャワーを浴びにいく。
そうしてから、黒澤に2度目を求められていく。
彼は美香の身体が汗ばんでいてもいい、と言ってはくれるものの、彼女は
それは拒んだ。
その間に彼が、乱れたシーツを替えて、美香を改めて迎え入れる
準備をしてくれる。
おかげで、週末には何枚ものタオルやシーツが消耗されることになる……。
そんなことを考えながら、もう勝手知ったるキッチンで冷たいものを飲む。
寝室の灯りは消されているのがわかる。
黒澤がまた、なにか企んでいるのに違いない……
美香はキッチンの灯りを消すと、ほとんど暗闇に閉ざされた状態のリビングから
そろそろと忍び足で寝室へと向かった。
「やだ……何も見えないわ。恐い……」
ソファやテーブルに手をかけて、ようやく歩を進めて寝室の中へと入る。
ベッドに上がって、安堵したように美香は黒澤に甘える。
「ね……灯りをつけて。恐いの」
美香の声にも、返事がない。
これもきっと、なにかの演出のつもりね……。
美香はそう思って、黙って彼に従うことにした。
それでもキングサイズの大きなベッドの軋む音がする。
黒澤の気配を感じると、美香は自然と彼のいるらしい方にすり寄っていく。
美香の上体を抱きしめるようにして、情熱的なキスが始まる。
いつもより、少々荒っぽいくらいの舌遣い。
でもそれが、新たな刺激となって彼女の興奮を誘う。
心なしか、彼の吐息もすでに荒くなりかけている。
「ん……んっ…………」
黒澤の首に腕を回して、積極的に自分からキスに応じていく。
逞しい胸板に、自分の柔らかな乳房が押しつぶされる感触。
美香は急にベッドに押し倒されて、乳房を掴みしめられる。
「あ…………」
強く、男の大きな手で揉まれるかと思えば、手のひらで乳房の膨らみ全体を
撫で、さするような動きを見せる。
外側から乳房を中央に寄せるような形で揉みしだかれる。
そうしながら、親指かなにかで乳首を転がされる。
「あ、あ……」
指で乳首の敏感な部分をつまみ、指先でそっとくすぐるように撫でられる。
「はぁ……ん……」
目を閉じて喘ぎながら、腕は彼の逞しい首筋にかけたままだった。
美香は両腕を取られると、黒澤の手を添えられながら、両方の乳房の上に
自分自身の手を置くようにされた。
自分で揉むことが恥ずかしくてためらっていると、そこでやっと彼の舌が
美香の乳首を舐めはじめる。
「ああん……。あっ……。ああ…………」
乳房の上に覆い被さる彼の頭をかき抱く。
そこで、美香は違和感に気づいた。
黒澤の髪は短髪とは言い難く、かといって長めというわけではない。
彼の髪を手で掬えば、7〜8pほどの髪に触れる。
それなのに、自分の乳房を愛撫する男の髪は、明らかに黒澤よりも短かった。
美香は当然、パニックに陥った。
「あ……あなた、誰!黒澤さんじゃないのね!……黒澤さん、どこ!?
いやっ、やめて!お願い!」
男を突き飛ばそうとするが、美香の腕力では男はびくともしない。
低い笑いが、部屋の隅の方から聞こえた。
それは馴染んだ声。
「黒澤さん……いるのね、そこに?何……なんなの、どういうつもりなの!」
美香の声は、当然彼を非難する響きに変わる。
「電気をつけてよ!……やめて、お願いだから!」
美香の悲痛な声に、部屋に薄明かりが灯る。
彼女の身体に覆い被さっていた男の姿は、美香の混乱をますます助長した。
「八巻さん……」
ショックで固まる美香の裸体を、逞しい短髪の若者が見つめている。
部屋の隅にいた黒澤が、ベッドに近づいて彼女の側に腰を下ろす。
「これ……何?どういうつもりなの、あなたたち!」
胸を手で覆い隠し、布団を身体に巻きつけて叫ぶ。
「まあ、そう邪険にするなよ……」
黒澤はにやにやと笑いながら、美香の戸惑いと驚きぶりを眺めている。
「八巻は、ずっと前からおまえに憧れてたんだとよ。おまえが事務所に
来た日から、ずっと綺麗だ、綺麗だって騒いでな。おまけに、俺と
電話してておまえのイキ声まで聞かされてよ……」
顔を赤らめてうつむく青年と、呆然としている美香の顔を交互に眺めつつ
黒澤は下卑た調子で言った。
「だからって……こんな……」
美香はもう、何を言ったらいいのかわからなくなって語尾を濁した。
「女の扱いは、慣れたもんだろう?おまえだって、途中まで本気でよがってたじゃ
ないか」
確かに、暗闇での八巻からの愛撫に感じていた。
キスが少々荒っぽいとも思ったけれど、毎回微妙に違うテクニックを使う黒澤の
ことだからと、気にも留めていなかった。
「でも、奴を責めるなよ。こいつがおまえを抱かせてくれ、なんて言ってたんじゃ
ないからな。俺がこう仕向けたんだよ」
そんなことを平然と言ってのける黒澤の顔を、美香は信じられないものを
見る思いでまじまじと見つめた。
「こうなったら、一度くらい抱かれてみろよ。たまには、違う男の味も知って
みるのもいいかもしれないぜ」
笑いを浮かべながら、とんでもない提案をする彼を、美香は心底のサディストと
思って畏怖を感じてしまった……。
「感じてるんだろ?なあ……」
美香の足を強引に開かせて、黒澤は秘所に指をさし入れた。
「こんなに濡れてるじゃないか」
美香の頬に、彼女の愛液を塗りつける。
「いやっ……」
彼女はおぞましさと、それに相反する、ゾクゾクするようなスリリングな感覚を
覚えはじめていた。
「八巻。いいぞ、抱いてやれ。思いっきり、かわいがってやれよ」
黒澤の声を皮切りに、それまで黙っていた八巻が口を開く。
「……すいません、美香さん。俺、あなたを驚かせるのがわかってたのに……
……所長の彼女だって、わかってるのに……好きなんです」
「…………」
この異常な状況での告白に、美香の混乱はますます深まるばかりだった。
「……俺、今彼女って呼べる人いないし……前までいたんですけど。
仕事ですれ違ってて、ふられて……あなたが事務所に来た日から……
ずっと……気にかかってて……」
逞しい筋肉質な体躯の若者が、うなだれて、顔を赤らめて美香に好意を告げて
いる。
場所さえ選べば感動的なシーンの筈なのに、美香はただ黙っていることしか
できなかった。
視線を落とすと、彼のものが隆々とそびえているのが目に映る。
黒澤のものとはまた違う形状のもの。
単に牝としての情欲が、好奇心がむくむくと美香の内でもたげてくる。
いけない、と思っても……そこから目を離すことができない。
八巻も美香の視線の意味を察して、ますます頬が紅潮している。
自分よりも3歳年上のこの男が、まるで年下の純情な少年のように
振る舞っているのに、愛おしさに似た感情まで抱く。
美香の白くたおやかな手が、八巻の浅黒い手に触れる。
「……抱いてください……」
美香もまた、羞恥に耐えながらそんなことを口走る。
「……いいんですか?」
驚きに、八巻が目を見張って顔をあげた。
「……ええ。あの人は承知のことなんだし。あとは私の意志でしょう?」
口先では、そんな開き直ったようなことを言ってみても、さすがに黒澤の顔を
見ることができない。
こんな騙し討ちのようなひどいことを仕組んでいるあの男に、せめて一泡
吹かせてやりたい。
嫉妬させてやりたい。
自分の恋人を、自分の目の前で部下の若者に抱かせようとするなんて。
やっぱり黒澤は、Sなんだと思った。
それも、徐々にその度合いを増していく。
肉体的な苦痛を伴うハードなものでは決してない。
精神をいたぶり、辱めるという意味ではさんざんに嬲り尽くされる。
これもそのプレイの一つのつもりなのかもしれない。
見せつけてやる。
自分の女が、他の男……しかも自分のかわいがっている部下に弄ばれて
乱れまくり、よがりまくるところを見ればいい。
それから先、黒澤がどんな感情を抱き、どんな行動に出るかを、見てやる。
美香はそんな暗い思いを抱く自分に畏れを感じながら、迷いを吹っ切るように
八巻の逞しい首に腕を回した。
キスを迫り、唇を彼のそれに近づける。
「美香さん…………」
八巻は呻くように言いながら、彼女の身体を強く抱きしめる。
唇が重なり合い、すぐに舌が絡まる。
彼は舌を遠慮なしに美香の口内に侵入させてくる。
黒澤よりも、情熱に勝る貪るような勢いで美香の口を塞ぐ。
息が苦しくなるほどのディープキスは、決して不快なものではなかった。
むしろ、それほどに自分を激しく求めているこの青年に好感を持つ。
美香の身体はベッドに徐々に押し倒される。
改めて見ると、この青年はなかなか整った容貌をしていることに気づく。
男くさい作りの顔立ちは、黒澤とは別種の魅力を持っている。
長身の黒澤と並んでも遜色のない背丈は、きっと180近くあるのだろう。
そしてウェイトトレーニングをしているのか、レスラー体型を思わせるほどの
圧倒的な筋肉の密集した体格に驚く。
黒澤も筋肉質で逞しい体つきをしていて、そこが彼にセックスアピールを
感じる部分でもある。
でも彼をも凌駕する、裸体に漲る力強さが美香の腰を妖しくざわめかせた。
力ずくで、乱暴に扱われてもみたい。
そんな危険な思いを抱かせるほどだった。
乳房を優しく触りながら、乳首に舌を這わされる。
「あ……ん」
自然と、艶めかしい声が出てしまう。
器用そうな指の黒澤と違い、少し無骨な印象の指が美香の敏感な部分を
そっと触れる。
犬や猫が大好物のミルクを味わうように、少しずつ派手に舌を遣っていくと
淫らな音が胸元に響く。
「ああ……ん……」
我ながらいやらしい、と感じるほどの声を立ててしまう。
「……気持ちいい?」
八巻が、そんなことを訊いてくる。
「……いいわ……ああ……。上手なのね……あ……」
この二人の会話を、どんな気持ちで聞いているのか……
半裸の黒澤は、椅子に腰掛けて美香たちの様子をベッドの足元から見ている。
また、唇が合わさる。
八巻にとっては、好きな女にする行為だから、当然執着心も強い筈。
美香もまた、黒澤に見せつける意味で普段以上に大胆に振る舞い、まるで
本当の恋人同士のような雰囲気になりかけている。
「ん……んん…………」
唇の合わせ目から、美香のせつない吐息が漏れる。
乳房を舐め回されて、それに応じて悶える。
彼女の上半身を征服するまでに時間をかけて、首筋や肩口にも手や口で
愛撫を加えていく。
八巻の愛おしさと情熱をこめた愛撫が、美香のただでさえ感じやすい身体に
火をつけていく。
もう、あそこはとろとろに恥ずかしい蜜を溢れさせている。
触ってほしい……。
「……あ……八巻、さん……」
美香は、潤んだ瞳で青年を見つめた。
「なに?美香さん……」
彼は真剣な表情を浮かべて、興奮のためか少し息を弾ませている。
「ね……触って。お願い……」
彼の手を取り、自らの下半身に導く。
八巻は驚きながらも、美香の下肢の間に手を伸ばす。
「凄い…………」
美香の愛液は太ももにまで伝い落ちている。
「大胆なんだね」
清純そうな美香の姿からは想像もできないのだろう。
八巻の感嘆した、でも嫌がっている訳はない声が美香の羞恥を改めて誘う。
「いや……言わないで」
わざと恥ずかしがって、首を横にそむけてみる。
「どうして欲しいの?ねえ……」
青年はそんなことを問いかけてくる。
「……いや……」
美香の抵抗も、口先ばかりのことだった。
いつもこうして黒澤の征服欲を掻きたて、激しい愛撫を求める。
「あなたの、したいようにして……」
黒澤にも、こう言ったことがある。
一言一句同じ言葉を、彼の部下の青年に、黒澤の目前で言ってやる。
そうすると男がどう振る舞いたがるのか、美香にはわかりすぎるほどだった。
「俺のやりたいようで、いいの?」
念を押す彼に、美香は黙ってうなずいた。
細い足首が、それよりも逞しい青年の腕によって左右に開かれる。
「ああ…………」
さすがに、この男に見られてしまうことは抵抗がある。
それでも、いずれすべてを許すことになる。
黒澤の承諾のもとに。
「凄いね……もう、こんなに濡れてるよ……」
美香に対して敬語を使っていた八巻が、同等な口をきくようになっている。
いつも命令口調の黒澤にはS男性としての強烈な魅力を感じるが、それでも
同年代の青年との会話にはそれとは違ったよさがある。
黒澤ならば、観察して視姦されるところだった。
でも八巻はすぐに美香の秘所に口をつける。
舌をたっぷりと使われて、上下に舐めまくられる。
それでいて緩急のつけ方は抜群にうまい。
感じるクリトリスの付近を唇と舌先を使ってねぶられる。
「あっ……あ……。ああ……はぁ……ん……」
声を出さずにはいられない、思いがけない快楽が青年の舌で与えられる。
黒澤の繊細な舌遣いとも違う刺激が、美香の下肢に痺れるような感覚と
なって襲ってくる。
この青年も、テクニックの点では優れているのだろう……
「……凄く、色っぽいね……いつもそうなの?」
「………え?」
息を切らせながら、美香は八巻の質問の意図を測りかねた。
「声が……すごく、いいよ。聞いてるだけで、感じてくるよ……」
黒澤には言われたことのない、誉め言葉だった。
もっと聞かせてあげる。
だからもっと、もっと感じて……。
そんな気分にさせられる。
「……あなたが、上手……だから、よ……ああ……あ、凄い……」
いっそう、悩ましい声をあげて反応してみせる。
演技ではなく、本気で八巻のクンニに感じてしまっているのは事実だった。
「あああっ……ああんっ……!」
高い声を放ったのは、クリトリスへの的確な攻撃のせいだった。
「あ、あん……いき、そう……ねえ、いっちゃう……」
それには答えずに、八巻が舌を激しく使ってそこを責めたてた。
「ああ!あ、ああ……!いくっ……あ、あん!ああ、いくっ……!」
黒澤にしているように、絶頂を訴えながら、美香は全身を波打たせて達して
いった。
美香の悶え狂う様子を見ながら、八巻はそそり立つものを握っていた。
「もう……だめだ。……、もう、たまんないよ……。美香さんの、感じてる
様子が……色っぽすぎるよ」
まだ呼吸を乱している彼女の前で、ゆっくりとしごいている。
まさか、このままオナニーで射精してしまうつもりなのか……
美香は淫猥な光景を目にして、衝動的に「待って」と声をかけた。
「口で……してあげるわ」
突然の提案に、八巻は手淫を止めた。
「……フェラしてくれるの?……美香さんが、俺のを…しゃぶってくれるの?」
嬉々とした調子で目を輝かせる青年を、美香は可愛いとさえ思った。
「ええ……。ね、ベッドの際に来て」
そう言いながら、自分はベッドの下に下りる。
黒澤が、斜め向こう、3メーターほどからこちらを見ている。
目を反らすと、美香は八巻の足元にひざまずくようにして、彼の足の間に
身体を入り込ませる。
興奮しきって、先走りの液が幹を伝って陰嚢にまで垂れている。
そんな八巻のものは、太さも長さも黒澤のものとそう変わりはない。
硬度は黒澤の方がやや勝るかもしれない。
手のひらに熱く息づく男の象徴を、黒澤以外の男のものを、少し躊躇ったのちに
思い切って先端を唇に含んだ。
「ああ…………」
うわずった声をあげる八巻の顔は、恍惚として美香を見下ろしている。
奥までいっきに喉近くにまでおさめると、裏筋から舌先を立ててこすってやる。
どんな男でも、これをすれば大抵は感じる。
根元から先端近くにまで、激しく顔を上下させながら熱心に舐める。
「……ああ……凄い。凄いよ、美香さん……うまいよ。上手だよ……」
おさえきれない快楽をにじませた声が出る。
青年が美香の口唇愛撫の快感に浸っているしるしだった。
八巻が、美香の乱れた長い髪をかきわけてくる。
「見せて……しゃぶってる顔」
言われた途端、上目遣いで男の顔を窺ってやる。
以前にもこう言われたことがある。
こうしてやると、興奮を増す男がいることは確かだった。
「あ……凄い、……ああ……出ちまいそうだよ……」
感じていることを隠そうともしない青年に、美香は濡れた男根から唇を離して
微笑を浮かべる。
「出して……口に出して」
自分から、口内射精をねだる。
「……いいの?口に出しても……」
八巻がさも嬉しそうに言う。
「いいの。飲んであげる。飲ませて、あなたの……」
言い終えると、いっそう亀頭部分への舌先の攻撃を強めた。
「ああっ……あ、美香……さん。いくよ……出すよ。美香さんの、口に……」
八巻の切迫した声が、もうすぐやってくる射精を予告する。
恍惚とした表情で、奉仕を続ける顔を押さえつける。
熱いものが、美香の艶めかしい唇の中に注がれる。
美香は息をつめて、濃厚な液を喉の奥に受け止め、飲み下す。
若いせいか、それともこの男が特別なのか、量が多く感じる。
まだ放出はやまず、強い脈動とともに彼女の口の中を汚していく。
美香にとって、黒澤以外の男のものを味わうのも、久しぶりのことだった。
さすがに若いだけあって、味も匂いも濃かった。
粘りが強く、苦みも感じられる。
でも美香にとっては男性の精液は、決して不快なものではなかった。
むしろその逆で、精飲をする自分がこれほど淫らなことをしている、という
被征服感を味わえる。
それはマゾの快楽そのものに直結していく。
何も要求されなくとも、放出を終えてしまうまで唇に含み、残りの精液を
すべて出し尽くしてしまうまで、丁寧に舐め取ってやる。
「ああ……夢みたいだよ。美香さんが、俺のものをしゃぶってくれて、しかも
飲んでくれるだなんて……」
照れたように、それでも嬉しさを隠しきれずに微笑む青年のものは、美香の
唇が離れても硬度を失わなかった。
「……凄いわ……。また、こんなになってる……」
美香の声にも、まぎれもない歓びが滲む。
萎える様子もないまま、すぐに回復していく逞しいもの。
それだけ美香に魅力を感じて、性的に興奮の極みにあるのだろう。
床下に下りていた美香がベッドの上に進んで上がる。
それを八巻が腕を伸ばして助ける。
抱きしめあい、また唇が合わさる。
実質的な恋人にあたる黒澤以外の男に抱かれるにしては、あまりにも
スムーズにこの青年に身を任せていく。
崇拝に近い好意を示してくれる相手だからこそ、そして美香も彼に好印象を
持っていたからこそ、かもしれない。
クンニリングスで一回達している秘所はますます疼きを高めている。
あとは、もう……
刺し貫いてほしい。
八巻のものを、素直に受け容れるつもりになっている。
身体だけでなく、そして心でも。
待ち望んでいる。
この純情そうな、美香を好きだと言ってくれた青年のものを。
「……して……」
美香は、恥ずかしさに声がか細くなりながらも、自分から男を誘う言葉を探す。
「………え?」
八巻は聞き取れなかった様子でそう返した。
「欲しいの…………」
美香のせつない瞳を見据えて、八巻は彼女の望みを知った。
「……入れていいの?」
直接的な言葉で言われて、美香は顔と腰にかっと熱がこもるのを感じた。
彼は、何も言えずにゆっくりうなずく彼女から離れ、上体を起こす。
そこに黒澤が、コンドームを投げてよこす。
いつまでも、笑いながら見物しているつもりでいるのか……
美香は黒澤の思惑を測りかねて、ただ唖然としていた。
八巻が避妊具を着け終わると、美香の足を抱えて広げさせた。
侵入を試みようと、腰を前に動かそうとした、その時。
不意に黒澤が、ベッドに近づいてきた。
驚愕に目を見張る美香の口許に、自らの怒張を押しつけてくる。
「ほら。俺のもしゃぶれよ」
言いながら、八巻の方にも目配せをする。
それを受けて、八巻の手が美香の腰を捉えて、軽々とうつぶせにさせる。
「あ…………」
惑いながら喘ぐ美香の唇に、今度こそ黒澤の勃起が当ててこすってくる。
「ああ……あ…………」
黒澤が、美香の乳房をいじってくる。
背後では、八巻が美香の太ももを押し広げて、指で浅く挿入してくる。
二人の男に、同時に責められようとしている。
自分の身に起こっている異常極まりない事態に怯えを感じても、この二人に
恐怖までは抱かない。
「やめ……て……。あ…………」
拒否する声すらも、あまりの快感に溶けくずれていく。
肉体を、精神を、二人がかりで屈従に追い込まれる。
唇を黒澤に、そして女性器を八巻に、同時に犯される。
フェラチオを強要されて従いながら、背後から青年の熱いものが押し入って
くる……。
はじめての、そして異様なほどの快楽に、美香は興奮しきっていた。
八巻の固いものが美香の膣内を満たし、ゆっくりと動きを加えてくる。
突き引きのリズムが、当たり前だけれど黒澤とは違う。
当たっている部分も違うけれど、分泌し続ける愛液がとめどもなく湧き出て
それが八巻にも途方もない快楽を与えているらしい。
「ああ……凄いよ、美香さん……。すごく濡れてる、気持ちいい。
吸いついて、きゅっと締まって、離れないよ。いいよ、凄くいい……」
彼の絶賛の言葉が、快く耳をくすぐる。
美香は思わず、黒澤へのフェラチオが疎かになってしまう。
八巻がぐっと奥まで突くと、つい声が出てしまう。
「ああ……ん……」
せつない声をあげて、彼に応えてしまう。
すると黒澤が、美香の頭をぐっと掴んで自分の方に引き寄せる。
「ほらほら…こっちがお留守だぜ。しっかりしゃぶるんだよ」
そんなサディスティックな真似をしてくる黒澤にも、たまらなく感じる……。
「どんな気持ちだ?二人の男に、前と後ろから犯されてる気分は。
それでも感じるんだろう?気持ちいいんだろうが」
美香が熱い溜息をつくところを、髪を掴んで上向かせる。
「ほら。自分から腰を使え。八巻の奴を、もっと楽しませてやれよ」
そんな命令をされるまでもなく、黒澤とはまた違った感覚を与えてくれるものを
美香は進んで味わおうとしていた。
黒澤の男根をしゃぶり、前後に頭を使う動きに合わせて、同時に腰を揺する。
乳房を掴んでいた手を離されると、今度は背後から八巻が美香の乳首を
いじりにくる。
「んんっ……ん、んん…………」
フェラチオを続けながら、声を押し殺して美香は呻いた。
「……あ……俺、もう……いきそう、です……。美香さん、よすぎる……
気持ちよすぎるよ……ああ……」
もう耐えられない、という響きが八巻の声音にこめられている。
「いっちまうのか?若いな……」
黒澤の低い声が笑いを含んでいる。
「俺……こんなに、凄い女性、初めて……です……。ああ……もう、だめだ……」
苦痛をこらえるのに似た、差し迫った声がする。
「美香さん……あ、いくよ……。ああ、出すよ……あっ……あ、ああ……」
臆面もなく快楽の声をあげながら、美香の内部を犯しているものの蠢きを
早めていく。
そのことが、美香の快感をいっそう増幅し、もうフェラチオとは名ばかりで
黒澤の亀頭を含んでいるだけがやっとだった。
二人の魅力的な男性に、唇と性器を同時に犯されている……
想像もしていなかった状況に、美香はおぞましさよりもマゾの快感の方に
強く意識を奪われていた。
まもなく、馴染みの感触が美香の膣内を襲う。
幾度も、幾度も激しく脈を打ちながら、精液を注ぎこまれていく。
黒澤に唇を怒張で塞がれながら、彼の信頼する部下の八巻に膣を犯されている。
そして二人に淫らな行為をされながらも、受け容れて感じてしまっている自分。
>唇の奥に、黒澤の精液がたっぷりと放たれる。
美香は注ぎ込まれながら、八巻のものとは違う味わいだ……とぼんやり
考えていた。
熱く震えるものをくわえたまま、粘液を飲みこむ。
「ああ……。あ、はぁ…………」
美香はまだ、いっていない。
でも、もうじきこれを繰り返されたら、きっといかされてしまう。
それでもかまわない……いいえ、いかせてもらいたい。
八巻のものが抜かれるのを感じた。
「凄えな……」
黒澤は、揶揄するような口調でそう言った。
美香には一瞬なんのことだかわからない。
でもそれが、八巻の放出した精液の量を指すのだとすぐにわかった。
「おまえ、一晩で何回やったことがある?」
美香の身体をはさんで、卑猥な会話が始められる。
「……5……いえ、6回……くらいですね」
「俺も、美香相手なら5回くらいやったぜ」
笑いながら、黒澤は彼女の口許から男根を離した。
二人の会話からすると、文字通り精魂尽き果てるまで、犯され続けると
いうのだろうか……。
八巻は既に二回、黒澤は一回射精を済ませている。
「おまえは、クンニされてる時でも、フェラは集中できなくなるよな。
今度から、反対に八巻のものもしっかりしゃぶってやれよ」
そんな予告をしながら、美香の背後に回って尻を抱える。
いつものように、先端だけを擦り始める。
「ああん……あ……あん…………」
「八巻。ゴム外したか?」
ベッド脇で後始末をしている青年に向かって、黒澤は話しかける。
「あ……はい、今……取りました」
「そうか。拭かなくてもいいぜ」
「え?」
八巻が聞き返す。
「美香に、口できれいにしてもらえばいい。……なあ、そうしてやれよ」
声を優しくして、美香の膣口に浅く先端を挿入させる。
「あっ……ああんっ……」
そのまま、ずぶずぶと奥までゆっくりと押し込む。
「聞いてるのか、美香?……しゃぶってやれよ」
あまりに猥褻な要求に、美香は呆然としながらも、今度は黒澤からの
挿入の快感に夢中になりかけていた。
クリトリスをそっと、指で触れるか触れないかのようにされるとたまらない。
「感じるか?美香……これが感じるんだろう?」
口調は相変わらず優しいままで、ゆっくりと美香を焦らす動きを忘れない。
「答えろ。感じるか、と聞いてるんだ」
黒澤の声が低くなった。
「あ……ああ……。感、じ……ます……」
美香の答えも、黒澤に対しては敬語を使う。
「ようし……じゃ、しゃぶってやれよ。きれいにしてやれ。いいな」
八巻に、こちらに来るように手招きすると、青年はおそるおそる美香の
喘ぐ口許に精液の残滓で濡れているものを突き出した。
さすがに、立て続けの放出に力を失いかけている。
美香は、尻を奪われている快楽に喘ぎながらも、八巻のものに唇を寄せる。
美香の内部に放出した精液の残滓が、白い粘塊となって男根にこびり
ついている。
そんなひどく淫らなものを、美香は熱い視線で眺めたあとに、舌先だけで
亀頭の部分から舐め始めた。
「あ……。ああ…………」
隠しようもない八巻の快楽の声が、美香の行為で引きだされる。
そんな声を聞かされると、彼女のほうこそが感じていく。
奉仕を続けている美香の尻を、黒澤が抱きかかえている。
ゆっくりと、焦らすように抽送を続けていく。
「ああんっ……あ……。ああ…………」
声をあげてしまうと、八巻へのフェラチオができなくなってしまう。
でも、さすがに黒澤の美香を知り尽くした攻撃の巧さにはたまらない。
とぎれとぎれに、舌で側面を舐めてやることしかできなくなる。
それでも十二分に、八巻は快感を味わっているようだった。
「ああ…美香さん、すごくうまいよ……。もう、二回も出しちまったのに
……ほら、また固くなってくる……わかるでしょう?」
興奮のためか、そんな卑猥なことまでを口にして美香を責めてくる。
彼の言うように、放出を終えて間もないものは既に力を漲らせていた。
あまりの復元力に、美香も驚きを隠せない。
「感じるだろう?おまえの気持ちよくなれるところは、みんな知ってるからな。
でも、たまには他の男にやられるのも違ったよさがあるだろう」
黒澤はそんな言葉で美香を嬲りはじめる。
「……ひどいわ……あ……。こんな、こと……して……。……あ…………」
黒澤を責める言葉も、彼の突き込みに応じて溶けていく。
「さっき、八巻と二人でやってるときには随分と積極的だったな。
他の男とやってる時も、そうなのか?あんなに気持ちよさそうにして……」
言いながら、美香の乳房を弄ぶ。
「八巻のことが、好きなんじゃないのか?ん?」
美香の顔を後ろにねじ曲げて、無理に唇を奪う。
ねっとりとしたいやらしいキスを、わざと八巻に見せつけるかのように
している。
それを、美香の前に膝立ちになっている青年がじっと見ている。
他人にセックスを見られることも、はじめてのことなのに。
でもそういえば、八巻に抱かれているときに、黒澤はその二人を見ていた
のだった。
羞恥心も消し飛ぶほど、二人の男に同時に責められるという背徳の
悦楽に浸りきっていく。
黒澤はもとより、八巻もなかなかのテクニックを持っている。
それぞれが違う箇所に、違う種類の攻撃を加えてくる。
キスが終わると、黒澤は八巻に言った。
「美香のクリトリス、触ってやれよ。そうすると、簡単にイっちまうんだぜ」
笑いながらそういう黒澤の声を受けて、八巻の指が美香の股間に向かう。
「美香さん……いい?」
だめ、とは言えない。
すぐに青年の指が、美香の敏感な小さなふくらみを上下にこする。
「ああ……あ、あああ〜〜〜〜ん!」
彼女はその刺激で、黒澤のいうとおりにあっけなく絶頂に押し上げられていく。
黒澤も、美香の内部の蠕動に合わせて、引き金を絞る。
そんな二人の様子を見ている八巻のものも、美香の眼前につきつけられた
まま、先端が激しく分泌するもので濡れていくのを彼女は見た……。
自分ではどうしようもなく、抵抗する術もなく…
ただ美香は、二人の男達にされるがままに、弄ばれるしかない。
黒澤のものが引き抜かれると、美香の腰はベッドに落ちた。
ぐったりと身体の力を抜く美香の尻を、今度は八巻の手が持ち上げる。
「いや……」
小さく言いながら、首を振る。
「まだ、中ではイってないだろう。八巻にイかせてもらえよ」
黒澤の嘲るような声音が美香を責める。
「八巻。おまえの好きなようにしろ。美香もさっき、そう言ってただろう」
その言葉に後押しされるように、八巻は美香の顔を後ろに向かせる
ようにしながら唇を奪った。
「んっ………」
つい、艶めかしい声が出てしまう。
首筋に吸いつかれて、同時に乳房を優しく触りに来られてしまう。
「あ……あ………」
美香の腰を浮かせるように支えながら、尻の狭間に八巻の勃起が
押し当てられる。
それを感じ取ると、彼女の下半身の力が抜けてしまいそうになる。
「ねえ……美香さん……。こうされると、感じるってほんと?」
訊きながら、両方の乳首を指先でこね回される。
「あぁ………。あ、ああ………」
答えることもできないかわりに、糸を引くような喘ぎ声が証拠になる。
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