Kの呟き 昔語

6 抱擁





俺たちはもつれあうようにしてソファベッドに倒れた。
幸実の柔らかな唇を貪り、その感触を味わう。
ブラウスの上から彼女の胸に、そっと触れてみる。
俺の掌におさまる大きさの、けれどふっくらとした優しい手応え。
白いブラウスのボタンを、ひとつひとつもどかしく外し、前を広げた。
幸実は顔を紅くして、俺のなすがままに横たわって目を閉じていた。
下着を……キャミソールの前をめくり、ブラジャーを外そうとする。
背中に回した手が、ホックをなかなか探ることができない。少し焦る。
幸実は自分からホックを外し、俺から顔をそむけた。
俺は自由になった彼女の素肌に触れる。

白い肌は、まるで陶磁器のように滑らかだった。
そして優しい膨らみをもって俺を迎えてくれる、両の乳房。
女の胸を間近で見ることなど初めてだった。
手で触れると、柔らかくて驚く。
服の上、下着をつけた状態とはまるで違う。
夢で見たように美しい形をしていた。
透き通るような艶のある肌、そしてどこまでも滑らかな手触り。
しっとりした乳房の重みが、俺の手にぴったりと沿うようだった。
その中央に、恥じらったようについている薄茶の小さな乳首が
愛らしかった。
俺は夢中でその突起に唇をつけて吸う。
もう固くふくらんでいる。
舌先で乳房を押すようにして、乳首の周囲に舌を這わせると
幸実の口からくぐもった声が漏れた。
息を吸い込んだかと思うと一気に吐く。
「ああ…………」
幸実の声が、今までに聞いたことのない響きを添えて俺の耳に
飛び込む。
女そのものの声になった。
感じているのか。ここが気持ちいいのか。
胸を俺に舐められたことによって、彼女は快楽の吐息をついている。
もっと気持ちよくさせてやりたい。

まだ身につけているブラウスを脱がせようとすると、彼女は自分から
脱ぎ去った。
俺はタイトスカートに手をかけ、尻の部分を撫で回した。
「あ……」
とろけそうな声が彼女の口から出る。
ストッキングを身につけている足の間に手を這わせ、内腿を撫でて
……そして、女の部分にそっと手を置いた。
「は……あ……」
彼女の手が、俺の掌を包む。
俺はストッキングに手をかけ、傷つけないように気を配りながら、その
繊細な布を彼女の脚から引き剥がしていった。
スカートを脱がせ、あとは腰を包む薄布だけになった。
オレンジの間接照明に浮かび上がる彼女の裸体は、優美な曲線を
描いてたおやかに横たわっていた。
女性の身体が、こんなに美しいものだとは……
俺は感動に近いものを覚えていた。

やや小ぶりと言えるかもしれない乳房は、柔らかな中にも弾力を
感じさせて俺の愛撫に応える。
掌をこする固く尖った乳首、俺の手の中で自在に形を変える
乳房の感触。
手指からも伝わる快感が、ダイレクトに腰を通って下腹へ向かう。
俺はもう我慢ができなくなり、シャツを脱ぎ、ジーンズも脱いだ。
互いに身につけているものは、最後の一枚だけになる。
幸実はそれまで閉じていた瞳をそっと半開きにして、俺を見た。
その何気ない仕草が、例えようもなく俺の欲情をそそる。
俺の胸元を見つめているのを感じる。
下半身を持ち上げるものに視線を移すと、幸実は恥ずかしそうに
また顔をそむけた。
俺は彼女を意識しながら、ゆっくりと下着を脱いで全裸を晒す。
欲望の激しさをそのまま示す、獰猛になっているものがある。
日頃から鍛えあげた身体を、見せつけるようにしてやりたい。

俺は幸実を再び抱きしめると、今度は荒々しくキスを仕掛けた。
乳房を探り、首筋に唇を移すと幸実は声をあげた。
ショーツの股間に手を伸ばすと、そこは驚くほど濡れていた。
布の外にまで滲みるほど、感じているのだと思うと嬉しかった。
白い滑らかな布を、脚の下にまで引き下ろす。
そして、初めて女性の部分に触れる。
柔らかな秘毛が彩る間に、ぬるぬると溢れかえる粘液があった。
これが、女性が感じると濡らすという愛液なのか。
こんなにも俺を求めていてくれるのか。
もう駄目だ、我慢できない。
幸実が欲しい。

ふと、欲望で白濁した脳裏に避妊のことが浮かんだ。
何も考えずにいたが、どうすればいいのか……
当然コンドームも持っていない。
「……幸実。今日は危険な日?」
女性には危険日と安全日があることくらいは知っている。
ただ、膣外射精など避妊ではないというし、しかもそのやり方は
知識として頭にはあるが、これが初めての経験なのにできそうにない。
幸実は首を振った。
「ピルを飲んでるの。だから……大丈夫よ」
その囁きは俺を甘く誘った。
「来て…………」
幸実は俺の首に腕を巻きつけて言った。


二つの小さな小山を作る乳房、そこからすっきりとくびれた華奢な腰。
そして腰から繋がれた白桃のような尻、セクシーな脚、透き通るような
白い肌。
すべてが夢で見た以上に美しく、愛おしかった。
俺は幸実の秘所に手を伸ばし、これから挿入させるべき部分を探った。
そこはとろとろとした蜂蜜のような粘りをおびて、俺の指にからみつく。
甘酸っぱい匂いがしていて、それも俺の欲情をいたく刺激した。
「……ここ?」
幸実にそっと尋ねた。
「そうよ…………」
幸実はとろけるような声と表情で言った。
「お願い、……入れて…………」
膝を曲げ、開いた脚の間に俺は腰をすべらせた。
熱くたぎった欲望の塊を、指を吸い込んでいるところにあてがう。
ゆっくりと突き入れた。

その瞬間、途方もない快感が訪れた。
そこを自分で握りしめ、しごいているよりも遙かにいい。
温かな、湿った感触が四方から俺を締め付けてくる。
「ああ……。はぁっ……。……ああ…………」
俺を抱きしめながら、幸実も艶めかしい声をあげている。
その恍惚とした顔も、唇から出る声音も、今幸実のすべてが俺の
ためのものだった。
「あ……。…………すご……い…………」
幸実はうわごとのようにとぎれとぎれに喘いだ。
俺は、もう射精寸前にまで追いつめられていた。
こうして挿入してからまだ間もないのに、イってしまっては彼女に
申し訳ない気がする。
だが、初めての刺激が俺の想像を遙かに超えて、凄まじいほどの
快感を絶えず俺に送り込み続けていた。
ゆっくりと腰を上下にして、射精感に必死に耐えているのが精一杯
だった。

「……いい……あぁ……気持ち、いいのぉ……」
甘えるような声が彼女の唇から出る。
瞳は閉じられ、陶酔した表情が俺との行為で快楽を得ていることを
知らせる。
その凄まじいほどの艶めかしさを、見ているだけで感じてくる。
こんな口調で、大胆に快感を訴える女性とは思っていなかった。
普段のしとやかな彼女が、今こんなにも乱れている。
しかも、彼女をそうさせているのは俺自身。
そう実感すると、もうたまらなかった。
「……ああ、幸実……もう、駄目だ……」
俺は屈服を告げた。
「イクよ……ああ。……幸実……!」

俺の目の前で、火花が散った。
身体の奥底から、沸々と湧き上がってくる快楽の渦。
愛しい女の身体に欲望を注ぎ込む強烈な快感に、目がくらみそうになる。
想いのありったけをこめて、彼女をきつく抱きしめる。
彼女に包み込まれるように抱き返され、俺は幸実と唇を重ねる。
こうしていると、隙間などないほど男と女の身体がぴったりと合わさる。
セックスとはこういうことなのか……
愛情を感じ、そして情欲をも交わしあえる。
かつてないほどの幸福感に満たされ、いつまでもこうしていたいと
まで思えた。



俺は彼女を埋めている部分を引き抜いた。
互いの体液にまみれたその部分は、鈍く光っていた。
初めての女性と、直接素肌ですべてを感じあった。
なんともいえない充足感、喜びが俺の身体に広がっていった。


 
 
「……凄いのね……」
幸実はまだ少し虚脱したような、夢見るような表情で言った。
「……え?」
俺は言われた意味がよくわからなくて聞き返した。
「貴方の身体……凄いわ。こんな身体をしてたのね」
幸実は俺の胸板を両手でさすった。
俺は筋肉がつきやすい体質だが、ナチュラルに鍛えているせいで
いわゆるプロレスラー系やボディビルダー系ではない。
「着痩せして見えるのね。知らなかった……」
寝たことで、幸実は俺に甘えてくるような柔らかい口調になる。
「意外だった?」
俺は彼女に訊いた。
「……ええ。でも……」
彼女は一旦言葉を切った。
「好きよ……」
小さく呟く幸実に、俺はまた欲望を刺激された。
言うべきか迷ったが、彼女は気付いていなさそうなので言ってみる
ことにする。
「……俺、幸実が初めてだったんだ」

彼女が目を丸くする。
「嘘……」
「……ほんとだよ」
驚きに見開かれていた幸実の目が細くなる。
「嘘じゃないの?……だって……」
「だって?」
彼女の沈黙を畏れて、自分から切り出したことを少し悔いた。
「だって、……あんなに………… よかったのに……」
幸実は耳まで紅く染めて、そんなことを言った。
年上の女性だが、こんなところが可愛らしいと思った。
俺との行為をよかったとまで言ってくれたのも、嬉しい。




「ねえ、……シャワー浴びましょう」
そういえば、お互いにシャワーを浴びてはいなかった。
俺は家を出る前には済ませていたし、幸実もそうだろうと思った。
エアコンがよく効いているし、汗を滲ませても不快に感じなかった。
それほど夢中で貪りあっていたのだと、今更ながら気づいた。

幸実はすっと立ち上がると、胸と秘所を隠してシャワールームに
消えた。
どうするか少し迷うが、悪戯心を起こした俺は、あとから彼女に
ついていくことにする。
俺は彼女の身体の中に直接射精してしまったのだ。
後始末をしないといけないのだろう。
好きな女の身体の中に、自分の分身と言えるものを注ぎ込む。
独占欲と、支配欲を満たした気分になれる。


“あなたのものにして”

幸実が羞恥に耐えながら俺に告げた言葉を思い出す。

“一度でもいいから”

いや、そんなことは無理だ。
一度だけでは済む筈もない。
もう一度、もう一度と何度でも繰り返し求めたくなるだろう。
こんな快感を味わってしまっては、……やめられるわけもない。



抜き差しならない、愛欲の泥沼へと足を踏み入れてしまった。
だが、それはあまりにも甘美な罠だった。
たとえ行き先が深く暗い底無し沼でも、それとも闇夜の中に
迷い込み、やがては行き止まる洞穴でも。
今はまだ、見えない出口のことなど忘れ、手探りで突き進んで
行こうとしていた。



7 唇 へ


5 奔流 へ


エントランスへ



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