Kの呟き 昔語  

7 唇

 


俺はバスルームに無言で入っていった。
幸実と並んでシャワーを浴び、彼女の中に沈めたものを念入りに洗う。
まだそそり立っているそのものに、ちらりと彼女の視線が向けられた。
二十歳前の男の性欲の凄まじさを、まだ彼女は知らないままでいる。
続けて二回、場合によっては三回しても、おさまらないこともある。
一日に7回だか8回だかした時は、まるで自分が性欲に狂った猿の
ように思えた。
幸実の方に向かって微笑んでみせる。
「……おさまらないよ」
幸実は顔を逸らした。
「……知らない」
「誰のせい?」
俺はそう言いながら彼女に詰め寄った。
「あ……」
幸実の顔をこっちに向き直らせ、口づける。

「幸実のせいだよ」
耳に唇をつけて、そっと囁いた。
途端に彼女の表情が甘く溶け崩れる。
「ああ…………」
首筋にキスを繰り返しながら、耳元に囁き続ける。
「……好きだ」
「……う…………ん……」
彼女は感じているようで、首を小刻みに揺らしている。
「……もっと抱きたいよ」
正直に、胸の裡をそうやって告げる。
幸実の方から、俺の唇を求めてきた。
舌をそっと絡め、そしてだんだんと奥にまで滑らせる。
もう、彼女の身体も開きかけているだろう。
「……ああ、そこ……耳、弱いの……」
うっとりとした様子で俺にすがりついてくる。
「感じる?」
俺の問いかけにうなずく。
「……だから……初めてなんて、……信じられなかった……」
微笑む彼女を抱きしめると、その白い手を俺の股間に導く。
幾度も想像した場面を、彼女に対して実行に移す。

「握って……」
俺の胸に顔を半分埋める形で、幸実は俺の言葉に従った。
暫く、手で握り、離し、そして棹を掌で擦るというのを繰り返す。
「……ねえ、どうしてほしいの?」
幸実は俺を見上げながら訊いてきた。
「貴征さんの、好きなようにしてあげる」
俺のものを、手でそっと愛撫しながらそう言った。
決まっている。
俺のしたいこと。
「……ほんとに、俺のしたいことでいいの?」
「いいわよ。なんでも言って」
幸実は、俺とこうなる前とは別人のように妖しく淫靡に振る舞った。
「じゃあ、俺がしたいと思ってるだろうって、幸実が考えることをして」
直接は言わずに、こうして彼女の方からさせるように仕向ける。
彼女の嫌なことは、自分からはしない筈だ。

幸実は少しの間考えていたが、意を決した様子で俺の足元に
ゆっくりとひざまずいた。
この体勢は…………
俺は待ち望んでいた行為への期待に、胸を躍らせた。

はあ、と深い息をつくと幸実は俺のものを手で握った。
既に一度射精したのに、そこは勢いを衰えさせず熱く猛っている。
先端の部分に、幸実のピンクの唇がキスをする。
「う……っ」
思わず呻き声が出るほどの快感が走った。
彼女の唇の中に温かく含まれ、ゆっくりと舌先が敏感な亀頭の部分を
舐めて刺激してくる。
このことを、何度も夢想した。
初めてのフェラチオを経験して、手で握られることの数倍とも思える
快楽に、凄まじく興奮していた。
幸実の柔らかな舌が、幹の部分の裏側、所謂裏筋の辺りを強く
こするようにしてくる。
そこと、先端を唇をすぼめて強く吸われる……
精液が吸い出されそうになるほど、感じた。
声など出すまいと思うのに、想像を遙かに超えた幸実の舌戯に
溺れてしまう。

「くっ…………」
俺の足元にひざまずき、俺の男の象徴を口にして淫らな愛撫に
耽る幸実。
夢ではないかという想いが頭をかすめても、この素晴らしい快楽は
それがまぎれもない事実だと示している。
女性の唇で自身を舐めさせる、これはいつも俺が自慰の時に思い
浮かべるシチュエーションだった。
こんなことを、自分から進んでする女性には見えないのに。
慎ましく微笑みを湛える唇で、舌で、今俺のものを性的に刺激
しようと奉仕している。
すぐには出したくない。
もっとこの快感を味わっていたい。
けれど、彼女の熱心な行為に俺はもう射精寸前にまで追いつめられていく。
「幸実…………」
俺は息を荒げて言った。
「……もう……イキそうだ……」
彼女はそれでも、俺のものから離れようとしない。
逆に先端の、亀頭のくびれた部分を吸う。
その一撃が、俺を絶頂感に追いやった。

「……ああ……あっ、……ああ!」
俺はもうなにも考えられずに放った。
幾度も強く脈打ちながら、欲望の液を彼女の口内に注ぎ込む。
強い快楽に、腰が痺れてしまう……
女性の口を犯している筈なのに、反対に俺自身が犯されているような
倒錯した愉悦が襲う。
幸実は俺がほぼ射精を終えても、相変わらず俺のものを口に収めている。
彼女が俺の精液を嚥下する音が聞こえた。
飲んだのか。
俺は快感とともに驚きを禁じ得なかった。
AVなどでは当たり前の行為だし、俺もそうさせることを望んでいたのは
確かだ。
けれど目の前の女性、幸実がこんな卑猥な行為をするとは……
決してこんなことをするタイプには思えないのに。
そのギャップが、俺の欲情に火をつけ、そして異様なほど燃え上がらせた。

飲んだあとでも、彼女はまだ固いままの俺のものを執拗に舐めている。
射精直後の先っぽの部分を舌で嬲られ、俺は強い刺激に思わず
呻いた。
そしてようやく、彼女は満足したように俺の男根を離した。

色白の頬が、行為の興奮のせいか紅く染まっている。
瞳は半開きで、夢見るような顔になっていた。
その表情に凄絶な色気を感じ、俺はまた欲望が鎌首をもたげてくる
のを感じた。
「飲んだのか」
俺はひどくそそられ、喉からかすれた声を出した。
幸実はこっくりとうなずく。
恥ずかしそうに、それでも満足そうにしている彼女は淡く微笑んでいる。
立ち上がる彼女を抱きしめる。
愛おしさと、また新たな欲望の波に苛まれながら俺は訊いた。
「……なにを飲んだ?」
こんな淫らな問いをぶつけてみる。
期待している。
彼女がどう反応するのか。

「いや…………」
彼女は恥じ入っている様子で首を振った。
その白い首筋に唇をつけ、そして囁く。
「俺のなにを飲んだんだ」
ビクッ、と彼女の身体が震える。
俺の方に顔を向けようとしない。
目を閉じ、唇を軽く噛んでいる。
本気で恥ずかしがっているようで、俺はますます大胆な質問の答えを
促したくなる。
あんな淫猥な行為をしていながら、それを口で説明するのが恥ずかしい
とは、どういうことだろう。
激しく興味をそそられる。
「教えてくれよ。……俺は初めてだったんだぜ」
自分が今まで未経験だったことを逆手にとる。
はあ、と幸実は大きく溜息をついた。

「……ん?」
「……精液……よ。あなたの……を。……飲んだ……の……」
絞り出すように、彼女はようやく言った。
「いや……恥ずかしい…………」
彼女は両手で顔を覆った。

俺は彼女に言わせた言葉はもちろん、その仕草、その反応にさらに
情欲の炎を煽られた。
あれほどのことをしておいて、今はこんなにも羞恥に震えている幸実。
そのあまりにも大きい落差は何故だろう。
「あんなことしておいて、……恥ずかしいんだ?」
俺はからかうような調子でそう言ってみた。
「ひどい…………」
幸実は潤んだ瞳で俺を見つめた。
「好きだからよ……貴方を、歓ばせてあげたいから」
ああ、だからなのか。
だから、恥ずかしさをこらえてでもああしたのか。
俺はようやく合点がいった。
こうして言われてみなければ、まだまだわからないことだらけだ。
初めて知った女性の奥深さに、俺はもっともっと興味をかきたてられる。

まだ俺の欲望は高まったままだった。
「出ようか」
俺は彼女に促した。
幸実はうなずき、俺のあとについてくる。
俺よりも5歳年上の、大人の女性。
セックスに関して言えば、彼女が深く濃い経験を積んでいるのが
さっきのフェラチオと精飲でも明らかだった。
それでも時折少女のように頼りなく見えるのは、彼女が恥じらい
ながらも俺のためにそういった行為をしてくれるせいなのか。
未経験だった俺が、彼女にした質問で幸実をひどく恥じ入らせたのは
俺自身驚いた。
フェラチオで感じる女は、マゾの気を持っているという。
彼女はもしかして、そういった気質の持ち主なのだろうか。
俺はまだ自分自身でも気づいていなかった性向が、彼女との
行為で浮き彫りにされていくような気がした。


幸実とともに寝室に移る。
此処で兄と彼女が愛し合ったのかもしれない、と苦い思いが胸に刺さる。
けれど、今夜はそのことは考えまい。
意外なことに、ベッドは二つだった。
セミダブルのサイズが並んで置いてある。
それにしても、配置が妙だった。
二つのベッドの間に、小さな収納棚が位置している。
まるで境界を区切るように。
もしかして、二人はベッドをともにしてはいないんじゃないか。
そんな疑問が浮かんで、すぐに消えた。

ピンクのシーツの上に、彼女が横たわる。
それに誘われるようにして、俺が幸実の上に覆い被さる。
抱きしめあい、キスを交わす。
さっきまで俺の分身を含んでいた唇。それでもかまわなかった。
幸実が感じると言っていた耳元、そして首筋を軽く吸い、そして
舐めた。
「あ……ああん……」
彼女は高い声を放った。
そんなにいいものなのか。
「これ……そんなにいいの?」
俺は思ったまま、彼女の耳に囁いた。
「あ……」
彼女は顔を揺らして答えた。
「……いい……の。お願い、……ここも……」
俺の手をとり、彼女の乳房に当てる。
首筋を舐めてやりながら、もう既に尖っている乳首を指でこする。
「ああっ…………」
俺は彼女の反応に気をよくし、両方の乳首をそうやって指先で
攻めてやると、幸実はいっそう声をあげる。

「あ……すご……い……」
「いい?」
俺は彼女のよがる表情を見つめながら訊いた。
「……あなた……ほんとに、はじめて……なの?」
幸実はうっすらと瞳を開けて俺を見た。
「そうだよ。幸実が初めてだ」
俺は、彼女が何故今更そんなことを訊くのか、逆に不思議だった。
「上手……なの。よすぎるの……ああ…………」
そういえば、さきほど初めてだと告げた時にも幸実は疑っていた。
俺は経験者だと思われていたのか。
それほど、俺の愛撫が彼女を酔わせているのか。
俺は彼女が歓んでくれることが嬉しかった。
幸実の身体を優しく扱おうと、一応気遣っているつもりはある。
俺の体躯では、彼女の華奢な身体を、壊れ物を扱うようにして
やらなければならない。
好きな女にセックスのことで誉められ、優位に立てるのは気分がいい。
まして、俺は今まで女性を知らなかったのだから。
耳学問で蓄えていた知識も、役に立つものだ。


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