Virgin break4 決心
「ん……」
唇を重ねながら、しっかりと抱き合う。
離したくない。いつまでも離れたくない。
いつでもあなたを感じていたい。
歩いて私の家まで帰る途中に、広い運動場がある。
そこの裏手の暗がりで、私たちはお互いを貪っていた。
なにげなく話をしていても、人目につかないその場所はあまりにも
できすぎた舞台装置だった。
「ああ……」
乳房を剥き出され、彼の唇が敏感な突起をはさみこむと、舌先で
嬲るようにねっとりと舐められる。
「あ……」
気持ちよくって、声をあげずにはいられない。
もう誰もいない広場に、私の高い声がこだまする。
彼の息遣い、私の肌を舐める湿った音、我慢できない私の淫らな
喘ぎ声が入り交じっていく。
立ったまま、ブロック塀に身体を押しつけて長く愛撫を続けられる。
彼の手が、またゆっくりと私の下肢にのびる。
もう私は抵抗しなかった。
タイトスカートをたくしあげられ、ストッキングを下ろされる。
彼の眼には、私のショーツがはっきりと映っているに違いない。
激しい羞恥で、彼の視線を正面から受けていられない。
彼から顔をそむけ、弾む吐息を肩で逃した。
ショーツの上からゆっくりと、優しく……指先で大事な部分を探られる。
同時に彼の舌が首筋を這い、私はたまらなくなってほとんど叫び声に
近い声を放ってしまう。
「ああ!」
自分の吐息が荒く、乱れていくのがわかる。
彼の指が陰唇の間にめり込むように押しつけられ、そのまま動かされる。
「はぁっ……あ…………」
苦鳴に近いような声……
けれど自分ではどうにもならない快感が私の身をよじらせ、喉の奥から
声を絞り出させる。
男性に、この人に身体を自由に操られていくようなマゾヒスティックな
快楽が、焦燥が私の心を燃え上がらせる。
ショーツの上だけで私をさんざん焦らしておいて、彼はなかなか
その先へいこうとしない。
前回逢った時、私は男性に抱かれるのはこれが初めてだと告白している。
彼からすると、未経験の私をこんなに乱れさせるのはさぞ気分のいい
ことだろう、とぼんやり考える。
「……気持ちいいかい?」
優しく、ほとんど吐息だけで熱く耳元に囁かれる。
その瞬間、私の身体がビクンと反る。
「……気持ちいい……」
私の悶える様子を眺めていれば、わかるくせに……
それなのに私の口からそんなことを言わせたがるなんて。
そう思いながらも彼の問いかけに答える。
もっとよ……もっとしてちょうだい。
あなたの手で、また私を痺れるほど感じさせて。
こんなに気持ちいいことを教えてくれる彼に、全身で応えたい。
「触ってほしい?」
そうして欲しいに決まってる。
わかってるでしょう、どうしてそんなことを訊くの?
うなずくと、彼は私に畳みかけた。
「……ちゃんと言ってみな。触ってほしい。……ってさ」
低い声でそんなことを言われる。
いや……そんな、恥ずかしい。
「お願い……そんなこと、言わないで……」
下を向きながらやっとそう言うと、彼が私の顔を自分に向き直らせた。
何度もキスをされ、ショーツの上の端に指を入れられる。
「欲しいだろう?」
唇を解放されて、霞んだ視界に彼の顔が浮かぶ。
彼は笑っていた。
「ほしい……欲しいの……」
私は震える瞼をゆっくり閉じると、かすれた声でそう言った。
「足を広げてごらん」
触りやすいようにするんだろうか……彼の言葉に従って、少し広げる。
指が下に降りて、潤みきっている秘毛をまさぐられる。
クリトリスの膨らみに彼の指の腹が触れ、「ああん……」と私は
喘いで腰を揺らした。
その動きはそれだけで終わらず、指と指でそこを挟むようにされると
ゆっくりとこすり始めた。
「ああ!あ……あ……」
もう私は泣くような声をあげて、強い刺激と愉悦に身を任せた。
「愛美は、ここがいいんだな」
彼の声にも明らかに笑いがこもっている。
そうよ、そうなの。
いつも自分でする時には、こうしてるのよ。
あなたはどうしてこんなに私の弱いところを知ってるの?
「愛美はいやらしい娘だな……初めてなのに、こんなになってるなんて」
いや、ちがう!そんなこと言わないで。
私は首を振りながら、迫り来る絶頂の快感を捉えようとした。
「あ……あ、ああ……」
彼の逞しい肩を掴みながら、腰から伝わる快楽が頭の先にまで
突き抜けていく……
また……指だけで、イかされてしまった。
身体に汗が滲むほどの興奮で、頭が少しくらくらする。
達したばかりの秘所に、まだ彼の指は留まっていた。
そして少しずつ、ゆっくりとその指先を、私の膣口へとすべりこませていく。
浅く侵入され、濡れきっているそこは簡単に彼の指を受け容れた。
痛みを感じるかと怯えたのは一瞬で、私は抵抗もなく彼に対して身体を
開いていることを知った。
「痛くないか?」
彼が訊いてきたので素直に答える。
「痛くない……」
「指一本がせいぜいかな……」
彼は独り言のようにそう呟いた。
その指を抜かれると、水音とともに生ぬるい感触が出ていった。
彼の身体が離れても、私はまだ恥ずかしくて顔を上げられない。
ぼうっとしていると、私の目が彼の股間の膨隆を捉えてしまう。
こんなになっているんだ……
その状態になっている男性のものを、こうしてまともに見てしまった
ことはなかった。
服の上からだとはいえ、それは刺激的すぎる眺めだった。
見たことがなかっただけに、激しく好奇心をそそる光景でもある。
こんな状態で、男は我慢できるのか不思議に思える。
男性の精液は三日で溜まってしまうとよく話には聞く。
私に対してこんなに感じてくれているのに、どうやって欲望を抑えて
いられるんだろう。
私が処女でなければ、もうとっくに抱かれて彼のモノにされているん
だろうか……。
そんなとりとめのないことを次々に考えてしまった。
ゆっくりと、時間をかけて彼は私の身体に愛撫を加え、馴らしていく。
優しく接してくれているのが、私にはとても嬉しかった。
決して彼の欲望だけを先行させることなく、私の男性を受け容れた
ことのない身体を徐々にほぐしてくれる。
それから生理をはさんで一週間、間が空いてしまう。
彼に逢えないのは辛い。
それでも、いつでも彼のことを考えている。
もうすっかり彼に捉えられてしまっている。
早く抱きしめられたい、キスされたい、彼のぬくもりを感じていたい。
いつか彼と、一夜をともにできたらいいのに……
そんな風にも考える。
私が、こんな動物的な……というか、逢えば身体の接触を求めている
みたいになってしまうなんて。
セックスに近いことをしていながら、こんなに気持ちいいことなら
病みつきになってしまうのは無理もない、と感じていた。
彼に身体を任せ、されるままになっているのが歓びだった。
やっと鬱陶しい期間が終わり、彼と逢う約束をする。
生理期間だから逢わないのではなく、彼の仕事も忙しかったから。
電話で話をしているうちに、彼とドライブに行こうという話になった。
「日帰り?」
『いや。連休が入ったんだ』
連休……ということは……
『一泊しようか』
言われた途端、胸が苦しくなるほど高鳴る。
ちょうど春休みの期間で、私には時間もある。
『愛美さんの予定はどう?大丈夫そう?』
「ええ……大丈夫、です」
そう言い切っても、それでもまだ胸が身体から飛び出そうなくらいに
速い鼓動を感じていく。
彼に抱かれる歓びと苦痛を感じることへの不安、未知の領域だった
男性を知る好奇心……それが私の心を激しくかき乱す。
『よかった。それじゃあ、明後日の朝迎えに行くよ』
そのことを約束して切る。
伊豆にあるプチホテル、っていうんだろうか、そんな場所へ行くことに
なった。
彼の車に乗って、彼と二人だけで遠くへ行く。
初めてのことで、それは楽しみな気持ちも大きいけれど、それだけじゃ
なかった。
彼に私のすべてを晒す時が、もう間近に迫っていると思うと……
その時が早く来て欲しいと願う気持ちと、少しの戸惑いのようなものを
同時に感じてしまう。
あと二日。
あと二日経ったら、私はあの人のものになる。
もうこの身体は、今までの私とは違うものになってしまう。
やっぱりその時は痛むんだろうか。それを耐えられるだろうか。
彼の優しい手が私に快さを感じさせてくれただけに、そのことへの
不安な気持ちが私にあった。
避妊はどうなるんだろう、今は生理直後だから一応安全日ではある
けど、あと一週間もしたら排卵日になる。
安全日から危険日に移行する頃だ。
彼はちゃんと避妊してくれると思うし、そうだと信じたいけど、私も
マイルーラだとかを用意して行った方がいいかもしれない。
ああ、でもいつまでも考えていても仕方がない。
彼に任せて……
私も、私の中の彼が欲しいという気持ちに素直になろう。
彼を好きな気持ちに従って振る舞おう。
私はそう心に決めて、逢える日を待った。