花より色は27
 自分を握ったままじっと動かない三治を見て、新之助は枕元から手ぬぐいを取り上げた。

「三治、手を」

新之助は三治の手を取り、手ぬぐいで汚れた三治の手を拭き取る。三治は不意にハッとして、その手を遮った。

「新之助様こそ、体が汚れてしまいました」
「私は後でいい。手が気持ちが悪いだろう」
「・・・」

新之助は三治の指の間までを綺麗に拭き取った後、自分の体を無造作に拭いた。三治は新之助のその日常的なしぐさに、どうしていいか分からずただ黙っている。

「大丈夫か?あんまり浅ましくて呆れただろう」

新之助の言葉に、三治は強く首を振った。

「そんな事はありません。驚いただけです。その、汚いと思わなくて驚きました。それより・・・」
「それより、なんだ。お前の好きにしていいと言ったのだぞ。次はどうしたい。私にしてもらいたい事があれば言いなさい」
「ですが、その、今新之助様は終わられたから・・・」
「うん」
「もう、満足されてしまったのではないでしょうか。それでしたら、私はいいのです」
「何がいい。満足したが、これで終わらせるつもりはない。どうしてそんな事を言うのだ」
「あの、以前、の時ですが、あの、茶屋で・・・。宗二郎様が一度終わられると私をしばらくの間放って置かれました。ですから・・・」
「宗二郎殿がどうだったかなどどうでもいいが、私は違う。これを見てごらん。まだお前を欲しがっている」

導かれるまま新之助の中心を見れば、それは今終わったばかりだと言うのにまだ芯を保っていた。

「新之助様・・・」
「いくらでもできるのだよ。お前がこうして、私の床にいてくれるなら」
「新之助様、抱いてください。きつく」

新之助はそれを聞くと黙って三治を引き寄せた。そのまま布団の上に二人で倒れこみ、互いの体にしっかりと腕を回して抱きしめる。

「新之助様、新之助様」

うわ言のように名前を繰り返す三治は、どれだけ抱きしめても足りないとばかりに必死で新之助にしがみついている。新之助は三治を硬く抱きしめた。あまり性急にすると三治が怯える事を学習したから、新之助はできるだけ動かない。動かないまま、三治が望むだけ強く抱きしめた。
 三治の動きに次第に肌蹴てくる着物の隙間から、三治の肌が現れてくる。その肌に手を差し込みたい気持ちを抑えながら、新之助は乱れている裾から顕になっている足を絡めた。三治は新之助に口を吸われている事に夢中になり、足を絡めている事に気づかない。夏の気温のせいだけではない汗ばんだ肌を、直接触れ合わせている事に新之助も夢中になった。その足の間で、新之助の腿に当たる三治の褌の下から、三治のそれが固さを増してくるのが分かる。布越しにもう一度確かめてから、新之助は三治を抱きしめていた右手を離し、そっと体の間に滑り込ませた。

「・・・ここが、張っている」

新之助は互いの唇の隙間から三治に優しい声で囁いた。三治は一瞬焦点が合わないような目で新之助を見てから、恐る恐ると言ったように自分の中心に目を落とした。新之助の手に包まれたそこは、布の中で更に張り詰めている。三治の行動の意味が分からなくて、新之助は失敗をしてしまったのかと不安を感じながら言った。

「どうしたのだ。大丈夫か」
「・・・は、はい・・・」
「こうするのは、嫌か」
「いいえ、いいえ・・・ただ、こんな事は初めてで」
「初めて?」
「その・・・ここが、こんな風になったのは初めてなのです」
「まさか」
「本当です。本当なのです」
「分かったよ。だが、その・・・」

三治は興奮に顔を赤らめながら首を振り、荒くなる息を抑えながら言った。

「私にも良く分からないのです。こうなるのが普通なのだとは分かっていました。でも、まだこういう事を知らなかった時に宗二郎様に酷くされて、それ以来・・・新之助様のことを思ったり、夢に見たりする時も、体が熱くなったり身の内で何かが爆発するような心持がするだけで、ここは、何も起こりませんでした」
「三治・・・」
「最初の時も、茶屋での時も、宗二郎様が私の反応があまりにも悪いと無理に手でされて、無理矢理勃たされて終わらせられた事もあるのですが、苦しいだけでした」
「なんて事を・・・」
「いいのです。知らなくて良かった。こうして触れられていると気持ちがいいものだと知るのが、新之助様とで良かったのです」
「・・・気持ちがいいか、三治」
「はい、・・・とても」

それでも直接触るのは新之助には躊躇われた。そこへ触れる肌の感触が、三治の悪夢を呼び覚まさないかと心配したのである。新之助は布の上から三治のそこを柔らかく揉みしだいた。

「・・・強すぎたら言いなさい」
「はい・・・」

新之助の手淫に、三治は新之助の肩にしがみついた。合わせた額の下で、三治の目は閉じられ、時折ぎゅっと結ばれ、軽く開いた口から荒い息が漏れている。新之助は慎重にそれを続けた。徐々に布の上からでもその形は顕になり、新之助はそれをなぞるように指先で扱き、先の辺りを指の腹で弄った。

「はぁ・・・はぁ・・・ん・・・あ、・・・ん・・・」

無意識にだろう漏れている微かな喘ぎ声が、新之助の中枢を再び刺激した。向かい合った同じ場所で、新之助のそれは再び頭をもたげている。三治はそれに気づいていないようだ。新之助は布越しに、自分のそれを三治の形に摺り寄せ、押し付けた。

「・・・あ」

やがてようやく気づいた三治が目を見開いた。

「・・・浅ましいな。お前のそんな姿を見ているだけでこれだ。自分でもこんなだとは思わなかったよ。こうされるのは、どうだ、嫌か?」
「いいえ。続けてください。浅ましいなどとは思いません」
「三治、顔を上げて」

新之助は布越しに互いのそれを押し付けながら、滑り込ませた片手で二つの膨らみを擦った。顔を上げた三治に、新之助は唇を寄せる。

「・・・お前が可愛い、三治」
「そんな、私は男です」
「なぜだろうな、私の中のお前はずっとお染のままだ。愛らしかった。あんなに心を奪われたのは初めてだった」
「私はもうお染ではありません」
「分かっているよ。お染が好きなのではない。お前が演じたから、お染に惹かれたのだ。こうして大人の体になっても、やはりお前が可愛い。三治、好きだよ」
「あっ・・・新之助様・・・」

新之助の言葉も愛撫だ。三治の腰の辺りに、感じたことのない熱がわだかまる。それは既に出口を求めてうねっていて、耐え切れず三治はぎゅっと目を閉じた。

「どうしたらいいのだろう、好きで好きでたまらないのだよ、三治」
「私も、私もです・・・んっ、ん・・・あっ、だ、駄目です、新之助様、あ、何か・・・あっ、手をお離し下さい!もう、やめ・・・んんっ・・・!!」

三治は生まれて初めての迸る(ほとばしる)快感に我を忘れた。体がガクガク震え、目尻から涙が零れ落ちた。新之助の手に導かれるまま、数回に分けて吐き出される度に全身が痙攣するかのように震えた。
 かつて同じ事を宗二郎にされた筈なのに、三治には同じものとはとても思えなかった。宗二郎が夢中になって三治の体を使うとき、なぜこのように夢中になるのかと三治には不思議だった。だが今初めてその意味が分かる。だがこの激しい快感を宗二郎のものと同じに思うことは決してできないのは、その間中新之助が片手で三治をしっかりと抱いていてくれたからだ。新之助の優しさが、三治の身に染みる。

 激しい絶頂のあと、新之助は三治をしばらくの間抱いていた。一緒に達する事ができた事で、更に三治との一体感は増していた。大きな声を出さず、最後まで囁くような声で迎えた三治の強い絶頂を新之助も感じていた。そこに到達させたのが自分だと言う思いが、新之助の心を熱く満たしていた。
 ようやく息を整えた三治が、新之助の腕の中から新之助を見上げた。新之助は何も言わず、優しく笑いながらただ頷いて見せた。三治も笑みを返した。そしてもう一度目を閉じ、三治は新之助に甘えるように、体をそっと寄り添わせた。
 








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