蜜夜

○久



 お互いの熱を受けとって、まだ体が冷めない時間。
 このまま抱き合って眠りに落ちていくまでの、長いようで短い時間。
 腕の中で、互いの知らない互いのことを話すことが、いつのまにか習慣になっていた。

「友雅殿は甘い物はお好きでは無いとうかがっていましたが…。」
 肩口に頭を預けていた鷹通は、器用に首を上げて友雅と目線を合わせた。
「物によりけりだね。決して嫌いなわけでは無いよ。………途中で飽きてしまうことが多くてね。」
 友雅は鷹通の首筋に汗で貼りついていた髪を、指ですくって後ろに流した。
「それで用意した菓子には手をつけないのですか。」
「そうだね…出し方を工夫してもらえれば、また違うかな。」
 友雅は意味深な笑みを浮かべた。
「出し方…?」
 鷹通にはさっぱりわからない。
「ちょっと待っていなさい。」
 友雅は立ちあがり、小袖を羽織って部屋を後にした。人払いしてある友雅の邸では、水を汲むのにも自分で歩かなければならない。しかしその方がしどけない声を聞かれるより、よほどいい。
 しばらくして、友雅は小さな壷を持って帰ってきた。
「それは…?」
「甘い物だよ。」
 友雅は微笑んで、栓を抜いて壷を鷹通の上に傾けた。
「・なっ…」
 金色の液体が、鷹通の胸の突起に注がれる。
 水と違って粘度が高いのか、じれったいほどゆっくりと滴り落ちる感触がむずがゆい。
「これは・・・」
 胸からわき腹へ、ゆっくりとゆっくりと広がる金色の…蜂蜜。鷹通の体温に温められて、甘い香りが漂いはじめる。
「ここにも…必要かな。」
 もう片方の突起に蜜を注いでから、友雅は鷹通の体を縛るように、腹へ、そしてその先へと金の糸を繋げて行く。
「・・やっ…冷た・・」
 鷹通の体は蜜の冷たさに一瞬硬直する。
 落とされた場所の奇妙な異物感とむずがゆさ。体を動かすと、じりじりと、本当にゆっくりと広がる感触は、どこか快感に似て。
「ふふ。美味しそうだね。」
 友雅は胸から腹へ乗った蜂蜜を片手で広げながら、胸に舌を這わせる。
「甘いね。」
 友雅は鷹通を味わうように、何度も何度も胸の周囲から突端へと舐めあげる。
「…んっ。いけま・・せん。こんな・ことに…」
 鷹通の体が小刻みに震える。むずがゆさと、羞恥と、罪悪感と、快楽を、眉を寄せながら耐えている。
 友雅は時折、鷹通の体に乗る蜜を吸いながら、ゆっくりと味わう場所を移動させていく。
「ここは丁寧にしないとね。」
 蜜が絡みつく草むらを、友雅は丹念に舐め上げる。
 普段はほとんど触れられない部分への刺激に、鷹通の腰が浮く。
 友雅はその隙に両足をしっかりと腕に抱え上げて、動かせないように固定した。
 友雅の舌は、更に下へ動いた。
 片方づつ口に含んで、舌先で転がしてやる。
「や…っあっ!」
 鷹通が足を閉じようと力をこめるが、友雅は微動だにしない。
 丹念に丹念に、隙間に入り込んだ蜜をすべて舐めてゆく。
 違う味に気付いて、友雅は鷹通の根元から先端までを一息に舐め上げた。
「…・・んんっ・・」
 鷹通の背が弓なりに反る。
「この蜜も甘いね。」
 友雅はわざと音をたてて鷹通自身の先端を吸い上げる。
 その音が、更に鷹通の羞恥を煽る。
「こんな…こと……あっ…あ!」
 何か言いたげに動く鷹通の唇を、友雅は自分の唇で塞いだ。
 友雅の舌の甘さに、鷹通の動きが一瞬止まる。
 口内をくまなく刺激されて、頭の中が白く霞む。食べ物をこのようなことに使っているという罪悪感すら甘い香りに飲み込まれてゆく。
 そして、ゆっくりと唇が離れる。
「あま・・い・・」
 どこかぼんやりと呟く鷹通を見て、友雅は微笑みを浮かべる。
「鷹通は甘い物が好きだったね。」
 友雅は鷹通の体を探っていた指を、鷹通の口の中に差し入れた。
 鷹通は舌を友雅の指に絡ませる。
 指と爪の間を舐められて、友雅の体にもゾクリとした快感が走る。
「…たくさん、食べさせてあげるよ…」
 友雅は鷹通の耳元に甘い甘い囁きを落とした。


―――――――――――蜜夜はまだ、終わらない―――――――――――――――



         

了2000.08.03

 777キリ番記念。ナカムラシノ様に捧げます。
「鷹通に甘いモノを食べさせてあげる友雅」というお題をいただいて、さて平安時代の甘い物ってなんだろう? と本をみたら。
「砂糖はまだなかったので、蜂蜜や甘葛を使いました。」の文。これがいけない。
「甘い物全滅?」というのと同時に「蜂○プレイが出来るな。」と思ってしまった、腐って糸引いてる○久の脳みそを、誰か何とかして下さい(笑)
 資料にしようと思ってた漫画が見つからなくて、妄想で書いてます。多分店でやってるのとは違うので真似しないで下さいね。(するかっ!)
 蜜月があるなら蜜夜があってもいいかな、ということでこのタイトル。造語(汗)
 私は夜のつくタイトルが好きみたいです。

 今回実は地味〜に悩んで、結局放棄した問題があります。あのぉ…睾丸ってどう書くと文章的に綺麗でしょうかね?(殴) もっと、色々とその手の本を読んで研究するべきだったかも(爆)
 しかし、仕事中に「あっちが茎とか幹とか言われてるんなら葉?根? 違うよな…玉って嫌だし、ボールってのも変だろ? あーもう、蕾とか奥庭はあるのに、何故、間の表現は無いんだぁ!」と、悶々と考えていた私って、かなりヤバイ人です(核爆)
(こんな所で自分の恥をさらさなくても…(^^;; ああ、友達が引いていくのが見えるぅ。止めて、行かないでぇ。(笑))

 こんなものをキリ番SSにしてしまっていいのでしょうか? よくない気がする。
 シノ様ごめんなさーーーい。書き逃げしますっ(脱兎)

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