、高校三年生、帰宅部、ゲーオタ。友達の間では明るいライトなオタク。外見だって気にしてるし、かわいいものとおいしいものには目がない、普通の女子高生です。ただ、ちょーっと好きなものの中でゲームの割合が大きいだけ。
アニメやマンガも好きだけど、やっぱりゲームは自分がその世界に入り込めるから一番好き。RPGも、シューティングも、シュミレーションも、アクションも、基本的には興味が湧けば何でも手を出す感じ。二次創作もドーンとこいっ! 公式で設定されてる関係からキャラの日常を妄想するのがすごく好き。このキャラとこのキャラは普段もあんまり仲良くないんだろうなとか、この師弟は腹の探り合いしてるよなとか、絶対この夫婦はかかあ天下だとか。でも18にはなってないからそのラインは越えないいい子です。
最近のお気に入りは無双シリーズ。先にBASARAってゲームを(ベスト版が出てたからね)買ったらおもしろかった。そのパクリ……もとい、元ネタの無双ってゲームも気になって買ってみた。戦国の方はBASARAを先にやったせいではっちゃけ感がいまいちだったけど、三国を買ってハマった。そのせいでこつこつ貯めてたバイト代があっという間になくなっちゃったけどね!
呂布がゴキブリみたいだけどハンパなく強くて縛りがないと面白くない。曹操とか劉備とか孫堅とかの片手剣タイプはそんなに癖がなくて使いやすいかな。趙雲は断トツで使いやすいし、槍や戟や矛はそんなに使いにくさは感じない。軽めから重めまであるのがいい。陸遜とか孫策とか貂蝉とかのトリッキータイプは最初乱戦が難しいけど慣れると楽しいんだよね。パワータイプの猛獲や夏侯淵、黄蓋なんかは一撃が強いけど動きが遅いのがネック。決まれば爽快なんだけどねー。敵に先駆けて計略を阻止したり、こっちのを成功させたり、そういった部分も楽しかったり。
と、このくらい語れる程度にはやり込んだ。そこに予想外のニュースを目にして思わずニンマリ。
「TGS10で真・三國無双6の発表……!?」
実はPS3持ってないから5買ってなかったり。評判もあんまりみたいだし。ううー、これからの情報が楽しみ! と、その日は興奮でなかなか寝付けなくて苦労した。
「ー、起きなさい。遅刻するよー!」
一階から叫ぶ母の声にぼんやりと目が覚めた。ケータイを布団の中で開くといつもの起床時間。これ以上遅くなるとヤバい。
「うんー……起きる……」
ぼんやりしたまま着替えて顔を洗って歯を磨いて、テーブルにつく。父はもう仕事に行ったらしい。母ももう行くのかスーツを着て私を待っていた。
「お皿は洗って行くこと、鍵は忘れないこと。それじゃいってきます」
「はーい、いってらっしゃーい」
味噌汁をすすりながら小さく手を振って見送る。ご飯と菜っ葉のお浸し、昨日の残りの煮魚を温めなおしたもの。簡単だけど健康的だなー、なんて考える余裕もなくがっついてさっさと皿を洗って家を出る。友達との待ち合わせ時間までもう五分もない。玄関の鍵をかけてチャリを飛ばした。
「おはよー! さっちゃん、ゆき、ちゃん……?」
ギリギリ間に合った! と待ち合わせ場所にしてる本屋の前に着いてすぐ自分の目を疑った。
「おはよー、ちゃん」
「おはようございまする!」
「ゴメン、誰?」
朝日に当たってキャロットオレンジに見える髪をした男の子と、赤いハチマキをした茶髪の男の子。どっちも知り合いじゃない。っていうかサチとユキはどこいった!
「やだなーちゃんったら朝から冗談きついっしょ!」
「どこぞ具合でも悪いのでは……?」
ヘラヘラと笑う男の子1と、心配する男の子2。だからアンタ達誰よ。
「いや、ホント、誰?」
「とうとうちゃんってば痴呆が始まっちゃったのね……! 大丈夫、俺様が面倒みるから心配しないで!」
「某も微力ながら……!」
「いやいや、人を勝手に痴呆扱いしないでよ」
男の子1がボケると、男の子2もボケる。ツッコミいないじゃん! ふと、二人の顔をまじまじと見てとあるゲームを思い出した。
「……ちょっと待って、私アンタ達に見覚えある」
私が続きを言うより先に男の子1が2に向かって、そういえばさァ、とわざとらしい声をあげた。
「旦那、日直だって言ってなかった? 先に行かなくていいの?」
「そうであった! すまぬ殿、お先に失礼いたす!」
うおおおおおと雄叫びを残して全力で自転車をこいだ男の子2はあっという間に見えなくなる。それを見計らって残った方がニンマリとやたらに大人びた笑顔をした。
「気付いた?」
「確か、アンタは猿飛佐助だっけ? 戦国BASARAってゲームの。さっきのは真田幸村」
「ご名答! ちょっとお話ししよっか」
なんとなく構えてしまう私に対して、猿飛佐助はハンドルにもたれかかって余裕の様子。通ってる学校が変わってないならSHLの遅刻は遅刻とみなされない。覚悟を決めてうなづいた。
「簡単に言っちゃうと、ちゃんは俺達BASARAのキャラが現実に存在するパラレルワールドに来ちゃったワケ」
ものすごくわかりやすい説明をありがとう、猿飛君。ニッコリ笑顔がまぶしいです。
「も、元の世界は……」
一番に気になるのは本来私が生きてるはずの世界のこと。
「大丈夫、並行世界にちゃーんと存在してるよ、ちゃんも友達もね」
「あ、そう……」
そういうSFっぽいのはスパロボなんかでよくあるからなんとなく納得した。
「あと、普通の人間も属性持ちで場合によっちゃBASARA技なんかも使えるよ」
「へえー……って、どうしてこうなった!」
「アレ? 喜ばないの?」
「どうせなら三國無双がよかった! 槍族とか呉の若い子たちとか女の子たちと一緒にキャッキャウフフしたかった! 魏の顔色悪い奴らからかって国主に頭ナデナデしてもらっておじいちゃんたちに甘やかされて呂布に本気で追いかけられてとか……めちゃくちゃ妄想してたのに! うわーん神様今すぐ別のパラレルワールドにトリップさせてー!」
「うっわ……傷付くなァ……」
げえーと顔をしかめた猿飛君には悪いけど本気。どーんと崩れ落ちた。自転車? スタンド立てて止めたよ。
「てかさ、普通に学生してるけど猿飛佐助って年齢設定なかったよね? 真田幸村は17だったっけ? ていうかなんで学生?」
「……えー、そこはパラレルってことで!」
うっと言葉に詰まって、キラッと星を飛ばした猿飛君に思わず目を逸らした。可愛い女の子(たとえばランカちゃんとか)がやるならいいけど、イケメンがやっても微妙なだけでした。へっと鼻で笑ってもっと詳しく話を聞くことにした。猿飛君は若干へこんでいますが無視。
中高一貫校のうちの学校はそのままらしい。ほとんどの学生も変わらないけど、そこにBASARAのキャラが違和感なく? いるらしい。いや、違和感なくって無理ゲーだと思う。校長はなんとあのザビー様。カトリックでもプロテスタントでもないうちの学校がどんな風にザビー教色に染め上げられているのかワクワクしていたら、どうも普通にいい人らしい。ザビーの魅力はあのトンデモなところだろ……。だけど、無認可のザビー教布教部というのはあるらしい。ザビーの説く愛を曲解して広めているそうなのでその部にはぜひとも頑張ってもらいたい。
佐助君(そう呼んで! って脅された)と幸村君(そう呼んでやって! ってry)は元の世界のサチとユキにあたる親友で、特に佐助君はこのパラレルワールドで私が問題なく生活できるように全てにおいて手助けをしてくれるらしい。両親も友達もこの世界が当たり前の中、佐助君だけが私の事情を知っているという。
「俺様はちゃんのナビゲータってこと。必要な時はいつでも頼ってくれていいから」
優しく笑った佐助君はカッコよくて、ちょっと照れた。
「正直お願いしますとしか……」
「だよねー。んじゃ、そろそろ学校行こっか」
もう学生のいなくなった道を二人して自転車で走る。これから起こることは全く予想できない。不安になってちらりと佐助君を横目に見ると大丈夫、と口パクしてくれて、現金ながらそれだけでちょっと安心したり。学校は目の前。よし、気合い入れて行こう!
次へ
戻る
2010/10/12
2010/10/14 訂正
よしわたり