一日目 2010/02/02(火)
クリスマスに思わぬ形で松山へ行くことになってしまい、松山城と道後温泉だけしか行けなかったので、悔しい思いをしていました。
また、ドラマ『坂の上の雲』の主人公三人の出生地ということもありまして、まだ冒頭しか読んでいない文庫本一巻を携えての松山旅行へと旅立ちました。
……まあ、母の松山で二泊三日の研修がちょうどその時にあって、「嫌だー嫌だー」というものですから「研修終わってちょっとくらいなら観光できるよ!」となだめすかして連れて行ってもらったんですけれども。母は研修用の宿泊施設(アレが出るとか出ないとか……)で缶詰にされて試験勉強、私は全室LANケーブルの通ったビジホで観光三昧という天と地ほどの差がありましたけどね! ゴメンネ、お母さん!
今回は母が午後から研修所入りだというので、高速で向かいました。曇りがちの朝の空に射しこむ光のアート。
愛媛に入りました。香川は土地も狭く、花崗岩質の山というより丘といった方がいいような、低い山が点々としているので、こういった山々の連なる風景は讃岐山脈くらいでしか見ることができません。違う土地に来たのだな、と感じる些細な風景が好きです。
途中、石鎚SAで休憩です。美味しいらしいときいていた伯方の塩純生大福。ほんのり塩味のきいた、つぶあんの大福で、おいしゅうございました。そして愛媛といえばPOMジュース!
私が小学生の頃は土曜半ドンの掃除の時間の後には必ずパック入りのPOMジュースが飲めて、口内炎ができていても涙をこらえて飲むほどでしたので愛着ありまくりです。
お昼前には無事に松山へ到着です。
昼ご飯に母と蕎麦を食べ、それからホテルへ荷物を預けて身軽になって飛び出しました。
時間もあまりないですし、冬の日暮れは早い。どうせアレコレ説明を聞いてはじっくり観察するだろうから、と初日は道後公園周辺のみの散策に費やすことにしました。
道後公園(湯築城跡)→子規記念博物館→道後温泉、という計画を立てましたが、これは本当に正解でした。
道後公園入り口にはこんな看板が。「ようこそいらっしゃいました」の伊予弁です。道後公園は伊予国の守護として伊予水軍を率いていた河野氏の平山城、湯築城の跡地にあります。
湯築資料館内にある、道後公園のミニチュア。展望台のある小山を囲むように内堀があり、復元された武家屋敷や子規記念博物館、庭園を包むように土塁が巡らされ、その外に堀がある、平山城のつくりが残っています。
湯築資料館内では、この城の城主だった伊予河野氏について詳しく知ることができます。かの有名な村上水軍らを従えていた、伊予水軍の棟梁一族です。係のおじさんに勧められて、20分程度の河野氏や湯築城についてまとめられたビデオを見ました。一人ホームシアター気分です。それから武家屋敷の復元時のレポートビデオも見て、発掘調査や昔の技術や道具にときめきました。いろいろと燃えてきたので『伊予河野氏と中世瀬戸内世界 戦国時代の西国守護』という本を買ってしまいました。私の地元もちょっと載ってたので……。それと、道後温泉で使おうかなあと河野氏の家紋入りの手拭いを。手拭いは使わずじまいでした。
実際に復元された武家屋敷です。基礎石の発掘状況から門や土塀の位置、屋敷のつくりがわかるそうです。石の上に煤けて残っていた跡から、柱の大きさもわかったのだとか。門の外からと中から。
屋敷の内部では当時の暮らしぶりが再現されています。連歌の会を催している主と、茶の仕度をする従者。
台所道具には一昔前まで使われていたようなものも見受けられます。
水甕は備前でしょうか。最近備前の大甕が欲しくてたまりません。
土塀はレンガのように粘土のブロックを重ねた表面に土を塗ってつくります。それがよくわかる断面図。
季節は初春。梅の花がきれいに咲いていました。八重咲きの梅もあるんですね。
二軒の屋敷が復元されているのですが、そのもう一軒の方は柴で囲いをしています。屋根は板葺き。職人さんが一枚一枚割ったものを木の釘で打ち付けています。こちらの内部では中世に使われていた、および復元時に使用された昔ながらの工具類が展示されています。また、復元されていない屋敷の想像ミニチュアもありました。
庭園があり、池がつくられていたというのもわかっています。また、こちらは復元された二軒よりも大きな屋敷があったらしいのですが、部屋の配置がわからないため基礎石だけが置かれています。
外堀土塁の断面を中に入って見ることができます。2mは余裕でありました。昔の人は外堀からかき出しながらこの土塁を築いたわけで……。重労働おつかれさまです。
かなり良好に残っている遺構の一つ。遊歩道が整備されているので二枚目の写真右端の部分、セメントで固められていますけれども。
まだまだ風の冷たい時期でしたが、日当たりのいいところでは水仙も椿もいい匂いをさせていました。
丘陵部を南から東へぐるりと回って、子規記念博物館に到着。「一村の 梅咲きこぞる 二月哉」。14時半に入って、17時の閉館時間までひたすら見学していました。以前一度来たことがあったのですが、『仰臥漫録』を買ってざっと読み、絶筆三句にすごい人だと思っただけでした。
『坂の上の雲』のドラマを見、最初の方だけでも小説を読んだ後だと断然理解の具合が違いました。「なるほどしきさん」というわかりやすいパンフがところどころに置いてあって、全部で16枚。正岡子規は、三十六歳で病没するまでいろんなことに挑戦し続けて何もかもが目まぐるしく変わっていった明治の時代を走り抜けた、化け物だと思います。
特別展ももちろん見ました。同年輩の三人は手紙のやり取りをしたり、子規が漱石の俳句の添削をしたりと互いに刺激し合っていたようです。
なにがすごいかって、伊予松山の成り立ちから始まる子規記念博物館。他の観覧者が最初の方をすっとばしていこうとしたら、学芸員さんがしゃしゃりでてきて最初から懇切丁寧に説明をしてくださるというオプションつき。正岡子規のことを知りに来た人々は、日本書紀からの話なんか正直どうでもいいと思ったのではなかろうか……。
夕方になって、路面電車の道後温泉駅まで向かいました。レトロな雰囲気満点。駅前には放生園という名を残した広場があり、足湯やカラクリ時計があります。
坊ちゃん列車がちょうど止まっていたので撮影! なんともかわいいサイズです。
道後温泉本館です。太鼓のある振鷺閣(しんろかく)はギヤマンのはまった窓があり、白鷺が立っています。これはここに湧いていた源泉で白鷺が傷を癒すのを見て人々が温泉を利用するようになったという道後温泉に伝わる話に由来しています。
本館東側。皇族専用浴室、又新殿の玄関があります。
本館西側。二階座敷席はこちらになります。
券売所で当然のように三階個室を選んだ若い女一人。寂しい奴ですね。でもすごくリラックスできる空間ですよ! 障子についている窓は着替える時に閉められるようになっているのですが、ちょっとかわいい。
内側の部屋に案内してもらいました。大浴場の方からカポーンという音やゆっくり温泉に入る人達の声が聞こえてきて、それだけでも楽しくなってきます。
こぢんまりとしていますが年季の入った温泉という風情あふれるの霊(たま)の湯と、広くてさっぱりした神の湯があり、三階個室だと両方に入れます。が、そんなに入っていてはのぼせるので霊の湯だけにしました。先客さんもいなくなって、一人でプカプカ湯船に浮いていたら賑やかな声が。子供たちとお母さん方が入ってきました。ちょっと深めの浴槽は立って首までつかるくらいの子たちばっかりで、見ているこっちがヒヤヒヤしながらちょっと手助けしたりもして。「熱い?」と聞くと「熱くないよ!」と笑う子の顔が真っ赤だったのがかわいかったです。心も体もほっこりしました。
温泉でぬくもった後は部屋に戻り、ゆっくりとお茶と坊ちゃん団子をいただきます。ちょうど18時の太鼓が鳴って、温泉町の情緒たっぷりでした。とぼけたような表情の鷺がいい味を出している浴衣です。
名残惜しく思いつつ服を着替え、坊ちゃんの間を見た後、又新殿の説明を受けます。
霊の湯三階個室はそのまま、その他の場合は250円で又新殿の説明を受けることができます。建ててから3回しか使われていないという桃山建築をまねた豪華な造りの部屋は一見の価値ありです。今では絶対に手に入らない庵治石の大きな一枚岩でできた浴室や、一度も使われなかったお手洗い(和式・畳敷き)などもおもしろいです。
外へ出るともう暗くなっていました。ここからは天王屋のハイパーブレショットタイム!
何故これほどまでにブレたのか、今でもよくわかりません。寒くて手が震えてたの? それともなんかいらないところ触ったの? ただ単に使いこなせてないだけ? 最後のが確実です。
非常にうまく撮れた正面玄関。これを撮るまでに何分かかったやら……。
道後温泉駅前を通って、ホテルへと帰ります。ライトアップされた時計がきれい。駅舎のブレ具合は……もう何も言うまい。
ホテルへの帰りがけにやたらと猫がいるところが。睨んできてるけど、ブサイクすぎて吹き出した。目がキュピーンとなっていますが、一切加工してませんので。
その後ホテルの部屋へ戻って画像をPCに取り込んでデジカメと携帯を充電している間に爆睡してしまい、起きたら深夜で晩ご飯を食べに行き損ねて、寒さからコンビニに出るのもおっくうがって結局ろくな食事を取らずにシャワーだけ浴びてまた寝たことを追記しておきます。
おまけ
湯築城跡のパンフレットと手拭い。
子規記念博物館のパンフレットとチケット。
「なるほどしきさん」全16枚。
前回・今回と大変お世話になった『道後温泉本館から歩いて10分前後の名所・旧跡』。これさえあれば道後温泉周辺はバッチリです。
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2010/06/23
天王屋よしわたり