第11話 ヤッター、これで本日10件目の登録獲得〜!定時前にしてこの結果!うぅ〜ん、我ながら素晴らしすぎる!! 今日の午後から今まで、40件以上の所に電話かけたんだけど・・・・約4分の1なら、まぁまぁ良い成績なんじゃないかな〜?留守番電話の所とか、トゥルルルって呼出音だけしかない所も結構あったからね〜・・・・ 電話がつながったお客さんには、私なりに一生懸命頑張って説明したよ。それが、この10件目の登録までつながったのなら、嬉しいな。 一番最初、丸山さんが隣でモニタリングしてくれた時にも、丸山さんが隣で頷いてくれたり、アドバイスをくれたりしたから、何とか登録に結びついて。あの時は、丸山さんと一緒にすごく喜んじゃった。 こうして、丸山さんや、お昼休みに鹿嶋さんが協力してくれたおかげで、今日の結果につながった気がする。よぉ〜っし。明日も頑張らなきゃ! 私が今のお客さんのデータ登録をしていた時だった。『館澤さん、やりましたね!』って言って隣に来てくれたのは、面倒を見てもらってるLD・丸山さんだ。 「はい、ありがとうございます!丸山さんのおかげですよ〜!」 「いえ、そんな事ないです!これは、館澤さんの実力ですよ!最後の最後にも登録獲得だなんて、さすがです!」 「いえいえ!お客さんが良い人だったので、とっても助かりました〜。」 「そうだったんですか〜。それじゃあ、明日もまた、よろしくお願いしますね!」 「はい、こちらこそ!これからもアドバイスいただけると助かります〜。」 「もちろんですよ!俺に出来る事なら、何でも言って下さいね!」 ウワーン、丸山さんやっぱり良い人だなぁ〜。それに、丸山さんって爽やかだから、話してるこっちも気分良くなってきちゃうんだよね〜。 これは、鹿嶋さんにはない丸山さんの良さだなぁって思う。鹿嶋さんと話したら・・・・その格好良さと色気にドキドキしっぱなしで、こんな爽やかな気分にはなれないもん・・・・ そう。鹿嶋さんは鹿嶋さんで、丸山さんとはまた全然違うんだよね〜。なつみちゃんの言う通り、ルックスがパーフェクトすぎるんだよ・・・・・どうして、あんなに鹿嶋さんは格好良いんだろう? いつもの癖で、鹿嶋さんの席から遠い席であるにも関わらず、鹿嶋さんの方をチラ見してしまう。すると・・・・? あ、鹿嶋さん電話でお話してる。何話してるかまでは分からないけど、この時間ここに外線が来る事はまずないから、内線だよね。 ほら、こうして受話器持ってる姿だけ見ても格好良いって思えるのは、鹿嶋さんだけだもん。 そんな素敵な鹿嶋さんをチラ見出来て満足していたら、時計が18時になっていた。ヤバッ!すぐにこれ入力して上がらないと・・・・ 入力作業は、お手の物。電話する時より、全然楽勝だもん!よし、これでOKっと・・・・ 私がヘッドセットを取って、元の場所に戻した、その時だった。 「清香、お疲れ〜!迎えに来たよ!」 「あっ、なつみちゃん!お疲れ様〜。ありがとう!」 「何のこれしき!それより!今の登録画面だったじゃな〜い。ってコトは、今のお客さんOKだったってコト〜?」 「うん。今日だけで10件も取れちゃった!」 「えぇっ!?マジで!?清香、あんたそれスゴすぎ!!あんたがやってたのって、利用促進だっけ?」 「うん。だから、なつみちゃんのよりは、まだ・・・・」 なつみちゃんは、私が今やっているサービスそのものの新規獲得。このサービスの事を全く知らないお客さんに発信して、登録獲得を目指すんだけど・・・・やっぱり、そういう営業電話って難しいよね。 「まぁね〜。でも、初日から超良い感じじゃな〜い?じゃ、帰ろっか!」 「うん!」 鹿嶋さん、まだ電話でお話してるから、挨拶出来るような感じじゃないな・・・・ でも、私。お昼の事もまだ謝ってなかったし、せめて鹿嶋さんに頭だけでも下げて行きたい。 なつみちゃんにその事を伝えると、なつみちゃんは渋々ながらも了承してくれた。ありがとう、なつみちゃん。 定時過ぎると、私達のようなOPはほとんどの人が帰り支度をする。もう半数以上の人は、完全に帰っちゃったんじゃないかな〜? それまでは皆の喋る声が様々に重なっていたけれど、今電話で喋ってる人は鹿嶋さんだけ。その内容が、ふと私の耳に飛び込んできた。 「・・何だ、そうだったのか?それなら、今すぐに口説き落としてみせようか?・・・・ハハハハッ!そんなに驚いてどうする。冗談に決まってるだろうが。」 あ・・よ、良かった。冗談だったんですね・・・・ でも、誰だろう?内線で、鹿嶋さんがそんな事話すような人って・・・・取り敢えず、電話のお相手さんが女の人なのは確実だけど・・・・ 「・・相っ変わらずだね〜、鹿嶋さんは・・・・清香、やっぱあんな人無視して帰ろうよ。」 「うん。でも、もう少しだけ。お願い!」 「も〜う。清香ってば、ホント鹿嶋さんには律儀と言うか、何と言うか・・・」 「・・だって、実際今日のお昼に迷惑かけちゃったから、ちゃんと謝りたくて・・・・」 「そんなの、鹿嶋さん気にしてないと思うけどなぁ〜?社員さんって、休憩時間変えるの自由なんだよ〜?」 「そうだけど。やっぱりここは、お礼言っとかないと・・・」 って言ってる間に、鹿嶋さんが電話を切っていた。よしっ、これはチャンス! 私がそう思って鹿嶋さんの方に駆け出したのと、草壁さんが横に長い資料みたいなのを持って鹿嶋さんの方に来たのは同時の事だった。 「あっ・・・!」 「ん・・・?館澤さんと藤沢さんに、宏子?何だ、揃いも揃って俺に用か?」 「私は時間かかるから、お先に清香ちゃんとなつみちゃん、どうぞ!」 「あ・・すみません、草壁さん・・・・」 そうだよね。私はただ鹿嶋さんに挨拶しに来ただけだけど、草壁さんは明らかにお仕事の打ち合わせみたいだもんね。 うわ〜。我ながら、変なタイミングの時に行っちゃったなぁ〜。鹿嶋さんが電話切ってたから、大丈夫だと思ったのに・・・・ 「あたしは、鹿嶋さんに用はありません。清香の保護者ですから!」 「あら、そうだったの?ごめんなさいね、なつみちゃん。」 「いいえ〜。それより清香、早く・・・」 「あっ、うん・・・・あの、鹿嶋さん。」 「ん?どうした?」 「はい・・・・その。今日のお昼は、本当にありがとうございました。そして、休憩時間ずらしてしまって、本当にすみませんでした!」 私がそう言ってお辞儀すると、その場が一瞬シーンと静まり返った。 ウゥッ。この空気が、何だかとっても怖いです・・・・胸が、一気にドキドキしてきちゃった・・・・! 怖くて顔が上げられなくて、そのままお辞儀していた私の頭に、そっと乗せられた、温かくて柔らかい感触。それは、そのまま私の頭を、優しく撫でてくれた・・・・・ ・・ウソ・・・・私、鹿嶋さんに、頭撫でられてる・・・・!? 「・・俺の方こそ、ありがとう。それから、休憩時間の事は気にしなくていい。頑張っているOPの為なら、それ位どうという事はないんだから。わざわざすまんな。」 「いえ・・・・あの・・・・」 ・・まさか、鹿嶋さんが頭撫でてくれるなんて思わなかった・・・・! だからなのかな?顔が、ものすごく熱いよ・・・・・それに、私を見つめてくる鹿嶋さんのその表情が、あまりにも格好良くて、色っぽくもあって、ますますドキドキしちゃう・・・・ ヤダ。私、ホント何考えてるんだろう!自分から鹿嶋さんに別れを告げて、私の心の中で確かに区切りを付けた筈なのに・・・・鹿嶋さんへのこの想いが、今にもあふれてしまいそう・・・・・! 「フッ・・どうした?そんなに顔を赤くされると、俺も照れくさいんだが?」 そう言いながら、全然照れてないじゃないですか〜!どうして鹿嶋さんは、こんなに余裕があるんだろう? 4歳差って、通常そんな離れてないと思うんだけど・・・・鹿嶋さんと私の『4歳差』は、相当大きい気がするよ・・・・ 「あっ・・す、すみません!その。鹿嶋さんのおかげで、今日を乗り切る事が出来ましたので・・・・本当に、ありがとうございました!」 「あぁ、丸山君からその件については話を聞いていた。結構多く登録獲得したんだって?」 「そうなのよ〜!清香ちゃん、今日の午後だけで10件も取ったのよね〜?」 「はっ、はい!おかげさまで・・・・」 そっか。草壁さんは利用促進の取りまとめしてるから、それは情報として伝わってるんですね・・・・ 「・・それは、俺の力じゃない。おまえの力で取ったものだ。それに、俺は大した事はしちゃいないぜ?これからも、おまえの事を助ける。それが俺の務めなんだから、わざわざその事で礼は要らない。まぁ、おまえらしいがな。」 「は、はい・・・これからも、よろしくお願いします!」 「あぁ、こちらこそよろしく。」 「じゃ、帰ろ?清香。お先しま〜っす!お疲れ様でした〜!」 「お先に失礼します。お疲れ様です!」 「あぁ、お疲れ様。気を付けて帰れよ。」 「お疲れ様〜。また明日ね〜!」 それからの事は、ロッカールームに行くまで、上の空って感じ。取り敢えず、ちゃんと打刻して退勤したような気はするけれど・・・・ だって、だって!鹿嶋さんが頭撫でてくれるなんて、思わなかったんだもん・・・・! 鹿嶋さんの手、とっても大きくて、優しい温もりがした。あぁ、私はやっぱり鹿嶋さんの事が大好きなんだなぁって、改めて思っちゃった。 「・・ねぇ、清香・・・ちょっと、清香?・・・清香ったら!」 「はっ、はい〜!?」 「も〜う、何ボーッとしてんのよ!?さっきからずーっと顔赤くしちゃって・・・・」 「だって・・・頭・・・・!」 「あぁ〜、あれはあたしも予想外だった!超ビックリだったわよ〜・・・・って、清香?あんたホントに大丈夫?」 ・・すみません。大丈夫じゃないかもしれないです・・・・ 鹿嶋さんに頭撫でてもらえた事を、こんなにも嬉しく感じられるのは、付き合ってた時でも、数える程度しかされた事がないからなのかも。 「・・・ねぇ、なつみちゃん。鹿嶋さんって、どうしてあんなに色っぽくて、格好良いんだろうね?」 「・・ダメだ、こりゃ。ちょっと、清香?あんた、仮にも自分から鹿嶋さんに別れ話切り出したんでしょ?それなのに、あんたがそんな事で照れてたら、別れた意味がないじゃない。」 「うん・・・・でも・・・・」 「でも?」 「・・・すごく、嬉しかったの・・・・付き合ってた時でも、頭撫でてもらった事、ほとんどなかったから・・・・」 「・・・・・ねぇ、清香?」 「なぁ〜に?」 「あんたは、鹿嶋さんと別れた事、後悔してないって言ってたけど・・・・・あんたのその様子から察するに、鹿嶋さん以上の人を見つける気なんてないんでしょ?ずっと、鹿嶋さんに片思いしてるつもり?それって、未練タラタラじゃない。」 ウッ。なつみちゃんに、痛い所突かれちゃった・・・・・ でも、確かになつみちゃんの言う通りなんだよね。鹿嶋さんより好きな人を見つけるつもりもないし、別れても、鹿嶋さんを嫌いになんてなれないもん・・・・ ずっと、悩んでた。鹿嶋さんと別れようか、続けてみようか・・・・・ 鹿嶋さんが大好きだから、諦めたくはなかったけれど、自信が持てなかったのもあるし、鹿嶋さんが他の女の人たちにもとっても優しいから、それで嫉妬してたのもあるし・・・・・ 結果的に別れを選んで、自分の中では間違ってなかったんじゃないか、とは思ってるんだけど・・・・未練がましいのは、やっぱり鹿嶋さんが好きだから、しょうがないよね・・・・・ 「・・・そう、かもしれない・・・・・でも、私は自信が持てないから・・・・鹿嶋さんの隣にいる資格なんて・・・・」 「それは鹿嶋さんが決めるコトであって、あんたが決めるコトじゃないでしょ?」 「・・でも・・・・鹿嶋さんは、女の人になら、皆優しいから・・・・」 「ン〜。そこ言われると、フォロー出来ないんだけど・・・・そこが、社内恋愛のツラい所よね。」 「うん・・・・だから、私はいいの。前のように、鹿嶋さんに憧れてる1人で・・・・」 「・・・清香。本当に、それで満足なの?」 「えっ?」 なつみちゃんにそう聞かれた私は、ただ驚いてなつみちゃんを見つめる事しか出来なかった。 その表情は、とても真剣なもので・・・・なつみちゃんが、本当に私の事をよく考えてくれてる事が伝わってくるようだった。 「あんたは、結果的に鹿嶋さんとの別れを選んだけど、好きで、忘れられないんでしょ?本当は、鹿嶋さんの隣にいたいんじゃないの?」 「それ、は・・・・・でも、ダメ。同じ事の繰り返しになっちゃう・・・・!」 「あぁ〜、そっか。鹿嶋さんが変わらないんじゃあ、確かにね〜・・・・」 「うん・・・・なつみちゃん、気を遣わせちゃってごめんね。私は、大丈夫だから。ようやく落ち着いたし、帰ろうよ!」 「・・・そだね。よしっ、か〜えろっ!明日も一緒に頑張ろうね!」 「うん!」 OPとして幸先良いスタート切れたんだし、今は仕事を一生懸命頑張らないと!恋は、その次に頑張れば良い事だもん。 それに、今の私は、鹿嶋さんを見られるだけで幸せだから・・・・・鹿嶋さん。これからも、お仕事中にご迷惑一杯かけちゃうかもしれませんけれど、よろしくお願いしますね・・・・・ |