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「それでは、スピカ様。あなたがこれからもお元気であられますよう・・・」
「はい!本当に、ありがとうございました!」
「えぇ。それでは、また・・・・」

フゥ〜。何だか疲れてしまいました・・・・もう随分色んな方と、こうしてご挨拶をしまして、大分時間も経ってしまいましたけれど・・・・お兄様。どこにいらっしゃるんでしょうか?こうして、沢山の方が私のことをお祝いしに来て下さるのはとても嬉しくて、光栄なことなのですけれど・・・・本当は、お兄様がいて下されば・・・私はそれだけで、とっても幸せです・・・・
なんて・・何か、こんなこと考えてると、切なくなっちゃいますよね!えっと・・私がお兄様を探せばいいんですよね!よぉ〜っし!お兄様とお会いしたら・・その時は何をお話しましょうか。また・・甘えてしまいそうな自分が怖いですけれど・・・・たまには、いいですよね・・・本当にお兄様に甘えたい時は・・私にだってあるんです。
私はお兄様を探して、あちこち歩きました。途中、何人かの方に改めて「おめでとう!」と言われたりして、思わず長話に付き合わされそうになった時もありましたけど、何とか振り切ってみました・・・・うぅ〜っ、後で埋め合わせしないとですよね・・・・・
そうして私が困りながらお兄様を探していた時でした。

「えぇっ!?ってことはあなた・・・本当に、スピカちゃんと関係を持っちゃった・・ってことなの!?」
「えぇ、はい・・・そうですね・・・・」

ハッ!!こ、このお声は・・お兄様!?そしてもう1人の方のお声は・・確か母方の叔母様の筈です・・・・!
叔母様は、私たちの両親が亡くなる前からずっと、私たち兄妹に優しくして下さいました。両親が亡くなってからも、ずっと励まして、優しくして下さって・・・私が病気療養中だった時にも、お兄様のお手紙を見る限りでは、私のこと・・とても心配して下さってたそうです。
そんな叔母様とお兄様が、何か私に関するお話をなさってた気がします・・・・何か、今踏み込んだらまずそうですよね・・・・・私はそう思って、叔母様とお兄様にバレないように、息を潜めつつ少しだけ身を隠しながらも、その会話を聞きました。

「それで!?スピカちゃんには本当のこと言ったの?」
「いえ、それは・・・・まだ、言えてないです・・・・」
「えぇっ!?それじゃあ・・スピカちゃんは、まだあなたを本当のお兄ちゃんだと思いながら・・その行為を許したのね?」
「・・えぇ・・・・スピカはずっと、私を「兄」として慕ってくれていますから・・・・」

え・・っ・・・・・!?えぇ〜っと・・・・!?こ、これは・・どういう、ことなんでしょうか・・・!?わ、私・・夢を見ている訳じゃあ・・ないですよね・・・・!?

「どうするの?お兄ちゃん。このままズルズル引きずっても・・スピカちゃんにとっても、あなたにとっても、つらいだけよ?」
「・・そう、ですね・・・・正直言って・・スピカの兄でいることは、とてもつらいです。」

!!お・・お、にい・・さま・・・・・・

「・・お兄ちゃん・・・・」
「ですが・・・スピカは、「兄」として私を慕っているように感じます・・・・ですから、本当のことを話してスピカに嫌われたらと思うと・・・怖いんです。それだったら・・・偽りの「兄」として接しながら、スピカとずっと一緒にいた方がまだ良いのでしょう・・・・叔母様。私は・・自分の本当の心を隠してでも、スピカと一緒にいたいんです。」
「・・お兄ちゃん・・・あなたはスピカちゃんに嫌われることを、本当に恐れているのね・・・・」
「はい・・・・それに、本当のことを話すきっかけやタイミングも分からなくて・・・・フフッ。本当に私は、最低な男だと自分でも思っています。真実をスピカに打ち明けずに、兄として接しながらスピカを欲するなんて・・・・」
「でも・・・スピカちゃんは、あなたのその愛を受け入れてくれたんでしょう?」
「・・はい、それは・・・・スピカは嫌がってはいないみたいですけど・・・・・それは私が「兄」だからだと思うと、寂しいんですよ・・・・・」

え、えっと・・・・・お、お兄様・・・・・・!ど、どういう・・ことなのでしょうか?私には、まだ意味が全然よく分からなくて・・・・

「スピカちゃんは・・昔のこと、本当に何も覚えてないみたいなの?」
「恐らく、そうだと思います・・・・私に隠しているようには見えませんし・・・・」
「そうなの・・・・ン〜。でも叔母さんには分からないわ・・・・お兄ちゃん。あなたは兄弟が欲しかったからスピカちゃんを家に迎え入れたのよね?それなのに、「お兄ちゃん」でいることがつらい、だなんて・・・・」
「アハハッ。確かにそうですよね・・・・我侭なんですよ、本当に・・一人っ子ですから、ないものねだりが激しくて・・・・自分でも、この性格が嫌いで・・・直したいと思っても、なかなか直せなくて・・・・今はただ、後悔の念が渦巻くのみです・・・・あの時スピカを、「妹」としてではなく「恋人」として招いていたら、どんなに楽だったことか・・・・」
「ウフフフフッ。そうは言っても、昔からあなたとスピカちゃんって、結ばれていたの?」
「お、叔母様。痛い所を突いてきますね・・・・・それはまぁ、スピカは私のことを嫌ってはいなかったでしょうけれど・・・・・」
「ウフフフフッ。ただね、お兄ちゃん。叔母さんはね・・・本当のことをスピカちゃんに話してあげた方がいいんじゃないか・・って思うのよ?」
「・・叔母様・・・・・」
「だって、そうでしょう?スピカちゃんだって、好きな人がお兄ちゃんだなんて・・あんまり自慢出来ることじゃないじゃない。あなた達は兄妹だけれど、本当は血なんて全くつながってないんだもの。まずはスピカちゃんに本当のこと、話してごらんなさい。それから・・少しずつでいいから、本当のことを世間に公表していけばいいわ。」
「・・叔母様・・・・私は、それでも構わないのですが・・・・スピカにとっては、どうなのでしょうか?その方が、むしろスピカにつらかったとしたら・・・・」
「そんなことないわよ〜!!あなたはさっきから、スピカちゃんは兄として自分を慕っている、なんて言っているけれど・・・それ以前にスピカちゃんは女の子で、あなたは男の子よ?「男」としてのあなたにスピカちゃんは惚れ込んでいるんじゃないかしら?だからこそ「お兄ちゃん」としてもあなたのことを好きなんだと思うのよ?」
「・・・叔母様・・・・・」
「・・そんな複雑な顔しちゃって・・・まぁ、じっくり考えてごらんなさいな!叔母さんは、あなた達の未来を応援しているわよ?」
「・・・はい・・・叔母様・・・・」
「ウフフッ。それじゃ、叔母さんはちょっと食べ物を取りに行ってくるからね。」
「・・はい・・・・」

えっ!?ま、まずいです・・・!こ、このままいたら、私、叔母様に・・・・!!


  

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