ラグリア商事。それは女性向けの様々なグッズを発明・販売している大会社の1つである。現在のこの世の中で非常に景気の悪い中、黒字をキープしている会社である。
彼らの作り出すアイテムは日用雑貨から宝石まで富にあふれ、世の女性達の間では、必ず何か1つのアイテムの中にこのラグリア商事のものが含まれていたりする。
そんなラグリア商事の社内はと言うと、皆大変和やかで、仕事場はいつも盛り上がっていた。皆お互いに助け合い、支え合っていく・・・それがラグリア商事のモットーであった(笑)

 

このラグリア商事に今年入社したばかりの社員の中に、スピカという20歳の女性がいた。とても愛らしい外見と、何事にも真剣に一生懸命取り組む姿が評判で、入社したてであるにもかかわらず、社内の男性の間でも人気が高い(笑)
しかしそんなスピカの心を射止めていたのは・・・・・・・

「やぁ、スピカ。今日は早番かい?」
「あっ、レグルス課長!はい、そうなんです!今日は後、在庫を整理して終わりなんですよ〜。」

そう、それは社内の女性の間で人気No.1のレグルス課長(笑)であった。
レグルスはスピカが入社した時から進んでスピカのお世話役を引き受けた。スピカにものの販売の仕方を教え、何かあった時はすかさず助ける・・・・レグルスは常にスピカの為に動いてくれていた。
それがスピカにもよく分かっていたから・・・・とてもとても嬉しくて。更にはレグルスの社内での人気ぶりはすさまじいものだったから、微妙に他の女性社員に冷たい目で見られても・・レグルスが傍にいてくれることがとにかく嬉しかった。
レグルスは何を考えているのかよく分からなく、つかみ所のない男性であったが、その眉目秀麗ぶりと何でもパーフェクトに仕事をこなしてしまうコトと、女性達にとても優しい言葉をかけるフェミニストなので、女性達のハートをあっさりかっさらっていた(笑)しかも22歳という若さにして課長に抜擢された超エリートなのである。
そんなレグルスにスピカの心も揺れない訳がなく、今のスピカにとってレグルスは誰よりも傍にいて欲しい人であった。今やスピカの心の中にはレグルスへの愛情が芽生えていたのである。

「ふ〜ん、そうなのかい?じゃあ、その在庫の整理を一緒にやってあげるよ。」
「えっ?あ・・いいんですか?」
「もちろん構わないよ。おまえの為に出来ることなら、私は何だってするよ。それが私の仕事でもあるしね。」

と言ってレグルスはウインクしてみせた。このキザっぽい仕種もレグルスがすると全然違和感なく、むしろとてもハマっているのである。
スピカはそんなレグルスのカッコ良さにクラクラしつつ、「それではお願いします!」と言って、レグルスと一緒に在庫の整理に取り掛かった。

 

 

「え〜っと、これはこれで〜・・・あっ、これはこっちでしたよね〜。」
「スピカ〜。このダンボールはどこにやればいいんだい?」
「あっ、それはですね、え〜っと〜・・・あっ、あっちの棚ですね〜・・あ、後はそのダンボールで終わりです〜。同じ所に置いていただければ〜。」
「OK、分かったよ。」

そうして2人がかりでやった所、ものの5分も経たない内に作業は終わった。

「うわ〜、レグルス課長のおかげでこんなに早く仕事が終わっちゃいました〜。ありがとうございます〜。」
「フフッ、どう致しまして・・・・それよりスピカ。そろそろバレンタインデーだねぇ・・・・どうかな?もう準備は出来ているのかい?」
「あっ・・それは・・・・え〜っと、一応・・・・」

そう、時は2月の半ば。2月といえばバレンタインである。スピカは顔を赤らめてレグルスに返事をした。

「へぇ〜。フフッ・・・本命は、もう誰なのか決まっているんだろう?」

とレグルスは言って、スピカの傍に歩み寄る。
レグルスのこの独特の色気と、囁くような声音にスピカはもうドキドキが止まらなくなっていた。

「あ・・は、はい・・・・・」
「フフッ、誰なんだろうねぇ〜・・・って、私以外にいるとは思わないけど。期待しているからね、スピカ。」

とレグルスに言われてしまって、スピカの胸の鼓動は更に高鳴る。やっぱり・・自分がレグルスのことを好きでいることを知っているのだろうか?そんなことを考えてしまうと、スピカはちょっぴり抵抗してみたくなってしまった。

「そ、そんな・・・・レグルス課長、とってもモテるじゃないですかぁ〜・・・・」
「私は、おまえの本命チョコがもらえるなら、他には何もいらないよ。」
「・・・そうして、いつも他の方にも言ってらっしゃるんですか?」
「おやおや、随分辛辣なことを言ってくれるね〜、スピカ。私はこんなにおまえ一筋に尽くしているというのに・・・・・」
「・・レ、レグルス課長・・そ、そんな・・・・・」
「・・・フフッ。そんなに顔を真っ赤に染めてしまって・・・可愛いね、スピカ。」
「や・・やめて下さい、そんな・・課長・・・・」
「おっと。そんな・・今にも泣きそうな顔をしないで、スピカ。おまえにそんな顔してもらいたくて言った訳じゃないんだけどねぇ〜・・・・」

とレグルスは言って、スピカを優しく包んでくれた。
レグルスの腕の中はとても暖かくて、スピカはついその身を委ねてしまった。

「あ・・その・・・すみません、レグルス課長・・・」
「・・いいんだよ。気にしないで・・・・おまえの心を傷つけてしまったのなら謝るよ・・・ごめんね・・・・」
「課長・・・私こそ、すみません・・・・」
「・・スピカ。それ以上謝らないでね。おまえに謝って欲しい訳じゃないんだから・・・・・・って・・あぁ〜っ!!!今何時だい?スピカ。」

と、とってもいいムードだった所にレグルスが突然大きな声を出したものだから、スピカは驚きつつ腕時計を見た。

「え〜っと、今丁度5時になった所ですよ〜?」
「!!本当かい!?・・急がないと、また怒られてしまう・・・・・!!それじゃ、また明日!スピカ!お疲れ様!!」
「あっ・・は、はい〜。どうも〜、お疲れ様でした〜、また明日〜・・・・・」

レグルスは正にピューーッ!!といった感じでスピカの前を大慌てしながら駆け抜けて行ってしまった。
1人取り残されてしまったスピカは急にチクンと胸が痛くなってしまったが、何か大事な会議でも控えていたのだろうと思い、試しにもう1回腕時計を見てみた。すると・・・・・・・?

「あっ、もう5時半でした〜。私いっつも長針と秒針間違えて見ちゃうんですよね〜。アハハハハ〜。」

その後レグルスが他の社員に冷たい目で見られたコトはゆーまでもありませんでした(笑)


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