私達の人生には、沢山の出来事があります。過去にあったもの、これから作り出されるもの・・・その1つ1つの経験が、私という人間を、そしてあなたという人間を作り出しています。
私達は、生きるということに恵まれています。そして私以外の人との出会いは、「私」というものに様々なものをもたらしてくれます。それがまた、新たな「私」を作り出してくれるんです・・・・

 

 

・・私は今年から、この地域では有名で大きいデパートに入社したばかりの新入社員で、スピカと申します。ここで経理事務のお仕事をしているのですけど・・・デパートとは言いましても、裏で事務のお仕事をしている私には、お客様と接する訳ではないので刺激的なことはなく、取り立てて悪いこともないまま、平凡に毎日が過ぎていっています。
そのような暮らしは、幸せといえばそうなのでしょうけれど・・・・何と言いますか。せっかく社会人として独立して、憧れの一人暮らしをしているのに・・・大人になってからの生活が毎日この平凡な繰り返しだと、さすがに幸せだと思っていても、つまらないような感じがしてしまうんです・・・・
もちろん、わがままだと言ってしまえばそれまでなのでしょうけれど・・・・もっとこう、何と言うんでしょうか。運命の男性さんとの出会い、とか・・・どうしても考えてしまうんです!・・夢見がちなんでしょうか・・・・?
今のお仕事現場は女の方だけなんです。あ、皆様とても良い方ばかりでとても親切にしていただいています!男性さんのいない現場なので変な問題が起きることはないんですけど・・・・私、道を歩いていて、ただすれ違う男性さんを見るだけでドキドキしてしまうんです・・・・意識しすぎなんでしょうか?でも、異性のことが気にならない方って、あまりいらっしゃらないんじゃないかと思うんです・・私の場合は過敏に反応しすぎなのかもしれませんけど・・・・
いずれにせよ、私は刺激が欲しくて仕方ありませんでした。取り分け男性さんとの出会いに縁のない私なので、男性さんとお会い出来るような場所・・・ということで、デパートのエレベーターガールをお勤めになっていらっしゃるプレアデス先輩に聞いてみました。
プレアデス先輩は私より2歳年上の先輩で、元々経理事務のお仕事をしていたこともあって、私の面倒を見て下さってるんです!それから先輩は、色んな男性さんとのお付き合いがあるようなんです。「恋や男性のことで悩んでいるのなら、プレアデス先輩に聞けば大丈夫!」という位、この社内でも先輩の評判は高いんですよ。

「あの・・プレアデス先輩。お疲れ様です!」
「あっ、スピカ。ありがと!いつも思うけど、あなたってホント気が利くわよね〜。将来はイイお嫁さんになれるコト、間違いないんじゃな〜い?」

プレアデス先輩は私が差し出したサプリメントのお飲み物をすぐに受け取って下さいました。いつも思うんですけど、プレアデス先輩は本当に素敵な方なんです。美人さんで、胸が大きくて、足がスラッと長くて細くて・・・・エレベーターガールの制服も、とてもよくお似合いです。どうしてそれまで経理事務なんてやっていらしたのか、とても不思議な位です。

「いっ、いえ、そんな!その、ことで・・プレアデス先輩にご相談したいことがありまして・・・・」
「えっ。何?とうとう婚約!?スピカ!」

プレアデス先輩は軽く私の肩をポンと叩いてそう仰ったのですけど・・・・ちょっと違うんです〜。

「いえ!その、そうではなくて・・・・あの。男の方の、ことなんですけど・・・・」
「うん、どうしたの?あ、彼氏紹介して欲しいとか☆」
「うぅ〜ん。一応は、そんな感じなんですけど・・・・あの、私。色んな男の方とお話をしてみたいと思うんです。今まであまりそのようなことに恵まれたことがなくて・・・・きっとプレアデス先輩なら、そのような場所を、よくご存知なのではないかと思って・・・・」
「色んな男と話せる場所・・ったらそうね〜。やっぱホストクラブかしら〜。」
「!!」

プレアデス先輩は特に迷うこともなく、その結論に持っていかれました。わ、私・・あまりそのような所には詳しくないんですけど・・・・ですけど確かに、そこには男性さんが一杯いらっしゃるんですよね?そしてそして、そこの男性さんは、女の方に優しく接して下さるんですよね?・・ですけどお金がとっても高いような気がするのは、私の気のせいでしょうか・・・・?

「あら、どうしたの?スピカ。そんなに驚いちゃって・・・」
「あ、その・・・・ホストクラブって、あまり良いイメージがなくて・・・・」
「そんなコトないわよ〜!!って、確かに客は社長夫人とかキャバクラ娘が多いし、ヤミの裏金が回ってるのは否定しないけど・・・・」

キャ、キャ〜ッ!何か私が想像も出来ないような世界が広がっている気がします〜・・・・

「は、はい・・・・」
「で〜も!だからと言って行かないのは損だわ!そんな偏見だけで片付けて、自分で分かったようなフリしてるのって良くないと思わない?スピカ。大丈夫!あたしがあなたにこーゆー提案した手前、あたしの超一押しのホストクラブにあなたを連れて行ってあげるわ!そんな高いお金かからないようにさせるから、取り敢えず安心しときなさいよ♪ついでにイイ男、そこで紹介してあげる!」
「あ・・は、はい・・・・」

わ〜。何か先輩ノリノリです〜・・・・

「日時はいつがイイの?あなたの都合に合わせるわよ?」
「あ・・私は。先輩さえよろしければ、今日でも明日でも構いませんけど・・・・」
「ホント〜?でも、多分早く切り上げても帰れるの夜中の2時過ぎると思うわよ?仕事に支障ない?」
「えぇっ!?そ、それはちょっと・・・・」

とてもとても仕事に支障がある気がします。ホストクラブって、一体いつから開いてるんですか〜・・・・

「・・・あなたって確か、3日休んで3日出勤って形取ってるわよね?」
「あ、はい。」
「それなら明日仕事行けば3連休でしょ?んじゃ、明日仕事が終わったら行きましょうよ!あたしも明後日は丁度休みなの!これでOK?」
「あ・・はい!あの、先輩。突然私の相談を聞いて下さった上に、沢山お世話になってしまいましてすみません!ありがとうございます!」

私はお辞儀をして、プレアデス先輩にそう言いました。本当に先輩は、優しくて素敵な方です・・・・

「ウフフフフッ!イイのよ〜。何たってあなたは可愛い新入社員だもの〜!ってゆーか、あなたって見た目も性格もピカ一なのに、そんなに男との出会いがないの〜?」

ええぇぇっ!?そそっ、そんなことはないですよ〜。そしたら先輩の方が・・・・

「あ、え、えぇ〜っと・・・高校や大学時代にお付き合いした方はいたのですけど、何だかお相手の方に裏切られてしまって・・・・大人になってからは、全然・・・・」
「そうなの〜。それってただ単に貧乏クジ引いてただけなんじゃな〜い?」
「アハハハハ。そう、なんでしょうか・・・・」

あまりそんな気はしないのですけど・・・・何だかプレアデス先輩が仰ると、本当のことのような気がしてしまうのがすごいです。

「そうよ〜。多分あなたのようなタイプって、男に尽くしすぎて捨てられる一番可哀相なタイプなんじゃないかと思うのよ。あなた自身は何も悪くないのに、勝手に男が離れてくの。もうそれは男の気まぐれってコトで、諦めるしかないわよね。」
「・・・はい・・そう、ですね・・・・」

実際、本当にそんな感じでした・・・・さすが、噂はダテではありませんね、プレアデス先輩・・・・

「あっ、ゴメン!そんな悲しそうな顔しないで!大丈夫よ〜、明後日はバンバン楽しんじゃってよ!超お勧めのホストがいるから、あなたに紹介してあげるわ♪」
「あ・・はい!ありがとうございます、先輩!」
「ウフフフフッ。期待してなさいよ、スピカ!それじゃ、お疲れ様!明日・明後日!楽しみましょうね!」
「はい!」

そうして挨拶をして、私とプレアデス先輩は別れて家に帰りました。
私は家路に着く途中も、ずっとプレアデス先輩との会話を頭の中で繰り返してしまいました。まだ私の知らないホストクラブの世界・・・・一体、どんな所なのでしょうか?ホストさんって、ある程度格好良いコトも条件・・みたいな感じですよね?ですけどそのような方たちって、皆さん彼女さんがいて当たり前みたいな気がします。ホストさんをなさっているのはあくまでお仕事、というイメージが私にはあって・・・・
ですけど、せっかく男性さんとお話出来るチャンスです!私は良い方向に考えることにして、プレアデス先輩に感謝しながら明日のことを思い浮かべるのでした・・・・・


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