第一話「始まりは唐突に」
その日、スピカの家に一通の手紙が届いていた。差出人は不明、どこからきたのかも不明・・・・・・
手紙の内容はたった一言、こうであった。
「今日、貴殿の家の中で最も大切な宝物を盗ませていただきます。」
スピカの両親はこの気味悪い手紙を見て驚いてしまっていた。
一応自分達の家はヴァルロ王国の中でも中流貴族に位置する地位にいるので、人に見せたくない金品財宝もあったりする。
今まで評判の良かった自分の家にこのような手紙がくるのは初めてのことで、それで驚きを隠せなかった。
すぐさまスピカの両親は警備を固め、金品を保管している倉庫の警護を固くさせた。
そして家全体の警護も固めた。その影響はスピカ自身にまで及ぶ。
「スピカ!」
「・・お母様。」
爽やかに晴れた日中。スピカは庭の花に水を与えていた。
この庭に生えている全ての植物はスピカが管理し、育てているものである。
スピカは大の植物好きなのである。
「スピカ、呑気にこんな所で水なんてやってる場合じゃないわ!私たちの家に危機がせまろうとしてるのよ!」
と、スピカの母はヒステリー気味にそう言った。
「あ、はぁ。確かに、警備の者から不審な手紙がきた、というのはお聞きしましたけれど・・・怖い、ですよね・・・・」
とスピカは言った。
その怖さを紛らわす為にも、大好きな植物たちの所にきて水をやっていたスピカだったりする。
「ほんとにもう、ね!早めに家に入っておきなさい。取り敢えず用心するにこしたことはないんだから。」
「はい、分かりましたお母様。」
スピカはそう返事をした。
スピカの母はそれを見届け、頷いて慌しそうに家の中にパタパタと入って行ってしまった。
スピカは1人になって小さくため息をつき、呟いた。
「どうか、大事になることのないよう・・・・・」
スピカは空に祈ったのであった。
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