第45話「明かされる謎・前編」
いつまで泣いていただろうか。気が付けば空はすっかり真っ暗になっていた。
「ん・・・・」
スピカの目はとても重たかった。泣きすぎて、体も心もボロボロだった。だが空腹感があったので、取り敢えず目をこすって下に下りる。
そこにレグルスの姿はなかった・・・・が代わりに、アルビレオがそこにいた。
「あ、スピカちゃん!!うわっ、どーしちゃったの〜!?目ぇ超腫れちゃってるよ〜!?大丈夫〜!?」
「あ・・アル、ビレオ・・さん・・・?」
「あ〜、あのね〜。レグルス、もうここにいないわ。」
「えっ!?」
「あいつ、1人で城に行っちゃった。ま、色々あるんでしょーよ。んだからあたしがこーしてまたきたんだけど・・・・あぁ〜、そこに置いてるのはレグルスがスピカちゃんの為に作ってたモノ♪これ全部スピカちゃんの好物なんだって〜?」
「え・・・・?あ・・・は、はい・・・・」
確かにテーブルに置かれているものをよく見てみれば、今日の夕食はスピカの好きな食べ物だけだった。
グラタンと少しのパン。飲み物はココアでデザートはプリン。スピカは胸が痛くなり、また泣き出してしまった。
「あ〜・・・スピカちゃん泣かないで〜。ん〜、まさかこんなに泣いてるとはあたしも思わなかったわ〜。ったく最悪なんだけど〜、アイツ〜。スピカちゃんの面倒あたしに押し付けるだけ押し付けてさ〜、こ〜んなに女の子泣かせちゃってさ〜。しかもよりによって自分の一番大好きな子を・・・」
「い、いいんです、そんな・・アルビレオさん・・・・」
「・・スピカちゃん・・・・」
「・・すみません・・・私が、泣き虫なだけなんです・・・・」
「あぁっ、そんなコトないって〜。んでも・・・ちょっとだけ、お顔洗ってきてごらん?水に当たれば少しはリフレッシュ出来るでしょ?」
とアルビレオは優しくスピカに声をかけた。そのアルビレオの優しさがスピカにもよく分かったから、スピカはコクンと頷いた。
こういう優しい所はさすが姉弟、似ているとスピカは思いながら洗面所に行き、バシャバシャと顔を洗った。
レグルスがいないことがショックだった。まさかもう・・あれを最後にレグルスと会えないのではとスピカは思ってしまったが、スピカはすぐに首を横に振り、否定した。
「こんなことばかり考えてたら・・・・本当にそうなっちゃう・・・レグルスさんに、会えることを考えなきゃ・・・・」
スピカは自分で自分にそう言い聞かせて顔を洗った。どうにか落ち着いたスピカはアルビレオのいる方に行った。
「あ〜、おっか〜えりぃ〜、スピカちゅわ〜ん。ささ、食べて食べて!お腹空いちゃったでしょ?」
「・・は、はい・・・・」
確かにとってもお腹が空いていたので、スピカはありがたくグラタンをいただくことにした。
レグルスの作る食べ物はいつだっておいしかったが、今日は特にそのおいしさが際立っている気がした。そう思うとスピカはまた涙が出そうだったが、何とか堪える。
「ハァ〜。明日で全部、終わりかぁ〜・・・長かったよーな、短かったよーな・・・複雑だわ〜。もうこうしてスピカちゃんにも会えないかもしれないと思うと・・・ちょ〜っとあたしブルーになっちゃうわ〜。何だかんだ言って、あたしこーしてスピカちゃんと会ってお話しするの、楽しかったのにな〜。」
「・・は、はい・・・・」
「・・・まぁ?こーしてスピカちゃんと会えたのは、あいつが犯罪しでかしたせいなんだけどさ。あたしも共犯だからな〜・・・あたしも罰せられるだろーね〜。」
「!・・アルビレオさん・・・」
「まぁ、直接的にはほとんど関与してないけど・・・・あぁ〜でもちょっとだけネタばらししちゃおっかな〜?スピカちゃんをあいつが連れ去った時、あいつ窓から飛び降りたでしょ?」
「!は、はい・・・・」
「あれ下でさ〜、あたし待機してたのよ〜!?しかもでっかいトランポリンわざわざ担いでさ〜。」
「えっ・・・?ええぇぇ〜〜っっ!?」
あまりにすごい話を突然聞いてしまい、スピカは驚いてしまった。
「しかも移動に使った馬車の馬ってわざわざ競技用の馬使ったのよ〜!?バッカみたいよね〜。だから御者さんも普通の御者さんじゃなくてその手のプロだったのよ〜!?そこえら辺もぜ〜んぶあいつが計画してたコトでさ〜。そーゆーコトだけには妙に頭が回るってゆーかほんとアホってゆーか・・・・」
「は、はぁ・・・・」
「まぁ、幸いにもあの時スピカちゃんが自然と気絶して眠っちゃってたみたいだから良かったけどさ〜。あの時仮にスピカちゃんに意識あったら、あたし眠り薬まで用意させられてたのよ〜!?ったくも〜う冗談じゃないって〜!!犯罪って絶対にバレるしやっちゃいけないコトでしょ〜?んだからあたしは力いっぱい反対してたのにさ〜、あいつの決意ってばも〜う固すぎて・・・・どんなにあたしが反対しても全っ然受け入れなかったのよ〜!?あたしの意見聞こうが聞くまいが、あいつはもうスピカちゃん誘拐するって決めてたみたいね。」
「あ、は、はぁ・・・・」
スピカはあまりにすごい話で圧倒されてしまっていた。実はそんな裏があったとは当然ながら全く知らなかった。
「んま、それだけあいつがスピカちゃんに命賭けてたってコトだよねホント。何としてでもスピカちゃんに会って、自分のものにしたかったみたいよ?あいつホントにスピカちゃんゾッコンだったからね〜。」
「あ、は、はい・・・・・あ、あの、アルビレオさん?」
「ん?な〜にぃ〜?スピカちゅわ〜ん。」
もう最後の夜だ。ここまできたならレグルスやアルビレオの本当のことが知りたい。そして自分には知る権利があると思った。だからスピカはアルビレオに尋ねた。
「あの・・・レグルスさんやアルビレオさんは・・・何者なんですか?私・・・今までずっと、そのこと隠されてきました・・・・もう、レグルスさんやアルビレオさんと会うのも最後だと思うので・・・・どうか教えて下さい。そうじゃないと私・・・完全に、レグルスさんやアルビレオさんが、信じられなくなります・・・」
「・・あ〜・・・・まぁ、確かにそーよね〜。ン〜、そりゃそーなんだけどさ〜・・・・あたしの口から言ってイイのかな〜?そのコト、あいつが一番気にしてたコトだからね〜・・・違う?」
とアルビレオはスピカに尋ねた。確かにレグルスはこの手の話題を一番嫌がっていた。スピカはコクンと頷いた。
「どうしよ・・・言っていいのかな〜?あたしが・・・」
「お願いします、アルビレオさん・・・その、このこと・・私とアルビレオさんだけの秘密にしませんか?以前、私の好きな人の話も、レグルスさんに秘密にしましたから・・・・今回のことも・・・」
「ン〜、そーね〜。そーゆー手もあるか・・・・ン、分かった。じゃあ教えるよ。んでもさ〜、その前にスピカちゃんに1つ質問。何となくあたしやレグルスの普段の言動とか見て感づかな〜い?」
とアルビレオに言われ、スピカは困ってしまった。
「い、一応・・・普通の方ではないと思ってました・・・お金持ちさんだなぁ〜、位しか・・・・」
「あ〜そ〜?そんなモンなんだ〜、ふ〜ん。ンッフフ〜、まぁ確かに金持ちっちゃ〜そーね〜。お金には不自由してないから☆ン・・・一言で言っちゃうと〜、この国の王子・王女だよ♪」
とアルビレオは言った。このことにスピカが驚かない訳がなかった。
「えっ?ええぇぇ〜〜〜っっ!?」
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