「ラブ・キッス」 1 神の子が生まれた聖なる夜の前日であるクリスマス・イブ。それはこの小さな村に住む1家庭にとっても喜ばしい日であった。 「エーン、エーーン!!」 それは、この村でも若く仲の良い夫婦として有名なレグルスとスピカの家庭での一幕。お姉さんのリーアは4歳の女の子。下の男の子・ユレウスは1歳になったばかりである。 「おかあさ〜ん!!ねぇねぇ、今日ってクリスマス・イブなんだよね!!前のクリスマスの時にはサンタさんちゃんと来てくれたけど、今年も来てくれるかな〜?」 リーアは手が離せない母親のスピカを見て遊べないだろうことを悟りながらも、母親の傍から離れていたくなくて、自らスピカに抱き着いてそう言った。愛する娘にそう聞かれて、スピカはユレウスをあやしながらもニッコリ笑顔でそれに答えた。 「ウフフッ、そうですね。リーアちゃんが良い子にしてるなら、きっと来ますよ。」 子供は一喜一憂がとても激しい。目まぐるしくコロコロと表情を変える我が娘にスピカは愛しさを覚えて、ようやく落ち着いて眠ったユレウスを小さなベッドにそっと寝かせて、リーアの手を取って言った。 「ウフフッ・・そういえば、今年リーアちゃんが欲しいものは何なの?」 リーアはスピカと手をつなぐだけでは物足りないようで、座ったスピカの膝の上に乗ってその体をスピカに預けた。可愛い娘にそうされるのがスピカも嬉しくて、リーアの頭を軽くなでた。 「そう。それじゃあ今度、リーアちゃんの描いたもの、お母さんに見せてね?」 リーアは本当に愛する夫によく似ているなぁ、とスピカが思いながら会話することしばし。リーアの方はというと、父親がいないことが気になっていた。 「ねぇねぇ、おかあさ〜ん。お父さんは〜?」 とスピカが言った矢先に、「ただいま〜。」と玄関先で聞こえた父親の声。リーアはパッと反応してスピカから離れて、一気に玄関まで走った。 「おとうさーーん!!おかえりーーー!!」 若き父親・レグルスはそう言って、リーアを一気に高く抱き上げた。リーアは「たかい、たかい」が大好きなので、それを分かっていてのレグルスの行動であった。 「ワーイ、ワーイ!!ウフフフフッ!!お父さん、もっとしてーーー!!」 ようやく玄関に来たスピカが、愛する夫・レグルスを出迎えた。 「あぁ、今戻ったよ、母さん。1人で大変じゃなかったかい?」 レグルスは常人とはかけ離れたオーラを持っている非常に魅力的な男性なのだが、実はここから少し離れた王国の元王子だったりする。 「大したことないさ。あぁ、それより・・ケーキやプレゼントの用意をしないといけないね。リーア、おまえも手伝ってくれるかい?」 そうして今日はいつもと違った家の装飾に囲まれながら、おいしい物を沢山食べて、最高に楽しい夜を過ごした。父親と母親から奇麗な髪飾りのプレゼントもあって、リーアは今最高の幸せを感じていた。 「ぜぇーーったいに!!今日はサンタさんに会って、お礼を言うんだもん!!リーア、サンタさんが来てくれるまでずっと待つんだから!」 もう既にリーアが横になっているベッドの脇には、大きい靴下がぶら下がっている。この日の為にスピカが買ってくれた、リーアにとって大切な靴下だった。 「眠い、けど・・・リーアは諦めないもん・・・・」 喋っていないと本当に眠ってしまいそうだった。だがまだ起きているだろう父親や母親に自分が喋っていることを悟られてはならない。小さく囁く感じで、リーアは自分にそう言い聞かせた。だが本当に眠い時は、口を動かしていても自然と目が閉じてしまう。それでもここで眠る訳にはいかず・・・若干4歳の子供だというのに、リーアは頑張っていた。 |