「ラブ・キッス」 2


さて、リーアがそのことで頑張っているだろうことを、母親のスピカが敏感に察していたのは無理もない。ユレウスを抱きながらスピカは寛いでいたのだが、すっかりその気になってサンタクロース姿になっているレグルスにスピカは声をかけた。

「お父さん。プレゼントを置くのは、まだ早いと思います。その・・リーアちゃんはきっと、まだ起きていると思うんです。前から言っていましたけれど、今日もサンタさんに会ってお礼を言うんだって、本当に張り切っていましたから・・・・」
「フフッ、そうか。いや〜、実に可愛いものだね。リーアにだけは、ずっと本当のサンタがいるんだってこと、信じさせてあげたいね。」
「ウフフッ・・そうですね。」

スピカに抱きかかえられているユレウスも、今は静かに寝ている。だがまだ1歳になったばかりの子供はいつ何が起きるか分からない。それ故にスピカはそのままユレウスを抱いて様子を見ているのである。

「ところで母さん。私のこの衣装を見て、何とも思わないのかな?」
「えっ?えぇ〜っと、そうですね〜・・・・本当に、お父さんは何でもよくお似合いで・・・・」
「まぁね、当然だろう?・・ってそうじゃなくて、もう少し何かないのかい?」
「えっ?」

愛する夫の言っていることの意味がよく分からず、スピカは首を傾げてきょとんとした表情でレグルスを見た。
もうスピカと結婚してから5年の歳月が流れたが、スピカの愛らしさは子供が生まれてからも何も変わることはなかった。
現在スピカは24歳・・・女性としての美しさが一番にじみ出ている時だろう。更に母性に満ち溢れているスピカは、レグルスにとってこの上なく魅力的だった。

「・・「私だけのサンタになって欲しい」、とかね。」
「!!・・・な、何仰ってるんですか!お父さん・・・・」

色っぽい微笑でレグルスが一言そう言うと、スピカは一気に顔を赤く染めた。目線をユレウスに移して、必死に照れ隠しをしようとしているのが丸分かりである。そんなスピカにレグルスは近寄って、スピカの顎にそっと手をかけて持ち上げさせた。
そのまま2人は見つめ合ったのだが、スピカはまだ恥ずかしそうだった。

「あ、あの、お父さん?ユレウスちゃんがいますから・・・・」
「そんなことは関係ないよ。今すぐ、おまえが欲しい。」
「おっ、お父さん!!それはダメです!今日はリーアちゃんやユレウスちゃんに夢をお届けするサンタさんなんですから・・・・!」
「・・・おまえにとっても、サンタじゃないのかい?」
「!・・・・・」

レグルスに熱く見つめられてそんなことを言われてしまっては、スピカは何も返す言葉がなかった。勝ったといわんばかりに、レグルスは更にスピカに顔を近付ける。

「おまえの欲しいものは何かな?このサンタに教えてくれるかい?可愛いスピカ・・・・」
「お、お父さん・・・・!その、悪乗りも程ほどに・・・」
「悪乗りだなんてひどいね。そんな気は一切ないのに・・・・」
「そ、それより!リーアちゃんとユレウスちゃんに、プレゼントを・・・・」

スピカとしては、早く何とかこの事態から抜け出したいようである。確かにユレウスの面倒を見ている手前、そうなってしまうのだろうが・・・・それ以前の理由として、こうしていることが恥ずかしいようだ。そのように恥ずかしがっているスピカを見て、レグルスがその気になるのも無理はない。自他共にスピカを一番愛しているのは自分だと認めるほど、スピカへの愛は深いのだから。

「おや?リーアはまだ起きているんじゃなかったのかい?」
「そ、そうですけれど!この際、リーアちゃんのお願いを叶えていらっしゃったらどうですか?」
「母さん・・・どうしてさっき言ったことと、意見が違うのかな?」

レグルスは完全に余裕の微笑を浮かべてスピカにそう尋ねた。確かにレグルスの言う通りで、スピカは完全に不利だったのだが・・・・スピカは急遽考えを改めてこう言った。

「そっ、その!リーアちゃんは、眠い中懸命に起きていると思うので、お父さんだと分かっても、一言お礼を言わせてあげた方が・・・・」
「・・まぁ、いいか。分かったよ・・・母さんがそう言うなら、ね。それじゃ、まずはユレウスのプレゼントを・・・・」

レグルスは何か言いたそうにしていたが、スピカの言うことに妥協して、まずはユレウスのベッド脇にかけている靴下にお菓子の詰め合わせのプレゼントを置いた。それからスピカにウインクすると、プレゼントを持ってリーアのいる部屋に足を運んだ。因みにリーアへのプレゼントは、今日スピカに言っていたお絵描き帳とクレヨンである。
スピカより欲しいものを聞き出すことに慣れているレグルスは、既に12月に入ってからリーアに欲しいクリスマスプレゼントをさり気なく聞いてしっかり用意していたのである。「さすがレグルスだ」と、スピカは本当にレグルスのことを心から尊敬していた。
さて、そのレグルスが気付かれないようにそっとリーアの部屋のドアを開けると、リーアは静かな寝息を立てていた。この寝息は本当に眠っているものだとレグルスはすぐに察したと同時に暖かい微笑を浮かべた。やはりどんなに頑張っても、眠気には勝てなかったようだ。
暗い中、わずかに見える愛しい娘の寝顔は本当に愛らしかった。リーアお気に入りの靴下にそっとプレゼントを入れると、レグルスはリーアの額に軽くキスをした。

「メリークリスマス、リーア。愛しているよ・・・・」

そうして起きない程度に頭を軽くなでて、レグルスはそっと部屋を出たのだが・・・・ドアを完全に閉める前に、レグルスは驚いてしまった。そこには心配そうな表情をして立っているスピカがいたのだから。ユレウスがいない所を見ると、どうやらベッドに寝かせてきたようである。

「あ、あの・・お父さん。どうでしたか・・・・?」

スピカは、自分がヤケになって違った意見を出したことを自覚していた。もしリーアの夢見ていたサンタが自分の父親だと気付いたらどうしよう、とスピカなりに心配していたのである。
もちろん、スピカのその気持ちが分からないレグルスではない。レグルスはスピカを安心させるべく、スピカの両肩に優しく手を置いた。

「大丈夫だよ。リーアは、完全に眠っていたから。」
「ほ、本当ですか?良かったです・・・・その、すみませんでした。」

スピカはレグルスにお辞儀をして謝った。レグルスはそれを優しく見守っていたのだが、少しスピカをいじめたくなってしまった。

「フフッ・・許さないって言ったら、どうるすんだい?」
「えっ?」
「もしリーアにサンタが私だと知れてしまったら、おまえはどう責任を償うべきだったのかな?」
「えっ!?え、えぇ〜っと・・・・・」

まさかレグルスにそのようなことを言われるとは思っておらず、スピカは言葉に詰まってしまった。レグルスは余裕ある微笑を浮かべると、スピカにこう言った。

「ねぇ、スピカ。おまえは知っているかい?サンタの弱点を。」
「えっ?弱点・・ですか?」
「そう。考えてごらん。」

レグルスにそう言われて、スピカは「うぅ〜ん・・・」と真剣に考えた。レグルスはそんなスピカを見守っていたのだが、間もなくスピカは結論を導き出した。

「・・夏、ですか?」
「はぁ?」
「あ、あの。サンタさんは、夏になると何をしていらっしゃるのかな、と思うと気になってしまって・・・・」
「アハハハハハッ!!スピカ、いいね!やっぱりおまえは最高に可愛いよ。」

レグルスは大笑いしてスピカにそう言った。スピカはと言うと、レグルスに笑われたことがショックで、恥ずかしくて仕方がなかった。スピカにしてみれば、これ以外の答えはないと思っていたのだが・・・・レグルスのこの反応を見る限り、そうでもないようだ。

「えぇっ?そ、そんな・・・・あの、お父さん。答えは何なんですか?」
「・・スピカ。その前に、2人きりの時は名前で呼んでくれないかい?昔の時のように・・ね。」

レグルスは昔から何一つ変わらない。父親になっても独特の魅力は輝き続けている。スピカは昔に戻った気持ちになって、コクンと頷いた。

「はい・・レグルスさん。」
「フフッ、いいね。それじゃあ、答えを教えてあげるよ。」

そうしてレグルスは何をしたかと言うと・・・・スピカに愛の口付けを送っていた。スピカは突然のことで驚いてしまったが、すぐに2人は強く抱き合った。

「・・レグルス、さん・・・・」
「愛しているよ、スピカ・・・・」
「!レグルスさん・・・私も、愛しています・・・」

そうしてお互いに愛を確かめ合ったのだが、レグルスはまだ足りないといった感じでスピカを見つめて言った。

「フフッ、スピカ。サンタは貪欲でね・・・もっとおまえのキスが欲しいよ。」
「んっ・・ふ・・・・!」

スピカが何か言葉を言う前に、レグルスはスピカの唇を塞いでしまったのだが・・・・その時、リーアはたまたま目が覚めて見てしまったのだ。部屋のドアが少し開いていて、そこから大好きな母親とサンタクロースがキスしている所を・・・・・
会話は途切れ途切れにしか聞こえてこないし、全部見えている訳ではないので、肝心のサンタの顔が分からないのだが・・・リーアは半分眠りに落ちながらも、確かに見たのである。

「おかあ、さん・・・・サンタさんと、キスしてる・・・・リーアのお礼の気持ち・・・お母さん、が・・代わりにしてくれたの?・・・・ありが、とう・・・・サンタ、さん・・・おかあ、さ・・ん・・・・」

それからリーアはもう完全に意識がなくなってしまったのだが、それはリーアが見た、クリスマスの最高の光景だった・・・・・

 

メリー・クリスマス。今宵あなたのもとに、サンタクロースが現われんことを。

 

END.








































あとがき。

前に「今日も頑張ろう!」書きましたよね。えぇ、あれは企画さん見て突発的に書いたモノなんですが・・・・あの時とノリは似てます。
いえ。別に何がしかの企画があるワケではありませんが、前々からクリスマス話は書きたいと思っていたんですよ。えぇ〜、何だか知りませんが、この国では「恋人と過ごすクリスマス」になってしまっているんですからね〜。

ですけど今までネタが思いつかなかったんですよ。「クリスマス話を書きたい!!!」とゆー願望だけ強くて、ネタが全く思いついてなかったんですね。ですけどふとひらめいたんですよ。えぇ、それはいつもミヤミドが買っているCDシリーズの1つを買ったのがきっかけです。
ミヤミドの「PROFILE」見て下さった方は分かると思うんですが、ミヤミドはダンスミュージックを聞くのが趣味です。音ゲーでも元祖のダンレボが今でも好きな位ダンス曲がミヤミド大好きなんですね。そんなダンス好きな人にとって有名なのが「ダンスマニア」とゆーシリーズのCDです。その中に去年出たモノなんですけどね〜、「クリスマスピード」とゆーCDがあるんですよ。えぇ、題名の通りクリスマスの曲がノンストップ・ハイパースピードで展開されているんですが・・・・その中に見つけました。「I SAW MAMMY KISSING SANTA CLAUS」・・・和訳すると「ママがサンタにキッスした」という曲ですね。これ1952年に、当時12歳だったジミー・ボイドが歌って全米ナンバー1ヒットにもなった有名曲ですよね!!ん〜、カバーでも有名ですかね〜。ジャクソンズやカーペンターズとか・・・・聞けばきっと皆様も分かる曲です!!えぇ、これが「クリスマスピード」に入っていてですね〜、「そういえばこんな曲あったね〜!!!」とか思って、それから一気にネタが湧いて出ました。
まぁ、この曲名にあやかってお話書くなら、「さらわれたもの」の設定しかないだろうと!!そんでもって本当ならスピカちゃんからレグルスさんにキスをしなければいけないんですが・・・今回どうしてもレグルスさんに言わせたかったセリフがあったんですよ!!それは「もっとおまえのキスが欲しいよ。」なんですけど(爆)それを言わせたいがために、結局レグルスさんがスピカちゃんを押しに押しまくってキスに踏み込みました(爆)でまぁ、この曲の題名通りですね、最後はリーアちゃんがその光景見ちゃったよってコトで閉めたかったワケです。

 

うぅ〜ん・・・・正直言います。レグスピ書いたのカナリ久しぶりです(爆)いや〜、それまでオフライン企画で出すコトになっているタクエツ話や、「先生が好き10のお題」を書き進めてましたので、学×和とかしか書いてなかったんですよ〜。
「流れ星への願い」はレグスピ予定ですが、前半はレグっさん以外の男性さんを随所にこう、押し出していっておりますので、まともにレグスピなんて書いてませんし・・・・いや〜、書きたいモノが書けてそれなりに満足してます。

いやしかし、正直「さらわれたもの」の番外っぽい話をこんな形で出すとはミヤミドも予想してませんでした。まぁ〜、この通り私、常に気まぐれ人間ですからね〜。今回のお話を見ていただいて、どんな形のクリスマスであれ、楽しんで下されば幸いでございます!!
ミヤミドとしましては「恋人と過ごすクリスマス」とゆー概念は間違っているように思っておりますので、とにかく楽しくて幸せならそれでOKじゃないですか!!!皆様のクリスマスが良いものになりますよう、ミヤミドはお祈りしながらあとがき終わらせていただこうと思います!!メリー・クリスマス!!!


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