「ラブ・キッス」 2
さて、リーアがそのことで頑張っているだろうことを、母親のスピカが敏感に察していたのは無理もない。ユレウスを抱きながらスピカは寛いでいたのだが、すっかりその気になってサンタクロース姿になっているレグルスにスピカは声をかけた。 「お父さん。プレゼントを置くのは、まだ早いと思います。その・・リーアちゃんはきっと、まだ起きていると思うんです。前から言っていましたけれど、今日もサンタさんに会ってお礼を言うんだって、本当に張り切っていましたから・・・・」 スピカに抱きかかえられているユレウスも、今は静かに寝ている。だがまだ1歳になったばかりの子供はいつ何が起きるか分からない。それ故にスピカはそのままユレウスを抱いて様子を見ているのである。 「ところで母さん。私のこの衣装を見て、何とも思わないのかな?」 愛する夫の言っていることの意味がよく分からず、スピカは首を傾げてきょとんとした表情でレグルスを見た。 「・・「私だけのサンタになって欲しい」、とかね。」 色っぽい微笑でレグルスが一言そう言うと、スピカは一気に顔を赤く染めた。目線をユレウスに移して、必死に照れ隠しをしようとしているのが丸分かりである。そんなスピカにレグルスは近寄って、スピカの顎にそっと手をかけて持ち上げさせた。 「あ、あの、お父さん?ユレウスちゃんがいますから・・・・」 レグルスに熱く見つめられてそんなことを言われてしまっては、スピカは何も返す言葉がなかった。勝ったといわんばかりに、レグルスは更にスピカに顔を近付ける。 「おまえの欲しいものは何かな?このサンタに教えてくれるかい?可愛いスピカ・・・・」 スピカとしては、早く何とかこの事態から抜け出したいようである。確かにユレウスの面倒を見ている手前、そうなってしまうのだろうが・・・・それ以前の理由として、こうしていることが恥ずかしいようだ。そのように恥ずかしがっているスピカを見て、レグルスがその気になるのも無理はない。自他共にスピカを一番愛しているのは自分だと認めるほど、スピカへの愛は深いのだから。 「おや?リーアはまだ起きているんじゃなかったのかい?」 レグルスは完全に余裕の微笑を浮かべてスピカにそう尋ねた。確かにレグルスの言う通りで、スピカは完全に不利だったのだが・・・・スピカは急遽考えを改めてこう言った。 「そっ、その!リーアちゃんは、眠い中懸命に起きていると思うので、お父さんだと分かっても、一言お礼を言わせてあげた方が・・・・」 レグルスは何か言いたそうにしていたが、スピカの言うことに妥協して、まずはユレウスのベッド脇にかけている靴下にお菓子の詰め合わせのプレゼントを置いた。それからスピカにウインクすると、プレゼントを持ってリーアのいる部屋に足を運んだ。因みにリーアへのプレゼントは、今日スピカに言っていたお絵描き帳とクレヨンである。 「メリークリスマス、リーア。愛しているよ・・・・」 そうして起きない程度に頭を軽くなでて、レグルスはそっと部屋を出たのだが・・・・ドアを完全に閉める前に、レグルスは驚いてしまった。そこには心配そうな表情をして立っているスピカがいたのだから。ユレウスがいない所を見ると、どうやらベッドに寝かせてきたようである。 「あ、あの・・お父さん。どうでしたか・・・・?」 スピカは、自分がヤケになって違った意見を出したことを自覚していた。もしリーアの夢見ていたサンタが自分の父親だと気付いたらどうしよう、とスピカなりに心配していたのである。 「大丈夫だよ。リーアは、完全に眠っていたから。」 スピカはレグルスにお辞儀をして謝った。レグルスはそれを優しく見守っていたのだが、少しスピカをいじめたくなってしまった。 「フフッ・・許さないって言ったら、どうるすんだい?」 まさかレグルスにそのようなことを言われるとは思っておらず、スピカは言葉に詰まってしまった。レグルスは余裕ある微笑を浮かべると、スピカにこう言った。 「ねぇ、スピカ。おまえは知っているかい?サンタの弱点を。」 レグルスにそう言われて、スピカは「うぅ〜ん・・・」と真剣に考えた。レグルスはそんなスピカを見守っていたのだが、間もなくスピカは結論を導き出した。 「・・夏、ですか?」 レグルスは大笑いしてスピカにそう言った。スピカはと言うと、レグルスに笑われたことがショックで、恥ずかしくて仕方がなかった。スピカにしてみれば、これ以外の答えはないと思っていたのだが・・・・レグルスのこの反応を見る限り、そうでもないようだ。 「えぇっ?そ、そんな・・・・あの、お父さん。答えは何なんですか?」 レグルスは昔から何一つ変わらない。父親になっても独特の魅力は輝き続けている。スピカは昔に戻った気持ちになって、コクンと頷いた。 「はい・・レグルスさん。」 そうしてレグルスは何をしたかと言うと・・・・スピカに愛の口付けを送っていた。スピカは突然のことで驚いてしまったが、すぐに2人は強く抱き合った。 「・・レグルス、さん・・・・」 そうしてお互いに愛を確かめ合ったのだが、レグルスはまだ足りないといった感じでスピカを見つめて言った。 「フフッ、スピカ。サンタは貪欲でね・・・もっとおまえのキスが欲しいよ。」 スピカが何か言葉を言う前に、レグルスはスピカの唇を塞いでしまったのだが・・・・その時、リーアはたまたま目が覚めて見てしまったのだ。部屋のドアが少し開いていて、そこから大好きな母親とサンタクロースがキスしている所を・・・・・ 「おかあ、さん・・・・サンタさんと、キスしてる・・・・リーアのお礼の気持ち・・・お母さん、が・・代わりにしてくれたの?・・・・ありが、とう・・・・サンタ、さん・・・おかあ、さ・・ん・・・・」 それからリーアはもう完全に意識がなくなってしまったのだが、それはリーアが見た、クリスマスの最高の光景だった・・・・・ メリー・クリスマス。今宵あなたのもとに、サンタクロースが現われんことを。 END. |
あとがき。 前に「今日も頑張ろう!」書きましたよね。えぇ、あれは企画さん見て突発的に書いたモノなんですが・・・・あの時とノリは似てます。 うぅ〜ん・・・・正直言います。レグスピ書いたのカナリ久しぶりです(爆)いや〜、それまでオフライン企画で出すコトになっているタクエツ話や、「先生が好き10のお題」を書き進めてましたので、学×和とかしか書いてなかったんですよ〜。 |