のっけから封神演義とあんまり関係がないのですが・・
久しぶりにアニメの最遊記を見ました。
一応解説。
『最遊記』 峰倉かずや先生/エニックス/月刊Gファンタジー連載中。
読んで字のごとく(?)『西遊記』の世界観を生かした漫画です。
「生かした」を私のパソコンははじめ「異化した」と変換しましたが。
この方が『最遊記』をよく表しているかもしれません。
芸術における「異化」というのは、例えばその芸術世界の中に不思議を持ち込むことなどで、
鑑賞者に「自分が当たり前に生きているこの世界は決して当たり前なものではない」と思わせること。
つまり自分がなんとなく信じてきたものへの再考とか、(退屈な)日常に対する驚きとか喜びとか、
ものすごく当たり前なものと考えている自分という存在への疑問とか愛しさだとかをもたらすもの。
(この説明、結構乱暴かなあ・・。ご意見あれば聞かせてください。異論も歓迎。)
まあ、本当に強く異化作用を持つ話というのは、鑑賞者を安穏と日常においていてはくれないので、
読んでいるといらいらしたりむかむかしたり訳わかんなくなったりいたします。
(するけれど心を話から切り離せないあたりがまた腹立つ。)
そして『最遊記』はそのような類の話ではありません。
(だいたいそういう強い異化作用を持つ話ってのは嫌いなんだ・・。
上記の「異化」の説明も、高校時代、安部公房の『赤い繭』が嫌いだ〜!と叫んでいた私を翻意させようと、
国語の先生が熱く語ってくださったことなんだけど・・でもやっぱり好きにはなれなかったんだよな、『赤い繭』)
『赤い繭』安部公房/『壁』新潮文庫に収録
それでも『最遊記』は久々に、「片手間には読めない本」でした。
これ読むときは1人じゃなきゃいや、BGMも要らない。
いえ、片手間にさらっと読んでも十分楽しいのです。
「悟浄さんかっこいい〜」の、「悟空カワイイv」のと叫んで楽しんでもいいのです。
自分の中にもそういう気持ちはまあ一応(<かなり強くの間違いじゃないのか?)ありまして。
それもいいけど、そして友達とはそうして騒ぐけど。けど、一人で本を開けばじっと三蔵や八戒と向き合う。
(*ここに出てきたキャラの名前は順不同、どのようにも入れ替え可能ですのでよろしく*)
その時間を大事にしたいと思う本でした。
自尊、ということを考え直す。(己、が『最遊記』のテーマのようですね。)
「自ら恃むところ頗る厚く」・・って、違ったこれは『山月記』。しかも否定的な含みを持つ文章。
さて、では『最遊記』の「自らを頼みにする」姿勢が完全に肯定されているのは何故だろう?
私がどちらも自然に受け入れるのは何故?どちらが好き?どちらで、ありたい?
本日現在の答えは、「自らを頼みにしたい」方。それほどまでに、強くありたい。
自分で毅然として行動し、責任を取る覚悟と見通しを持つことの難しさを、
人と接するたびに(要は職場で)感じているから。そして自分が逃げたがっていることも。
『山月記』中島敦/『李陵・山月記』新潮文庫に収録
その強さを描くために(ために、かどうかはわからないけど)、『最遊記』は
善悪という倫理を放って棚に上げている。決して反社会的な話だという意味ではないですよ。
物語の中に善悪の概念も間違いなくあります。それでもいくつかの善悪の重要度は
この世界で考えられているよりもかなり薄く(例えば、この世界で復讐は悪だろう。
そして最遊記世界でも。でも・・・)、重要とされている善悪の境目は、やっぱり
自分の心に迷いやごまかしや、他者の介入はないか、ということのようで。
善悪って何さ、と、問いを立てる。
社会的に認知されている善悪(倫理)よりも自らの心が大切?
そんなことありえない?
では自らの心から発していないものを善とか倫理とか言えるの?
「社会がそれを善だと言っているからだ」と言えば、盲従となってしまう。
権威ある者、多数の者の言葉や意志であるというだけでは従う理由になり得ない。
「仏に会えば仏を殺せ」と、昔の偉いお坊さんも、
そして観世音菩薩さまもおっしゃっているではないか(笑)。(・・いや、苦笑?)
だけどほんとかな?
社会的な善悪というものがもし無かったとしたら、私は明日生き延びられるの?
『最遊記』はこのわけの分からない問いの循環の、ある一面を切り取って見せてくれます。
ある意味では1つの答え。けれどそれは問い。
そしてこれが多分、異化。
なんのことはない、『最遊記』大好きです、と言っているだけです。
長々と読んでくださってどうもありがとう。
そして・・次回に続く。
(だって本当は、TVアニメというものについて書くつもりだったんだもん・・)
封神演義の感想も書きたいのだけど、最遊記でこの長さだと考えると、いったいどうなることやら・・・
次回は最遊記の続き、というよりTVアニメについて。
その次には望ちゃんの(これじゃあわかんないな。のぞみちゃんの、です)感想を書きます、きっと。