十五夜
 中秋節
 収穫祭
 団子
 団子2
 Link

薬草を挽くうさぎ  お月見

今回はそんなに嘘はありません、と言ってしまってよいものか。
すくなくとも端午の節句や七夕に比べれば、嘘はついていないはず。
とはいえお団子の存在から考え直すとするならば、やっぱり嘘、かなあ(→結論は「わからない」なんですが)。

フジリュー先生も確信犯で楽しんでやってらっしゃるに違いないような。
そんな小道具は結構たくさんありますよね。
トマトが出てきたときも笑いましたが携帯電話には亭主もう大喜びでした。

のっけから話がそれました。
端的に言って殷の時代、中秋の名月を愛でる風習はまだおそらく成立しておりませんが。
太公望が見た月も今わたしたちが見ている月も同じ月。
たかが3000年、四季の巡りも大差ない。
この季節、あの月の美しさに心奪われたと思います。
いつも周の遠さに驚いていますが、天文のさらなるさらなる奥の深さが嬉しいと思った今回の調べものでした。

 1 十五夜 1 三五月

中秋の名月とは旧暦8月15日夜のお月様。
今年これは10月1日にあたります。
まあ、だいたい満月です (今年はほんとうは月齢14なのですが。 詳細は*1*2でどうぞ)。
秋分に最も近い満月ですね。

では毎月毎月満月はやってくるのにどうして8月の15日だけをことさらに名月として愛でるのか。

まずはやっぱりお月様がきれいだから。
秋の空は空気が澄んでいてお月様をはっきりと見ることができます。
ついでに、高すぎず低すぎずちょうどよい高さに見ることができます。
(お月様は冬は高く夏は低く見えます。)
*3にはもう一つ理由が書いてありましたが、何回読んでも理解できないのでパス。
とにもかくにも秋のお月様は綺麗です。

そしてこれは殷周時代でも嘘じゃありません。
「8月15日」という意識はなくても、望ちゃんもきっとおんなじきれいなお月様を見ています。

「中秋の名月」と考えているからこそきれいに見えるんじゃないの?
    うーん、完全には否定できませんね。
その意味では太公望の見ている月は(意識において)いま私が見る月と違うかもしれませんが。
でもやっぱり、秋のお月様はきれいです。


ところでお月見はいまも旧暦の8月15日に行うのが一般的です。
調べものをする前、「9月15日じゃないの?」などと実は亭主は考えておりましたが。
今年、新暦2001年の9月15日はほとんど新月でございました。
お月見なんてやりたくたってできやしません。

旧暦で行われていた行事は現在、新暦の同じ日付で行われたり (例えば3月3日にひな祭りをする)、 新暦で一ヶ月後に行われたり (例えば8月15日にお盆をする、これを中暦といいます)、 旧暦で行われたりします。
亭主が「お月見は9月15日じゃないの?」と考えていたのは中暦によるわけです。
行事の季節感を考えると旧暦でやるのがよいのでしょうが、新暦で生活している現在、 それはとても面倒なので多くの行事が新暦や中暦で行われています。

ところが。お盆は新暦でやろうと中暦でやろうとはたまた旧暦でやろうともさして問題は起こらないのですが、 お月見ばかりはそうはいきません。
旧暦の「15日」はどの月もほぼ満月に近いわけですが、新暦の「15日」は全然そんなことはないからです。 今年のように。
そのためお月見はいまも旧暦の8月15日。
(でもうちの実家じゃあ中暦だったんだけど・・今年は・・やってないだろうな)
新暦では9月から10月初旬にかけてのどこかになりますね。

2 中秋 2 中秋節

なにはともあれ、旧暦の8月15日。
「今日は中秋の名月だ」といろんな人が考えて、毎年同じこの日にお月様を楽しむ。
そんな風習が成立したのは実のところいつのことだかよくわかりません。
中国から日本に伝わってきたということは間違いないみたいです。

中国では遅くとも唐の時代には「8月15日の月を愛でる」という考えがありました。
そのころから中秋の月が漢詩に詠われてくるのです。
ただはじめのうちはひとりでお月様を見て「いい月だ」と言っている感があり、 お供え物だ、お祭りだ、ということにはなっているんだかいないんだか。
少なくとも白楽天の詩を読む限り*4、「名月」だけど「行事」にはまだなっていません。
「宮中の夜は静か」で、彼は仕事中ですから(宿直だけど)。

そのうちに成立した8月15日の月見の行事を「中秋節」と申します。
唐の玄宗皇帝(明皇)が8月15日に月の都を訪れ、 以来この日を中秋節として祝うようになったというとんでもなく楽しい伝説もございますが、 詳細がどうもつかめません。嘘だとしても知りたい伝説。
(白楽天 772‐846 のころはまだ行事じゃなかったと言った舌の根も乾かぬうちに・・玄宗は 685‐762 )

でもとにかく唐代のうちに「行事」として成立したのじゃないかなあ。
日本にお月見が伝わったのは平安初期(すなわち晩唐)。
そのときにもう「月見の宴」というかたちであったようなので。

中秋節。月を観て、月を祀る日。

もともと、お月様はお日様とならんで信仰の対象になっております。
月も太陽も季節の巡り自然の恵み宇宙の神秘そのものですから。
それこそ周の時代から、春分に太陽を、秋分に月を祭っていたとか。
周の祭祀がこの「中秋節」とどれだけ直接つながるものはわかりませんが、
現在の中国でも中秋節は春節(お正月)の対となる盛大な行事です。

原始からの月への祈りを引き継いだとみれば、中秋節は唐どころではない古い古いお祭り。
この日は月に住む嫦娥さまを祭るという伝説*5からは、この祭りの古〜い一面が窺われます。
なんたって伝説の舞台は太陽が十もあったというくらいの古代ですから。

「中秋の名月」はまだなくても。
古く古くからひとは同じ月を見て心ひかれていたのはきっと確かです。

 3 収穫祭 (さといもとお団子と松餅と月餅) 3 おそなえもの

視線をお月様から下に向けましょう。

月を祀るこの日。日本でも中国でも収穫祭の意味をももちます。
しかもさといもの収穫祭。
日本ではこの日の月を「芋名月」などと言ったりしますが、この芋はジャガイモでもなくサツマイモでもなくサトイモ。
そしてこの日にサトイモを食べる風習は、中国でも日本でもフィリピンでももっと東南のアジアでも共通しているとのこと。
むかしアジアではサトイモを主食としていた地域がかなり広いみたいです。
いかにも日本の食べ物と思っていたのですが実は結構国際色溢れる食べ物です。

お月見の晩は人様の畑のお芋などを盗んでもいいという風習もあり、
これも収穫をみんなで祝い感謝する故と思います。
けれど2001年現在、これはやっちゃいけないでしょうね。

それにしても亭主はさといもが大好きで。
旬のさといもはもっちりほっくりとしておいしいですね〜。
衣かつぎがやっぱりいちばん。おいしいしょうがじょうゆで。ああ。

ううむ、またも話がそれましたね。
ともかくそういうことでむかしからお月見のお供えの基本はまずはさといもです。
けれど日本ではお団子も欠かすわけには参りません。

お月様にお団子をお供えするのは日本の風習。
いま中国ではお月見と言えば月餅、ちなみに韓国ではソンピョン(松餅)です。
(ソンピョンは松葉を敷いたせいろで蒸したお餅です。 でもって韓国の中秋はお月見というよりはお盆ですが、 でもソンピョンは前の晩お月様を見ながら家族みんなで作るんだそうです。)

さといもから離れても収穫祭ですので、お月見のお団子は新米で作ります。
間に合わなかったら数粒でも入れるんだとか。
でも間に合わないときの対処があるというのは間に合わないのが多いということね。
まあ、だから「さといもの収穫祭」という話にもなるんですが(さといもは間に合うはず)。

いずれにせよ亭主も和菓子やさんかスーパーで買うので、 自分が食べたものが新米でつくられているかどうかまったく定かでありません。
しかも今年は冷凍庫に残っていたお餅を流用したので(それはそもそも団子ではない)、 明らかに古米ですね(汗)。

お月様にお供えするお団子の形はまんまるいものや丸くて中を少しくぼませたもの。
それから片側は太く片側の先は細くしたさといも形などいろいろ。
実家(東海地方)にいたころはまんまるでした。
西日本に来てはじめて見たさといも形にびっくり。
さといも形は上からあんこを掛けます。

 4 お月見以外にもお団子 4 団子

さてそれで、問題の(?)お団子そのものの由来ですが。
由来、日本への伝来記はまだしも見つかるのですが、そもそもの成立譚はなかなか。
いずれにせよ「だんごの来歴には諸説があって明らかでない」というのがいちばん正確なところではあります。

それでもいろいろと。
遣唐使が日本に持ってきて平安時代には食されていた、団喜(だんき)という唐菓子がお団子の起源らしい。
団喜は餡子入りのお団子でもともと中国では仏さまへのおそなえものだったとか。
起源、と書きましたけれど団喜も団子も名前が違うだけでモノはたいして変わらない気がします。

「粉を丸くまとめたものだから団子」という名前の由来は根拠があるんだかないんだか。
室町時代には団子(あるいは団粉)という言葉はだいぶ広まっていたようです。
そのうち串にさすようになったり各地の名物だんごができたり、バリエーション豊かになりました。
月見だんごがでてくるのは、お月見の風習が民衆に広がった江戸時代なのかな。

で、肝心の団子とは何か?実はよくわかりません。
穀類(だいたいはお米、でもキビとかも)を挽いた粉を水で練ってまとめて、それを蒸したりゆでたりしたものが「団子」。
穀類(というかもち米)を粒のまま蒸して、その後でついてまとめたものが「餅」。
それでいいかと思いきや、これは例外相当多数。
まんまるだったら団子、平たくなったら餅、ともいえますがこれもまた例外多数。
柏餅は粉をまとめてから蒸していますし、お彼岸だんごは平たいです。
慶事と弔事で分けるとか神事と仏事で分けるとかの説も一応あります。
しかしどれもこれも例外だらけ、結構適当に使い分けられているようです。

定義のわからないものの由来を考えるなど無謀もいいところです・・・

そこでさらに。
火を通さないものも団子でよければ、五穀を粉にし水で練ったお団子は 縄文時代から食べられていたようです。
・・・これがあるのに平安時代までこれを加熱することがなかったとはどうも考えられません。
団子の歴史は平安時代よりもっと古そうだ。(このあたり、完全に私見です。)

まあ民衆が食べるものと貴族が食べるものは当然違うのでしょうが。
上で調べた「団子の由来」って、言葉としての「団子」の由来だったのかなあ。
あるいは貴族社会(つまり文字による記録が残っている世界)での団子の来歴かな。
古くから日本では穀類はほとんど粒の形で食べていた、という説もまたあるしなあ。

結局団子の成立がいつかは不明。

 5 中国のおだんご 5 団と円

目を中国に転じまして。
そうするとかなり古い歴史がわかりそうで、でも実はわからない。
(それは本当にわからないんではなくて亭主の情報収集能力の問題ですが。
 日本のお団子のほうは、団喜以前は本当にわからなさそうですが。)

団喜が日本に来たのですから唐には餡子の入ったお団子があったのは確か 。 団(トワン)というらしい。
ちいさくまるく何にも入っていないお団子もあったようで、それは 円(ユワン)と言うようです。
ちなみにこれはどちらも、小麦以外の穀物(お米含む)からつくるお団子のことをさしています。

ちなみに小麦粉から作られるものはまた特別扱いで、餅と総称します。
だから月餅は餅なのです。

これらの呼び名がいつごろから始まって、つまりこれらの食べ物がいつごろからあったのか。

礼記にはとにもかくにも穀物の粉からつくる点心らしきものが載っているらしい。
それはつまり周の時代より少し下ればもう点心らしきものがあったということです。

でも礼記、「団」や「円」まで載っているのかどうかは分からない。
(だいたい時代が違えば名前も違うかもしれないだろう・・・)
これをもってお団子があったとは、まあ、ちょっと言いきれないですよね。

原典にあたったらもしかすると分かるのかもしれませんが、あきらめました。
ふがいない亭主で申し訳ありません。

望ちゃんや普賢くんはお団子をもしかしたら食べていたかもしれない、ということで。
虚実皮膜の間をお楽しみください(<何か違う)。

それはそうとお団子でもっともっと嘘の可能性が高いのは、
仙道は五穀を断つんじゃなかったっけ、という点であったりもするのですが。
それは修行法のひとつであって常にそうしなければならないものではないのかもしれないけど。
穀類は血液を濁らせ、体の中にいる悪鬼を育ててしまうらしいですよ。
まあ、彼ら仙人とはいえ飛べないし、地に足がつくために五穀を食べるのはよいことだと思うのですけれどね。
(決して彼らに飛んでほしいわけではなくて、だからフジリュー封神は好きだということで)

それとも松の実を粉にしてお団子を作っていたことにしようかな?
木の実は食べていいんですよ。




長々とお付き合いいただき感謝に堪えません。
もともと、黒背景を一度やって見たかったという動機からなるページでした(笑)。
素材は牛飼いとアイコンの部屋PearlBox。ずっと使いたいと思っていました。

日本では旧暦9月13日の月も名月とされております。
今年は10月29日です。
十三夜、ぜひお楽しみください。

ふたりでお月見

参考リンク先 
     ありがとうございました。
     (それにしても多過ぎですかね?このほかにもいろいろいろいろお世話になりました。)
     追記:05.11.23 移転・撤去等されたサイトさまへのリンク外しました。

【全般】
大阪市立科学館 > 科学の広場 > なにわの科学史のページ >  お月見のはなし *1
おこよみ焼き > お月見 *2
星の民俗館 >  十五夜の民俗 *3
横浜こども科学館 > 天文民俗学のページ >  日本の星の民俗 十五夜のお月見 
七夕のときも利用させていただいたサイトさまがた。やっぱり充実。

【月】
月世界への招待 文化よりは科学。とてもとてもきれいな月の写真が見られます

【中国の中秋節】
台湾 > 中華民国の手引き > 文化 > 中国伝統の年中行事 写真がたくさん。 中華民国の日本語公式サイト。
大唐道楽館 > 雑文記録 > 中秋 食べ物の薀蓄が多くて亭主のツボ。
Chinatips.net > 文化 > 節句 旅行、買い物、一般情報。
 これは worldtips.net という企業の中国情報日本語版。ちなみに日本情報もなかなかのものでした。
 日本情報のところにはコミック&アニメのコーナーがあるのね(笑)。
漢詩を作ろう > 今月のお薦め漢詩 > 1999年秋分 *4 たびたびお世話に。
ぽんずのページ > 北京歳時記 > 嫦娥のお話 *5 北京在住の日本人ぽんずさんによる中国・北京のあれこれ。

【紹介し切れなかった月餅のこと】
おしゃべり中華街 > 季節のお便り >  お月様を食べよう!月餅の話
辻調理師専門学校 > 食のコラム > 中国の祭事と料理 > 中秋節 ・月餅
Shanghai-dweller.com > Season's Topics >  中秋節と月餅 dweller は在住者。月餅の中身まで分かっちゃいます。

【韓国の中秋節】
Koria Super Expo 2001(韓日交流祭) > 伝統名節 > チュソク(お盆)(TOPから行くならとりあえずサイトマップへ!)
 お盆だけどよく見るとすごくお月見。
ワンズショップ > 韓国料理 > ソンピョン 作ってみますか?

【とりわけ今回の大感謝】
株式会社日立システムアンドサービス 世界大百科事典サーチ。
ものすごくお世話になりました。つまりは事典です。
世界大百科事典そのものは、平凡社の出版。図書館に行けばきっとあります。
サーチは J-COM の会員専用ページにあるのを使っています(だからリンクできませんしてもたぶん飛べません・・)。
もし「私会員だけどそんなの知らないわ」という方いらっしゃったらここです。
CD-ROM でも販売しているらしいです(いくらするんだろう?)。
今回参照した(実際に役に立った)項目は「月」「玄宗」「白居易」「団子」「餅」「五穀」「白玉粉」「和菓子」「中国料理」「仙術」かな。
とくに紙の事典だと取っ掛かりがないと全く情報に近づけないので、参考までに。


文責は水波にございます。
誤りなど気づかれましたら私まで掲示板やメールで教えていただければ幸いです。
このページへのリンク、情報の一部引用はご自由にどうぞ。
ただし最終的には情報のご利用はご自身の責任で。

リンク先の信頼性もご自身で確認してくださいませね。


お月見の物語に戻る
書斎に戻る
正門に戻る


Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!