はじめに注意書き。これは駄文です。
決して作り話ではありませんが、「事実」を断言しているところはほとんどありません。お気をつけて。
1 バレンタインさんはどんなひとか
「2月14日は聖バレンタインの祭日。ローマ人の迫害によって殉死した
キリスト教の聖人、聖バレンタインを偲ぶ日ですわね。それが、なにか?」
邑姜ちゃんのせりふから分かりますように (って、自分で書いただけだろう)
バレンタイン、というのは人の名前です。
ローマ人の迫害によって殉教したキリスト教徒、であるのはまあ、間違いない様子です。
バレンタイン、というのは英語風の読み方ですね。
イタリアの人なので生前この人が「バレンタイン」という音で呼ばれていなかったことは確かなのですが、ではどう呼ばれていたかというとバレンティヌス(多分ラテン語に近い読み)とかバレンチノ(多分現代イタリア語に近い読み)とか様々な表記があってどうしても決めかねるので、ここではなじみ深いバレンタインで通します。
2月14日が殉教日であるとされ、この日が記念日になっているのですが・・
1700年以上も前のこと、日付が定かかどうかは、ねえ。
そもそも「バレンタインであるらしい人」も1人には絞られていないようです。
269年(または270年)に殉教したウンブリアのテルニという町の司教であるとか、
296年頃に殉教しフラミニア街道に埋葬された司祭であるとか。
フラミニア街道はウンブリアを通っていますのでこれらは同一人物か?とも思うのですが、
でも司祭と司教は違うし、殉教年も違うし。あれ?教会に「司祭」や「司教」のある位階制が成立したのはいつ?
うーん。上の2人は同一人物かもしれないし、別人かもしれません。そして別人だとすれば、どちらがいわゆるバレンタインさんかはわかりません。
いずれにせよ時はまだローマ帝国がキリスト教徒を迫害している時代。
(キリスト教の公認は313年ですね。)
殉教したキリスト教徒は1人や2人ではないのですから、いろんな人の話がごちゃ混ぜになって伝説ができた可能性はかなりあるのではないかと思います。
おまけ、Umbria は中部イタリアの州。ローマより少し北。ちょっと前、中田選手のおかげで日本人には一躍有名になった街ペルージャが州都。テルニはローマとペルージャの中間くらいかな(州名、街名は現在のもの)。
フラミニア街道、ってのはローマから北に伸び、ペルージャを通ってアドリア海に抜ける道。
2 バレンタインさんはなにをしたか
バレンタインデイ、信仰のために命を落とした聖人の記念日がなぜ恋人たちの日となったのかは定かではなかったはず。
まずはバレンタインさんがなぜ殉教することになったのか。
それには次のような伝説がございます。
ときのローマ皇帝クラウディウスさん(在位268-270)は、
強い軍隊を作るため兵士の結婚を禁じておりました。
これを気の毒に思ったバレンタインさんは
こっそり兵士たちの結婚式を執り行ってやったのです。
ところがこれがばれてしまいます。
ローマ帝国はバレンタインに罪を認めさせ、そして改宗させようとしましたが、
バレンタインさんは信仰をまげず、ついには処刑されてしまいました。
これにくっついて、もうひとつふたつ別の伝説が。
このときバレンタインさんを取り調べた法官には、目の見えない娘がおりました。
獄中でも恐れずに神の愛を語るバレンタインさんに娘は心を惹かれ、2人は愛し合うように。
彼女のためにバレンタインさんが神に祈ると奇跡が起こり、
彼女の目は見えるようになったのです。
これを知った法官はバレンタインさんに感謝し、また神を信じ、
一家そろってキリスト教に改宗したのでありました。
そしてまた、最期に彼は「あなたのバレンタインより」と記した手紙を
彼女に残したとか。
その後、法官の一家もついには処刑されてしまいました。
そう、バレンタインさんは、
・ 結ばれない恋人たちを結婚させてやった
・ 愛の力で目を癒した
・ 愛の手紙を残した
ことなどから恋人たちの守護者とされているようすです。
3 バレンタインさんからすこしはなれて
バレンタインデイ、信仰のために命を落とした聖人の記念日がなぜ恋人たちの日となったのか
にはまだほかの理由もあるようです。
このころのローマでは(そしてこのあとも)ルペルクスという豊穣の神さまのために
ルペルカリアというお祭が行われておりました。
これは2月14日の夕方に未婚の女性が自分の名前を書いた紙をかめの中に入れ、
15日に男性がその紙を引いて、あたった娘とお付き合いするという縁結びのお祭でした。
付き合いの期間は祭の間だとか、1年間だとか、結婚するのだとか。
このお祭を原型として、2月14日は恋人たちの記念日になったということです。
このほかにも
ルペルカリア祭ではなくジュノー祭が原型であるという説、
この頃の季節に鳥が配偶者を選ぶからだという説などもございます。
ジュノー祭がどんなお祭りかはわかりませんでした。
(名前が違うだけで同じものを指していたりして)
ところで時代は下って496年、ときの教皇グラシウス1世さんは、風紀を乱す祭であるとしてルペルカリア祭を禁じました。禁止しただけでは不満が募るからでしょう、聖人の名前のくじを引き、引き当てた聖人にならった生き方をするように、というまじめなお祭りに変えたのです。そして、この時期に殉教していたバレンタインさんを新しいお祭りの守護聖人といたしました。
こうして恋人たちのお祭とバレンタインさんは結びつき(既に結びついていた故にグラシウス1世はバレンタインを守護聖人に選んだのかもしれませんが)、渾然一体となっていきます。
4 バレンタインデーいまに至る
この日親しい男女がお互いに贈り物を交わす習慣が、世界の多くの地域において成立しているのは確かなこと。
なんだかんだで、中世ヨーロッパではバレンタインさんが愛し合うものたちの守護聖人、2月14日が恋人たちの記念日、であることが定着していきます。
14世紀頃から、この日に恋人たちが手紙やプレゼントを贈ったり、
その日の最初に出会った異性を「バレンタインの男性」「バレンタインの女性」と
向こう一年間呼び合ったりという風習がができはじめたようです。
この日に送るカードや贈り物のことをバレンタインと呼びますが、
現存する最古のバレンタインは、1400年代初頭ロンドン塔に幽閉されていたフランスの詩人が妻に書いた手紙で、大英博物館に保存されているそうです。
とくに第一次世界大戦後のアメリカで、バレンタインデーは急速に、かつ大々的に恋人たちの日として普及しました。恋人がメインの行事ではありますが、欧米ではこれに限らず友達、家族などがお互いにカードや花束、お菓子などを贈ります。現在アメリカでは、バレンタインカードがクリスマス・カードの次に多く交換されているとのこと。
5 日本でのバレンタインデー
もちろん時代や地域によって習慣は多少違うもの。いまこの地域では、贈るのは女性から男性への一方通行、品物はチョコレートであるのが周知の事実。またここでは、恋人に限らず親しい間柄でチョコレートを贈ること、例えば職場の男性に女性がチョコレートを贈ることはごく一般的でしたわね。
日本にバレンタインデーの習慣がやってきたのは、昭和に入ってから。
昭和11年にモロゾフがバレンタインデーの広告を出したのが最初だそうです。
昭和30年代にはデパートが単純に恋人に贈り物をする日として宣伝したようですが、
それほど定着はしませんでした。
昭和33年にはチョコレート業界でもメリーの営業主任さん(この方はあとで社長になりました)がヨーロッパの知人からバレンタインの話を聞き、新宿伊勢丹デパートで「バレンタンデーにチョコレート」を提案。しかし最初の年、そのコーナーではわずか5個・170円のチョコレートしか売れなかったという話です。
その頃からメリーと森永が毎年バレンタインの広告を出していました。
それでも定着したのは昭和50年ごろからだそうです。
「女性が男性にチョコレートを贈って愛を告白する日」として日本中に広まり、定着しました。
チョコレートを贈るのは日本だけの習慣のようですが、チョコレート業界の粘り強い営業努力の勝利、といったところでしょうか。
なぜ女性から男性への一方通行になったのかは謎なのですが、これもチョコレート業界の戦略かなあ。
この間ラジオであるアメリカ人が話していらっしゃいました。
「僕は日本のバレンタインデーの方が好きだね。だってチョコレートは高すぎはしないからね」
楽しくなってしまいました。
参考文献 (文献?)
検索サイトで探して片っ端から回っていきました。
以下の3つがとりわけお世話になったところ。
おこよみ焼き http://www.ffortune.net/calen/index.htm
暦ネタ充実、すごいです。
食チャン・ドットコム (閉鎖されたみたいです)
The Family http://www.family.gr.jp/valentine/valentine.htm キリスト教団体のサイト。
ただ下2つはバレンタインコンテンツを年中置いているかどうかわかりません・・・・
しかもTOPからは探しにくいところにありますので、直接そのページに貼ってしまいました。
リンクが切れたら外しておきます・・。気がついた方いらっしゃれば教えてください。
あ、あとイタリアやローマについては塩野七生先生の著作によるところが大きいです。
日常的に読んで染み付いているので、もうどこを参考にしたとか言えない・・ありすぎて。
いずれにせよ文責は水波にございます。
誤りなど気づかれましたら私まで掲示板やメールで教えていただければ幸いです。
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