+特別チョコ+

一度大喜びしてしまったので、正直ショックが大きい。
昨日の晩から焦がれていたチョコを貰ったというのに…。
まあいいや…貰った事には変わりないし、これから帰って味わって食べよう…。
トボトボと校門に向かって歩いていると、後ろから「今帰り?」と、声をかけられた。
この声は……
「一緒に帰らない?」
先輩だ……。
「は、はいっ、お供します」
曇った表情をサッと隠して、ジブンと先輩は校門を通り抜けた。

「あ、あの先輩…、チョコレート、有難うございました」
「え?あ、ううん。口にあうと良いんだけど」
「大丈夫ッスよ!すごく美味しそうでしたから!一つ一つ、じっくり味わって食べるッス!」
「ふふ、ありがと」
優しく先輩が笑う。

………。
…………聞いてみようか。

「あ、あの…先輩」
「ん?」
「チョコは…他の人にも、あげたりしたんス…か?」
「え?うん…まあ、義理チョコをね」
「義理チョコ…」
「うん」
「…そ、そのチョコ、も………手作りだったんスか?」
「え!?」
先輩が怪訝な顔をする。
「な、何で…そんなこと聞くの…?」
「………」
「…ど、どうだっていいでしょ!」
そう言うと先輩は、ふい、とそっぽを向いてしまった。
「あ!せ、先輩スミマセン!ジブン、変な事聞い…」
「あれー、ねえちゃん!」

先の曲がり角から、先輩の弟さんの尽くんが歩いてきた。
「あ、日比谷もいる」
「ど、どうもッス、尽くん!……うわ〜すごいッスねー、それ」
「ああ、これ?」
尽くんは大きな紙袋を持っていた。
もちろん中身はチョコレート。
たぶん20〜30個くらい入ってそうだ。
「さすがッス、師匠!」
「いや〜困りものだよな〜、もて過ぎんのも。これじゃ〜お返しが大変だよ」
そう言うとちょっと得意げに笑った。
まだ小学5年生だというのにこのもてっぷり、すごいッス!
「…なんでこんな子がもてるのかしら。私だったら絶対あげないわ」
得意げな尽くんを見て、あきれたような顔をして先輩が言った。
「へーんだ、ねーちゃんのチョコなんていらねーよっ!
あ、そーいやねーちゃん!作った本命チョコ、ちゃんと渡したのか〜?」
「!!」
え!?
今、 本 命 って言った!?
「ちょ、尽っ……!」
「誰にやったんだよー、葉月か?それとも姫城か?」
「あの、尽くん…本命、って…」
「いや〜聞いてくれよ、このねーちゃん毎年市販のチョコしか買わないくせに
今年はやけに気合入れてんの!チョコの作り方の本なんか買ってきてさ。
でも義理用にはちゃんと市販のチョコ買ってあったから、あれ絶対本命なんだぜ〜、
で、誰?誰に渡したの?」
「尽っっっ!!!!!!!」
隣にいたさんは顔を真っ赤にしながらものすごい形相で尽くんの元へ歩み寄ると、
彼のパーカーのフードをひっ掴んでぐいっと引っ張った。
「う、うわわわわっ、なんだよねーちゃん!あ、ああっ、チョコがこぼれるっ!」
慌てる尽くんに構わず、そのままグイグイ尽くんを引きずったままま
先輩の家の方向へ歩いていって、そして見えなくなった。

………………………えーっ、と。

義理には市販のものを買ったらしくて。
でもオレは市販のものを貰ってなくて。


………………………えーっと、つまり、つまり………えっ、えええええええ!!??






……そして当然、その日もなかなか寝付けなかった。
…嬉しすぎて。




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ときめきひびやんにチョコ渡す時のやりとりがもーほほえましくて大好きです。
はぁあんたらめっちゃラブラブじゃんか!森チト、もうたまりませんわ。
やっぱ日比谷×主人公はやめられません。


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