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+特別チョコ+ 昨日はなかなか寝付けなかった。 だって今日はそう、バレンタインデー! ジブンの気になる存在――さんから貰えるんじゃないかって、 気になって気になってもう仕方がないんだ! 先輩とは結構ふたりで遊びに行ったりしてて、 …正直、いい感じかな〜……な、なんて。 まあ義理くらいは貰えると思ってる。 「よー日比谷ー」 「ん?」 「見ろよこれ!B組の国定さんに貰っちまったよ〜」 そう言うとクラスメイトが持っているチョコレートを見せつけてくる。 が、気分はもうそれどころじゃない。 「ふーん…」 「ふーんて冷てえな〜…あっ!お前、先輩からチョコ貰えるかどうか 心配で気が気じゃないんだろ!」 「べっ別にっ、そういうわけじゃっ…」 「いいっていいって、分かってるから」 「な、なにが…」 その時、入り口近くにいたクラスメイトが声をかけてきた。 「日比谷〜、先輩が呼んでるぜー」 「!!!!!」 「げっ、マジでか!?」 と、とうとう来た!? 待ち焦がれていた人の登場に日比谷の胸は高鳴る。 もちろんダッシュで教室入り口に向かった。 廊下に出ると、ドアにもたれかかって立っている先輩が居た。 「あ、日比谷くん」 「さん!あ、え、えと、ど、どうしたんスか!?」 「…別に〜、良い天気だね!」 え!? チョ、チョコは…あの… 「え、先輩…あの…きょ、今日が何の日か……あ!い、いえいえ。 と、とってもいい天気ッスね!」 ジブンがそう言うと、先輩がプッと吹き出して、 「…ふふふっ!冗談だってば!はい、バレンタインのチョコレート!」 と言って、いたずらっぽく笑いながらチョコを取り出した。 「せ、せんぱ〜い…、ヒドイっスよ〜」 そう言いながらも先輩のその、いたずらが成功して喜んでる子供の顔のような笑顔が たまらなくて自然とオレも顔がほころんでしまう。 それに取り出されたチョコレート、それは…… 「コレ、もしかして……先輩の手作り、ですか?」 透明のビニールの箱に入った綺麗なトリュフ。 ラッピングが何処となく店で売られているものとは違うような気がした。 「うん、そうよ」 ……やっぱり、手作りなんだ。 「すっごい綺麗に出来てますね…作るの、めちゃめちゃ大変だったんじゃないですか…?」 「ふふっ、まあね。おいしそうでしょ?」 そう言って先輩が自慢げに笑った。 ジブンに…ジブンに手作りなんて……ああ、なんか、もう、どうしよう。 「先輩、ジブン……ジブン、感激ッス! 大事にします!!」 「え…」 勢いよく頭を下げてからオレは急いで教室に戻った。 「へっへへー!見ろっ!先輩から貰ったぜ!」 そう言ってオレはさっき話をしていたクラスメイトに見せびらかす。 「うわっ、こいつマジで先輩から貰いやがった!」 「しかもっ!なんと手作り!いっやぁ〜、参ったな〜ホント〜」 「手作り!?マジかよ…」 「先輩ってあの美人のマネージャーだろ?すっげー」 「手作りってオイ、脈あるんじゃねーか?」 その場にいた数人のクラスメイト達が驚きの声を上げる。 無理も無い、だって先輩は綺麗でクールで勉強も出来て……そんな人に手作りチョコを 貰ってしまったんだから! 「そ、そーかなー、うわ〜どうしよ〜」 「いやでも、手作りだからって本命チョコとは限んねーんじゃねーの?」 「え?」 「ほら、手作り好きな女子とかいるじゃん?あーいうのって義理でも手作りだったりするじゃん。 先輩もそーいう口なんじゃね?」 舞い上がっていたオレの心は途端に凍りついた。 「あーいるな、マメな女子」 「そうか、先輩もそういうタイプかもな!あの綺麗な先輩が日比谷に本命チョコってより 信憑性あるわ!」 「あはは!まあまあ、あんま言うと日比谷かわいそーだろ。なあ日比谷、先輩どんな風に 渡してくれたんだ?恥ずかしそうにしてたんじゃねーか?だったら本命だろ」 「渡す時…?」 ――別に〜、良い天気だね! ――ふふふっ!冗談だってば!はい、バレンタインのチョコレート! ――まあね。おいしそうでしょ? 「……先輩、めちゃめちゃ余裕で二ッコニコしてた…」 「……」 「……」 「……義理決定、かな」 一覧に戻る ススム→ |