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0894号室へ

第1041話

 石本が、
「もしかして、もう倒せないくらいに強くなっちゃったとか……。」
 ダイちゃんは、
「敵がどんなに強くなったって、
 あきらめずに戦うのがヒーローってもんだよ。」
 天使の部下は、
「強くなったわけじゃない。存在しないことになった。」
 ニショブが、
「言ってる意味がよくわからないが。」
 天使の部下は、
「詳しく話すと長くなる。付き合ってもらえるならありがたい。」
 部長は、
「マジューイがいなくなったというのが本当なら、
 当面危険にさらされることはないだろうが……。」
 するとベルが、
「待て、『いなくなった』じゃななく『存在しないことになった』だろ。
 つまり最初からいなかった、ということになるぞ。」
 天使の部下は、
「まさにその通りだ。兄はいないことになってしまった。
 あの、古代人のように……。」
 部長は、
「なぜそこに古代人が出てくるのかよくわからないが。」
 天使の部下は、
「古代人は神をつくり出そうとしたことは知っているな。」
 そう言って大ちゃんのほうを見た。部長は、
「そういえば古代人の遺跡で得た神の力で
 巨大化やテレポートができるようになったんだったな。」
 天使の部下は、
「それだけではない。自ら神になろうとして過ちを犯した。
 歴史を操作して自分たちが神である宇宙に作り変えようとして
 失敗し、宇宙の歴史から消えてしまったのだ。」 

第1042話

 ベルが、
「待て、歴史から消えてしまったのなら
 遺跡すら残っていないんじゃないか?」
 天使の部下は、
「確かにそうだ。
 最初にこの説を兄から聞いたときは信じられなかった。
 しかし兄と共に遺跡を調査していくうちにそう考えざるを得ない証拠が
 次々に発見された。」
 部長は、
「古代人が遺跡を残して消えたのは
 歴史を操作しようとして失敗したからというのが事実だとして
 なぜ同じように兄であるマジューイが同じように消えてしまったんだ?」
 ダイちゃんは、
「鈍いなぁ。
 マジューイは古代人と同じように神にでもなろうとしたんじゃないの?」
 ニショブが、
「まさか。」
 天使の部下はダイちゃんの方を見て、
「まさにこの少年の言う通りだ。兄は神になろうとしていたのだ。」
 ギニフは、
「結果的に失敗したとはいえ何らかの回避する策をとっていたと思うが。」
 天使の部下は、
「そうだ。兄は古代人と同じ失敗を起こさないために
 大規模なコンピュータシミュレーションシステムを作り上げた。
 それが、この世界だ。」
 部長たちが話を無言で聞いていた。更に天使の部下は、
「兄は私が自分に都合の悪い存在だとわかると
 私を天使の部下としてこの世界に閉じ込めたのだ。」 

第1043話

 部長は、
「なるほど。それでこのゲームを作った本当の目的がわかった。」
 ベルが、
「しかし、そこまで大掛かりな対策をしてまで目的を果たそうとした
 マジューイがなぜ失敗してしまったのか。」
 ダイちゃん(印付)は、
「それに、レッド・ビーザってやつのことも気になるな。」
 部長(印付)は、
「本人が戻ってきて説明してくれるのが一番いいが、
 そんなことが……。」
 と、そのとき石本が後ろからトントンと部長(印付)の肩をたたく。
「おい何だ。」
 部長(印付)が石本に言うと、
「あ、えーっと、その……。」
「まさかそのレッドなんとかが戻ってきたっていう冗談は……。」
「いや、冗談なんかじゃなくって……。」
「やあ、久しぶりだな。」
 どこからやってきたのか、知らないうちにあのレッド・ビーザが
戻って来ていたのだ。それを見たダイちゃんは、
「久しぶりというほどでもないだろ。」
 レッド・ビーザは部長たちを見下ろしながら、
「失礼、時間のズレを考慮していなかった。」
 部長は、
「ちょうど良かった。聞きたいことがいっぱいある。」
 ダイちゃんは、
「なんかタイミング良すぎるな。かえって怪しいような感じがするよ。」
 するとニショブが、
「怪しいかどうかは、話を聞いてみてから判断してもいいんじゃないか?」
 レッド・ビーザは、
「ムァルーイと重なるかもしれないが、知っていることを話そう。」 

第1044話

 部長(印付)は、
「話の前に聞きたいことが一つだけある。」
 レッド・ビーザは、
「もしかしてマジューイのことか?」
 ダイちゃんは、
「いないことになったって聞いたけど、実は誰かに倒されたとか。
 かっこよく倒したかったのに。決め技とかも考えてたんだ。」
 レッド・ビーザは、
「なるほど。そのことを先に話すべきだな……。」
 部長たちはしばらく沈黙した。すると天使の部下が、
「私も真相が知りたい。話してくれ。」
 レッド・ビーザは、
「そうだな。彼を倒したのは……。」
 そう言ったあと部長たちを見て、
「……君たちとも言える。」 
 ダイちゃん(印付)は、
「どういうことなんだよ。倒しに行ってもいないのに。」
 ベルは、
「先ほど歴史操作に失敗して自ら歴史から抹消されてしまった
 とかいう話を聞いた。それと矛盾するのでは。」
 レッド・ビーザは、
「いや。矛盾はしない。理由を話そう。
 マジューイは歴史操作をより確実に効率よく行うために
 パラレルワールドの統合操作を行った。」
 部長(印付)は、
「それでこの世界の仲間と会うことになったのか。
 だが、本来の俺たちの世界や仲間はどうなった?」
 レッド・ビーザは、
「そのことについても説明しよう。」 

第1045話

 その時、

-カラカラ-

 何かが落ちる物音がした。
「ちょっと失礼。念のため何か確認する。」
 天使の部下は席を外した。すぐに戻るとみんなは思ったが、
しばらく経っても戻ってこない。レッド・ビーザは、
「ムァルーイには悪いが、話を進めていいか?」
 そういった時、天使の部下が戻ってきた。
「隣の部屋の小物入れが倒れて、中身が散らばっていた。」
 レッド・ビーザは、
「そうか、なかなか戻ってこなかったので
 話を再開しようと思ってたんだ。」
 ダイちゃんは、
「そんなのあとでも良かったのに。」
 レッド・ビーザは、
「彼はそういう男だ。話を進めよう。たしかパラレルワールドの統合に
 ついてのところからだったな。」
 部長は、
「頼む。」
「パラレルワールドが合流すると、そこに住んでいた人間もその影響で
 融合することがある。」
 ダイちゃん(印付)は、
「まさかぁ。」
 ダイちゃんも、
「ちょっと考えられないよ。こうしてふたりいるし。」
 部長(印付)は、
「でも待て、俺たちはこうして別々にいるわけだが、
 ほかのメンバーはどうなったんだ?まさか……。」
 レッド・ビーザは、
「消えたわけではない。すぐそこににいる。」

第1046話

    「たとえば……。」
     ダイちゃんが石本の方を見る。石本は、
    「え?何!?」
     部長は、
    「気にするな。」
     レッド・ビーザは、
    「気になるなら彼に質問してみるといい。
     ちょっと頼りない感じもするが、ちゃんと答えられるはずだ。」
     ダイちゃん(印付)は、
    「質問するのはやめとくよ。見かけ以上に頼りないし。」
     ベルが、
    「なるほど、合流したパラレルワールドとともに人間も
     融合することがあるのはわかった。」
     石本は、
    「何か質問してよ〜。ここに生き証人がいるんだから〜。」
     部長(印付)は、
    「じゃあ石本、昨日の夕食はなんだった?」
    「う〜ん……。」
     石本は考え込んだまま何もできなくなってしまった。ギニフは、
    「つまり彼は我々の仲間であると同時に……。」
     ダイちゃん(印付)の方を見て、
    「彼らの仲間であるというわけか。」
     石本は、
    「ちょっとー、ちゃんと思い出そうとしてるんだから、
     勝手に答えださないでよ〜。」
     部長は、
    「で、わかったのか?」
     石本は、
    「もうちょっと。もうちょっとだから……。」
     部長はレッド・ビーザに、
    「話を続けてくれ。」
    「わかった。」
     レッド・ビーザはそう言ったあと少し時間を置いて、
    「先ほどのパラレルワールドの合流における人間融合こそが
     彼の命取りとなった。」

第1047話

    「いまいちよくわからないな。」
     部長(印付)が言うとレッド・ビーザは、
    「パラレルワールド合流で融合した人間は、
     双方の記憶や経験、能力を持ち パワーアップすることになる。」
     するとニショブが、
    「しかしマジューイ自身も同じようにパワーアップしたのでは。」
     レッド・ビーザは、
    「いや、そのことに気づかず合流の影響を避けるため
     超古代文明の遺跡の分析により自身の作り出した特殊超空間へ
     移動していた。」
     ギニフは、
    「にもかかわらず失敗したというのは……。」
    「彼の居場所を突き止めた『ヒーローたち』によって阻止された。」
     レッド・ビーザが言うとダイちゃんは、
    「そこで自分の活躍を話すのか。あーあ、活躍したかったなぁ……。」
     大ちゃんは、
    「でも阻止したのは『ヒーロー』じゃなくて『ヒーローたち』だよ
     それにこの人に戦隊ヒーローみたいな
     仲間がいるような感じじゃないし。」
     ニショブが、
    「もしかすると『ヒーローたち』の正体はパラレルワールドの……。」
     レッド・ビーザは部長たちを見て、
    「まさに君たちだ。」
     ダイちゃんは、
    「うーん、いまいち実感がないなぁ。」
     部長も、
    「確かに、俺たち自身がやったわけじゃないからな。」
     レッド・ビーザは、
    「いや、それは違う。」

第1048話

     大ちゃんは、
    「どういうことなの?」
     レッド・ビーザは、
    「彼ら『ヒーローたち』の成功は君たちの努力の成果にある。
     パラレルワールドは歴史の枝分かれした世界、
     『ヒーローたち』も元は君たちと同じ道をたどってきた存在だ。
     それが再び合流し 力を合わせ戦った。
     残念ながら君たちは加わることができなかったが。」
     部長(印付)は、
    「マジューイがいなくなったとして、
     俺たちはこれからどうすればいい?」
     レッド・ビーザと天使の部下は顔を合わせ、
    しばらくして部長たちの方を向いた。天使の部下は、
    「もう兄には会えなくなったのは残念だが、君たちはよくやってくれた。
     元の世界に返そう。」
     ダイちゃん(印付)は、
    「帰れるのは嬉しいんだけど
     パラレルワールドが結局どうなってるのかよくわからない。
     帰れたとしても元に戻ってるのかどうか。」
     レッド・ビーザは、
    「詳しいことは調査中だが、傷が治るように
     パラレルワールドはマジューイがいない世界として
     自動的に再構成されていっているようだ。」
     ニショブが、
    「それでは、戦いは終わった。と、いうことなのか……?」
     レッド・ビーザは、
    「ありがとう。この友人と共に感謝しよう。」

第1049話

    -それから1ヶ月が過ぎた-

     とある高校の相撲部、部員たちは次の大会のため稽古に励んでいた。
    部長が部員の一人を怒鳴りつけた。
    「おい松永!こんなんじゃ次の大会でいい結果出せないぞ!!」
     松永は、
    「すみません部長。ちょっと考え事してました。」
     部長はすぐにではなくしばらく待って、
    「どうした。お前らしくないな。詳しく言ってみろ。」
    「なんか以前にも同じように怒られたことがありました。
     そのあと、強化合宿と言われて小さくされて……。」
    「うむ、確かにあったな。」
    「4、5ヶ月ほど前のはずなんですが10年近く前のような気がします。
     そのあといろいろあって宇宙にまで行ったり、
     そのうち忘れ去られてしまったり……。」
     部長は、
    「そうか、わかった。しばらく休んでろ。
     他にも似たようなことで悩んでる奴はいないか。」
    「松永、おまえもか。」
     そう言ったのは部員の北島だった。部長は
    「どうもあの事件のことが忘れられないようだな。」
    「はい、はいっ。」
    「石本、お前は黙ってろ。」
     北島が、
    「石本の言うことも聞いてやったら。」
     部長が、
    「こいつだけはいつ見ても悩んでるようには見えないんだが。」
     石本は、
    「ずーっと悩んでて、今気がついた、というか思い出したんだから。」
     部長は、
    「わかったわかった。聞いてやるから大人しくしてろ。
     いや、おとなしくしてたら話せんな。とにかく話せ。」

第1050話

     石本は、
    「鯖の味噌煮風!」
     部長は呆れて、
    「何の話だ?今食べたい物を聞いたわけじゃないぞ。」
     石本は、
    「そんな〜。ここに戻ってくるまでに夕食のこと聞かれて
     ずっと考えてて今思い出したんだ。」
    「時間かかりすぎだろ。」
    「練習に熱が入っているようだな。
     だが、無理はするなよ。」
     声をかけたのは顧問の植田先生だった。すると北島が、
    「練習も大事ですが、例の事件のことについて話してたんです。」
     上田先生は、
    「例の事件?何のことだ?」
     先生は更に続けて、
    「アニメとかの話もいいが、
     練習に支障が出ない程度にしておけよ。」
     松永は部長に小声で、
    「先生はあのことを忘れてしまってるみたいですね。」
     部長も同じような声で、
    「うむ。確かにそうだな。先生からしたら忘れてるというより
     そんな事件最初からなかったような感じだ。」
     横から副主将の川田が、
    「太田とか加嶋なんかはそれなりのことは覚えてたんだが、
     先生みたいにすっかり忘れている奴も何人かいた。」
     部長は、
    「オカズのことはともかく、
     石本でさえ事件のことはあいつなりに覚えているんだが。」 

第1051話

 その時だった。
「せっかく会いに来てやったのに、
 なんだかあまり嬉しそうじゃないな。」
「こんにちわ。」
 声のした方を部長たちが見ると、二人の男の子が立っていた。
あの大ちゃんとダイちゃんだった。
 部長は、
「よく来たな。でも学校に入るときなんか言われなかったか?」
 ダイちゃんは、
「それなら大丈夫。」
 部長は、
「まさかここに来るまでに何かやらかしたんじゃ……。」
 ダイちゃんが、
「まさか。
 ヒーローが人に迷惑をかけるようなことするわけないじゃないか。」
 大ちゃんが、
「ええっと、実は帰ってからあの力はなるべく使わないようには
 してたんだけど 新たな能力に目覚めちゃって……。」
 ダイちゃんが、
「説明するより 外を見たほうが早いよ。」
 北島が、
「なんだか急に外が静かになったような。」
 部長が外を見ると、
外を歩いてる生徒や先生がビデオの一時停止のように止まっていた。
 部長は、
「これは……。」
 大ちゃんは、
「見ての通り、自分の周り以外の時間を止められるようになったんだ。」
 部長は、
「大ちゃんの能力についてはわかったが、
 ダイちゃんがどうやってここに来たかだ。
 大ちゃんのテレポート能力でもダイちゃんの住んでいる
 星まで行くのはちょっと大変じゃないのか。」
 ダイちゃんは、
「頭悪いなぁ。いい方法があるんだよ。」 

第1052話

 その直後、どこからともなく聞き覚えのある声。
『詳しいことは、私が説明しよう。』
「「ウェイトさん!」」
 声を聞いた部長たちが言った。
『マジューイ事件解決のあと、
 独自に未開発だったこの少年の力の研究を進めていた。』
 大ちゃんは、
「天使の部下とかいう人に元の世界に戻してもらったあと
 ウェイトさんの宇宙船で地球まで送ってもらったよね。、
 その時に僕が時間を止めてるあいだでも使える通信機を
 作ってもらったんだ。」
 石本が、
「そんな便利な能力があったのに、なんで使わなかったんだよ。」
 部長は、
「未開発だったと言ったろ。」
 大ちゃんは、
「わかった時には数秒くらいしか止められなかったんだ。」
 部長は、
「それとは別にちょっと聞きたいことがあるんだ。
 さっきのマジューイ事件の事なんたが
 事件のことをはっきり覚えいる奴と、逆にそんなこと
なかったかのようにすっかり忘れてしまってる奴がいるんだ。」
『ああ、おそらくパラレルワールド統合と修復の影響だろう。』
 ウェイトは続けて、
『実はそれ以上に気になることがわかった。』
 ダイちゃんも、
「ただ、久しぶりに会いに来ただけじゃないんだ。
 まあ、その気になれば僕ひとりだけでも大丈夫だけどね。」 

第1053話

 部長は、
「気になることとは?」
 ウェイトは、
『本当にマジューイがいなくなってしまったのか
 奴の関連する場所を調べていたんだが……。』
 北島が、
「そのマジューイってやつが実はまだどこかにいたとか。」
『奴の存在は確認できなかった。
 しかし調査の過程で厄介な人物が見つかった。』
 ダイちゃんが、
「マジューイに潰されるはずだったライバルってとこかな。」
 部長は、
「なるほど。でもわざわざ報告のためだけに来たわけじゃないだろう。」
 石本が、
「あ……え……もしかして……。」
 大ちゃんが、
「うん、また役に立てるなら。」
 ダイちゃんは、
「これでヒーローとしてまた活躍できる。」
 石本が、
「あ、こっちへ戻ってきて用事とか あったりするとか……。」
 部長は、
「この空間からテレポートしてここへ戻ってくれば
 空間の外からは俺たちが宇宙へ行って戻ってきたなんて誰も思わないな。」
 石本が、
「でも、2、3ヶ月ならともかく何年も戻ってこられなかったら……。」
『その程度の対策ならちゃんと考えてある。
 なるべく早く解決させる方が優先だがな。』
 ウェイトが言うとダイちゃんが、
「これで、決まりだな。」


 こうして部長たちは新たなる冒険へと旅立った。
人知れず、時空を超え事件解決のために。 


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